合同訓練の話が出たのは、少年院任務の数日後だった。
「全学年でやるよ」
軽い調子で言ったのは 五条悟 だった。
「一年から三年まで混ぜて、実戦形式」
その言葉に、虎杖悠仁 が目を輝かせる。
「楽しそうっすね!」
「でしょ?」
五条は笑う。
「あと、九条が教える側ね」
その一言で、空気が止まる。
「……は?」
「三年なんだから当然でしょ」
「向いてない」
「知ってる」
「じゃあやめろ」
「やらせる」
完全に押し切られた。
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訓練当日。
一年から三年までが揃う。
視線が自然と集まる。
遊真は少しだけ考えた。
「……動け」
沈黙。
「それだけ?」
釘崎野薔薇 が言う。
「基本だ」
「雑すぎでしょ」
「でもまあ」
虎杖が笑う。
「間違ってはないっす」
伏黒も頷く。
「意図は分かります」
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実際に動かすと、指示は的確だった。
「遅い」
「詰めすぎ」
「引け」
だが理由は言わない。
「だからなんで!?」
虎杖が叫ぶ。
「感覚だ」
「それ一番困るやつ!」
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釘崎が呆れる。
「完全にできる人の教え方じゃない」
「そうか?」
「そうよ」
伏黒が静かに言う。
「でも、改善はしてます」
結果だけは出ていた。
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その様子を少し離れた場所で見ていた五条が笑う。
「ひどいねぇ」
だが楽しそうだった。
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その時だった。
新しい気配が入る。
「来たか」
五条が言う。
現れたのは、東堂葵 と 禪院真依。
京都校。
空気がわずかに変わる。
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東堂は真っ直ぐ遊真を見る。
「久しいな」
「……ああ」
京都での任務以来の再会。
「変わったな」
東堂が言う。
「纏うものが違う」
「そうか」
短く返す。
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真依が横でため息をつく。
「ほんと別人ね」
「前はもっとヤバかったでしょ」
「今はマシ」
「一応褒めてるわよ」
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東堂が一歩前に出る。
その動きに、東京校の面々がわずかに身構える。
そして。
「女のタイプは?」
一瞬で空気が止まった。
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「……は?」
釘崎が固まる。
「え?」
虎杖も止まる。
伏黒は完全に無言になる。
誰も意味を理解できていない。
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真依だけが、深くため息をついた。
「またそれ?」
完全に呆れている。
「ほんとブレないわね」
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東堂は気にしない。
視線は遊真に固定されたまま。
「答えろ」
真剣だった。
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少しだけ考える。
だが、答えはすぐに出る。
「お姫様」
短く言う。
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沈黙。
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「……は?」
釘崎がもう一度言う。
「どういうこと?」
虎杖が混乱する。
伏黒が小さく呟く。
「意外すぎる」
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真依が吹き出す。
「何それ」
「そのままだ」
遊真は淡々と返す。
「守る対象として分かりやすい」
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「いや意味わかんないんだけど!」
釘崎がツッコむ。
「分かる必要はない」
「あるでしょ!」
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虎杖が笑う。
「でもなんか、九条先輩っぽいっす」
「どこがだ」
「なんとなくです!」
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伏黒が静かに言う。
「……守る、という点では一貫してます」
その言葉に、少しだけ間が空く。
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東堂がゆっくりと頷く。
「いい」
低く言う。
「実にいい」
満足そうだった。
「芯がある」
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「いや分かんないって!」
釘崎がまだ言っている。
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東堂がさらに続ける。
「認めよう」
「親友だ」
「違う」
即答した。
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真依が呆れながら言う。
「勝手に決めないでよ」
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周囲に笑いが広がる。
緊張が解ける。
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遊真はその光景を見ていた。
騒がしい。
まとまりがない。
だが。
「……悪くないな」
小さく呟く。
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少しずつだが、確実に変わっている。
自分も。
周りも。
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そう思えた。
【東堂の問い「好きな女のタイプは?」に対する各キャラの内心】
■ 禪院真希
「……ブレてないな」
戦闘スタイルと同じく、“守る側”に回る思想が一貫していると感じている。納得はしているが、あえて口には出さない。
■ パンダ
「意外とロマンチストか?」
もっと現実的な答えを想像していたため少し驚くが、どこか“らしい”とも思っている。
■ 狗巻棘
「しゃけ(守る人なんだな)」
言葉には出さないが、戦闘時の立ち回りと結びつけて理解している。
■ 釘崎野薔薇
「意味わかんないんだけど!?」
価値観として全く共感できず混乱。ただし“悪い意味ではない”ことはなんとなく感じている。
■ 虎杖悠仁
「なんか九条先輩っぽいな」
細かい意味は理解していないが、“守る人”というイメージと一致しており素直に納得している。
■ 伏黒恵
「……やっぱりそういう人だ」
言語化はしないが、行動原理と完全に一致していると理解している。違和感はない。
■ 五条悟
「いいね、ちゃんと人間してる」
過去の状態を知っているからこそ、“誰かを守る前提の思考”に変わったことを内心で評価している。
■ 東堂葵
「芯がある。良い」
即座に評価。思想として一貫性があり、戦闘観とも結びついているため高評価。
■ 禪院真依
「また面倒くさいやつに気に入られたわね」
東堂が食いついたことに呆れつつも、回答自体には少しだけ納得している。ただし口には出さない。