ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
赤と青のフォトンブラッドが、彷霊界の薄闇を切り裂いた。
仮面ライダー555へとエンゲージした俺の装甲に、赤い光の線が走る。視界が鋭くなる。脚へ伝わる反応速度が、一段上がる。ただ速いだけじゃない。地面を蹴る一歩ごとに、獲物までの最短距離がはっきり見える。
隣では、陸王がサイガの青い光を纏っていた。
サイガ特有の鋭い輪郭が、ゴジュウレオンの青と噛み合っている。空へ抜けるような機動力と、もともとの獅子じみた圧が、妙に自然に一つになっていた。
「上、もらう」
陸王が短く言う。
「地上は俺だ」
返した瞬間、俺たちは同時に地を蹴っていた。
俺は低く沈む。555の加速で一気に間合いを潰し、ファイズエッジを逆手気味に抜いた。赤い刃が光る。正面から噛みつくみたいに、ビーストの懐へ飛び込む。
ビーストがダイスサーベルを振るう。
そこから、また獣型の魔法弾が生まれた。牙を剥いた影が、俺の顔面へ喰らいつこうと走る。だが、その一体より先に、頭上から青い閃光が落ちた。
サイガの射撃。
陸王の放った高威力の一撃が、魔法弾を空中で撃ち砕く。火花が散る。その死角へ、今度は俺のファイズエッジが食い込んだ。
「もらった!」
横薙ぎ。
ビーストがダイスサーベルで受ける。金属音が路地へ爆ぜる。だが、押し合いへ入る前に身体を捻る。剣を絡めるように滑らせて、肘を叩き込む。さらに足を払うように蹴りを入れる。555の格闘は、こういう近すぎる距離で生きる。
ビーストの体勢が、ほんの少しだけ傾いた。
そこへ陸王が上空から切り込む。
フライングアタッカーの機動で急降下したサイガが、ビーストの背へ回り込んでいた。青い軌跡が夜の空気を裂き、陸王の手に握られたトンファーエッジが横殴りに叩きつけられる。
「後ろだ!」
ビーストが咄嗟に身を捻る。
避け切れない。肩口へ衝撃が入る。そこへ俺がさらに踏み込み、ファイズエッジを返した。連続。斬る、打つ、蹴る。近距離のラッシュを途切れさせない。
だが、ビーストはやはりそれだけで崩れない。
ダイスサーベルが低く唸る。俺の剣をいなし、その返しでまた別の魔法弾を放つ。今度は狼みたいな影が二つ、左右から噛みついてきた。
「ちっ!」
右をファイズエッジで斬る。左は、拳で叩き落とすように逸らす。だが、その着地へ本命の斬撃が滑り込んできた。
速い。
しかも、やっぱり躊躇がない。
「吠君!」
陸王が叫ぶ。次の瞬間にはもう、サイガの青い影が俺の横を抜けていた。高空からではなく、地面すれすれの軌道で回り込み、ビーストの剣筋へ横からトンファーエッジを叩き込む。
軌道がずれる。
その一瞬で俺は半歩踏み込み直し、ファイズフォンをブラスターへ変えて撃った。赤い一発が、ビーストの胸元を掠める。
「悪くない」
陸王が言う。
「お前もな」
短く返す。
軽口はそれだけだった。
ビーストが後ろへ退く。だが、その足は止まらない。ダイスサーベルが今度は小さく、細かく何度も振るわれた。斬撃が浅い。けれど、そのたびに小型の魔法弾が次々生まれ、群れみたいに俺たちを囲う。
「数で来るかよ……!」
俺が吐き捨てる。
「こっちはこっちで数を合わせる!」
陸王が一気に上昇する。サイガの飛行能力で高度を取り、そのまま上空から連射した。青い弾丸が、囲もうとした魔法弾の群れへ降り注ぐ。何発かが空中で弾ける。だが全部は落としきれない。
俺は前へ出るしかない。
地上に残った魔法弾の群れへ突っ込み、ファイズエッジで薙ぎ、蹴りで弾き、最短距離でビースト本体へ肉薄する。俺が近づき続ける限り、あいつは剣で対処せざるを得ない。なら、空の陸王が自由になる。
ビーストが、その意図を読んだのか、急に俺ではなく頭上を見る。
「見てろよ!」
俺は叫び、その視線を無理やり引き戻すように、ファイズショットを叩き込んだ。拳が光る。零距離の一撃が、ビーストの胴を揺らす。
その隙に、陸王が背後上空へ回り込んでいた。
「もらう!」
急降下。
サイガのトンファーエッジが、ビーストの背中へ縦に叩きつけられる。衝撃。ついにビーストの身体が大きく前へ流れた。
今だ。
俺と陸王が同時にそう思ったのが分かる。
俺は距離を切りながら、右足へ意識を集めた。ファイズポインター。赤い光が脚部へ満ちる。陸王もまた、サイガの青い光を全身へ巡らせていた。空を裂くみたいな高密度のエネルギーが、装甲の奥で脈打つ。
ビーストが顔を上げる。
まだ立っている。まだ終わっていない。ダイスサーベルの切っ先が持ち上がり、その周囲へ、これまでで最大の獣型魔法弾が集まり始めた。獅子。狼。鳥。獣の群れが一つの咆哮へまとまりつつある。
「来るぞ!」
雪庭の声が飛ぶ。
青木が芹亜を庇うように一歩前へ出る。
だが、もう遅い。
ここで決める。
俺と陸王は同時に動いた。
『Ready』
音声が響く。
赤と青のフォトンブラッドが、それぞれの装甲を激しく巡る。
『Exceed Charge』
空気が震えた。
俺は走る。
555の赤い光を引きながら、真っ直ぐビーストへ。視界の先で、魔法弾の群れが咆えるように膨れ上がる。関係ない。ぶち抜くだけだ。
陸王は空から落ちる。
サイガの青い光を纏ったまま、高度を活かして真上から一直線。フライングアタッカーの軌道が、そのまま処刑線みたいに空を切り裂いた。
「ぶち抜く!」
俺が吠える。
「空ごと落とす!」
陸王の声が重なる。
ビーストがダイスサーベルを振り下ろし、巨大な魔法弾の群れを解き放った。
その瞬間、俺はクリムゾンスマッシュへ入る。
赤い軌跡。
一直線の跳び蹴り。
ビーストの正面を、魔法弾ごと貫く。
同時に、陸王のコバルトスマッシュが落ちた。
青い光をまとった急降下が、上空からビーストを叩き潰す。赤と青。二つの必殺技が、ちょうど一点で交差した。
轟音。
彷霊界の空気が爆ぜる。
獣型の魔法弾が、まとめて砕け散る。赤いフォトンブラッドと青いフォトンブラッドが、爆煙の中で複雑に絡みながら弾けていく。まるで夜の中に、二色の雷が同時に落ちたみたいだった。
俺は地面へ着地し、その勢いのまま片膝をつく。
陸王も少し遅れて着地する。青い残光が足元に散った。
爆煙の向こうで、何かが軋む音がした。
ビーストだ。
立っている。だが、もう最初の静けさはない。ダイスサーベルを支えにするように身体を揺らし、装甲の各所に赤と青の裂け目みたいな光が走っていた。中にあるものが、形を保てなくなっているのが分かる。
「終わりだ」
俺が低く言う。
陸王が横へ並ぶ。
「さすがに、今ので倒れてくれないと困るな」
ビーストが一歩だけ前へ出ようとした。
そこで、胸の中央が弾けた。
赤と青の光が、内側から一気に噴き上がる。遅れて全身に走ったひびが広がり、装甲ごとビーストの姿が崩れていった。獣の輪郭を保っていた気配が、霧みたいにほどけていく。
人間ではない何かが、最後にこちらを見た気がした。
けれどその瞬間にはもう、それは光の粒になって彷霊界へ溶けていた。
静けさが落ちる。
俺は立ち上がり、息を吐いた。
「……ようやく終わったか」
「なかなか骨があったな」
陸王が肩を回す。サイガの光が少しずつ薄れていく。
後ろで、芹亜がようやく息を吐くのが聞こえた。雪庭も青木も、すぐには何も言わない。ただ、今の戦いの余韻だけが、しばらくその場に残っていた。
俺は横目で陸王を見る。
「勝ってから言うこと、あっただろ」
陸王が一瞬だけ目を丸くしてから、少し笑う。
「ああ」
それから、さも当然みたいに言った。
「やっぱり、ちょっと面白かった」
「……ほんとお前は」
呆れて言いかけて、最後までは続かなかった。
悪くない。
そう思ってしまったからだ。