ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
俺が右から踏み込み、陸王が左へ回る。
同時だった。
ビーストの視線がほんのわずかに揺れる。どっちを先に見るか、その一瞬の迷いだけで十分だった。俺は低く沈んだまま間合いへ飛び込み、テガソードを横一文字に振るう。ビーストはダイスサーベルでそれを受けた。金属音が弾ける。だが、その押し合いへ意識が向いた瞬間、反対側から陸王のレオンバスター50が火を噴く。
弾丸が、ビーストの肩口を掠めた。
そのまま押し切るつもりで、俺は左のウルフデカリバー50のトリガーを引いた。刃が唸る。鋭い斬撃の勢いを乗せたまま、下から切り上げる。二つの刃が交差し、ビーストの体勢がわずかに崩れた。
そこへ陸王が踏み込む。
青い装甲が路地を滑るように詰め、水勢剣流水が流れるような軌跡で走った。真っ直ぐ叩きつけるんじゃない。ダイスサーベルの角度を外へ流し、そのままレオンバスター50の銃口を至近距離まで押し込む。
「もらう!」
銃声。
ビーストが身を捻る。弾丸は胸部を浅く抉るに留まった。だが、距離は取らせない。俺が横から肩ごとぶつかり、ビーストを壁際へ押し込む。ウルフデカリバー50で薙ぎ、テガソードで追う。陸王がその死角を撃ち抜く。
ようやく、流れがこっちへ傾きかけた。
……そう思った、次の瞬間だった。
ビーストの剣が低く唸る。
ダイスサーベルが、今までより深く振り抜かれた。斬撃の軌跡から生まれたのは一体じゃない。獣型の魔法弾が三つ、四つ、いやそれ以上。獣の群れみたいに一斉に飛び出し、真正面から俺たちへ噛みついてきた。
「ちっ!」
俺はテガソードで一体を断ち、続けてウルフデカリバー50を振り抜いてもう一体を裂く。だが数が多い。陸王もレオンバスター50を連射して撃ち落としているが、全部は捌き切れない。
一体が陸王の脇を抜ける。
もう一体が俺の足元へ飛び込む。
同時に、ビースト本体がその後ろから来る。
「下か!」
陸王が叫ぶ。
俺は反射で飛ぶ。足元を獣型の魔法弾が食い破る。その着地へ、ダイスサーベルの突きが待っていた。受ける。重い。押される。そこへ横から別の魔法弾が滑り込んでくる。
「……っ!」
受け切れねえ!
そう思った瞬間、青い影が俺の前へ割り込んだ。陸王だ。水勢剣流水でその魔法弾を受け流し、レオンバスター50の銃身でダイスサーベルを弾く。
「借り一つだぞ、吠君!」
「いちいち数えんな!」
吐き返して、そのまま俺は前へ出る。体勢を立て直したビーストの懐へ、真正面から踏み込んだ。今度は上下だ。テガソードを高く振りかぶる。ビーストが受けに上がる。その瞬間、左のウルフデカリバー50を低く滑らせた。刃が足元を狙う。
ビーストが跳ぶ。
そこを、陸王の弾丸が待っていた。
「上はもらう!」
レオンバスター50の連射が、宙へ逃げたビーストへ噛みつく。ビーストは空中で身体を捻り、最小限の動きだけで弾を外す。だが、その間に着地点は見えた。
俺と陸王の視線が一瞬だけ交わる。
言葉はいらなかった。
着地と同時に、俺が右から斬り込み、陸王が左から撃つ。ビーストはダイスサーベルで俺の刃を受け、その反動を利用して半身だけずらした。弾丸が肩を掠める。そこへ返しの斬撃。剣からまた獣型の魔法弾が生まれる。
今度の魔法弾は、ただ飛ぶだけじゃなかった。
弧を描いた。
「曲がるのかよ!」
俺が吐き捨てる。
「ほんと、嫌な奴だな!」
陸王が言い返しながら、レオンバスター50で軌道の内側を撃つ。火花。だが一体だけだ。他の魔法弾はなおも曲がりながら、俺たちの背後へ回り込もうとする。
雪庭が後ろで声を上げた。
「二人とも! 後ろを取られる!」
分かってる。
分かってるが、目の前のビーストも止まらない。ダイスサーベルが走る。剣を振るたび魔法弾が増える。距離を取れば餌食だ。前へ出ても飲まれる。
面倒どころの話じゃねえ。
俺は奥歯を噛み、無理やり前へ踏み込んだ。ビーストの間合いの内側へ、さらに半歩。剣を振らせる前に潰す。そう決めて、テガソードを突き込む。
だが、ビーストは読んでいた。
ダイスサーベルが、俺の刃の内側へ滑り込む。受け止めるでも弾くでもない。絡め取るように軌道を殺して、そのまま肩口へ斬り返してきた。
「っ!」
火花。衝撃。装甲に一本、深い線が走る。
その横で、陸王も同時に押し返されていた。ビーストが剣を振るたびに吐き出す魔法弾が、レオンバスター50の射線を細かく潰していく。水勢剣流水で受け流しても、受け流した先へまた別の獣が来る。
「埒が明かないな!」
陸王が一度大きく後ろへ跳ぶ。
俺も舌打ちと一緒に距離を切る。これ以上そのまま噛み合えば、こっちが先に削り切られる。
ビーストは追わない。
ただ、ダイスサーベルを肩の高さで止めたまま、静かにこちらを見ている。
気味が悪い。
押しても、崩れない。効いてないわけじゃない。確かに火花は散ってる。だが、こいつ自身に“揺れ”が薄すぎる。人間ならどこかで熱が出る。焦りでも怒りでもいい。そういう乱れがまるでない。
「……ほんとに人間じゃねえな」
俺が低く呟く。
陸王も、荒い息を吐きながら視線を外さない。
「認めたくないが、その通りらしい」
ビーストの足元へ、さっき曲がっていた魔法弾がゆっくり戻っていく。まるで主のもとへ帰る獣みたいに、剣の周囲へ集まっていた。
嫌な光景だった。
その時だった。
俺の視界の端で、赤いリングが小さく光る。
……555。
前に手に入れたライダーリング。速度と鋭さ。あの冷たい直線みたいな戦い方が、今の相手には噛み合う気がした。獣の勘みたいなもんだ。
それに気づいたのは、どうやら俺だけじゃなかった。
陸王が、俺の手元をちらりと見る。
「吠君」
「何だ」
「それ、使う気か」
「使えそうだからな」
そう返すと、陸王の視線が自分の手元へ落ちた。いくつかあるリングの中から、一つを摘まみ上げる。青い意匠。鋭い輪郭。俺の555に近い印象を持ちながら、もっと空へ抜ける感じのある力。
サイガ。
「なるほど」
陸王が小さく笑う。
「僕には、こっちがしっくり来るらしい」
「空から来そうな顔してるしな」
「褒めてるのか?」
「知らねえよ」
軽口を返しながらも、視線は前から外さない。
ビーストが、再びダイスサーベルを持ち上げる。魔法弾の輪郭が、刃の周囲でわずかに揺れた。次はもっと強く来る。そう分かる。
なら、こっちも変えるだけだ。
俺は555のライダーリングを抜き、見えるように掲げた。赤い意匠が、彷霊界の薄闇の中で鋭く光る。陸王もまた、サイガのリングを構える。青い輪郭が、静かに熱を持つ。
雪庭が、後ろでわずかに息を呑んだ。
「その力を使うのか」
「ここで出し惜しみしても意味ねえだろ」
俺が言う。
陸王が肩を鳴らす。
「異世界に来てから、変身のバリエーションだけは無駄に増えるな」
「文句言うならやめるか?」
「まさか」
口元だけで笑って、陸王はサイガのリングを見下ろす。
「こういうの、嫌いじゃない」
「だろうな」
「吠君と並んでライダーに変身する日が来るとは思わなかったけど」
「俺だって思ってねえよ」
「でも、ちょっと面白い」
「勝ってから言え」
「じゃあ、勝ってからもう一回言おう」
そんなやり取りの間にも、ビーストの圧は少しも揺らがない。
だから、俺たちは同時に動いた。
テガソードへリングを装填する。金の刃が低く唸る。俺の手の中の555が、赤いフォトンブラッドの気配を滲ませた。陸王のサイガも、青い光を内側へ溜めていく。
短く、息を吸う。
「エンゲージ」
俺と陸王の声が重なった。
次の瞬間、音声が路地へ響く。
『ライダーリング!仮面ライダー555!』
『ライダーリング!仮面ライダーサイガ!』
赤。
青。
二つのフォトンブラッドが、夜の薄闇を裂くように走った。555の赤い光が俺の全身を直線的になぞり、装甲の輪郭を鋭く描き出していく。サイガの青い光は、陸王の周囲で空を切り裂くみたいに奔り、より高い位置から包み込むように形を整えた。
光が収束する。
赤い555へエンゲージしたゴジュウウルフ。
青いサイガへエンゲージしたゴジュウレオン。
二人が並び立つ。
その向こうで、ビーストが初めてほんのわずかに剣先を揺らした。
俺は赤い光の残滓を踏みつぶすみたいに一歩前へ出る。
「次は、こっちが噛み砕く」
陸王が青い装甲越しに、静かに息を吐いた。
「空も地上も、全部塞ぐ」
ダイスサーベルが構え直される。
俺たちも、もう一度踏み込む。