ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
ボルキャンサーが動いた。
歩いたんじゃない。踏み抜いた。右脚が石畳を砕いた、いや石畳だけじゃない、その下の地盤まで砕けた、亀裂が走る、石畳が割れ、粉塵が舞う。巨体の一脚が地面を叩き割ったのだ。
次の一脚。左だ。同じように踏み抜いた、一歩で地面が割れる、二歩で壁が揺れる、三歩で城の柱が軋む。
ガウディの指が動いた、石の槍が形成される、だがボルキャンサーは槍を見ていない。構わない、ただ前へ、一歩一歩地面を砕きながら進む。
「やめろ!」
ガウディが叫んだ、初めて声が荒れた、静かだった声が裂けた。
ボルキャンサーが壁に触れた。
いや触れたんじゃない。体当たりした。巨大な甲殻の身体が城の壁に叩きつけられた、ドゴォン! 壁が砕けた、石が飛ぶ、壁じゃない、壁だったものが粉々に砕けて舞い上がる。
ボルキャンサーは止まらない、次の壁へ、今度は鋏だ、巨大な鋏を横に振るう、閉じた鋏が壁を薙ぎ払う、ガウディが指を動かして形成した石の槍ごと壁ごと薙ぎ倒した。
「私の城が!」
ガウディが絶叫した。設計図に描いた城が、積み上げた石が、ガウディの指一つで組み替えてきた城が、ボルキャンサーの鋏一つで崩れていく。
ボルキャンサーは蹴躙した。
壁を蹴る、柱を砕く、天井を叩き割る、巨体が暴れる、ガウディが操る建物の一部が壊れるたびにガウディの顔が歪む、設計したものが壊れる痛み、創ったものが砕ける悲鳴、それがガウディの口から絶叫となって溢れる。
「やめろやめろやめろ!」
ガウディの指が狂ったように動いた、石が再構成され、壁が再生し、槍が形成される、だがボルキャンサーはそれを全部壊す、一撃で砕く、一歩で割る、ガウディが造るより速くボルキャンサーが壊す。
「私の…私の建物が…!」
ガウディの左目から涙が流れたのか、汗なのか、前髪に隠れて見えない、だが顎髭が震えている、唇が震えている。
ボルキャンサーが立ち止まった。
破壊し終えたのだ、城の中庭は瓦礫の山だ、ガウディが操った建物の残骸が散らばっている、石の欠片、砕けた柱、割れた壁、すべてがボルキャンサーの鋏と体で砕かれた。
そしてボルキャンサーは振り返った。
巨大な鋏を構え直した。だが今度は攻撃じゃない、閉じた鋏を下に向ける、皿みたいに、ひしゃげた鋏を二人の下に差し出した。
「え?」
禽次郎は目を丸くした。
ボルキャンサーの巨大な鋏が、二人をすくい上げた。
閉じた鋏の裏側に二人が乗る、巨体の鋏が二人を包むように持ち上げた。
「うわっ!」
「きゃっ!」
二人が叫んだ、だが遅い、もう鋏の中だ。
ボルキャンサーの鋏がバレーボールのレシーブみたいに二人を包み込んだ。
そして投げた。
上へ。
空へ。
「うぉぉぉぉ!」
「ひゃあぁぁ!」
二人が宙に舞った、ボルキャンサーの鋏が二人を空高く弾き上げた、石畳の上から空中へ、瓦礫の山から空へ、青と紫の空へ。
二人が空に放り出された。
回転する、空が回る、世界が回る。
「禽次郎さぁぁぁん!」
歳月の声が聞こえた、叫んでいる。
「澪さぁぁん!」
禽次郎も叫んだ。
二人が空中で手を伸ばした、掴もうとした、だが遠い、回転の遠心力で離される。
ボルキャンサーは下で鋏を構え直していた、巨大な鋏を上に向けた。
(落ちてくる)
二人が落ちてくる、ボルキャンサーの鋏がそれを待っている。
「掴まって!」
歳月が叫んだ。
二人が同時にボルキャンサーの鋏に掴まった、巨大な鋏の縁にしがみつく、ボルキャンサーが二人を空中でキャッチした。
「はあ…はあ…」
「生きてる…」
二人は鋏の上で息を吐いた、高く、遠く、城の屋根よりも高く、空の下でボルキャンサーの鋏に乗っていた。
下を見た。
城は半壊していた、ボルキャンサーが蹴躙した跡が瓦礫の山となって残っている。
ガウディがいた。
蜥蜴の背中に乗ったまま、瓦礫の中に立ち尽くしている、左目が見開かれている、だが虚ろだ、設計した城が壊された眼だ。
「私の…城…」
ガウディの声が風に乗って届いた、低い、掠れた、壊れた城みたいな声だ。
ボルキャンサーは動いた、二人を乗せたまま瓦礫の山を下りた、一歩一歩地面を砕きながら、ガウディの前で止まった。
「次は負けない」
それと共にガウディが去っていた。
「…奴め、逃がすか!追え!蟹!」
「えっ」
歳月の命令を受けてか、ボルキャンサーがガウディを追って、走る。