ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

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空に吠えろ!

 亡は、まともに斬り合う気が最初から薄かった。

 

 気配が消える。次の瞬間には横。さらに次には背後。ニホンオオカミノツメの刃が、夜気を裂いて何度も喉元を掠める。こっちは芹亜を背中の暗がりに隠したまま動いているぶん、どうしても踏み込みが半歩遅れる。

 

「ちっ……!」

 

 テガソードで受ける。火花が散る。だが押し返したと思った瞬間には、亡の姿がもう視界から消えていた。

 

「反応は悪くない」

 

 平坦な声が、今度は頭上から落ちる。

 

 咄嗟に身体を捻る。黒い刃が肩口を裂き、浅い火花を引いた。浅い。けど浅いだけだ。数を重ねられれば、いずれ深くなる。

 

 亡が間合いの外へ着地した、その時だった。

 

 左のスロットへ、ライドウォッチが差し込まれる。

 

「まだあんのかよ」

 

 乾いた駆動音。亡の腰の左側が低く光る。

 

 『サイガ』

 

 名前を知る前に、空気が変わった。

 

 亡の周囲で白い光が走る。次の踏み込みが、さっきまでと比べものにならないほど鋭い。機動力そのものが一段跳ね上がった。視界から消えるんじゃない。視界の意味がなくなる。見えた時にはもう斬られている。

 

「っ、ぐ……!」

 

 右。左。正面。三連続で受ける。重くはない。だが速すぎる。反撃へ移る前に次が来る。間を作れない。

 

 しかも、亡は俺だけを見ていない。

 

 斬りながら、少しずつ芹亜の隠れている方角へ俺をずらしていく。気づいた時には、退く先が狭まっていた。

 

「やり方が気に入らねえな!」

 

「効率的」

 

 返ってきた声は、やっぱり平坦だ。

 

 踏み込む。強引に距離を潰す。接近戦なら、まだこっちにも牙はある。そう思った瞬間、亡の手がまた左スロットへ伸びた。

 

 『ブレイズ』

 

 今度は――ブレイズ。

 

 鋭い水が、夜の中に走った。

 

 亡の手に水の剣が現れる。温度が一気に下がる。隠密と速さだけでも厄介だってのに、そこへ分かりやすい破壊力まで乗ってきた。

 

「ふざけんなよ……!」

 

 振り下ろされた刃を受ける。衝撃が腕の骨まで響いた。熱い。押される。テガソードの刃を通して、火の粉が顔面へ散る。

 

 亡は休ませない。受けた直後の硬直へ、すぐ次の一撃が来る。横薙ぎ。突き。返し。剣の重い剣筋を、サイガの速度で振ってくるような、最悪の押し込み方だった。

 

 まずい。

 

 このままじゃ、崩される。

 

 背後には芹亜がいる。下がらせたい。だが声を出せば位置が割れる。だったら、ここで止めるしかない。

 

 踏ん張る。受ける。押し返す。だが、一歩が足りない。

 

 亡の炎刃が、ついに俺の脇を抜けて後ろへ伸びた。

 

「……っ!」

 

 身体ごと割り込む。

 

 火花が腹を掠める。鈍い痛み。息が詰まる。

 

「庇った」

 

「当たり前だろ……!」

 

 亡の目が、そこで初めてわずかに細まった。

 

「なら、次で終わる」

 

 その一言と同時に、炎がもう一段膨れ上がる。ここで仕留める気だ。分かる。分かるからこそ、歯を食いしばるしかない。

 

 その瞬間だった。

 

 腰のテガソードが、急に熱を持った。

 

「っ?」

 

 脈打つ。呼吸するみたいに、柄の奥で力が震える。次いで、目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。亡も、さすがに動きを止める。

 

「何……?」

 

 裂け目だ。

 

 ただの歪みじゃない。世界そのものがそこだけ抉られたみたいに、真っ黒な穴が開いていく。夜の路地とも、彷霊界とも違う、もっと別の景色がその向こうに見えた。

 

 テガソードの熱がさらに強くなる。

 

 共鳴してやがる。

 

 そう分かった瞬間、裂け目の奥から音声が轟いた。

 

『ウォーオオッオー!!オー!ゴジュウレオン!ウォーオオッオー!オー!オー!』

 

 蒼の影が、穴の向こうから飛び出してくる。

 

 獣じみた重さを持ったその姿が路地へ着地した瞬間、風圧が霧みたいに夜気を吹き飛ばした。

 

 見慣れたはずのその色と気配に、思わず目を見開く。

 

「呼ばれてきてみたら、吠君。こんな所にいたか」

 

 落ち着いた、だが底に熱を持った声だった。

 

 俺は炎の残り香を振り払うみたいに一歩下がり、思わず叫ぶ。

 

「陸王! なんでここに!」

 

 ゴジュウレオン――陸王は、いつもの余裕を崩さないまま態度。

 

「それはこっちの台詞だ。ずいぶん面倒な相手に絡まれているらしいね」

 

 亡が、初めてはっきりと沈黙した。

 

 炎の剣を構えたまま、計算外の乱入者を測っている。

 

 俺は荒い息を吐く。

 

 追い詰められていたはずの空気が、そこで一気にひっくり返った。

 

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