「壊せる者は、壊さない」   作:東洋コッペ

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第23話「教えるということ」

合同訓練の話が出たのは、少年院任務の数日後だった。

 

「全学年でやるよ」

 

軽い調子で言ったのは 五条悟 だった。

 

「一年から三年まで混ぜて、実戦形式」

 

その言葉に、虎杖悠仁 が目を輝かせる。

 

「楽しそうっすね!」

 

「でしょ?」

 

五条は笑う。

 

「あと、九条が教える側ね」

 

その一言で、空気が止まる。

 

「……は?」

 

「三年なんだから当然でしょ」

 

「向いてない」

 

「知ってる」

 

「じゃあやめろ」

 

「やらせる」

 

完全に押し切られた。

 

⸻

 

訓練当日。

 

一年から三年までが揃う。

 

視線が自然と集まる。

 

遊真は少しだけ考えた。

 

「……動け」

 

沈黙。

 

「それだけ?」

 

釘崎野薔薇 が言う。

 

「基本だ」

 

「雑すぎでしょ」

 

「でもまあ」

 

虎杖が笑う。

 

「間違ってはないっす」

 

伏黒も頷く。

 

「意図は分かります」

 

⸻

 

実際に動かすと、指示は的確だった。

 

「遅い」

 

「詰めすぎ」

 

「引け」

 

だが理由は言わない。

 

「だからなんで!?」

 

虎杖が叫ぶ。

 

「感覚だ」

 

「それ一番困るやつ!」

 

⸻

 

釘崎が呆れる。

 

「完全にできる人の教え方じゃない」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

伏黒が静かに言う。

 

「でも、改善はしてます」

 

結果だけは出ていた。

 

⸻

 

その様子を少し離れた場所で見ていた五条が笑う。

 

「ひどいねぇ」

 

だが楽しそうだった。

 

⸻

 

その時だった。

 

新しい気配が入る。

 

「来たか」

 

五条が言う。

 

現れたのは、東堂葵 と 禪院真依。

 

京都校。

 

空気がわずかに変わる。

 

⸻

 

東堂は真っ直ぐ遊真を見る。

 

「久しいな」

 

「……ああ」

 

京都での任務以来の再会。

 

「変わったな」

 

東堂が言う。

 

「纏うものが違う」

 

「そうか」

 

短く返す。

 

⸻

 

真依が横でため息をつく。

 

「ほんと別人ね」

 

「前はもっとヤバかったでしょ」

 

「今はマシ」

 

「一応褒めてるわよ」

 

⸻

 

東堂が一歩前に出る。

 

その動きに、東京校の面々がわずかに身構える。

 

そして。

 

「女のタイプは?」

 

一瞬で空気が止まった。

 

⸻

 

「……は?」

 

釘崎が固まる。

 

「え?」

 

虎杖も止まる。

 

伏黒は完全に無言になる。

 

誰も意味を理解できていない。

 

⸻

 

真依だけが、深くため息をついた。

 

「またそれ?」

 

完全に呆れている。

 

「ほんとブレないわね」

 

⸻

 

東堂は気にしない。

 

視線は遊真に固定されたまま。

 

「答えろ」

 

真剣だった。

 

⸻

 

少しだけ考える。

 

だが、答えはすぐに出る。

 

「お姫様」

 

短く言う。

 

⸻

 

沈黙。

 

⸻

 

「……は?」

 

釘崎がもう一度言う。

 

「どういうこと?」

 

虎杖が混乱する。

 

伏黒が小さく呟く。

 

「意外すぎる」

 

⸻

 

真依が吹き出す。

 

「何それ」

 

「そのままだ」

 

遊真は淡々と返す。

 

「守る対象として分かりやすい」

 

⸻

 

「いや意味わかんないんだけど!」

 

釘崎がツッコむ。

 

「分かる必要はない」

 

「あるでしょ!」

 

⸻

 

虎杖が笑う。

 

「でもなんか、九条先輩っぽいっす」

 

「どこがだ」

 

「なんとなくです!」

 

⸻

 

伏黒が静かに言う。

 

「……守る、という点では一貫してます」

 

その言葉に、少しだけ間が空く。

 

⸻

 

東堂がゆっくりと頷く。

 

「いい」

 

低く言う。

 

「実にいい」

 

満足そうだった。

 

「芯がある」

 

⸻

 

「いや分かんないって!」

 

釘崎がまだ言っている。

 

⸻

 

東堂がさらに続ける。

 

「認めよう」

 

「親友だ」

 

「違う」

 

即答した。

 

⸻

 

真依が呆れながら言う。

 

「勝手に決めないでよ」

 

⸻

 

周囲に笑いが広がる。

 

緊張が解ける。

 

⸻

 

遊真はその光景を見ていた。

 

騒がしい。

 

まとまりがない。

 

だが。

 

「……悪くないな」

 

小さく呟く。

 

⸻

 

少しずつだが、確実に変わっている。

 

自分も。

 

周りも。

 

⸻

 

そう思えた。




【東堂の問い「好きな女のタイプは?」に対する各キャラの内心】

■ 禪院真希
「……ブレてないな」
戦闘スタイルと同じく、“守る側”に回る思想が一貫していると感じている。納得はしているが、あえて口には出さない。

■ パンダ
「意外とロマンチストか?」
もっと現実的な答えを想像していたため少し驚くが、どこか“らしい”とも思っている。

■ 狗巻棘
「しゃけ(守る人なんだな)」
言葉には出さないが、戦闘時の立ち回りと結びつけて理解している。

■ 釘崎野薔薇
「意味わかんないんだけど!?」
価値観として全く共感できず混乱。ただし“悪い意味ではない”ことはなんとなく感じている。

■ 虎杖悠仁
「なんか九条先輩っぽいな」
細かい意味は理解していないが、“守る人”というイメージと一致しており素直に納得している。

■ 伏黒恵
「……やっぱりそういう人だ」
言語化はしないが、行動原理と完全に一致していると理解している。違和感はない。

■ 五条悟
「いいね、ちゃんと人間してる」
過去の状態を知っているからこそ、“誰かを守る前提の思考”に変わったことを内心で評価している。

■ 東堂葵
「芯がある。良い」
即座に評価。思想として一貫性があり、戦闘観とも結びついているため高評価。

■ 禪院真依
「また面倒くさいやつに気に入られたわね」
東堂が食いついたことに呆れつつも、回答自体には少しだけ納得している。ただし口には出さない。
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