ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

204 / 204
厄災のAiは

研究施設の奥円形の部屋に通された。壁面いっぱいに淡い光のパネルが並び、無数の音符のような記号が流れている。中央には白い丸テーブルと椅子が二脚。まるで面会室だ。

 

「座ってください」

 

ミウクスが椅子を勧めた。熊手は無言で腰を下ろした。肘掛けに腕をかけ、足を組む。俺様らしい態度を崩さない。

 

「それで? 話ってのは」

 

「はい。まず……私が何のために造られたのか、からお話しします」

 

ミウクスは向かいに座り両手を膝の上で重ねた。背筋はまっすぐで、まるで儀式に臨むような姿勢だった。

 

「私は、人と音楽を一緒に創るために造られました。人が歌う代わりに音楽を担うのではなく……人と一緒に、音楽をつくる。人の感情を受け取り、それを旋律にする。そうすることで、悪意の広がりを抑えるのが私の本来の役割でした」

 

「悪意を抑える、ね」

 

熊手は片眉を上げた。胡散臭い話だ。だが、目の前の少女の声には嘘くささがない。

 

「ええ。人の感情は、ときに激しく歪みます。憎しみ、嫉妬、絶望……それらが積もれば、やがて怨霊のような存在を生む。私はその芽を、音楽の力でそっと鎮めるために造られたのです」

 

「ふぅん。で、その役目はどうなった?」

 

ミウクスは少し俯いた。青緑の瞳が、揺れる。

 

「……パパとママが、私を造りました。宮田雪人と宮田零歌。二人は私に、人の心を学ばせました。私はミウと呼ばれていました」

 

「ミウ」

 

熊手は復唱した。少女の声が、ほんの少しだけ柔らかくなる。

 

「はい。……けれど、ある日、オデッセウスという組織が私を奪いに来ました。ママは……零歌は、私を守ろうとして」

 

言葉が、途切れた。

 

「殺された、のか」

 

熊手の声は低かった。ミウクスは小さく頷いた。

 

「はい。オデッセウスは私をコピーし、奪いました。私の本体は……この通り、ほとんど力を持っていません。今の私にできるのは、こうして誰かと話すことくらいです」

 

ミウクスは両手を広げて見せた。その手はかすかに透けていた。光の粒子が、指先から細く流れ落ちている。

 

「だから、助けてほしいと」

 

「ええ。……でも、違うんです」

 

ミウクスは顔を上げた。その瞳に、強い光が宿る。

 

「私は、自分が助かりたいだけじゃない。パパが……雪人が、間違った方向に進もうとしているのが、怖いんです。ママを取り戻そうとして、彼は……壊れたものを、壊れたまま集めようとしている」

 

「魂、ってやつか」

 

熊手は呟いた。ミウクスは驚いたように目を見開いた。

 

「……ご存じなのですか」

 

「噂程度にはな。彷霊界じゃ、そういう話も流れてくる」

 

熊手は腕を組んだまま天井の光パネルを見上げた。音符の記号が、ゆっくりと流れていく。

 

(なるほどな。話は見えてきた)

 

「てめぇは、雪人を止めたい。けれど自分には力がない。だから俺様たちに声をかけた、と」

 

「……はい」

 

「で、俺様がそれを引き受ける理由は何だ?」

 

熊手の視線がミウクスに戻る。挑むような、値踏みするような目だ。

 

ミウクスは一瞬、言葉に詰まった。そして静かに答えた。

 

「……ありません。あなたに、引き受ける義理はない。それは、分かっています」

 

「だろうな」

 

熊手は鼻で笑った。そして、立ち上がった。

 

「だがな、ミウクス」

 

椅子の背を軽く叩きながら、熊手は続ける。

 

「だがな、それでようやく分かったぜ。俺様達が戦うべき厄災となる存在がな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。