ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
五つの赤が並んだ直後、戦場の空気は変わった。
俺の前で銭山が構えを変える。陸王の前では黒亞が赤い目を細め、竜儀と刃牙の間には獣の唸りが低く張りつめていた。禽次郎と広輝も互いの動きを探っている。
けれど、その中で最初に大きく動いたのは、角乃だった。
キラメイレッドとなった角乃は、赤い輝きを纏って宝星の前へ進み出る。さっきまで宝星の錬成で乱れていた地面には、焦げた石片や砕けた砂利、風に巻かれた土埃が散っていた。宝星にとっては材料だ。戦場そのものが武器になる。
宝星もそれを分かっているのだろう。ガッチャードの複眼が、角乃から周囲へと一瞬だけ動いた。
「僕達の力とどこか違うのか」
「ええ。そして私は探偵。想像だけでなく、証拠も見るわ」
角乃はキラメイソードを軽く構えた。大きく見せつけるような構えではない。相手の視線、足の向き、指先の動き、そこにあるものを全部拾うための静かな構えだった。
「なら、見る暇もないほど戦場を変える」
「やってみなさい」
宝星の手が動く。
石片が浮いた。そこへ足元で散った火花が吸い寄せられ、二つの光がカードのような形に変わる。宝星がそれを重ねようとした瞬間、角乃の銃声が響いた。
キラメイショットの光弾が石片を弾き飛ばす。
火花だけが空中で行き場を失い、錬成は形になる前に崩れた。
「石片と火花――」
「その前に、素材を落とす」
角乃の声は冷たいくらい落ち着いていた。
宝星は舌打ちもせず、すぐに次へ移る。砂地へ視線が落ちる。風が横から吹き込んだ。砂と風。さっきも視界を奪った組み合わせだ。
だが、角乃は宝星が手を上げるより先に横へ走っていた。砂嵐が起こる位置を避け、その縁をすり抜ける。赤い装甲が砂の向こうで一瞬光り、次の瞬間には宝星の斜め前に出ていた。
「砂と風なら、視界を奪える」
「視線が正直なのよ。次に使う素材を、ちゃんと見てる」
キラメイソードが振られる。宝星は錬成途中だった風を防壁のように変えようとしたが、角乃の踏み込みの方が早い。剣先がガッチャードの胸元を掠め、火花が散った。
「そんなことで、僕の錬金を止められると思うな!」
「止められるわ。完成する前ならね」
宝星の動きが少しだけ粗くなった。
手近な鉄片へ指を向け、続いて熱の残る焦げ跡へ視線を走らせる。鉄片と熱。赤熱した刃でも作るつもりか。俺にもそこまでは分かったが、角乃はもう動いていた。キラメイソードの腹で鉄片を叩き、生成される位置をずらす。赤熱した刃は角乃を狙う前に角度を狂わせ、地面へ突き立った。
宝星の錬成は強い。戦場にあるものを組み替え、攻撃にも防御にも変える。まともに完成させれば、こっちは後手に回るしかない。
けれど角乃は、完成した錬金術と戦っていなかった。
宝星が何を使うかを読む。素材を選ぶ視線を見る。手の動きが結合を始める前に、片方を崩す。事件が起きてから謎を解くのではなく、仕掛けを動かす前に止める。それが今の角乃の戦い方だった。
「僕の錬金は、戦場を変える力だ!」
「ええ。でも、あなたは素材を選ぶ。選ぶなら、癖が出る」
「癖……?」
「視線、指先、足の向き。事件現場に落ちている証拠は、犯人より多くを喋るものよ」
宝星は答えなかった。
代わりに、両手を大きく広げる。地面の石、砂、焦げ跡の熱、流れる風、砕けた光。その全部がカード型のエネルギーへ変わっていく。今度は一つずつじゃない。まとめて取り込み、巨大な錬成陣のように広げるつもりだ。
角乃が優勢なのは、宝星にも分かっている。だからこそ、読めないほど大きく作る。細かい素材を一つずつ潰されるなら、戦場ごと飲み込む。
「なら、読めないほど大きく作る!」
錬成の光が境内の一角を覆い始める。
砂が渦巻き、石が浮き、熱が線になって繋がる。そこに風が絡み、宝星の背後で大きな形を作ろうとしていた。完成すれば、角乃一人を押し潰すには十分すぎる。
それでも角乃は下がらない。
「大きいトリックほど、仕掛けは目立つわ」
「黙れ……!」
「焦ったわね、暁宝星。そこがあなたの敗因よ」
角乃はキラメイバスターを構えた。
そして、腰の側からユニコーンドリル50を取り出す。見慣れた彼女本来の武装が、キラメイレッドの赤い輝きに照らされた。角乃は迷わず、そのドリルをキラメイバスターの先端へ装填する。
金属が噛み合う音がした。
次の瞬間、銃口の先でドリルが回り始める。白銀の光が赤いキラメイの輝きと混ざり、宝石のような透明な光を帯びた。銃身の周りに、ユニコーンの角を思わせる結晶が形作られていく。
宝星の動きが止まる。
「何だ、それは……」
「ひらめいたわ」
「錬成でもない武装の組み合わせで、僕に勝つつもりか!」
「あなたの錬成が物質と現象の結合なら、私は武装と発想を結ぶ」
角乃の声は、戦場の騒がしさの中でもよく通った。
俺は銭山を警戒しながら、その横顔を見た。角乃は宝星を見ている。だが、その目は宝星だけではなく、宝星が作り出そうとしている大錬成の流れも、その起点も、全部を一つの事件として捉えていた。
ガッチャードの背後で、巨大な錬成が完成しようとしている。
石と砂と熱と風が絡み合い、歪な巨腕のような形を取った。宝星はそれを押し出そうと両手を前へ突き出す。
角乃は一歩も退かない。
「ハイクラスに、貫くわよ」
宝星が叫ぶ。
「そんな即興で、僕の錬金が――!」
「即興じゃないわ」
角乃の指が引き金にかかる。
「推理とひらめきの結論よ」
銃声というには、あまりにも眩しかった。
「キラメイ・ユニコーンドリルシュート!」
キラメイバスターの先端から、宝石の光が撃ち出された。光は空中で巨大なユニコーンの姿を取り、頭部の角を前へ突き出して走る。角はドリルのように回転し、赤と白銀の輝きを撒き散らしながら、宝星の大錬成へ一直線に突っ込んだ。
ぶつかった瞬間、錬成途中の巨腕が悲鳴みたいな音を立てて砕けた。
完成していないものは、形を保てない。素材と現象を繋いでいた線が、ユニコーンの角に貫かれてばらばらになる。石が弾け、砂が光に溶け、熱が赤い破片になって散った。
その中心を、宝石のユニコーンが突き抜ける。
「そんな……僕の、錬金が……!」
ガッチャードの胸に、ユニコーンの角が直撃した。
爆発音が境内に響く。宝星の身体は大きく吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。ガッチャードの装甲に光の亀裂が走り、変身が解ける。暁宝星は人の姿に戻り、膝をついたまま片手で地面を掴んだ。
角乃はキラメイバスターを下ろす。
「あなたの錬金は強いわ。でも、完成する前から全部見えていた」
宝星は息を荒くしながら顔を上げる。悔しさと信じられなさが、金色の瞳に揺れていた。
「……僕は、変えられる力で……」
「変える前に、何を変えようとしているのか見直すことね」
角乃の声に、宝星はすぐには言い返せなかった。
戦場の空気が、そこで一度止まる。
「宝星……!」
黒亞の声が鋭く飛んだ。陸王と向かい合っていた彼女の視線が、倒れた宝星へ向く。その隙を陸王は突かなかった。ただ、バルイーグルの剣を構え直し、静かに黒亞を見ている。
刃牙が低く唸る。広輝も禽次郎の前でわずかに動きを止めた。仲間が倒れた気配は、リベンジャーズ全員に届いていた。
そして銭山。
さっきまで余裕を崩さなかった銭山の顔から、笑みが消えた。
「……我が家臣を、よくも」
低い声だった。
怒鳴ってはいない。けれど、路地裏で会った時よりも、ずっと重い。家臣という言葉が気に入らないのは変わらない。だが、宝星が倒れた瞬間に銭山の奥で何かが燃え上がったのは分かった。
角乃は宝星へ銃口を向け直さない。