ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

70 / 71
獅子の一閃

 刃牙が倒れたことで、戦場の形は決まった。

 

 宝星、広輝、刃牙。五人いたリベンジャーズのうち、三人がすでに地面に伏している。残っているのは、銭山願之介と重音黒亞だけだった。

 

 その黒亞が、静かに息を吸う。

 

「銭山様の家臣を、次々と……許しません」

 

 声は荒れていなかった。けれど、だからこそ怖い。怒りを叫びに変えるのではなく、刃の形に整えている。赤い瞳が陸王へ向けられ、Xの装甲に走る光が強くなる。

 

 バルイーグルになった陸王は、剣を構え直した。

 

「君の相手はまだ僕だよ。余所見するには、少し早い」

 

「軽薄な口を利けるのも、ここまでです」

 

「そうかな。僕はわりと、ここからが本番だと思ってる」

 

 黒亞は答えず、ライドルを構えた。

 

 それが鞭のようにしなり、ホイップ形態へ変わる。次の瞬間、黒い影を裂くように、ライドルホイップが陸王へ伸びた。

 

 陸王は一歩下がるのではなく、斜めに踏み込んだ。バルイーグルの刀でホイップを受ける。金属が擦れる音が鳴り、火花が弾けた。だが、ホイップは刀と違って真っ直ぐには来ない。受けた直後に軌道を曲げ、陸王の肩を狙う。

 

 陸王は身を低くしてかわし、刀を返す。

 

「あなたの余裕ごと、切り裂きます」

 

「怖いね。忠義が深い人ほど、怒ると刃が鋭い」

 

「銭山様への忠義を、あなたの軽口で汚さないでください」

 

「汚すつもりはないよ。ただ、それで君自身が見えなくなってるなら、少し危ないと思ってね」

 

 黒亞の赤い瞳が細くなる。

 

 ライドルホイップが今度は低く走った。足を狙う軌道。陸王は跳び、空中で刀を振って鞭を弾く。そのまま着地する前に身を捻り、黒亞の横へ落ちる。軽い。まるで本当に、空を知っている鳥のような動きだった。

 

 それでも黒亞は崩れない。

 

 陸王が間合いへ入った瞬間、彼女の腕が交差した。

 

 X字のエネルギーが生まれる。陸王の刀がそこへ触れた途端、斬撃は押し返された。陸王は空中で受け身を取り、地面を滑るように着地する。刀を持つ手がわずかに痺れたのか、指を握り直した。

 

「交差の前では、あなたの刃も届きません」

 

「なるほど。正面は固い」

 

「諦めるなら今です」

 

「いや、固いところを確認しただけ」

 

 陸王は軽く笑った。

 

 黒亞にとっては挑発に聞こえただろう。ライドルホイップが鋭く鳴り、再び陸王へ襲いかかる。陸王は刀で斬り払い、何度か間合いを変えた。正面、斜め、低い位置、高い位置。どこから入っても、黒亞は交差の防壁を合わせてくる。

 

 守りは厚い。

 

 それに、黒亞はただ守っているだけではなかった。攻撃を弾いた直後に、ライドルホイップで反撃を重ねてくる。防御と攻撃がひとつの流れになっている。銭山の右腕と名乗るだけはある。

 

 けれど、陸王は焦っていなかった。

 

「じゃあ、少し削ろうか」

 

 バルイーグルの刀を片手に、もう片方でレオンバスター50を構える。

 

 黒亞の視線が銃口へ動いた。

 

「銃で私の交差を破るつもりですか」

 

「破るとは言ってないよ」

 

 陸王が引き金を引く。

 

 連続した光弾が黒亞へ降り注いだ。黒亞はすぐに交差を展開する。X字の防壁が正面に立ち上がり、レオンバスター50の弾を弾いた。光が砕け、火花のように散る。陸王は構わず撃ち続けた。

 

「無駄です。いくら撃とうと、交差がすべて弾きます」

 

「分かってるよ」

 

「なら、なぜ撃つのです」

 

「削るため。あと、見えなくするためかな」

 

 その言葉が終わるころには、黒亞の正面は光で埋まっていた。

 

 防壁が弾を受けるたびに、X字の線が揺れる。砕けた光、跳ね返る弾、砂埃。黒亞は正面へ意識を集中せざるを得ない。交差が弾く。弾き続ける。だが、そのたびに視界は白く染まり、陸王の輪郭が薄れていく。

 

「その程度の目くらましで――」

 

 黒亞が言いかけた時、弾幕が途切れた。

 

 正面に、陸王はいなかった。

 

「どこへ――」

 

「上だよ」

 

 声は頭上から降ってきた。

 

 黒亞が顔を上げる。

 

 赤い鷲が、空にいた。

 

 バルイーグルの姿をした陸王が、弾幕の中で地面を蹴り、すでに上空へ回り込んでいた。刀を両手で構え、赤い太陽のような光を刃へ纏わせている。軽口の奥に隠していた狙いが、そこで初めて形になった。

 

「鷲は、地面だけを歩かない」

 

「交差で――!」

 

 黒亞が防壁を展開しようとする。

 

 だが遅い。彼女の交差は強い。正面から来る攻撃を受け止め、跳ね返すには隙がない。けれど、正面を弾幕で塞がれ、意識を固定され、真上を取られた今、防壁の形が完成するより陸王の落下が早かった。

 

「間に合わないよ」

 

 陸王の身体が回転する。

 

 刀の光が円を描き、太陽の輪のように広がった。空から落ちる赤い軌跡が、黒亞の作りかけたX字の交点へ吸い込まれる。

 

「イーグル回転斬り!」

 

 斬撃が、交差を裂いた。

 

 完成しきらなかったX字防壁が砕け、赤い光の輪が黒亞の装甲を捉える。火花が大きく散り、黒亞の身体が後ろへ吹き飛んだ。ライドルホイップが手から離れ、地面を打って消える。

 

 黒亞は数度転がり、銭山の方へ向けて片手を伸ばした。

 

 変身が解ける。

 

 銀の長い髪が地面へ広がり、重音黒亞の赤い瞳から戦意が薄れていく。それでも彼女は、倒れたまま銭山を見た。自分の痛みより先に、主君の名を呼ぼうとしている。

 

「銭山様……申し訳、ありません……」

 

 陸王は刀を下ろした。

 

 勝ち誇らない。黒亞の忠義を笑わない。ただ、少しだけ寂しそうに見下ろす。

 

「誰かを大事にするのは悪くない。でも、見てる先が一人だけだと、足元をすくわれるよ」

 

 黒亞は答えられなかった。

 

 これで、リベンジャーズは銭山一人になった。

 

 倒れた宝星。戦闘不能の広輝。広輝へ手を伸ばしたまま動かない刃牙。そして、銭山へ謝りながら倒れた黒亞。五人で並んでいたはずの組織は、いつの間にか王だけを残して崩れている。

 

 銭山が、黒亞を見る。

 

「黒亞……」

 

 その声は、短かった。

 

 けれど、その中には確かに熱があった。家臣と呼んだ相手を失った怒り。支配者の道具としてではなく、自分の下に集まった者を傷つけられた怒りだ。だからこそ、余計に厄介だった。あいつはただ冷たい王様気取りじゃない。本当に仲間を想っている。想っているから、自分の国へ閉じ込めようとする。

 

 俺は王鎧武装を握り直し、銭山へ向いた。

 

「これで残りは、てめぇだけだ」

 

 銭山はゆっくりと顔を上げる。

 

「我が家臣を倒し、なお吠えるか」

 

「ああ」

 

 俺は一歩前へ出る。

 

「王様気取りを止めるまでな」

 

 オーズの装甲の奥で、銭山の気配が重くなる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。