ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
黄金の門の光が、まだ空中に薄く残っていた。
そこから現れた禽次郎は、場違いなくらい軽い調子で笑っているくせに、目だけはもう戦場を見ていた。俺たちと斬月、その足元を埋める怨霊の群れ、そして後ろで息を詰めている芹亜。ひと目で全部を呑み込んだらしい。
「おーおー、ずいぶん切羽詰まってんじゃねぇか!」
「……禽次郎!」
呼んだ時には、少しだけ喉が熱くなった。
斬月は無言のまま剣を構え直す。気配が細く張る。あっちにとっては、乱入者が一人増えた程度のことなんだろう。だが、こっちにとっては違う。
来た。
それだけで、流れが変わる気がした。
「だったら、まずは景気よく行くか!」
禽次郎が笑う。次の瞬間、その身体が跳ねた。
『ウォーオオッオー!オー!ゴジュウイーグル!ウォーオオッオー!オー!オー!』
響き渡った変身音と共に、禽次郎の姿がゴジュウイーグルへと変わる。緑の光が弾け、背から大きく翼が開いた。派手だ。派手なくせに、動き出した瞬間にはもう無駄がない。
「来たか……!」
俺が呟くのと同時に、ゴジュウイーグルはそのまま上空へ舞い上がった。
翼が空気を裂く。彷霊界の鈍い空を、鋭い緑が一直線に駆ける。上を取った瞬間、イーグルシューター50が構えられた。
「ほらよ、空から失礼っと!」
矢が降った。
雨みたいだった。けれど、一発ごとに狙いがある。斬月の肩口、足元、逃げ場になる位置、その全部を読んで空から縫っていく。上からの射線に、俺と陸王、それから竜儀の圧まで重なる。
「今のは効いてるな」
陸王が低く言う。
実際、初めて斬月の足がわずかに止まった。無双セイバーが上を向く。短く、鋭く、矢を斬り払う。一本、二本、三本。だが、上からの矢は消えない。切っても切っても、次の射線が降ってくる。
「なら押す!」
俺は地を蹴った。
怨霊を斬り払い、その隙間を縫って斬月へ踏み込む。横から竜儀がティラノハンマー50を振り上げ、陸王の射撃が後ろから重なる。さらに上から禽次郎の矢。四方から圧がかかる。
普通なら崩れる。
だが、斬月はやっぱり斬月だった。
地面へ突き立てていたメロンディフェンダーを、あいつは一瞬だけ踏み台にした。
その動きが見えた時には、もう遅い。
「――っ!」
斬月の身体が、常識外れの角度で上空へ跳ねた。盾を踏み、足場にし、その勢いのままイーグルへ届く。重装の見た目からは信じられない跳躍だった。
「うおっ、そっち来る!?」
禽次郎の声が裏返る。
無双セイバーが空中で閃く。ゴジュウイーグルがイーグルシューター50を返して受ける。火花が散った。空中でぶつかった一撃の重さに、禽次郎の身体が大きく流される。翼で踏ん張るが、完全には押し返せない。
斬月は、ただ上へ届いただけじゃない。届いた先でちゃんと斬っている。
「空すら制するか」
竜儀が低く言う。
「やっぱり楽はさせてくれないな」
陸王が息を吐く。
禽次郎はどうにか態勢を立て直し、そのまま大きく旋回して俺たちの近くへ戻ってきた。着地の足取りはまだ軽い。だが、受けた一撃の重さは隠しきれていない。
斬月も、もう地へ降りている。
無言のまま。息ひとつ乱さず。上からの攻撃すら、自分の剣の延長で処理したみたいな顔をしていた。
気に入らねえ。
だが、強い。
「……このままじゃ押し切れねえな」
俺は吐き捨てるように言って、手元へ意識を落とした。
ある。
今使うべきものが。
斬月が次の一歩を踏み出すより先に、俺は腰からギャレンのライダーリングを引き抜いた。
「せっかくだ、やるぞ!」
そのまま、禽次郎へ投げる。
緑の身体が反射みたいに手を伸ばす。回転しながら飛んだリングを、禽次郎は空中で綺麗に掴んだ。
「へぇ、吠君らしいね」
その声音に、陸王が笑う。
「どうする、竜儀?」
「勿論」
竜儀は、もう答えを決めていたみたいに頷いた。
「これもまたテガソード様の導き。よろしいですか、禽次郎さん」
「了解! せっかくだから、盛り上がって行こうか」
芹亜が、後ろで息を呑む。
「四人で……!」
斬月が、そこで初めてほんのわずかに足を止めた。
いや、止まったように見えただけかもしれない。だが、それで十分だった。こっちの空気が切り替わるのに、もう一拍もいらなかった。
俺たちは、それぞれ手にしたライダーリングを掲げる。
吠――ブレイド。
禽次郎――ギャレン。
陸王――カリス。
暴神――レンゲル。
四つの力が、戦場の真ん中で揃う。
「「「「エンゲージ!」」」」
声が重なった。
テガソードへリングを装填する音が、立て続けに鳴る。
『ライダーリング!ブレイド!TURNUP!』
俺の前に青い光の壁が立ち上がる。刃のように切り立ったエレメントが、まっすぐ行く先を示していた。
『ライダーリング!ギャレン!TURNUP!』
禽次郎の前にも、赤い輝きが展開する。ブレイドと同じ型なのに、色も圧も違う。もっと熱く、もっと撃ち出すための壁だった。
『ライダーリング!カリス!CHANGE』
陸王の周囲だけ、光の質が変わる。滑るみたいに、変質するみたいに、異質な力がその輪郭を包んでいく。
『ライダーリング!レンゲル!OPENUP!』
竜儀の前では、重く濃い光が裂ける。開く、というより迫るような変身だった。さすがに似合いすぎて腹が立つ。
「こういうの、嫌いじゃない」
陸王が笑う。
「いやさか……」
竜儀は妙に厳かな声を漏らし、
「上がってきた!」
禽次郎はそのままの勢いで笑った。
「黙って集中しろ」
俺は言い返しながらも、胸の奥が熱くなるのを止められなかった。
変身が重なる。
青。赤。緑。紫。
四つの光が戦場へ柱みたいに立ち上がり、それぞれ別の形で身体を包んでいく。
怨霊どもがざわめく。斬月は無言のまま剣を構えている。白い装甲が、揺れる四色の光を受けて冷たく光った。
ブレイド。
ギャレン。
カリス。
レンゲル。
変身が完了する頃には、さっきまで押され続けていた空気はもう消えていた。
俺たちは並び立つ。
正面には、なおも無言の斬月。
後ろでは、芹亜がその背中を見て小さく息を吐く。
「……行ける」
その声が、妙にはっきり聞こえた。
俺は剣を握り直す。
「ここからだ」
彷霊界の空気が、ぴんと張った。
決着は、次だ。