「壊せる者は、壊さない」   作:東洋コッペ

23 / 35
第23話「教えるということ」

合同訓練の話が出たのは、少年院任務の数日後だった。

 

「全学年でやるよ」

 

軽い調子で言ったのは 五条悟 だった。

 

「一年から三年まで混ぜて、実戦形式」

 

その言葉に、虎杖悠仁 が目を輝かせる。

 

「楽しそうっすね!」

 

「でしょ?」

 

五条は笑う。

 

「あと、九条が教える側ね」

 

その一言で、空気が止まる。

 

「……は?」

 

「三年なんだから当然でしょ」

 

「向いてない」

 

「知ってる」

 

「じゃあやめろ」

 

「やらせる」

 

完全に押し切られた。

 

 

訓練当日。

 

一年から三年までが揃う。

 

視線が自然と集まる。

 

遊真は少しだけ考えた。

 

「……動け」

 

沈黙。

 

「それだけ?」

 

釘崎野薔薇 が言う。

 

「基本だ」

 

「雑すぎでしょ」

 

「でもまあ」

 

虎杖が笑う。

 

「間違ってはないっす」

 

伏黒も頷く。

 

「意図は分かります」

 

 

実際に動かすと、指示は的確だった。

 

「遅い」

 

「詰めすぎ」

 

「引け」

 

だが理由は言わない。

 

「だからなんで!?」

 

虎杖が叫ぶ。

 

「感覚だ」

 

「それ一番困るやつ!」

 

 

釘崎が呆れる。

 

「完全にできる人の教え方じゃない」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

伏黒が静かに言う。

 

「でも、改善はしてます」

 

結果だけは出ていた。

 

 

その様子を少し離れた場所で見ていた五条が笑う。

 

「ひどいねぇ」

 

だが楽しそうだった。

 

 

その時だった。

 

新しい気配が入る。

 

「来たか」

 

五条が言う。

 

現れたのは、東堂葵 と 禪院真依。

 

京都校。

 

空気がわずかに変わる。

 

 

東堂は真っ直ぐ遊真を見る。

 

「久しいな」

 

「……ああ」

 

京都での任務以来の再会。

 

「変わったな」

 

東堂が言う。

 

「纏うものが違う」

 

「そうか」

 

短く返す。

 

 

真依が横でため息をつく。

 

「ほんと別人ね」

 

「前はもっとヤバかったでしょ」

 

「今はマシ」

 

「一応褒めてるわよ」

 

 

東堂が一歩前に出る。

 

その動きに、東京校の面々がわずかに身構える。

 

そして。

 

「女のタイプは?」

 

一瞬で空気が止まった。

 

 

「……は?」

 

釘崎が固まる。

 

「え?」

 

虎杖も止まる。

 

伏黒は完全に無言になる。

 

誰も意味を理解できていない。

 

 

真依だけが、深くため息をついた。

 

「またそれ?」

 

完全に呆れている。

 

「ほんとブレないわね」

 

 

東堂は気にしない。

 

視線は遊真に固定されたまま。

 

「答えろ」

 

真剣だった。

 

 

少しだけ考える。

 

だが、答えはすぐに出る。

 

「お姫様」

 

短く言う。

 

 

沈黙。

 

 

「……は?」

 

釘崎がもう一度言う。

 

「どういうこと?」

 

虎杖が混乱する。

 

伏黒が小さく呟く。

 

「意外すぎる」

 

 

真依が吹き出す。

 

「何それ」

 

「そのままだ」

 

遊真は淡々と返す。

 

「守る対象として分かりやすい」

 

 

「いや意味わかんないんだけど!」

 

釘崎がツッコむ。

 

「分かる必要はない」

 

「あるでしょ!」

 

 

虎杖が笑う。

 

「でもなんか、九条先輩っぽいっす」

 

「どこがだ」

 

「なんとなくです!」

 

 

伏黒が静かに言う。

 

「……守る、という点では一貫してます」

 

その言葉に、少しだけ間が空く。

 

 

東堂がゆっくりと頷く。

 

「いい」

 

低く言う。

 

「実にいい」

 

満足そうだった。

 

「芯がある」

 

 

「いや分かんないって!」

 

釘崎がまだ言っている。

 

 

東堂がさらに続ける。

 

「認めよう」

 

「親友だ」

 

「違う」

 

即答した。

 

 

真依が呆れながら言う。

 

「勝手に決めないでよ」

 

 

周囲に笑いが広がる。

 

緊張が解ける。

 

 

遊真はその光景を見ていた。

 

騒がしい。

 

まとまりがない。

 

だが。

 

「……悪くないな」

 

小さく呟く。

 

 

少しずつだが、確実に変わっている。

 

自分も。

 

周りも。

 

 

そう思えた。




【東堂の問い「好きな女のタイプは?」に対する各キャラの内心】

■ 禪院真希
「……ブレてないな」
戦闘スタイルと同じく、“守る側”に回る思想が一貫していると感じている。納得はしているが、あえて口には出さない。

■ パンダ
「意外とロマンチストか?」
もっと現実的な答えを想像していたため少し驚くが、どこか“らしい”とも思っている。

■ 狗巻棘
「しゃけ(守る人なんだな)」
言葉には出さないが、戦闘時の立ち回りと結びつけて理解している。

■ 釘崎野薔薇
「意味わかんないんだけど!?」
価値観として全く共感できず混乱。ただし“悪い意味ではない”ことはなんとなく感じている。

■ 虎杖悠仁
「なんか九条先輩っぽいな」
細かい意味は理解していないが、“守る人”というイメージと一致しており素直に納得している。

■ 伏黒恵
「……やっぱりそういう人だ」
言語化はしないが、行動原理と完全に一致していると理解している。違和感はない。

■ 五条悟
「いいね、ちゃんと人間してる」
過去の状態を知っているからこそ、“誰かを守る前提の思考”に変わったことを内心で評価している。

■ 東堂葵
「芯がある。良い」
即座に評価。思想として一貫性があり、戦闘観とも結びついているため高評価。

■ 禪院真依
「また面倒くさいやつに気に入られたわね」
東堂が食いついたことに呆れつつも、回答自体には少しだけ納得している。ただし口には出さない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。