ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦   作:ボルメテウスさん

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炎の聖女

「…にしても、こうしてバイトが長続きが出来るのは本当にありがたいな」

 

季節の変化が見えるように、眼前から落ちている紅葉を見ながらも、店番をしながら笑みを浮かべる。

 

「吠さんって、前の世界ではバイトの方はどうなんですか?」

 

「まぁ、色々とあってな、一ヵ月続くのは珍しいからな」

 

そう言うと、芹亜は苦笑いをしているが、その表情からなんとなく察してしまう。

 

そんな雑談をしていると。

 

「お前ら、少し良いか」

 

「んっ、雪庭さん、どうかしました?」

 

「…少し頼みたい事があってな」

 

「頼みたい事?」

 

そうして、俺達はそのまま、彷霊界へと向かう事になった。

 

俺は、正直なところ、こういう場所は性に合わなかった。

 

湿った石の匂い、ひっそりと冷え込む空気、遠くで鳴る鐘の音――そのどれもが、まるで俺という存在を遠慮なく拒んでいるようで、妙に落ち着かないのである。

 

「吠さん、ここ……」

 

隣で芹亜が息を呑む声がした。無理もない。俺たちが立っているのは、ついさっきまで店番をしていた紅葉の街中ではなく、石畳の続く見知らぬ村なのだから。

 

「寺とは、また違う冷たさですね」

 

芹亜の言う通りだった。寺の空気には、どこか人の温みが染みついている。線香の匂いや、長年祈られてきた木の感触。だが、この村は違う。冷たい石の感触と、霧がすべてを覆い隠し、まるで時間そのものが止まっているようだ。

 

「雪庭の野郎……」

 

俺は舌打ちした。『新たな霊的反応を追え』だの『芹亜を頼む』だの、あの胡散臭い坊主は気楽に言いやがる。おかげでこっちは、こんな異国の村もどきに放り出されちまった。

 

小道の先に、崩れかけた教会が見える。尖塔が霧に霞み、その手前で白い靄がゆっくりと渦を巻いていた。まるで、そこだけがこの村の心臓部だとでも言いたげに。

 

「……祈りの気配、なの?」

 

芹亜が、自分の胸元に手を当てて呟いた。その瞳は、俺には見えない何かをじっと捉えている。霊能力者である彼女にしか感じ取れない、この場所の空気。信仰か、あるいは怨念か。どちらにせよ、俺には気味の悪さしかわからん。

 

「下がってろ」

 

俺は無意識に、芹亜の前に出ていた。根拠なんてない。ただ、この霧の奥には何かがいる。そういう直感だけが、獣じみた本能で俺を動かす。

 

瞬間、霧の向こうで白金の光が一瞬、奔った。

 

静電気が走るような、そんな微かな予兆。テガソードに手をかける。指先が冷たい柄に触れたが、まだ抜くべきではないと、どこかで理性が囁いた。こういう時ほど、下手に動けば足元を掬われる。

 

「……この感じ」

 

芹亜が小さく震える声で言った。

 

「誰かが、ここで何かを、信じ続けてる」

 

信じる、か。

 

俺には縁遠い言葉だ。願いも持たず、信じるものも持たず、ただ借りだけを返して生きてきた。だが、こうして芹亜の横に立っていると、その「信じる」という力が、時に俺の拳より重たい現実を生むことがあるのだと、嫌でも思い知らされる。

 

霧がさらに深くなる。鐘の音が、また一つ、遠くで響いた。

 

「……動くなよ、芹亜」

 

「はい」

 

俺たちは、息を潛めながら、教会跡へと続く石畳を、一歩ずつ進み始めた。

 

俺の目に映ったのは、火だった。

 

いや、違う。それは幻だ。だが、その幻はあまりにも生々しく、霧の奥でゆらめく赤い舌が、今にも石畳を舐め尽くさんばかりに広がっている。火刑台――そう直感した。歴史の授業で聞きかじった、ある聖女の最期。そして、その炎の音に重なるように、先ほどまで遠くで鳴っていた鐘が、すぐ耳元で打ち鳴らされる。

 

「これは……」

 

芹亜が足を止めた。その声に、恐怖はない。むしろ、何かを確かめるような、祈るような響きだった。

 

炎の幻影を背に、白い旗が揺れる。旗を掲げる手は、甲冑に包まれているというのに、不思議と戦士のそれには見えなかった。まるで、教会の祭壇で祈りを捧げる少女が、そのまま鎧を纏って立ち上がったかのような――そんな、ちぐはぐで、それでいて神聖な気配。

 

「もしかして、ジャンヌ・ダルク!?」

「ジャンヌ?なんだ、それは」

「聖女と呼ばれた偉人です。まさか、グレート・ゴーストで出て来るとは」

 

ジャンヌ・ダルク。

芹亜が、かすれた声で名前を呼んだ。

 

「侵入者よ」

 

グレート・ゴーストの声は、少女のものだった。炎に焼かれたとは思えぬほど澄んで、しかし、どこか遠くを見つめている。その白い旗は、風もないのにゆらめき、火に照らされたように淡く輝いている。

 

「ここは、私の祈りの場。あなたたちに用はない」

 

その瞬間、聖旗が高く掲げられた。

白金の光が、波のように俺たちへ押し寄せる。

 

「芹亜!」

 

俺は反射的に、彼女を背に庇い、両腕を交差させて光を受け止めた。衝撃。骨が軋む。これが霊的な力か――単なる物理じゃない、魂そのものを押し返そうとする重みだ。足元の石畳が、ミシリと音を立てる。一歩、また一歩と押し返されながらも、俺は歯を食いしばって踏み止まった。

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