ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

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ナンバーワンチームバトル!

 買い出しから戻ったあと、俺と朱莉は見たものをそのまま話した。

 

 路地裏で倒れていたユニバースライダー。そいつからライドウォッチを取り上げた金髪の男。銭山願之介。MiucSリベンジャーズを率いると言い、自分を王みたいに扱っていた男のことを、俺はできるだけ余計な言葉を足さずに伝えた。

 

 余計な言葉を足さなくても、場の空気は十分に重くなった。

 

「家臣、ね」

 

 陸王が縁側に腰を掛けたまま、薄く笑う。いつもの軽さはあるが、目の奥は笑っていない。

 

「ずいぶん古風な誘い方をするんだね」

 

「誘いって感じじゃなかったけどな。あれは、もう自分の下に入る前提で喋ってた」

 

 俺が言うと、朱莉も小さく頷いた。

 

「嫌な相手だった。MiucSと戦うって言えば聞こえはいいけど、守る側の顔をして、相手を下に置いてる」

 

「いやさか。王を名乗ること自体を咎めるつもりはありません。されど、他者の意志を家臣という言葉で覆い隠すならば、それは導きではなく支配です」

 

 竜儀は腕を組み、珍しく最初から低い声だった。

 

 禽次郎は、湯呑みを両手で包むように持っている。今は老人の姿だ。さっきまでの話を茶化すことなく聞いていたその顔には、怒りより先に、何かを噛みしめるような色があった。

 

「奪われた者が怒るのは分かる。MiucSに大切なものを持っていかれたなら、なおさらな」

 

「けど、あいつらは止めるんだろ」

 

 俺が確認すると、禽次郎は静かに頷いた。

 

「もちろんだ。痛みがあるからといって、別の誰かを縛っていい理由にはならん」

 

 芹亜は少し俯きながら聞いていた。歌を奪われた人達を見てきたからこそ、リベンジャーズの怒りを簡単に否定できないのだろう。それでも、彼女は顔を上げた。

 

「奪われた人達の気持ちは、分からないとは言えません。でも、それで誰かの自由を奪っていいとは思えません」

 

 青木さんも穏やかな表情のまま、膝の上で手を重ねる。

 

「止めることも、相手を見捨てない方法の一つですね」

 

 その言葉で、一度だけ場が静かになった。

 

 外では、風が木を揺らしている。寺とも神社ともつかないこの場所の日常は続いているのに、銭山の言葉だけが路地裏からここまで付いてきたみたいだった。王。家臣。統治。聞けば聞くほど、胸の奥でざらつく。

 

 その時、雪庭がふと顔を上げた。

 

 何かを見るというより、空気の変わり目を感じ取るような仕草だった。俺たちも自然と黙る。雪庭は目を細め、境内の方へ視線を向けた。

 

「……どうやら、さっきまで話していた奴らが来たそうだ」

 

「あいつら、もう来やがったのか」

 

 俺は立ち上がる。

 

 陸王も、笑みを消さないまま腰を上げた。

 

「随分せっかちだね」

 

「いやさか。招かれずとも現れるとは、余程の自信があるのでしょう」

 

 竜儀がゆっくりと前へ出る。

 

 禽次郎は湯呑みを置き、肩を軽く回した。老人の姿のままなのに、その動きには戦い慣れた余裕がある。

 

「王様気取りの相手らしいからね。待たせるより、押しかける方が好みなのかもしれないな」

 

 俺たちは境内へ出た。

 

 そこに、もう奴らはいた。

 

 銭山願之介を中心に、五人の男女が並んでいる。金色の長い髪を背へ流した銭山は、前と同じように余裕のある顔で立っていた。その右側には、腰近くまで伸びる銀髪と赤い瞳の女。銭山を見る目に、敬意以上の熱がある。反対側には、獣みたいな鋭い目をした男と、その近くに立つ若い男。さらに少し離れて、透き通るような肌と金色の瞳を持つ青年が、こちらを静かに見ていた。

 

 最初から五人。

 

 ただの挨拶に来たわけじゃないのは、見れば分かる。

 

「遠野吠。昨日の答えを聞きに来た」

 

 銭山が口を開く。

 

「勝手に来といて随分偉そうだな」

 

「王が家臣候補を迎えに来た。それを偉そうと呼ぶなら、好きに呼べ」

 

「呼ぶに決まってんだろ」

 

 俺が睨むと、銀髪の女が一歩前へ出た。

 

「銭山様は、あなた方に道を示しておられるのです。無下にするには惜しい機会ですよ」

 

 声は丁寧だ。けれど、こっちを見る目には容赦がない。

 

「お前は?」

 

「重音黒亞。銭山様の右腕です」

 

「右腕ね」

 

 陸王が軽く首を傾げる。

 

「道を示す、か。ずいぶん一方通行に見えるけど」

 

「進むべき道を知らぬ者には、導きが必要です」

 

「導きって言葉で縛るの、便利だね」

 

 黒亞の赤い瞳が陸王へ向いた。

 

 その横で、金色の瞳の青年が静かに口を開く。

 

「MiucSを止めるには、曖昧な善意だけじゃ足りない。変えられる力を持つ者が、変えなきゃいけないんだ」

 

「力を持った者が全部決める、か」

 

 禽次郎が肩をすくめる。

 

「年寄りからすると、あまり面白くない話だね」

 

「面白いかどうかじゃない。必要かどうかだ」

 

 青年の声には、迷いのない正義感があった。だからこそ厄介だ。銭山だけが危ないわけじゃない。こいつら全員が、自分たちのやり方に理由を持っている。

 

 銭山は俺たちの反応を見渡してから、ゆっくりと両手を広げた。

 

「目的は同じだ。お前たちもMiucSと戦う。俺たちもMiucSと戦う。ならば我が家臣となれ。MiucSを討ち、奪われぬ世界を作る側に立て」

 

 その声は、ただの勧誘にしては重すぎた。断られることも、受け入れられることも、すべて自分の盤上にあると思っている声だった。

 

 俺は一歩前に出る。

 

「目的が一緒だろうと、てめぇみたいな奴は気に入らねぇんだよ!」

 

 銭山の眉が、わずかに動く。

 

 陸王が俺の横へ並んだ。

 

「確かに目的は一緒だけど、吠君と一緒に気に食わないね」

 

「私が敬うのはテガソード様だけ。そして、あなた方に従う道理もなし」

 

 竜儀の声には迷いがない。

 

 禽次郎も一歩前に出て、軽く笑った。

 

「君達といても、面白くないからね。何よりも、僕も同じ気持ちだ」

 

 銭山は黙って聞いていた。

 

 黒亞の空気が鋭くなる。獣みたいな男、森元刃牙だろうか、その男の喉から低い唸りが漏れた。若い方の森元広輝は無言のまま、こちらを睨んでいる。宝星と呼ばれるだろう青年も、指先をわずかに動かした。

 

 俺は、全員の前で言い切った。

 

「ようするに、俺達ははぐれ者であり、お前達に収まるつもりは毛頭ない!」

 

 その瞬間、銭山が笑った。

 

 怒ったわけじゃない。むしろ、少し楽しそうだった。自分に従わない相手を見つけた王が、戦の価値を見出したみたいな笑みだった。

 

「ならば、はぐれ者の牙とやらを見せてみろ」

 

 リベンジャーズの五人が、同時に戦闘態勢へ入る。

 

 銭山の手にはオーズのライドウォッチ。黒亞はXの力を、刃牙はアマゾンの殺気を、広輝はアマゾンオメガの異質な気配を、宝星はガッチャードの錬成の気配をそれぞれ滲ませている。

 

 こちらは四人。

 

 それでも退く気はなかった。俺が前へ出ようとした、その時だ。

 

「ちょっとあんた達! こんな所にいたの!」

 

 空間が、金色に裂けた。

 

 黄金のゲートが境内に開き、その中から一河角乃が堂々と歩いてくる。こっちが戦闘直前だろうと関係ないと言わんばかりの顔で、髪を払うようにして俺たちを見た。

 

「角乃!」

 

「いいタイミングだね」

 

 陸王が笑う。

 

「いやさか。これもテガソード様の導き」

 

「何でもかんでも導きにしないでくれる?」

 

 角乃は竜儀を一瞥してから、リベンジャーズの五人へ視線を移した。

 

 さすがに向こうも一瞬、動きを止めた。黒亞は目を細め、宝星は黄金のゲートを観察するように見ている。刃牙は低く身構え、広輝は角乃の位置を確認した。銭山だけは、面白そうに笑みを深める。

 

「一河角乃。これで五人、ということか」

 

 黒亞が言うと、角乃は鼻で笑った。

 

「ええ。これで数の言い訳はなくなったわ」

 

「面白い。舞台は五対五に整った」

 

 銭山がそう言った直後だった。

 

 今度は、どこからともなく声が響いた。

 

「いざ掴め! ナンバーワァーーーーンッ!!」

 

 応援団の声だ。

 

 突然の大音量に、リベンジャーズ側の何人かが明らかに反応を遅らせた。黒亞は眉をひそめ、宝星は「何だ、これは」と呟き、刃牙は敵意を向ける相手を一瞬迷った。芹亜たちも後方で驚いている。事情を知っている俺たちでさえ、毎回この勢いには慣れない。

 

「来たか」

 

 俺はテガソードを構える。

 

 陸王、竜儀、禽次郎、角乃もそれぞれ構えた。

 

 空気が変わる。さっきまで銭山が支配していた場に、俺たちの戦いの音が割り込んでいく。

 

「はぐれ一匹、ゴジュウウルフ!」

 

 俺の身体を赤い光が包み、狼の力が形を取る。

 

「僕はみんなのゴジュウレオン!」

 

 陸王の周囲に獅子の気配が立ち上がる。

 

「怪力伝道師、ゴジュウティラノ!」

 

 竜儀が両腕を広げ、巨大な力を受け止めるように変身する。

 

「チャララっと行こうよ、ゴジュウイーグル!」

 

 禽次郎の背に翼の輪郭が広がる。

 

「ハイクラス&ラグジュアリー、ゴジュウユニコーン!」

 

 角乃が優雅に腕を払うと、白く鋭い光が彼女を包んだ。

 

 五人の装甲が揃い、俺たちはリベンジャーズの前に並ぶ。

 

「我ら、ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー!」

 

 名乗り終えた瞬間、銭山が静かにライドウォッチを起動した。黒亞、刃牙、広輝、宝星も続く。それぞれのユニバースライダーの力が立ち上がり、境内の空気がさらに重くなる。

 

「よかろう」

 

 銭山の声が響く。

 

「ならばこの場で決めよう。どちらの願いが、ナンバーワンにふさわしいか」

 

「上等だ。てめえらの王様ごっこ、ここで止める」

 

 俺が言うと、応援団の声が高らかに重なった。

 

「ナンバーワンバトル! レディ・ゴー!」

 

 その掛け声と同時に、五対五の戦いが始まった。

 

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