ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

67 / 69
煌めく推理

 五つの赤が並んだ直後、戦場の空気は変わった。

 

 俺の前で銭山が構えを変える。陸王の前では黒亞が赤い目を細め、竜儀と刃牙の間には獣の唸りが低く張りつめていた。禽次郎と広輝も互いの動きを探っている。

 

 けれど、その中で最初に大きく動いたのは、角乃だった。

 

 キラメイレッドとなった角乃は、赤い輝きを纏って宝星の前へ進み出る。さっきまで宝星の錬成で乱れていた地面には、焦げた石片や砕けた砂利、風に巻かれた土埃が散っていた。宝星にとっては材料だ。戦場そのものが武器になる。

 

 宝星もそれを分かっているのだろう。ガッチャードの複眼が、角乃から周囲へと一瞬だけ動いた。

 

「僕達の力とどこか違うのか」

 

「ええ。そして私は探偵。想像だけでなく、証拠も見るわ」

 

 角乃はキラメイソードを軽く構えた。大きく見せつけるような構えではない。相手の視線、足の向き、指先の動き、そこにあるものを全部拾うための静かな構えだった。

 

「なら、見る暇もないほど戦場を変える」

 

「やってみなさい」

 

 宝星の手が動く。

 

 石片が浮いた。そこへ足元で散った火花が吸い寄せられ、二つの光がカードのような形に変わる。宝星がそれを重ねようとした瞬間、角乃の銃声が響いた。

 

 キラメイショットの光弾が石片を弾き飛ばす。

 

 火花だけが空中で行き場を失い、錬成は形になる前に崩れた。

 

「石片と火花――」

 

「その前に、素材を落とす」

 

 角乃の声は冷たいくらい落ち着いていた。

 

 宝星は舌打ちもせず、すぐに次へ移る。砂地へ視線が落ちる。風が横から吹き込んだ。砂と風。さっきも視界を奪った組み合わせだ。

 

 だが、角乃は宝星が手を上げるより先に横へ走っていた。砂嵐が起こる位置を避け、その縁をすり抜ける。赤い装甲が砂の向こうで一瞬光り、次の瞬間には宝星の斜め前に出ていた。

 

「砂と風なら、視界を奪える」

 

「視線が正直なのよ。次に使う素材を、ちゃんと見てる」

 

 キラメイソードが振られる。宝星は錬成途中だった風を防壁のように変えようとしたが、角乃の踏み込みの方が早い。剣先がガッチャードの胸元を掠め、火花が散った。

 

「そんなことで、僕の錬金を止められると思うな!」

 

「止められるわ。完成する前ならね」

 

 宝星の動きが少しだけ粗くなった。

 

 手近な鉄片へ指を向け、続いて熱の残る焦げ跡へ視線を走らせる。鉄片と熱。赤熱した刃でも作るつもりか。俺にもそこまでは分かったが、角乃はもう動いていた。キラメイソードの腹で鉄片を叩き、生成される位置をずらす。赤熱した刃は角乃を狙う前に角度を狂わせ、地面へ突き立った。

 

 宝星の錬成は強い。戦場にあるものを組み替え、攻撃にも防御にも変える。まともに完成させれば、こっちは後手に回るしかない。

 

 けれど角乃は、完成した錬金術と戦っていなかった。

 

 宝星が何を使うかを読む。素材を選ぶ視線を見る。手の動きが結合を始める前に、片方を崩す。事件が起きてから謎を解くのではなく、仕掛けを動かす前に止める。それが今の角乃の戦い方だった。

 

「僕の錬金は、戦場を変える力だ!」

 

「ええ。でも、あなたは素材を選ぶ。選ぶなら、癖が出る」

 

「癖……?」

 

「視線、指先、足の向き。事件現場に落ちている証拠は、犯人より多くを喋るものよ」

 

 宝星は答えなかった。

 

 代わりに、両手を大きく広げる。地面の石、砂、焦げ跡の熱、流れる風、砕けた光。その全部がカード型のエネルギーへ変わっていく。今度は一つずつじゃない。まとめて取り込み、巨大な錬成陣のように広げるつもりだ。

 

 角乃が優勢なのは、宝星にも分かっている。だからこそ、読めないほど大きく作る。細かい素材を一つずつ潰されるなら、戦場ごと飲み込む。

 

「なら、読めないほど大きく作る!」

 

 錬成の光が境内の一角を覆い始める。

 

 砂が渦巻き、石が浮き、熱が線になって繋がる。そこに風が絡み、宝星の背後で大きな形を作ろうとしていた。完成すれば、角乃一人を押し潰すには十分すぎる。

 

 それでも角乃は下がらない。

 

「大きいトリックほど、仕掛けは目立つわ」

 

「黙れ……!」

 

「焦ったわね、暁宝星。そこがあなたの敗因よ」

 

 角乃はキラメイバスターを構えた。

 

 そして、腰の側からユニコーンドリル50を取り出す。見慣れた彼女本来の武装が、キラメイレッドの赤い輝きに照らされた。角乃は迷わず、そのドリルをキラメイバスターの先端へ装填する。

 

 金属が噛み合う音がした。

 

 次の瞬間、銃口の先でドリルが回り始める。白銀の光が赤いキラメイの輝きと混ざり、宝石のような透明な光を帯びた。銃身の周りに、ユニコーンの角を思わせる結晶が形作られていく。

 

 宝星の動きが止まる。

 

「何だ、それは……」

 

「ひらめいたわ」

 

「錬成でもない武装の組み合わせで、僕に勝つつもりか!」

 

「あなたの錬成が物質と現象の結合なら、私は武装と発想を結ぶ」

 

 角乃の声は、戦場の騒がしさの中でもよく通った。

 

 俺は銭山を警戒しながら、その横顔を見た。角乃は宝星を見ている。だが、その目は宝星だけではなく、宝星が作り出そうとしている大錬成の流れも、その起点も、全部を一つの事件として捉えていた。

 

 ガッチャードの背後で、巨大な錬成が完成しようとしている。

 

 石と砂と熱と風が絡み合い、歪な巨腕のような形を取った。宝星はそれを押し出そうと両手を前へ突き出す。

 

 角乃は一歩も退かない。

 

「ハイクラスに、貫くわよ」

 

 宝星が叫ぶ。

 

「そんな即興で、僕の錬金が――!」

 

「即興じゃないわ」

 

 角乃の指が引き金にかかる。

 

「推理とひらめきの結論よ」

 

 銃声というには、あまりにも眩しかった。

 

「キラメイ・ユニコーンドリルシュート!」

 

 キラメイバスターの先端から、宝石の光が撃ち出された。光は空中で巨大なユニコーンの姿を取り、頭部の角を前へ突き出して走る。角はドリルのように回転し、赤と白銀の輝きを撒き散らしながら、宝星の大錬成へ一直線に突っ込んだ。

 

 ぶつかった瞬間、錬成途中の巨腕が悲鳴みたいな音を立てて砕けた。

 

 完成していないものは、形を保てない。素材と現象を繋いでいた線が、ユニコーンの角に貫かれてばらばらになる。石が弾け、砂が光に溶け、熱が赤い破片になって散った。

 

 その中心を、宝石のユニコーンが突き抜ける。

 

「そんな……僕の、錬金が……!」

 

 ガッチャードの胸に、ユニコーンの角が直撃した。

 

 爆発音が境内に響く。宝星の身体は大きく吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。ガッチャードの装甲に光の亀裂が走り、変身が解ける。暁宝星は人の姿に戻り、膝をついたまま片手で地面を掴んだ。

 

 角乃はキラメイバスターを下ろす。

 

「あなたの錬金は強いわ。でも、完成する前から全部見えていた」

 

 宝星は息を荒くしながら顔を上げる。悔しさと信じられなさが、金色の瞳に揺れていた。

 

「……僕は、変えられる力で……」

 

「変える前に、何を変えようとしているのか見直すことね」

 

 角乃の声に、宝星はすぐには言い返せなかった。

 

 戦場の空気が、そこで一度止まる。

 

「宝星……!」

 

 黒亞の声が鋭く飛んだ。陸王と向かい合っていた彼女の視線が、倒れた宝星へ向く。その隙を陸王は突かなかった。ただ、バルイーグルの剣を構え直し、静かに黒亞を見ている。

 

 刃牙が低く唸る。広輝も禽次郎の前でわずかに動きを止めた。仲間が倒れた気配は、リベンジャーズ全員に届いていた。

 

 そして銭山。

 

 さっきまで余裕を崩さなかった銭山の顔から、笑みが消えた。

 

「……我が家臣を、よくも」

 

 低い声だった。

 

 怒鳴ってはいない。けれど、路地裏で会った時よりも、ずっと重い。家臣という言葉が気に入らないのは変わらない。だが、宝星が倒れた瞬間に銭山の奥で何かが燃え上がったのは分かった。

 

 角乃は宝星へ銃口を向け直さない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。