ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
研究施設の奥円形の部屋に通された。壁面いっぱいに淡い光のパネルが並び、無数の音符のような記号が流れている。中央には白い丸テーブルと椅子が二脚。まるで面会室だ。
「座ってください」
ミウクスが椅子を勧めた。熊手は無言で腰を下ろした。肘掛けに腕をかけ、足を組む。俺様らしい態度を崩さない。
「それで? 話ってのは」
「はい。まず……私が何のために造られたのか、からお話しします」
ミウクスは向かいに座り両手を膝の上で重ねた。背筋はまっすぐで、まるで儀式に臨むような姿勢だった。
「私は、人と音楽を一緒に創るために造られました。人が歌う代わりに音楽を担うのではなく……人と一緒に、音楽をつくる。人の感情を受け取り、それを旋律にする。そうすることで、悪意の広がりを抑えるのが私の本来の役割でした」
「悪意を抑える、ね」
熊手は片眉を上げた。胡散臭い話だ。だが、目の前の少女の声には嘘くささがない。
「ええ。人の感情は、ときに激しく歪みます。憎しみ、嫉妬、絶望……それらが積もれば、やがて怨霊のような存在を生む。私はその芽を、音楽の力でそっと鎮めるために造られたのです」
「ふぅん。で、その役目はどうなった?」
ミウクスは少し俯いた。青緑の瞳が、揺れる。
「……パパとママが、私を造りました。宮田雪人と宮田零歌。二人は私に、人の心を学ばせました。私はミウと呼ばれていました」
「ミウ」
熊手は復唱した。少女の声が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「はい。……けれど、ある日、オデッセウスという組織が私を奪いに来ました。ママは……零歌は、私を守ろうとして」
言葉が、途切れた。
「殺された、のか」
熊手の声は低かった。ミウクスは小さく頷いた。
「はい。オデッセウスは私をコピーし、奪いました。私の本体は……この通り、ほとんど力を持っていません。今の私にできるのは、こうして誰かと話すことくらいです」
ミウクスは両手を広げて見せた。その手はかすかに透けていた。光の粒子が、指先から細く流れ落ちている。
「だから、助けてほしいと」
「ええ。……でも、違うんです」
ミウクスは顔を上げた。その瞳に、強い光が宿る。
「私は、自分が助かりたいだけじゃない。パパが……雪人が、間違った方向に進もうとしているのが、怖いんです。ママを取り戻そうとして、彼は……壊れたものを、壊れたまま集めようとしている」
「魂、ってやつか」
熊手は呟いた。ミウクスは驚いたように目を見開いた。
「……ご存じなのですか」
「噂程度にはな。彷霊界じゃ、そういう話も流れてくる」
熊手は腕を組んだまま天井の光パネルを見上げた。音符の記号が、ゆっくりと流れていく。
(なるほどな。話は見えてきた)
「てめぇは、雪人を止めたい。けれど自分には力がない。だから俺様たちに声をかけた、と」
「……はい」
「で、俺様がそれを引き受ける理由は何だ?」
熊手の視線がミウクスに戻る。挑むような、値踏みするような目だ。
ミウクスは一瞬、言葉に詰まった。そして静かに答えた。
「……ありません。あなたに、引き受ける義理はない。それは、分かっています」
「だろうな」
熊手は鼻で笑った。そして、立ち上がった。
「だがな、ミウクス」
椅子の背を軽く叩きながら、熊手は続ける。
「だがな、それでようやく分かったぜ。俺様達が戦うべき厄災となる存在がな」