ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
ゴジュウポーラーはグーデバーンを握りしめた。白い拳型の装備が、低い唸りを上げる。
「とっておき、ねぇ」
BLACKが冷笑した。
『見せてもらおうか。その“とっておき”とやらを』
「ああ、とくと見ろ。俺様の全力をよ」
ゴジュウポーラーはグーデバーンを高く掲げた。その瞬間、グーデバーンから白い光が溢れ出す。いや、光じゃない。氷だ。透き通った氷の結晶が、ゴジュウポーラーの体を包み込んでいく。
「何…!?」
BLACKが思わず足を止めた。氷の結晶が、ゴジュウポーラーの体を一瞬で覆い隠す。その中で、何かが変化している。装甲が再構成されている。力が、膨れ上がっていく。
『ゴッド!』
電子音声が響く。ゴジュウポーラーの体を包む氷が、一層強く輝いた。
『ゴッド!!』
二度目の音声。氷の結晶が弾け、中から新しい姿が現れ始める。
『ゴッドネス!!』
三度目の音声と共に、氷が完全に砕け散った。現れたのは、先ほどまでとは全く違う姿のゴジュウポーラーだった。
「…何だ、こいつは」
BLACKが息を呑んだ。
ゴジュウポーラーの首元を、白い毛皮が包んでいた。まるで雪山の獣の首輪のような。短かった腰の裾は、金の縁取りと毛皮を備えた長いコートとなって左右へ広がっている。その裾が、ふわりと揺れた。
胸にあった黒い円形部分は、金の輪に囲まれた青い装甲に覆われていた。中央には鋭角的な模様が刻まれている。まるで王者の紋章だ。
肩から突き出していた白い爪に代わり、青と白の厚い肩当てが張り出していた。その下には金色の装飾が幾重にも並んでいる。まるで宮殿の柱のような。
両腕を覆うのは、握り拳を何倍にも膨らませたような青い籠手。指の節まで分厚い装甲に包まれ、手首には金の帯が走る。その拳は、先ほどよりも遥かに巨大で、遥かに重々しい。
白い頭頂の突起と金色の熊の顔を残した頭部にも、青い装甲が加わっていた。全体的に白と青と金のコントラストが、王者の威厳を放っている。
『グーデバーン!!』
電子音声が響く。
『クールMAX!!』
ゴジュウポーラーの体から、冷気が放たれた。廊下の温度が急激に下がる。白い息が、マスクの隙間から漏れる。
『グーデバーンゴジュウポーラー!!』
最後の宣言と共に、変身が完了した。
ゴジュウポーラーはゆっくりと立ち上がった。巨大な拳を構えるたび、背後の白い裾が大きく揺れる。その姿は、まるで極北の王者。
「どうだ、BLACK。これが俺様の“とっておき”だ」
ゴジュウポーラーの声は、低く、重く響いた。氷の左腕が、冷気を纏いながら静かに拳を握る。
「さあ、来い。本気の俺様を相手にしてみろ」
ゴジュウポーラーは両手の巨大な籠手を合わせた。
ガギンッ。
金属同士がぶつかり合う重い音が、廊下に響いた。氷の粉が、籠手の接地面から零れ落ちる。
「行くぞ」
その声と共に、ゴジュウポーラーは床を踏み抜いた。
速い。いや、速いというよりは重い。一歩一歩が大地を揺らすような踏み込みで、距離を一気に詰める。白い裾が翻り、金の縁取りが廊下の照明を反射して煌めく。
BLACKは反応した。エネルギー吸収の構えを取る。黒いオーラが全身から立ち昇り、まるで黒い沼が人型をとったかのような威圧感を放つ。周囲の光が、空気が、あらゆるエネルギーがBLACKへと吸い込まれていく。
「吸取るってのは、お前の切り札だったな」
ゴジュウポーラーは止まらない。加速する。
「だが、凍らせてしまえば、吸取るものもねぇだろう!」
ズドンッ!
ゴジュウポーラーの右拳が、BLACKの腹部を捉えた。黒いオーラが、拳の衝撃点から凍りついていく。
「なっ…!」
BLACKの声に動揺が走る。エネルギーを吸収しようとするが、吸収しようとした瞬間にそのエネルギーごと凍結していく。黒いオーラの表面に、白い氷の結晶が這い広がっていく。
「ぐっ…吸えねぇ…!?」
「残念だったな。俺様の凍気は、熱も光も、エネルギーそのものも凍らせちまうんだよ」
ゴジュウポーラーは右拳を引き抜くと同時に、今度は左の巨大な籠手を振り上げた。
ドスンッ!
氷の拳がBLACKの胸部を斜め下から叩き上げる。BLACKの体が浮き上がり、足が床を離れる。
「まだだ!」
ゴジュウポーラーは追撃を止めない。右のストレート。左のフック。右のボディ。左のアッパー。巨大な青い籠手が、次々とBLACKの体を捉えていく。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
一発ごとに、BLACKの装甲にひびが走る。氷が広がり、黒いオーラを侵食していく。BLACKは反撃しようと拳を振るうが、その拳もまたゴジュウポーラーが触れた瞬間に凍りついていく。
「くそっ…くそっ…!」
BLACKは歯噛みした。言葉が出ない。拳が出ない。体が動かない。全てが凍りついていく。
「お前は強かったよ、BLACK。だがな…」
ゴジュウポーラーは右拳を引き絞った。巨大な籠手が、冷気を帯びて白く輝く。氷の結晶が、拳の周囲に渦を巻いて集束していく。
「お前の怒りは、俺様には届かねぇ」
『フィニッシュナックル!』
電子音声が響き渡った。
「食らえ!」
ゴジュウポーラーの右拳が放たれた。氷を纏った巨大な籠手が、BLACKの胸部中央を真っ直ぐに貫く。
ズドォォンッ!
衝撃が、廊下全体を揺らした。BLACKの体が、一瞬で凍りつく。黒い装甲が白く変わり、ひび割れていく。そして。
パァンッ!
氷の結晶と共に、BLACKの変身が解除された。黒い装甲が砕け散り、後ろに吹き飛ぶ。現れたのは、一人の青年だった。黒い髪。鋭い目つき。けれどその表情には、怒りよりも虚無が浮かんでいた。
「…親父…お袋…」
青年は呟きながら、ゆっくりと倒れていった。背中から小さな金属音がした。ライドウォッチが、青年の腰から外れて床に転がる。
ゴジュウポーラーは変身を解いた。熊手真白は、床に落ちたライドウォッチを拾い上げた。表面には仮面ライダーBLACKの顔が刻まれている。
「…重い、な」
熊手は呟いた。ライドウォッチの重みは、物理的なものだけじゃない。それを手にした者の想いが、指先に伝わってくる。