ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSゴーストコンサート : missing Songs ユニバースライダー大戦 作:ボルメテウスさん
蔵への経本運びが一段落し、俺たちが縁側で汗を拭いていると、山門の方から軽やかな足音が聞こえてきた。それも、一人分ではない。もう一人、誰かと一緒にいるようだ。
「ただいま戻りました」
楓の声だ。さっきまで疲れ切った様子で座り込んでいた彼女が、今は背筋を伸ばして立っている。その隣には、見知らぬ女生徒が一人、優雅な微笑みを浮かべて立っていた。
中性的な美貌。背筋をしなやかに伸ばした立ち姿。風に揺れる髪は、光の加減で銀にも金にも見える不思議な色合いだった。制服の上からでもわかる、舞台役者のような所作。そして何より、その瞳には人を惹きつけるカリスマのようなものが宿っている。
「おや、お客様かな」
陸王が、いつもの人たらしスマイルで迎えようとする。だが、俺はその女生徒から妙な気配を感じ取って、無意識に眉をひそめていた。
「皆さん、紹介します」
楓が一歩横にずれ、女生徒を俺たちの方へと促した。
「こちらは天馬薫さん。私と同じ学校で、演劇部の部長をされています」
「天馬薫です」
その声は、よく通った。まるで、舞台の上から客席の隅々にまで届くように計算された発声。彼女は軽く会釈をすると、俺たち一人ひとりをゆっくりと見渡した。
「本日は、我が演劇部の主役候補である西園寺楓さんについて、しかるべき保護者の方にご挨拶をと思いまして。寺の方々とお聞きしましたので」
「保護者って…」
俺が口を開きかけると、天馬はくすりと笑った。
「おや、失礼。ですが、楓さんがこちらでお世話になっていると伺いましたので。…ふむ、なかなか味のある舞台装置ですね、この寺は」
彼女は境内を見回しながら、芝居がかった仕草で顎に手を当てる。
「苔むした石灯籠、古びた本堂、そして蝉の声。これはこれは、夏の終わりの一幕として、実に趣深い」
「あの、薫さん…」
楓が、やや困惑した様子で彼女を制しようとした。どうやらこの天馬という女生徒、普段からこんな調子らしい。
その時だった。
かちゃん、という小さな金属音が、縁側の石畳に響いた。
天馬の懐から、何かが落ちたのだ。彼女が楓を振り返った拍子に、制服のポケットから滑り落ちたのだろう。それは、腕時計を思わせる円形のアイテム。表面には、サソリのような紋章が刻まれている。
「あっ…」
芹亜が小さく声を上げた。俺も、息を呑む。
ライドウォッチ。
それは、俺たちが追っているユニバースライダーだけが持つ、変身用のアイテムだった。歴代仮面ライダーの力を宿し、装着者に異能の力を与える鍵。そして、それを奪わなければ、俺たちは元の世界に戻れない。
天馬は、落ちたライドウォッチをゆっくりと拾い上げた。その動作は、慌てるでもなく、隠すでもない。むしろ、舞台の小道具を扱うかのような優雅さがあった。
「おやおや、これは失礼。子猫ちゃんたちに見せるには、少し早い幕間だったかな」
彼女はライドウォッチを指先でくるりと回し、それから俺たちに向かって微笑んだ。
「どうやら、ただのご挨拶だけでは済まないようだ」
陸王が、さりげなく俺の前に出る。その手は、すでにセンタイリングを掴んでいた。芹亜も、胸元に手を当てて警戒している。楓だけが、状況を飲み込めずに困惑した表情で俺たちと天馬を交互に見ていた。
「あの、何が…」
「楓、下がってろ」
俺は短く言い放ち、天馬をまっすぐに見据えた。
「てめえ、ユニバースライダーだな」
天馬薫は、その中性的な美貌に、舞台役者のような不敵な笑みを浮かべた。
「これは驚いた。まさか、君たちがその言葉を知っているとは。…ふむ、なるほど。君たちが噂の〝ユニバース戦士〟というわけか」
彼女はライドウォッチを胸の前で掲げ、まるでシェイクスピアの一幕を演じるかのように、朗々と宣言した。
「ならば、幕を上げようじゃないか。ここを舞台に、我々の物語を紡ごうではないか」