「壊せる者は、壊さない」   作:東洋コッペ

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第1話「レベル1」

最初に“それ”に気づいたのは、小学六年の夏だった。

 

 放課後。人気のない帰り道。

 いつもと変わらない景色のはずなのに、その日だけは違った。

 

 ——何かがいる。

 

 視界の端に、妙な違和感が引っかかった。

 

 振り向く。

 

 そこには、人の形をしていない“何か”がいた。

 

 歪んでいる。濁っている。見ているだけで不快になる存在。

 だが、不思議と恐怖はなかった。

 

 それよりも先に、別のものが目に入った。

 

 ——Lv.1

 

 空中に浮かぶ、小さな数字。

 

「……なんだこれ」

 

 思わず呟く。

 瞬きをしても消えない。目を擦っても変わらない。

 

 そして気づく。

 

 その“何か”にも、同じように数字が浮かんでいた。

 

 ——Lv.1

 

 同じだ。

 

 理解はしていない。だが、直感だけはあった。

 

 これは、強さだ。

 

 だったら——

 

「倒したら、どうなる?」

 

 口に出してから、自分で少し驚いた。

 普通なら逃げる場面だ。なのに、自分の頭はそれを前提にしていない。

 

 むしろ。

 

 面白そうだ、とすら思っている。

 

 理由は分からない。ただ、そう思ってしまった。

 

 足を踏み出す。

 

 距離を詰める。

 

 拳を握る。

 

 そして、そのまま殴った。

 

 手応えは薄い。

 けれど確かに、“当たった”という感覚はあった。

 

 次の瞬間。

 

 それは、消えた。

 

 まるで最初から存在しなかったかのように、跡形もなく。

 

 同時に。

 

 視界に浮かぶ数字が、変わる。

 

 ——Lv.2

 

「……上がった」

 

 思わず声が漏れる。

 

 理解する。

 

 これはゲームだ。

 

 敵を倒せば、レベルが上がる。

 レベルが上がれば、強くなる。

 

 それだけの、シンプルなルール。

 

 だけど。

 

「……めちゃくちゃ楽しいな」

 

 自然と笑みがこぼれた。

 

 その日から、日常が変わった。

 

 放課後、寄り道をするようになった。

 夜、こっそり家を抜け出すようになった。

 

 目的は一つ。

 

 “あれ”を探すこと。

 

 見つけて、倒すこと。

 

 最初は手探りだった。

 どこにいるのかも、どうすれば効率よく見つかるのかも分からない。

 

 それでも繰り返す。

 

 倒す。

 

 倒す。

 

 倒す。

 

 気づけば、身体が軽くなっていた。

 動きが速くなっていた。

 感覚が研ぎ澄まされていた。

 

 そして。

 

 ——Lv.7

 

 数字は、確実に増えていた。

 

「まだいけるな」

 

 確信があった。

 

 この成長には、上限があるはずだ。

 そして、自分はそこまで辿り着ける。

 

 理由はない。ただ、分かる。

 

 だから続ける。

 

 その日の帰り道も、同じだった。

 

 いつものように、“それ”を見つける。

 

 いつものように、距離を詰める。

 

 そして——

 

「へぇ」

 

 背後から、声がした。

 

 反射的に振り向く。

 

 そこに立っていたのは、一人の男だった。

 

 白い髪。黒い服。目元は隠れているのに、なぜか視線が合っている気がする。

 

 軽い雰囲気。だが——

 

(……強い)

 

 一瞬で分かった。

 

 今まで見てきた何よりも、圧倒的に。

 

「それ、術式でしょ?」

 

 男が言う。

 

 軽い口調だった。

 

「……多分」

 

 正直に答える。

 

 まだよく分かっていない。

 でも、否定はできない。

 

「自覚ないのに使ってるの、だいぶヤバいね」

 

 楽しそうに笑う男。

 

 そして、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

 

 距離が縮まる。

 

 逃げようとは思わなかった。

 逃げられる気もしなかったし、何より——

 

 興味の方が勝っていた。

 

「名前は?」

 

「九条、遊真」

 

「そっか」

 

 男は小さく頷く。

 

 そして、少しだけ間を置いてから言った。

 

「僕が面倒見てあげるよ」

 

「……は?」

 

 思わず間の抜けた声が出る。

 

「もっと強くなりたいでしょ?」

 

 迷いはなかった。

 

「なりたい」

 

 即答だった。

 

 男は満足そうに笑う。

 

「いいね」

 

 そして、続ける。

 

「じゃあ、壊れないようにしようか」

 

 その言葉の意味は、まだ分からない。

 

 ただ一つだけ、はっきりしていた。

 

 この人についていけば、もっと強くなれる。

 

 それだけで十分だった。

 

 この日を境に、九条遊真の“ゲーム”は変わる。

 

 ただ強くなるだけじゃない。

 

 どこまで行けるのか。

 

 どこまで行っても、戻ってこれるのか。

 

 その答えを探すような——

 

 そんな戦いが、ここから始まる。




■ 主人公

九条 遊真(くじょう ゆうま)

一般家庭出身の少年。
小学生の頃に術式へと覚醒し、「強くなること」に対して強い興味と執着を持つ。

合理的で冷静な性格だが、根本には人間らしさを持っている。

■ 術式「RPG」

呪霊や術師を倒すことで経験値を獲得し、“レベル”として成長する術式。

レベルアップにより呪力量や身体能力が上昇する。
一方で、訓練では技術のみが向上する。

強さの大部分がレベルに依存する、非常に特殊な能力。

■ 職業(ジョブ)システム

一定レベルに到達することで「職業」を選択・変更できる。

職業ごとに戦闘スタイルや能力が変化し、
レベル20で転職が可能。

能力値は引き継がれるが、新たな職業はレベル1から再スタートとなる。

また、職業は精神にも影響を与える性質を持つ。

■ レベルと成長

最大レベルは99。

レベルが上がるほど能力は飛躍的に向上するが、
一定以上になると精神への負荷も

■ 物語について

本作は、強さを追い求める一人の術師が、
その力と向き合い続ける過程を描く物語です。

原作の流れをベースにしつつ、
独自設定や解釈を含む展開があります。
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