ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
変身を終えた瞬間、戦場の見え方が変わった。
ブレイドの装甲越しに見る彷霊界は、さっきまでより輪郭が鋭い。怨霊の揺らぎも、斬月の立つ位置も、その足元に溜まった殺気の流れまで、薄く線になって見える気がした。
隣では、ギャレンとなった禽次郎が肩を回している。赤い装甲の奥で、いつもの軽さを残したまま笑った。
「おっ、これいいな。火力が素直だ」
「遊ぶなよ」
「分かってるって。そういう空気じゃねえし」
反対側で、カリスとなった陸王が静かに身を沈める。弓でもあり、刃でもある異形の武器が、その手の中でひどく似合っていた。さらに少し離れて、レンゲルの姿になった竜儀が、祈るみたいにラウザーを構える。
「いやさか。では、参る」
正面では、斬月が相変わらず無言だった。
白い装甲も、無双セイバーも、地に刺さったメロンディフェンダーも、何ひとつ揺れていない。こっちの人数が増えたからって、怯んだ気配も、焦った気配もなかった。
気に入らねえ。
「行くぞ!」
俺が踏み込む。
ほとんど同時に、戦場が動いた。
最初に前へ出たのは俺と竜儀だった。真正面から圧をかける。ブレイラウザーを抜き、さらに手に馴染んだもう一振りを重ねる。二刀。重心を低くして、一気に斬月の間合いへ潜り込んだ。
最初の斬撃を斬月が受ける。いや、受けたんじゃない。流した。二撃目を返す前に、三撃目を差し込む。右、左、下段。止まらず刻む。ブレイドの剣筋に、俺自身の食らいつくような踏み込みをそのまま乗せる。
だが、届かない。
無双セイバーが短く閃くたび、俺の刃はほんのわずかに角度をずらされる。手数はこっちが多い。なのに、攻めの線だけを選んで切られていく。
「ちっ……!」
斬月の肩口を狙った一撃が、紙一重で流される。その下を、今度はティラノハンマー50が唸って通った。
竜儀だ。
レンゲルのラウザーを握っていたはずなのに、今の動きには元の重さが残っている。突進する。踏み込む。そのまま前線へ身体ごとねじ込んで、斬月の足場を奪いにいく。
同時に、ラウズカードが走った。
氷めいた気配が地を這う。
斬月の足元へ冷気が広がり、一瞬だけ動きの芯が鈍る。そこを狙って、俺は再び入る。さらに、後ろから陸王の一撃が重なった。
カリスアローの光弾が、風を裂いて横合いから飛ぶ。
斬月はそちらへ半歩退く。だが、その退路へもう一発。角度を変えた二射目が待っている。陸王は撃ち終わったと思わせておいて、もう次の位置へいる。弓の間合いと刃の間合いの境目が読めない。射撃で追い、踏み込み、また離れる。その切り替えが速い。
「そこ、空いてるよ」
軽い声と同時に、今度は上から火線が落ちた。
ギャレンになった禽次郎が、上空から撃っている。
赤い弾道が何本も尾を引いて、斬月の周囲へ縫い込まれる。ただの牽制じゃない。逃げ道を狭める撃ち方だ。上から見てるから分かるんだろう。俺たちが詰めた位置、その外側、そのさらに一歩後ろ。斬月が使いそうな空間だけを、正確に焼いていく。
「……!」
斬月が初めて、大きく身をずらした。
そこだ。
俺は即座にカードを切る。
マッハ。
脚が軽くなる。違う。世界の方が一瞬だけ遅くなる。踏み込みが一歩、いや半歩短くなるだけで、もう斬月の剣の外側へ入れる。
一気に懐へ。
ブレイラウザーで下から斬り上げ、もう一振りで首筋を狙う。斬月はそれすら無双セイバー一本で受け切った。火花が散る。剣圧がぶつかる。近い。近いのに、まだ中心へ届かない。
「速ぇな」
禽次郎が上から笑う。
「でも、いい感じじゃん!」
「喋ってる暇があるなら撃て!」
「了解!」
ギャレンラウザーがまた火を噴く。
今度は連射だった。ばら撒くんじゃない。一定の間隔で、斬月の剣を動かさせるためだけに撃つ。一本目を斬れば、二本目で腕が上がる。二本目を避ければ、三本目で足が止まる。禽次郎の射撃は軽そうに見えて、やることは妙に細かい。
斬月がメロンディフェンダーへ手を伸ばす。
だが、その瞬間に陸王が動いた。
カリスアローが弓から双刃へ変わる。横から入る。風みたいに距離を潰して、盾へ触れるより先に斬月へ圧をかける。
「盾に頼るには、少し早いんじゃないか?」
斬月の白い装甲がわずかに傾く。
そこへ、竜儀がさらにラッシュを重ねた。
レンゲルラウザーが唸る。伸びる。絡む。まるで祈りの言葉を押しつけるみたいに、突進の勢いと一緒に斬月の動線へ割り込んでいく。真正面から殴り合うんじゃない。逃げ場になる位置へ先に立って、斬月の剣を一拍遅らせる。
「今だ、吠!」
言われるまでもない。
俺はさらに踏み込む。
斬月の剣が来る。見える。さっきまでより、少しだけ。その“少し”があれば十分だ。マッハの残り香を脚へ残したまま、刃の外へ身体を滑らせる。
掠める。
白い装甲の脇を、俺の刃先が初めて浅く裂いた。
「入った!」
思わず声が出る。
だが、その瞬間、斬月の気配が変わった。
低い。
いや、沈んだんじゃない。もっと深い場所へ落ちたみたいな、ぞっとする静けさが生まれる。次の瞬間、無双セイバーが閃いた。
速い。
いや、違う。無駄がひとつ消えただけだ。なのに、一気に間合いが詰まる。
「っ!」
受ける。受けきれない。衝撃が腕を抜ける。吹き飛ばされかけたところへ、今度はメロンディフェンダーが跳ね上がった。地から抜かれた盾が、回転しながら陸王へ飛ぶ。
「おっと」
陸王が後ろへ跳ぶ。
その空いた空間を、斬月は迷わず取った。こっちを捌くだけじゃない。四人の立ち位置の、いちばん薄いところへ一瞬で入ってくる。
厄介だ。
だが、四人になった今は、それで終わらない。
「そこだ!」
禽次郎の射撃が、斬月の進路を横から切る。火線が足元を舐めるように走る。斬月が半歩止まる。その半歩へ、今度は竜儀の冷気が重なる。足場が凍りきる前に、陸王が風を裂いて横から斬り込む。
そして俺は、その全部の中心へもう一度入る。
正面からぶつかるんじゃない。今は違う。
竜儀が止める。
陸王が乱す。
禽次郎が閉じる。
その一瞬だけ、俺が刺し込む。
それでいい。
ブレイラウザーを握る手へ、もう一枚カードを滑らせる。剣筋が軽くなる。速度が乗る。踏み込みが獣みたいに低くなる。
斬月の視線が、初めて完全に俺へ向いた。
望むところだ。
俺は地を蹴る。
怨霊のざわめきも、芹亜の息を呑む気配も、全部遠い。今はただ、あの白い剣士の中心だけを見る。
入る。
斬る。
まだ倒れない。
なら、もう一歩だ。
上では禽次郎がなおも撃っている。横では陸王が風みたいに回り込み、後ろでは竜儀がレンゲルラウザーを握り直していた。
四人の呼吸が、ようやくひとつの形になり始める。
斬月の剣が返る。
俺の刃がそれを迎える。
その外から、陸王の一撃。
さらに上から、禽次郎の炎弾。
竜儀の足が、地を砕くように踏み込む。
この一撃で、流れが決まる。