荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど、私は元気です りろーでっど   作:ラッドローチ2

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そんなわけで、やっちゃいました過去作のリメイク。
一部設定を変更、全文章を三人称化など色々と変えていったりする予定です。
前作を読んでた人でも楽しめる!ようにしたいなぁ。


01 定期収入って大事だよね

 

その世界は、荒れ果てていた。

 

かつて昔、世界中の軍事基地から誰も命令していないのに放たれたミサイルに、暴走した自動殺戮兵器、更にどこからともなく現れたバイオモンスター。

 

ソレらが巻き起こした暴虐は、緩慢な死へと向かっていた惰弱な人類社会にとって致命的な傷を作り、その傷から立ち直れなかった文明社会は容易く沈黙した。

 

 

様々な生命を育んできた大地は割け、生命の源と呼ばれていた母なる海は汚染され。

 

人が作り上げた都市も建物も瓦礫と化し、人類はそのまま滅亡を迎えると思われた……のだが。

 

それでも人類は死滅する事なく、日々命をすり潰されながらも順応し生き足掻いていた。

 

しかし、生態系の汚染によって理を歪められ人の命を枯草のように刈り取る生物に、研究施設から逃げ出した野生化することで更に狂暴化したバイオモンスター。

 

そして、人類社会へ致命傷を負わせたあの日から……制御を受け付けなくなった殺戮機械達。

 

ソレらに加え自らの欲望を満たすために同族を食い物にする悪逆の徒らにより、生き残っていた人類は更なる窮地へと立たされていた。

 

 

しかし、それでも。

 

かつて栄華を誇っていた人類が生み出した兵器『戦車』を乗りこなし、人に仇なす存在を狩るもの達がいた。

 

そんな、明日とも知れない命を投げ捨てるかのように戦う彼らを、人々は畏怖を込めてこう呼んだ。

 

『モンスターハンター』と。

 

 

 

 

 

 

 アサノ=ガワの町にある酒場の中でも、最も大きい酒場である『驚愕の騾馬』亭。

 

 店内では、古ぼけたジュークボックスが適当なミュージックを流し……強面の堅気には見えない風貌の男女が酒を酌み交わしていて。

 

 そんな、真昼間から退廃的な空間が広がる酒場のたてつけの悪い扉が軋み、開く音が響く。

 

 

 入ってきたのは筋骨隆々で顔に痣を持つ強面の男…。

 

 

 と言う事はなく、肩に荷物が入っているらしい背負い袋を背負った140cm程の小柄な体躯に、その顔に幼さが残る可愛らしい顔付きの少女で。

 

 頭に巻いたバンダナや、使い古した皮製のツナギである程度緩和されてはいるものの、しかしその空間に似つかわしくない事は変わらなかった。

 

 そんな場違いとも言える少女、そんな存在に一瞬注目が集まるが……荒くれ共からヤジが飛ぶことはなく。

 

 

「よーぅアルトちゃん、今日も納品かーい?」

 

 

 むしろ、入り口に近い席に座っていた適度に酔っ払った……スキンヘッドが特徴な常連ソルジャーから気さくに声をかけられている事。

 

 その事がアルト、と呼ばれた少女がこの店にとって馴染みの存在である事を証明していた。

 

 少女は、そんな荒くれの声に愛想笑いを浮かべて軽く会釈をしつつ、グラスを磨いているやる気がなさそうなマスターへ歩み寄り……。

 

 

「マスター、依頼のぬめぬめ細胞にいもいも細胞、それと鳥のササミだよ!」

 

 

 背負っていた中身の詰まった袋をカウンターに置くと、更にビニール袋で小分けされている中身を店主の前で確認を求めるように広げていく。

 

 やる気のなさそうな店主は、グラスを磨いていた手を止めて無言で広げられたソレらを確認し……。

 

 

「…いつも通り、確実な仕事だな。 ほれ、代金だ」

 

 

 店主はやる気のなさそうな声で無愛想に少女を労い。

 

 アルトが持ち込んできた材料に応じた金額を用意し、袋に入れて少女へ手渡す。

 

 どこの酒場でも、今のやりとりのように酒のツマミの元となる素材の買取は行っているが……。

 

 

「しかし、あのアルトって娘も良く思いついたよな。ぬめぬめ細胞の安定供給なんてよ」

「全くだぜ、まぁおかげで俺達は安く美味いもんにありつけてるんだがよ」

 

 

 コレで酒も安くなりゃぁいい事尽くめなんだけどな、と誰かが呟きドっと酒場に笑いが沸き起こる。

 

 どこの酒場でも、モンスターハンターや旅人が持ち込んできたツマミの材料を買い取ると言う事は日常的に行っており、ハンターらにとっては良い小遣い稼ぎにもなっているが……。

 

 ソレらの供給は安定しているとは言い難く、自然と酒場が客へ提供する金額は割高になる傾向にある。

 

 しかし、そこに目を付けた少女……アルトが卸すようになってから状況に変化が訪れ、どこにでもある酒場の一つでもあった驚愕の騾馬亭は、今では安定して美味いものが安く食える店として町一番の酒場となっていた。

 

 

 

 

 

 

 そんな、酒場の荒くれ共にほっこりとした視線で見守られてるとは露知らず。

 

 鼻歌混じりに家路を歩く少女、アルトはと言えば。

 

 

「へっくし」

 

 

 小さなクシャミをしていた。

 

 

「…風邪、かなぁ」

 

 

 真っ当な経験と知識を持った医者が少ないこの世界において、風邪は容易く命を奪い得る。

 

 ついでに言えば、ハンターの友である回復カプセルはまだ安いが……風邪薬なんてもっとバカにならない、主に懐的な意味合いで。

 

 

「今日はもう、温かくして寝よう。そうしよう」

 

 

 つい多くなりがちな独り言をつぶやきつつ、少女は家路を急ぎ……。

 

 装備の点検は明日に回そう。そう心に決めて狭苦しくも素敵な我が家である……バラック小屋の鍵を開けて中に入る。

 

 一仕事を終えて帰宅した少女に対して『おかえり』、と声をかける家族もなく。

 

 かつては両親もいたけど今はいない、そんな環境で少女は日々を精一杯生きていた。

 

 

「……今日は特に冷えるなぁ」

 

 

 愛用のドラム缶風呂を沸かすのも億劫になった少女は、薄汚れたツナギを乱雑に脱ぎ捨てて寝間着へと着替え……。

 

 着替えの途中、見下ろした視線の先にある。 『記憶に残る前世』に比べ、胸が貧相であるどころかあばら骨すらもうっすら浮かんでる自らの体に重い溜息を吐く。

 

 

「なんでまた、こんな世界に産まれちゃったかなぁ……」

 

 

 誰も聞いてるはずのない、薄暗い部屋の中でお布団に包まりながら少女はやるせなさそうに呟く。

 

 少女には、生まれつき不思議な記憶があった。

 

 ソレは、厳しい環境に苛まれていくほどに違和感として少女の中から今の現状に対して訴えかけ続け……。

 

 その記憶は、皮肉にも少女の両親がトレーダーの護衛中に死んでから、少女の内部と完全に融合した。

 

 

「御飯は美味しくないし、下着も良いのがないし……」

 

 

 もぞもぞと寝返りを打ちつつ現状に対して不満を呟きつつ、少女の意識がゆっくりと眠気に降伏していく。

 

 

「……明日は、もっと頑張ろう」

 

 

 少しでも記憶に残る前世の生活に近づけようと心に誓いつつ。

 

 少女は、明日から頑張ると自分に言い聞かせて眠りの世界へと旅立った。

 

 




リメイクしたら、少しばかり文章が暗くなった不具合。
コレハ、早い段階ですっとこハスキーを出すべきか…。

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