ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
空間の裂け目から飛び出してきた青い戦士を見た瞬間、亡の動きがわずかに止まった。
ゴジュウレオン。
夜の路地に降り立ったその姿は、獅子を思わせる力強さを持ちながら、装甲の色は鮮やかな青だった。派手なはずなのに、妙に引き締まって見える。目立つのに、軽くない。そこに立っただけで、空気の流れが一つ変わる。
「呼ばれてきてみたら、吠君。こんな所にいたか」
落ち着いた声だった。
事情を知っている響きじゃない。ただ、目の前で俺が戦っているから、そのまま状況を受け止めた。そんな声音だ。
「陸王! なんでここに!」
「それはこっちが聞きたい」
青い装甲の向こうで、陸王は短く息を吐く。
「だが、説明はあとだな」
視線が亡へ向く。
「敵でいいんだろう?」
「ああ。かなり面倒なやつだ」
「分かった」
それで十分だった。
陸王はレオンバスター50を構え、半歩だけ前へ出る。背中越しでも分かる。何も分かっていない。けれど、何をするべきかだけは、もう決めている。
亡が、音もなく左手をジクウドライバーのもう一つのスロットへ伸ばした。
まず差し込まれたのは、サイガのライドウォッチ。
乾いた駆動音と共に、亡の周囲へ白い光が走る。次の瞬間、空を裂いて飛んできたのはフライングアタッカーだった。細く鋭い軌道。まっすぐ陸王の胸元を射抜くように飛ぶ。
だが陸王は下がらない。
レオンバスター50を横へ振り抜き、飛来したフライングアタッカーを真正面から撃ち落とした。火花が散る。衝突の勢いを殺しきる前に、亡の姿が横へ滑る。
「速いな」
陸王が低く呟く。
亡は応えない。ただ次の一手へ移るだけだ。今度はブレイズのライドウォッチが左スロットへ装填される。
赤い光。
亡の手に、水勢剣流水が現れた。
隠密性と機動力に加え、そこへ剣士の間合いと斬撃まで重なる。面倒どころじゃない。まともに付き合えば、じわじわ削られて終わる。
流水が振るわれる。
水をまとった斬撃が、夜の路地を横一文字に走った。
陸王はレオンバスター50を逆手に持ち替え、その一撃を銃身で受ける。受け止めきるんじゃない。剣筋を外へ逸らす。そこへ間髪入れず、レオンバスター50の銃口が跳ねた。
連射。
青い装甲の前で、重い銃声が立て続けに響く。亡は水勢剣を引き、身体を捻り、壁を蹴って弾道を外す。外しながら、今度はフライングアタッカーを飛ばしてくる。
近距離の流水。
遠距離のフライングアタッカー。
二つを継ぎ目なく繋げる戦い方だった。押し込み方がうまい。吠が一人で戦っていたら厄介だった理由が、陸王にももう分かったはずだ。
けれど陸王は焦らない。
青い装甲が路地を踏み鳴らす。獅子のように豪快なのに、動き自体は粗くない。亡の斬撃をレオンバスター50で受け、フライングアタッカーを横撃ちで弾き、そのまま前へ出る。真正面から押し返す。亡のように消えて翻弄するんじゃない。逃げ道ごと潰すように、前へ前へと出ていく。
「……面白い」
亡が初めて、少しだけ声に色を乗せた。
「隠れない」
「隠れる必要がないからな」
陸王が言い返す。
「見えているなら、撃ち抜くだけだ」
レオンバスター50がまた火を吹く。
亡が消える。
いや、気配を薄めた。次に現れたのは陸王の死角だ。流水の斬り上げが脇腹を狙う。だが陸王は振り向かないまま、肘だけでテガソードを引き抜いていた。
金の刃が横に走る。
流水とぶつかる。金属音が爆ぜる。亡が一度、弾かれるように後退した。間を作らせない。陸王はそのまま踏み込み、テガソードで追撃する。レオンバスター50とテガソード。遠近二つを自然に持ち替えながら、亡へ休む暇を与えなかった。
俺は芹亜を背後の暗がりに隠したまま、その攻防を見ていた。
強い。
吠が感じたのは、それに尽きる。陸王は状況を知らない。敵の能力も、芹亜が置かれている立場も、何一つ理解していない。それでも戦える。目の前の敵が危険だと分かった瞬間、迷わず前に出られる。その速さが、あいつの強さだ。
亡は再びサイガの力を使い、フライングアタッカーを複数の角度から飛ばしてくる。陸王は一歩だけ下がった。初めて守勢に見えた。だが、それは下がったんじゃない。次の一手のために間を測っただけだ。
「なら、こっちも少し変えるか」
陸王が低く言う。
左手がセンタイリングへ伸びた。
ブンブンジャー。
青い装甲の前で、別の赤が閃いた。
「エンゲージ!」
光が重なる。
ゴジュウレオンの青へ、ブンレッドの赤が上乗せされる。熱い色だ。けれど、青が消えるわけじゃない。獅子の圧と、走る戦士の勢いが一つに噛み合っていた。
陸王の両手に、新たな得物が収まる。
右にレオンバスター50。
左にブンブンハンドルガンモード。
二丁拳銃。
「……また別の力」
亡の声が低く沈む。
「この世界じゃ普通じゃないのか?」
陸王は軽く笑う。
「なら、よく見ておけ」
次の瞬間、二つの銃口が同時に火を噴いた。
重い弾丸と、速い弾丸。
レオンバスター50から放たれた弾は、まっすぐ強く。ブンブンハンドルから放たれた弾は、軽く鋭く。軌道の違う弾丸が、亡へ向かって一斉に走る。
亡は流水で斬る。フライングアタッカーで撃ち落とす。だが、そこで終わらない。
弾丸が曲がった。
「っ!?」
亡が初めて明確に驚く。
撃ち出されたはずの弾が、壁を掠め、地面を跳ね、まるで意思を持つみたいに軌道を変える。レオンバスター50の重い弾も、ブンブンハンドルの軽い弾も、全部が陸王の視線ひとつで操られているみたいだった。
「逃がさない」
陸王の声が落ちる。
弾丸が増える。
前から二発。右から一発。背後から二発。上から一発。亡は流水でそれを斬り落とす。だが斬った先へ、次の弾が回り込む。フライングアタッカーを飛ばしても、その隙間を縫って別の弾丸が装甲を叩いた。
火花。
亡の身体がわずかに揺れる。
そこへ陸王が踏み込んだ。
ブンレッドの機動力で一気に間合いを詰め、至近距離から二丁を連射する。亡は咄嗟に流水を盾のように構える。防ぐ。だが、それも読まれていた。
さっき撃たれていたレオンバスター50の弾が、背後から亡の肩を貫く。
「――っ!」
前に意識を向ければ後ろ。後ろを切れば横。遠距離の包囲を、亡は完全に崩せていなかった。
陸王が二丁の銃を交差させるように構える。
「終わりだ」
短い言葉だった。
その瞬間、路地を飛び交っていた全弾が、一斉に亡へ収束する。
流水が振るわれる。
フライングアタッカーが弾幕を削る。
けれど足りない。
正面からレオンバスター50の重弾が装甲を叩き、遅れてブンブンハンドルの速射がそこを穿つ。左右から回り込んだ弾丸が両腕を封じ、最後に頭上から落ちた一発が、亡の胸へ深く食い込んだ。
轟音。
亡の身体が、壁へ吹き飛ぶ。
装甲にひびが走る。
なおも立とうとする。だが陸王は、その一歩前へもう出ていた。
近距離。
静かな一発。
レオンバスター50の銃口が、亡の胸元へ真っ直ぐ据えられる。
「悪いな」
引き金が引かれた。
重い銃声。
その一撃で、亡の装甲が完全に砕け散った。
変身解除。
ミオ・マクスウェルの身体が、膝から崩れ落ちる。
路地に静けさが落ちる。
陸王はそこでようやく、ブンレッドのエンゲージを解いた。赤い意匠がほどけ、青いゴジュウレオンの姿へ戻る。さっきまで弾丸を縦横無尽に走らせていた空間に、今は火花の名残だけが漂っていた。
そして、ミオの足元に三つの光が浮かび上がる。
亡。
ブレイズ。
サイガ。
それぞれのライドウォッチが、ゆっくりと宙へ浮いた。
「……三つもかよ」
思わず俺が呟くと、陸王はそれを見上げて少し眉をひそめる。
「これが、あいつの力の元か」
事情を知らない声だった。
それでも手は止まらない。三つのライドウォッチが、そのまま陸王の手の中へ収まる。黒、赤、白。揃ってみると、妙に重たい色だった。
陸王は一度それを見下ろし、それからようやくこっちを振り向いた。
「……吠君」
「ああ、あとで説明する」
「そうしてくれ」
それだけ言って、陸王は三つのライドウォッチを握り直す。
背後の暗がりで、芹亜がようやく息を吐いたのが分かった。
俺もそこで、やっと肩の力を抜く。
「助かった」
「呼ばれた先で、たまたま間に合っただけだ」
陸王はそう言ったが、視線はもう手の中のライドウォッチへ戻っていた。
「だが……」
青い装甲の奥で、少しだけ目を細める。
「何やら、色々とありそうだな」
その言葉に、俺は苦く笑った。
まったく、その通りだった。