ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

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獅子の英雄

「緊張しすぎるのも性に合わないんでね」

 

 そう言いながらも、陸王の声はもう戦う側のものだった。

 

 次の瞬間、ビーストがダイスサーベルを持ち上げる。

 

 速い。

 

 斬りかかってきた、と思うより先に、その刃が夜気を裂いていた。だが本当に厄介なのは、その剣そのものじゃない。斬撃の軌跡から、獣の形をした魔法弾が飛び出したのだ。

 

 牙を剥いた獣の輪郭を持つ光が、一直線に陸王へ食らいつく。

 

「っ!」

 

 陸王がレオンバスター50を横に振るい、正面からそれを撃ち砕く。火花が散る。だが、ビーストはもう二撃目へ移っていた。

 

 ダイスサーベルがもう一度走る。

 

 今度は低く地を這う獣が生まれる。さらに返す刃で、頭上から落ちる鳥めいた魔法弾が放たれる。剣を振るうたび、別の獣が生まれてくる。近接の剣戟と、遠距離の魔法弾。その二つが完全に一体化していた。

 

「厄介だな……!」

 

 陸王が一歩横へ跳ぶ。頭上の魔法弾を躱し、着地と同時にレオンバスター50を連射する。重い弾丸が霧を裂く。だがビーストは最小限の動きだけでそれを避け、また剣を振るう。

 

 今度は獅子の頭部そのものみたいな魔法弾が吼えながら飛んだ。

 

 陸王はテガソードを引き抜き、それを正面から受け止める。衝撃。青い装甲がきしむ。押し返そうとした、その隙へダイスサーベル本体の斬撃が滑り込んだ。

 

「……っ!」

 

 火花が散る。

 

 ビーストは止まらない。斬るたびに魔法弾が増え、魔法弾を捌いた瞬間へ剣が重なる。受ければ弾が来る。弾を撃ち落とせば剣が来る。どちらか一方だけを見ていれば確実に崩される。

 

 雪庭が低く言った。

 

「近接戦の中に遠距離があるんじゃない。遠距離ごと剣技に組み込まれてる」

 

「しかも、迷いがない」

 

 青木の声も硬い。

 

「人間相手の戦い方じゃないわね」

 

 陸王が踏み込み返す。

 

 テガソードでダイスサーベルを受け流し、レオンバスター50を至近距離で撃ち込む。だが、そこでビーストは半身をずらしただけだった。掠めた弾丸の向こうで、また剣が振られる。今度は狼のような魔法弾が二つ、左右から噛みつくように迫る。

 

「ちっ……!」

 

 片方をテガソードで斬る。もう片方をレオンバスター50で撃ち落とす。だが、そこへ本命の斬撃が通る。青い胸部装甲に鋭い火花が走った。

 

 陸王が後退した。

 

 初めて、はっきり押されたのが見えた。

 

 芹亜が声にならない息を呑む。俺は無意識に、腰のテガソードへ手をかけていた。

 

 ビーストはさらに前へ出る。間合いを奪う。ダイスサーベルが跳ねるたび、今度は獣の咆哮そのものみたいな魔法弾が重なる。陸王はレオンバスター50で応戦しながらも、じりじりと押し込まれていく。

 

「おい、洒落になってねえぞ」

 

「分かってる!」

 

 陸王が吐き返す。

 

 その返事の直後、ビーストが踏み込みを深くした。ダイスサーベルの切っ先が沈む。次に来る一撃は重い。見ただけで分かる。あれをまともに喰らえば、陸王でも無事じゃ済まない。

 

 だから、俺はもう迷わなかった。

 

 センタイリングを抜く。テガソードへ装填。全身の血が、一気に戦いの方へ向いた。

 

「エンゲージ」

 

 金のテガソードが唸る。

 

 赤い光が噛みつくように全身へ走り、装甲が噛み合う。牙を剥く狼の感覚が骨の奥で目を覚ます。ゴジュウウルフ。変身を終えるより早く、俺はもう前へ出ていた。

 

「吠!」

 

 陸王の声が飛ぶ。

 

 ビーストのダイスサーベルが振り抜かれる。そこから放たれた獣型の魔法弾が、陸王へ食らいつこうとしたその瞬間、俺は横から割り込んだ。

 

 右手のテガソードを振るう。

 

 獣型の魔法弾を、真正面から断ち斬る。だが、それで終わらない。返す左手でウルフデカリバー50を引き抜き、そのままもう一発、続けて飛んできた魔法弾を撃ち砕いた。

 

 斬って、撃つ。

 

 金の刃と赤い銃剣が、連続して火花を散らす。

 

 衝撃を押し返しながら、俺はそのまま陸王の前へ滑り込んだ。

 

「悪い、待たせた」

 

 ゴジュウレオンの向こうで、陸王が短く息を吐く。

 

「いや。ちょうど一人じゃ厳しいと思ってたところだ」

 

「素直だな、お前」

 

「相手を見ればね」

 

 俺はテガソードを構え直し、ウルフデカリバー50の銃口をビーストへ向けた。

 

 ビーストは動かない。

 

 ただ、こちらを見ている。ダイスサーベルの切っ先がわずかに下がり、その沈黙自体が圧になって路地へ広がっていた。気味が悪い。今までのユニバースライダーとも違う。こいつはもっと根っこから異質だ。

 

「次は二人だ」

 

 俺が低く言うと、陸王がテガソードを握り直した。

 

「ようやく本番か」

 

「最初からそのつもりで来いよ」

 

「異世界実戦数日目にそれを求めるのは酷だろ」

 

「知らねえよ」

 

 短く言い合いながらも、視線はどちらもビーストから外さない。

 

 青い獅子と、赤い狼。

 

 その正面で、肉体を得たグレートゴーストめいたビーストが静かに立つ。

 

 ここから先は、さっきまでとは違う。

 

 一人で押し返す戦いじゃない。二人で噛みつき、二人で崩す戦いだ。

 

 ビーストのダイスサーベルが、再びゆっくりと持ち上がる。

 

 次の瞬間にはもう、俺たちは同時に地を蹴っていた。

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