ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
刃牙が倒れたことで、戦場の形は決まった。
宝星、広輝、刃牙。五人いたリベンジャーズのうち、三人がすでに地面に伏している。残っているのは、銭山願之介と重音黒亞だけだった。
その黒亞が、静かに息を吸う。
「銭山様の家臣を、次々と……許しません」
声は荒れていなかった。けれど、だからこそ怖い。怒りを叫びに変えるのではなく、刃の形に整えている。赤い瞳が陸王へ向けられ、Xの装甲に走る光が強くなる。
バルイーグルになった陸王は、剣を構え直した。
「君の相手はまだ僕だよ。余所見するには、少し早い」
「軽薄な口を利けるのも、ここまでです」
「そうかな。僕はわりと、ここからが本番だと思ってる」
黒亞は答えず、ライドルを構えた。
それが鞭のようにしなり、ホイップ形態へ変わる。次の瞬間、黒い影を裂くように、ライドルホイップが陸王へ伸びた。
陸王は一歩下がるのではなく、斜めに踏み込んだ。バルイーグルの刀でホイップを受ける。金属が擦れる音が鳴り、火花が弾けた。だが、ホイップは刀と違って真っ直ぐには来ない。受けた直後に軌道を曲げ、陸王の肩を狙う。
陸王は身を低くしてかわし、刀を返す。
「あなたの余裕ごと、切り裂きます」
「怖いね。忠義が深い人ほど、怒ると刃が鋭い」
「銭山様への忠義を、あなたの軽口で汚さないでください」
「汚すつもりはないよ。ただ、それで君自身が見えなくなってるなら、少し危ないと思ってね」
黒亞の赤い瞳が細くなる。
ライドルホイップが今度は低く走った。足を狙う軌道。陸王は跳び、空中で刀を振って鞭を弾く。そのまま着地する前に身を捻り、黒亞の横へ落ちる。軽い。まるで本当に、空を知っている鳥のような動きだった。
それでも黒亞は崩れない。
陸王が間合いへ入った瞬間、彼女の腕が交差した。
X字のエネルギーが生まれる。陸王の刀がそこへ触れた途端、斬撃は押し返された。陸王は空中で受け身を取り、地面を滑るように着地する。刀を持つ手がわずかに痺れたのか、指を握り直した。
「交差の前では、あなたの刃も届きません」
「なるほど。正面は固い」
「諦めるなら今です」
「いや、固いところを確認しただけ」
陸王は軽く笑った。
黒亞にとっては挑発に聞こえただろう。ライドルホイップが鋭く鳴り、再び陸王へ襲いかかる。陸王は刀で斬り払い、何度か間合いを変えた。正面、斜め、低い位置、高い位置。どこから入っても、黒亞は交差の防壁を合わせてくる。
守りは厚い。
それに、黒亞はただ守っているだけではなかった。攻撃を弾いた直後に、ライドルホイップで反撃を重ねてくる。防御と攻撃がひとつの流れになっている。銭山の右腕と名乗るだけはある。
けれど、陸王は焦っていなかった。
「じゃあ、少し削ろうか」
バルイーグルの刀を片手に、もう片方でレオンバスター50を構える。
黒亞の視線が銃口へ動いた。
「銃で私の交差を破るつもりですか」
「破るとは言ってないよ」
陸王が引き金を引く。
連続した光弾が黒亞へ降り注いだ。黒亞はすぐに交差を展開する。X字の防壁が正面に立ち上がり、レオンバスター50の弾を弾いた。光が砕け、火花のように散る。陸王は構わず撃ち続けた。
「無駄です。いくら撃とうと、交差がすべて弾きます」
「分かってるよ」
「なら、なぜ撃つのです」
「削るため。あと、見えなくするためかな」
その言葉が終わるころには、黒亞の正面は光で埋まっていた。
防壁が弾を受けるたびに、X字の線が揺れる。砕けた光、跳ね返る弾、砂埃。黒亞は正面へ意識を集中せざるを得ない。交差が弾く。弾き続ける。だが、そのたびに視界は白く染まり、陸王の輪郭が薄れていく。
「その程度の目くらましで――」
黒亞が言いかけた時、弾幕が途切れた。
正面に、陸王はいなかった。
「どこへ――」
「上だよ」
声は頭上から降ってきた。
黒亞が顔を上げる。
赤い鷲が、空にいた。
バルイーグルの姿をした陸王が、弾幕の中で地面を蹴り、すでに上空へ回り込んでいた。刀を両手で構え、赤い太陽のような光を刃へ纏わせている。軽口の奥に隠していた狙いが、そこで初めて形になった。
「鷲は、地面だけを歩かない」
「交差で――!」
黒亞が防壁を展開しようとする。
だが遅い。彼女の交差は強い。正面から来る攻撃を受け止め、跳ね返すには隙がない。けれど、正面を弾幕で塞がれ、意識を固定され、真上を取られた今、防壁の形が完成するより陸王の落下が早かった。
「間に合わないよ」
陸王の身体が回転する。
刀の光が円を描き、太陽の輪のように広がった。空から落ちる赤い軌跡が、黒亞の作りかけたX字の交点へ吸い込まれる。
「イーグル回転斬り!」
斬撃が、交差を裂いた。
完成しきらなかったX字防壁が砕け、赤い光の輪が黒亞の装甲を捉える。火花が大きく散り、黒亞の身体が後ろへ吹き飛んだ。ライドルホイップが手から離れ、地面を打って消える。
黒亞は数度転がり、銭山の方へ向けて片手を伸ばした。
変身が解ける。
銀の長い髪が地面へ広がり、重音黒亞の赤い瞳から戦意が薄れていく。それでも彼女は、倒れたまま銭山を見た。自分の痛みより先に、主君の名を呼ぼうとしている。
「銭山様……申し訳、ありません……」
陸王は刀を下ろした。
勝ち誇らない。黒亞の忠義を笑わない。ただ、少しだけ寂しそうに見下ろす。
「誰かを大事にするのは悪くない。でも、見てる先が一人だけだと、足元をすくわれるよ」
黒亞は答えられなかった。
これで、リベンジャーズは銭山一人になった。
倒れた宝星。戦闘不能の広輝。広輝へ手を伸ばしたまま動かない刃牙。そして、銭山へ謝りながら倒れた黒亞。五人で並んでいたはずの組織は、いつの間にか王だけを残して崩れている。
銭山が、黒亞を見る。
「黒亞……」
その声は、短かった。
けれど、その中には確かに熱があった。家臣と呼んだ相手を失った怒り。支配者の道具としてではなく、自分の下に集まった者を傷つけられた怒りだ。だからこそ、余計に厄介だった。あいつはただ冷たい王様気取りじゃない。本当に仲間を想っている。想っているから、自分の国へ閉じ込めようとする。
俺は王鎧武装を握り直し、銭山へ向いた。
「これで残りは、てめぇだけだ」
銭山はゆっくりと顔を上げる。
「我が家臣を倒し、なお吠えるか」
「ああ」
俺は一歩前へ出る。
「王様気取りを止めるまでな」
オーズの装甲の奥で、銭山の気配が重くなる。