ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

66 / 69
対峙する赤の力

「ナンバーワンバトル! レディ・ゴー!」

 

 応援団の声が境内に響いた瞬間、空気が弾けた。

 

 先に動いたのは、こっちだった。俺は地面を蹴り、迷わず銭山へ突っ込む。あいつは一歩も下がらず、手にしたライドウォッチを起動した。三つの色が重なるような光が、銭山の身体を包む。

 

『オーズ!』

 

 赤と黄と緑の装甲。胸の丸い紋章。仮面ライダーオーズ。

 

 銭山はその姿になっても、立ち方ひとつ変えなかった。王様気取りの余裕を、鎧の上からでも隠そうとしない。

 

「銭山ァ!」

 

「来い、狼。王に牙が届くか試してやる」

 

 俺の拳を、銭山は腕で受けた。受けたはずなのに、衝撃が逃げる。押し込もうとした瞬間、横から足が飛んできた。俺は肩で受けて踏みとどまり、すぐに爪を振るう。銭山は身体を捻ってかわし、次の瞬間には色が変わっていた。

 

 速い。

 

 いや、ただ速いだけじゃない。こっちが詰めようとすれば軽く動き、力で押そうとすれば重く受ける。俺の出方に合わせて、身体ごと戦い方を変えてくる。

 

「戦場を見よ。己の牙だけで勝てると思うな」

 

「てめぇ……戦い方まで人に押しつけてくんのかよ」

 

 腹の奥がざらつく。

 

 強いとか、速いとか、そういう話じゃなかった。俺がどう動くかを見てから、こいつは勝手に答えを置いてくる。お前はここまで。お前の攻めはこう潰す。そう言われているみたいで、気に入らない。

 

 少し離れた場所では、陸王が黒亞と向かい合っていた。

 

 陸王はいつも通り、軽く笑っている。けれど、その動きは慎重だった。ゴジュウレオンの足運びで黒亞の横へ回り込み、隙を作るように攻撃を差し込む。黒亞は大きく動かない。赤い瞳で陸王を見据え、腕を交差させるように振った。

 

 X字の光が走った。

 

 陸王の攻撃が、触れた瞬間に弾き返される。返ってきた衝撃を陸王は身を沈めて逃がしたが、完全には殺しきれない。足元の砂が跳ね、陸王の身体が半歩下がった。

 

「交差の前では、あなたの攻撃はすべて帰ってきます」

 

「厄介だね。口説くにも、殴るにも、隙がない」

 

「戯言で銭山様への忠義が揺らぐとでも?」

 

「そこまで自惚れてはいないよ。ただ、硬すぎる盾は角度を変えれば割れると思ってね」

 

 陸王は言いながら、また角度を変える。けれど黒亞は揺れない。言葉にも、動きにも。銭山の隣に立つと決めた人間の足元は、思ったよりずっと固かった。

 

 反対側では、竜儀と刃牙がぶつかっている。

 

 刃牙は変身と同時に、獣そのものになった。アマゾンの姿で地面を掴むように低く構え、喉の奥から唸りを漏らす。その声が響くたびに、空気の中に見えない牙が増えていくようだった。

 

「獣は強い牙に従う」

 

 刃牙が吠えた。

 

 次の瞬間、爪が竜儀へ叩き込まれる。竜儀はゴジュウティラノの怪力で受け止めた。腕と腕がぶつかり、地面が軋む。竜儀の足が砂利を削りながら後ろへ滑った。

 

「いやさか……その牙、あまりに荒ぶりすぎている」

 

「喋るな。潰す」

 

 刃牙の攻撃には、迷いがなかった。殺すために振るわれる爪。奪ったものを取り戻すためではなく、奪ったものすべてを噛み砕くための牙。竜儀は真正面から受け止めているが、力だけで押し返せる相手ではない。あの殺意は、腕で受けても胸の奥まで入り込んでくる。

 

 禽次郎も苦戦していた。

 

 ゴジュウイーグルの翼で距離を取り、イーグルシューター50を撃ち込む。広輝は最初、その弾を避けきれずに受けた。だが、すぐに身体の表面が変わる。装甲が盛り上がり、弾を弾く形へ変化した。

 

「その程度なら、変えられる」

 

「身体ごと戦い方を変えるか。若さとは恐ろしいね」

 

 禽次郎が空へ逃げようとした時、広輝の腕から刃が伸びた。地面を蹴った勢いで跳び上がり、翼の軌道へ食い込んでくる。禽次郎は身を捻ってかわしたが、装甲の端が削られ、火花が散った。

 

「俺は止まらない。MiucSを潰すまで」

 

「若い子が、そんな怖い顔で終点を決めるものじゃないよ」

 

「黙れ」

 

 広輝の返事は短い。けれど、その短さの奥に熱があった。怒りを声にするのも惜しいくらい、身体の全部を復讐へ向けている。禽次郎はいつものように笑っているが、その笑いは少しだけ苦かった。

 

 角乃の方では、戦場そのものが変わっていた。

 

 宝星が手を振ると、地面の石片と走った火花がカードのような光になり、空中で重なる。次の瞬間、炎を纏った刃が生まれ、角乃へ飛んだ。角乃は身をかわしながら、その軌道を目で追う。すぐに砂と風が結びつき、視界を奪う渦になる。

 

「物質と現象を結合すれば、戦場はいくらでも変えられる」

 

「事件現場を勝手に作り替える犯人ほど、厄介なものはないわね」

 

 角乃は舌打ちこそしなかったが、余裕があるわけでもない。推理するには、現場が必要だ。だが宝星は、その現場を次々と別物へ変えてくる。証拠を見つける前に部屋の形を変えられるようなものだ。

 

 五つの戦いが、同時に押されていた。

 

 俺は銭山の蹴りを腕で受け、後ろへ跳ぶ。着地と同時に地面を蹴ろうとしたが、その前に銭山の色がまた変わる。重い拳が真正面から飛んできた。避けずに受けるしかない。衝撃が腕から肩へ抜け、歯を食いしばる。

 

「どうした。はぐれ者の牙は、その程度か」

 

「黙ってろ」

 

 言い返しても、状況は変わらない。

 

 相性が悪い。

 

 認めたくはなかったが、そう思った。今の俺の力では、銭山のコンボチェンジに全部合わせられる。俺の勢いが、あいつの盤面の上で処理されていく。

 

 その時、角乃の声が飛んだ。

 

「相性が悪いなら、札を変えるだけよ!」

 

 砂の渦を抜けた角乃が、懐から何かを取り出した。光を帯びたセンタイリング。それも、一つじゃない。

 

 角乃は宝星の錬成で生まれた刃を避けながら、最初のリングを俺へ投げた。

 

「吠! 王様相手ならこれ!」

 

 俺は銭山の追撃を横へかわし、飛んできたリングを掴む。手の中で、王の紋章みたいな光が瞬いた。

 

「キングオージャー……!」

 

 銭山が、わずかに目を細める。

 

「王を否定した狼が、王の力を纏うか」

 

「勘違いすんな」

 

 俺はリングを握り込み、銭山を睨んだ。

 

「こいつは、てめぇみたいに人を家臣扱いする王じゃねえ!」

 

 角乃は間を置かず、次のリングを陸王へ投げる。

 

「陸王! 返してくる相手には、返し技!」

 

 陸王は黒亞のX字の光を身を反らして避け、片手でリングを受け取った。金色の光を指先で転がし、少しだけ楽しそうに笑う。

 

「サンバルカン。太陽の鷲か」

 

「何を纏おうと同じです」

 

 黒亞の声は冷たい。

 

 陸王はリングを構え、肩をすくめた。

 

「そうかな。鷲は、真正面から壁にぶつかるだけじゃないよ」

 

 次のリングは、竜儀へ飛んだ。

 

「竜儀! 獣の相手なら、命の声を聞く戦士よ!」

 

 竜儀は刃牙の爪を両腕で受け止め、押し返した一瞬でリングを掴む。そこに宿る獣の赤い光を見て、深く頷いた。

 

「ガオレンジャー……命の咆哮。いやさか、承りました」

 

「綺麗事だ」

 

 刃牙が低く吐き捨てる。

 

 竜儀は動じない。

 

「綺麗事で結構。殺意に命を捧げるより、遥かに尊い」

 

 角乃は四つ目のリングを、空中の禽次郎へ向けて放った。

 

「禽次郎! 未来を閉ざしてる相手にはこれ!」

 

 禽次郎は翼を畳んで一度落ち、広輝の刃をかわしながらリングを受け取る。手の中の光を見た瞬間、老人らしい皺の奥で、目だけが少し明るくなった。

 

「トッキュウジャーか。いいね、次の駅くらい探してみようじゃないか」

 

「黙れ」

 

 広輝が踏み込む。

 

 禽次郎はひらりと距離を取り、軽く手を振った。

 

「黙らんよ。年寄りは、若者の先行きを心配するものだからね」

 

 そして角乃は、最後に自分のリングを掲げた。

 

「私は、ひらめきでいくわ」

 

 宝星がその光を見て、口元を引き締める。

 

「キラメイジャー……発想で僕に挑むつもりか」

 

「ええ。事件は、発想を変えれば解けるものよ」

 

 五つのリングが揃う。

 

 俺はテガソードへセンタイリングをセットした。陸王、竜儀、禽次郎、角乃も同時に構える。押されていた空気が、そこで一度止まった。リベンジャーズの視線が、こちらの手元へ集まる。

 

『クラップユアハンズ!』

 

 テガソードの音声が鳴る。

 

 待機音が重なり、境内に五つの光が走った。応援団の気配が、どこかで息を合わせる。俺たちは、同時に踏み込んだ。

 

「エンゲージ!」

 

「エンゲージ」

 

「いやさか、エンゲージ!」

 

「チャララっと、エンゲージ!」

 

「エンゲージ」

 

 リングが回る。

 

『キングオージャー!』

 

 俺の身体に、赤い王の鎧が重なる。クワガタの角を思わせる鋭いシルエット。手には王鎧武装。狼の荒さとは違う、真正面から名乗りを上げて立つための重さがあった。

 

『サンバルカン!』

 

 陸王の姿が、赤い鷲の戦士へ変わる。バルイーグル。軽やかな足運びはそのままに、構えた剣には空を切る鋭さが宿った。

 

『ガオレンジャー!』

 

 竜儀はガオレッドとなり、獣の力を纏って立つ。刃牙の殺意に呑まれるのではなく、命そのものの咆哮で向き合うような赤だった。

 

『トッキュウジャー!』

 

 禽次郎の足元を、レールのような光が走る。トッキュウ1号の姿になった禽次郎は、広輝を前にしても、どこか楽しそうに肩を回した。

 

『キラメイジャー!』

 

 角乃はキラメイレッドへと姿を変えた。赤い輝きが砂と炎の残滓を照らし、宝星の錬成で乱れた戦場を、まるで新しい発想のための舞台に変えていく。

 

 五つの赤が並んだ。

 

 さっきまで押していたはずのリベンジャーズが、初めて構え直す。黒亞は陸王の剣を警戒し、刃牙は竜儀の咆哮に低く唸った。広輝は禽次郎の足元に走る光を見て、苛立ったように刃を伸ばす。宝星は角乃の姿を見据え、次に何を錬成するか考えている。

 

 銭山だけは、俺を見ていた。

 

「王を否定した狼が、王の力を選ぶか」

 

 さっきと同じ言葉。けれど今度は、俺がその言葉を真正面から受けた。

 

「何度も言わせんな。こいつは、てめぇみたいに人を縛る王じゃねえ」

 

 王鎧武装を握り、銭山へ向ける。

 

 陸王が隣で剣を軽く回した。

 

「返してくるなら、こっちはさらに返すだけだ」

 

 竜儀は刃牙を見据え、低く告げる。

 

「命を殺意に従わせる道、ここで止めます」

 

 禽次郎は広輝へ向かって、いつもの調子で手を振った。

 

「若者の終点を、勝手に決めさせるわけにはいかないからね」

 

 角乃は宝星へ剣先を向ける。

 

「発想勝負なら、ここからが本番よ」

 

 俺たちは横一列に並んだ。

 

 はぐれ者だ。どこかに収まるつもりなんてない。だからこそ、今ここに並ぶ。誰かの家臣としてではなく、それぞれ勝手に立つために。

 

 銭山の前で、俺は一歩踏み出した。

 

「ここからだ、王様」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。