ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
蒼い龍炎が、俺の拳を包み込む。
「うおおおっ!」
まずは一発。一番近くにいた兵士の怨霊を、炎をまとった拳でぶん殴る。黒い靄が弾け、奴の身体が光に変わって霧散した。そのまま右の肘を、横から迫る僧侶の顔面に叩き込む。骨を砕く感触はない。ただ、蒼い炎が怨霊を包み、光へと還していく。
「次!」
俺は倒れた敵を踏み越えて、さらに前へ出た。群れの中央へ、自分から飛び込んでいく。背後には教会。振り返らずとも、芹亜の声は聞こえている。あの細い歌声が、まだ途切れていない。
テガソードを抜く。蒼い龍炎が刀身を這い、刃の先から炎の尾を引いた。横薙ぎの一閃。民衆の影が三体、まとめて光になる。返す刀で、教会へ向かおうとしていた兵士の腕を斬り落とす。奴が振り向くより早く、俺はその胸に拳をめり込ませていた。
「そっちは、行かせねえって言ってんだろ」
俺は、教会へ向かう敵を優先して叩き落とす。一匹でも通せば、芹亜の集中が途切れる。そうなれば、ジャンヌの怨念がどうなるかわからねえ。だからこそ、ここで全部止める。
右から僧侶、左から兵士。俺は一歩下がらず、拳と肘と斬撃を繋ぐ。殴り、蹴り、斬り、そしてまた殴る。蒼い炎が渦を巻き、俺の周囲の怨霊を次々と光へ変えていく。
「はあああっ!」
俺は群れの中央で、テガソードを大きく横に薙いだ。蒼い炎の弧が走り、周囲の怨霊が一斉に吹き飛ぶ。その隙に、さらに前へ踏み込む。群れの中央から、教会の反対側へ。敵を、芹亜から遠ざけるように押し返していく。
霧の麦畑を、蒼い龍炎が走り抜ける。教会の割れた窓からは、白い光が漏れ続けている。芹亜の歌声が、ジャンヌの怨念に届こうとしている。その光と、俺の蒼い炎が、壁一枚を挟んで呼応している。
(もう少しだな、芹亜)
俺は心の中で呟いた。口には出さない。振り返りもしない。ただ、途切れない歌声だけを確かめて、もう一度拳を握る。
「さあ、まだまだ相手になるぜ」
怨霊の軍勢は、まだ尽きない。霧の奥から、また新たな影がにじみ出てくる。兵士、僧侶、民衆。ジャンヌを見殺しにした者たちの、後悔か、それとも――。
「どっちでもいい。まとめてかかってこい」
俺は蒼い龍炎を全身にまとわせ、低く構えた。獣と龍の力を胸に、ただ前だけを見据えて。
その時だった。
それまでバラバラに襲いかかってきていた怨霊たちが、突如として動きを止めた。兵士も、僧侶も、民衆も、みな一斉に顔を上げ、虚空を見つめる。その虚ろな目が、じわじわと闇で満ちていく。
「なんだ……?」
俺はテガソードを構えたまま、一歩後ろに下がった。嫌な予感がする。こういう時ほど、俺の獣じみた勘はよく当たるのだ。
地面に、黒い紋章が浮かび上がっていた。ジャンヌの怨念から滲み出た闇が、石畳の上で脈打ちながら広がっていく。そして、その紋章を中心に、周囲の怨霊たちが引き寄せられるように集まり始めた。一体、また一体と、黒い靄が絡み合い、溶け合い、より大きな闇の塊へと変わっていく。
「融合する気か……!」
俺の目の前で、無数の怨霊が一つになり、巨大な怨念の塊が生まれようとしていた。もはや兵士でも僧侶でもない。ただジャンヌを火刑に追いやった人々の、集合的な罪の意識そのもの――そんな悍ましい形が、霧の中から立ち上がる。
「これ以上でかくなられると、教会まで届きかねねえ」
俺はチラリと背後を振り返った。教会の割れた窓からは、相変わらず白い光が漏れている。芹亜の歌声も、まだ続いている。ならば、俺のやることは一つだ。
「でかすぎて狙いやすいってこともあるんだよ」
俺はテガソードを腰だめに構え、右脚に意識を集中させた。蒼い龍炎が、膝から爪先へと流れ込み、刀身が共鳴して震える。足の裏で石畳が熱を持ち、周囲の空気が歪み始めた。
テガソードが音声を発する。
『クローズ! フィニッシュ!』
瞬間、俺の背後に巨大な龍の幻影が浮かび上がった。蒼い炎でできた龍が、口を開き、翼を広げ、天を仰ぐ。その姿は、この異界の霧を根本から揺るがすほどの威圧感を放っていた。
「一気にぶっ飛ばす!」
俺は跳躍した。龍の幻影が、俺の動きに同調して空へ昇る。霧が渦を巻いて裂け、教会の鐘が一際高く鳴り響いた。まるで、この瞬間を待っていたかのように。
『ドラゴニックフィニッシュ!』
空中で、俺は右脚を突き出した。蒼い炎が一点に収束し、龍の咆哮と共に、巨大な怨念の中心へ向かって急降下する。
「うおおおおっ!」
俺の蹴りが、怨念のど真ん中を貫いた。蒼い龍炎が、闇の塊を内側から食い破り、無数の怨霊を一瞬で光へと変えていく。衝撃は渦となって軍勢全体へ伝わり、兵士も僧侶も民衆も、みな等しく霧の彼方へと消え去った。
地面に降り立った時には、もう、あれだけいた怨霊の軍勢は一体も残っていなかった。
ただ、石畳の上に、黒い紋章の欠片だけが、静かに横たわっている。ジャンヌの怨念の名残か、あるいは、これから芹亜が向き合うべきものか。