「壊せる者は、壊さない」   作:東洋コッペ

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第18話「支える強さ」

了解、そのままコピペで使える完成版まとめる 

 

 

旅芸人になって最初に感じたのは、違和感だった。

戦い方が変わっている。踏み込む衝動ではなく、どう動かすかという思考が先に立つ。

 

どこに立つか。誰を動かすか。どこに流れを作るか。

一人で倒す発想が消え、全体の最適が先に浮かぶ。

 

その感覚にわずかなズレを覚えたまま、目の前の呪霊を見る。

 

廃ビル上層。コンクリート剥き出しの空間に、濃い気配が満ちている。

特級一歩手前。人型に近いが、内部で呪力が渦巻いている。

 

禪院真希が前に出る。

重心はすでに前、踏み込みの直前で止まっている。

 

「遅いな」

 

「今回は任せる」

 

そう言った瞬間、真希が露骨に眉をひそめる。

 

「は?」

 

説明する前に、呪霊が動いた。

 

「——裂けろ」

 

空間が縦に割れる。見えない刃が床から天井まで走る。

一歩引いて軌道を外す。そのまま視線を真希へ移す。

 

呪力を“流す”。押すのではなく、重ねる。

踏み込みの軌道に沿わせ、加速を上乗せする。

 

次の瞬間、真希の身体が弾けた。

 

「……なんだこれ」

 

踏み込みが一度で終わらない。連続して伸びる。

床を蹴る音が消え、距離が削り取られる。

 

呪霊が反応する前に、間合いへ入る。

 

「遅ぇ」

 

斬撃が走る。

だが呪霊は身体を“ずらす”。直撃の瞬間だけ軸を外し、威力を逃がす。

 

「——返す」

 

腕が膨張し、棘が全方向へ放たれる。

 

避けない。

 

「パンダ」

 

パンダが前に出る。

同時に呪力を流す。骨格、厚み、衝撃吸収を底上げする。

 

「任せろ!」

 

棘が直撃する。だが貫かれない。衝撃が散る。

 

「おいおい、これやばいぞ……!」

 

余裕のある声。その裏で、流れは完全にこちらに傾いていた。

 

 

その隙に真希が踏み込む。

 

今度は動きに迷いがない。

一撃目で視線を引き、二撃目で軸を崩し、三撃目で仕留めに入る。

 

「終わりだ」

 

斬撃が核を捉える。

だが呪霊は崩れきらない。内部の密度が高い。

 

(硬いな)

 

視線だけを横へ滑らせる。

 

「棘」

 

狗巻棘に意識を向ける。

今度は“出力”を乗せる。呪言の強制力を底上げする。

 

「動くな」

 

空間が固定される。

呪霊の動きだけでなく、術式そのものが押し潰される。

 

「……強すぎだろ」

 

パンダが呟く。

 

止まった一瞬。真希が迷わず入る。

踏み込み、振り抜き、核を断つ。

 

呪霊が崩れる。

 

静寂。

 

身体が軽くなる。

 

(上がったな)

 

自分で倒していない。それでも上がる。

それだけでなく、流れが綺麗に繋がっている。

 

(一人より速い)

 

以前のような奪う感覚はない。

全体で成立している中に、自分がいる。

 

だが、そこで終わらない。

 

「まだいるな」

 

その言葉と同時に、奥の空間が歪む。

 

 

壁が捻じれ、空間が閉じる。逃げ場が消える。

同時に床から影が伸び、足を掴みに来る。

 

(拘束+圧縮か)

 

動かない。

代わりに呪力を広げる。

 

パンダに耐久、棘に出力、真希に速度と精度。

三方向同時に流す。

 

「そのまま行け」

 

真希が踏み込む。

影を踏み抜き、拘束を無視して前へ出る。

 

圧が収縮する。だが動きは止まらない。

 

「効かねぇよ」

 

速度が圧を上回る。

 

「止まれ」

 

空間が止まる。

 

その瞬間、パンダが突っ込む。

 

「砕けろォ!」

 

正面から叩き込み、空間ごと歪ませる。

核が露出する。

 

真希が入り、迷わず振り切る。

 

「終わり」

 

完全に断つ。

 

静寂が戻る。

 

身体が軽い。

だがそれ以上に、感覚が残る。

 

(完成してるな)

 

個ではなく、全体。

戦場そのものを動かす感覚。

 

「……悪くねぇな」

「むしろ強い」

「お前いるだけでゲーム変わるぞ」

「しゃけ」

 

 

任務が終わる。

 

帰り道、校舎の前に一人の影が立っている。

 

「……久しぶりだな」

 

伏黒恵が顔を上げる。

 

「……先輩」

 

「ちゃんと来たか」

「はい」

 

少し間が空く。

 

「強くなったか?」

「それなりに」

 

変わらない返しに、小さく笑う。

 

「まあ、これからだな」

 

伏黒がわずかに視線を上げる。

 

「……先輩、変わりましたね」

「そうか?」

「前はもっと……怖かったです」

 

少しだけ間。

 

「今は?」

「……普通です。話しやすい」

 

「そりゃよかった」

 

並んで歩く。無理に引っ張らない。

ただ横にいる。

 

「困ったら言え。先輩だからな」

「はい」

 

空を見上げる。

 

軽い。以前よりも。

 

一人で積み上げる強さではない。

支えることで進む形。

 

それもまた、強さだった。

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