荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど、私は元気です りろーでっど   作:ラッドローチ2

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リメイク前は割ととんとん拍子で探索できていた施設。
だがしかし……。

>何かあの世界だから腐リーマンがワラワラと来そうなフラグ気のせい?

感想のこの一言が、彼女の運命を決めた。しょうがないね!


05 探検はほどほどにした方が良いよね! いやまじで!

 

 

 

 今、少女の目の前でその口を開いている入口。

 

 ソレは、舞い上がった埃や今も軋んだ音を立てている金属音から……長年閉ざされたままであったことを知らしめていた。

 

 

「…………よしっ」

 

 

 ひとしきり乾いた笑い声を上げ、すっきりしたアルトは。

 

 自らの頬をぱしっと叩くと、屋内における頼みの綱とも言える32口径の頼もしい重みを再度確かめ……。

 

 地下への入り口の先にある、ハンドル式の重厚な扉を開けた。

 

 

「うわぁ……さっきのコンピュータもそうだったけども、この中電気が通っているんだ……」

 

 

 真っ暗な内部を想像していた少女の想いとは裏腹に、その内部は天井に未だ灯っている照明のおかげで十分な明るさが確保されていた。

 

 長い年月のせいか、時折明滅している事が少女の不安を煽りはするものの……。

 

 

「……うん、歩き回ってるセキュリティは。いなさそう」

 

 

 息を顰めて耳をすまし、もし内部をうろついているならば間違いなく響くであろう音が聞こえない事にアルトは安堵の溜息を吐き。

 

 気合を入れ直して、文明の残滓が色濃く残る通路を歩き始める。

 

 

「んぃー……?」

 

 

 ふと、何かが這いずった音がしたような気がして振り向きつつも何も見えず。

 

 少女は気のせいか、と違和感を頭の片隅に放り込み。宝探し気分で通路を進み……。

 

 歩き始めてから数分で、アルトはいくつかの部屋の入り口を発見。

 

 押しても引いてもビクともしないソレに溜息を吐き、扉の隣にあるカードリーダーに地下への入り口の鍵となった、IDカードを通す。すると……。

 

 

「おーー」

 

 

 若干軋んだ音を立てつつ、扉が開き……入口からでもわかるほどに、不快な何かが腐ったような臭いが少女の鼻を打ち据える。

 

 一瞬アルトは開いたことを後悔しつつも、何か掘り出し物はないかと物欲と期待の赴くままにさまざまな薬品が並んでいる、保管室のような部屋へと足を踏み入れ。

 

 そして、ふとした瞬間に何かを踏み付け……踏み付けたソレを見て、少女の顔は思い切り強張った。

 

 

「ぴ、ぴきゃぁぁぁ!?」

 

 

 踏んでしまったソレに、思わず尻もちをつく少女。

 

 アルトが踏んづけたモノソレは……。

 

 白衣を着た、元の顔がわからくなる程度に腐敗した仏様であった。

 

 

「な、なんまんだぶなんまんだぶ……」

 

 

 思わず両手を合わせ、荒廃したこの世界にいるかどうかは定かではない神仏に祈りをささげ。

 

 生まれたての小鹿のように足を震わせながらも、なんとか立ち上がった少女は……おっかなびっくり腐乱死体を跨ぎ、部屋の中へと進んでいく。

 

 幸か不幸か、この世界で生まれ育ってきた中で何回か死体を見てきたことで、豆腐メンタルでありつつも少女はなんとか気を持ち直す事に成功していた。

 

 

「う、うぅ。早くぱぱっと調べてぱぱっと帰ろう、そうしよう」

 

 

 半泣きになりつつも、資料やめぼしい薬剤をアルトは袋へ詰め込んでいく。

 

 小心者ではあるが、日々の生活を少しでも豊かにするための努力は欠かさないアルトであった。

 

 

「この部屋は、これくらいかなぁ……あ、状態の良い拳銃ある、けど…………」

 

 

 綺麗であるはずの床や壁に、不自然な沁みがあるところに弾を撃ちきった拳銃を発見し屈むアルト。

 

 ソレを不思議そうに拾い上げたその時、アルトは不穏な何かが這いずる音と気配を背後に感じ……。

 

 当たらないでほしい祈りながら、今この時もガンガンと警鐘を鳴らしてる嫌な予感に背後を振り向く。

 

 そこには。

 

 

「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 

 先ほどまで部屋の入り口で寝そべっていたはずの腐乱死体こと、腐リーマン(享年34歳)が立っていた。

 

 

「なんで!? なんでゾンビがいるのさーーー!?」

 

 

 半泣き、どころかもはやガン泣きしながら何度も感触を確かめていた32口径ピストルを引き抜き。

 

 アルトは、今この時も迫ってくる腐リーマンへひたすら鉛玉を叩き込む。

 

 腐リーマンは、腐っているからこそのタフさか一発や二発受けつつもそのまま前進するも……。

 

 アルトがピストルの弾丸を1マガジン分撃ちきる頃には、腐リーマンは今度こそ腐乱死体へのリクルートに成功していた。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 あまりの恐怖に、嗚咽をあげながら少女は息を整え……。

 

 あんな化け物、もういないよね。きっとそうだよね、と自分に言い聞かせながらピストルをリロードし。

 

 

「帰ろう、うん帰ろう。ディックさんとかバズさんとかカールさんにここの情報を売ろう」

 

 

 自分に言い聞かせながら、十分すぎるほどの恐怖体験を経験する羽目となった薬品室を出る。

 

 そして、来た方向。即ち地下への入り口のある方へ歩き出し……。

 

 次の瞬間アルトはUターン、全速力で走り出す。

 

 アルトが帰宅するために歩き出した方向に、何がいたかといえば……。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ」

 

「ヴぁぁぁぁぁぁ」

 

「や゛ずみ゛、ぐれぇぇ」

 

 

 今先ほどアルトが死闘を繰り広げた、腐リーマン達(生前の趣味:女子高生観察)がいた。

 

 

「もうやだ帰る! おうち帰るぅぅぅぅ!!」

 

 

 泣きながら地下施設内を全速力ダッシュするアルト。

 

 そんな、割と賑やかに逃げ回る少女を施設内をうろつく……大破壊前に地下施設へ逃げ込んだ社員のなれの果てが放置するわけもなく。

 

 

「ぴゃぁぁぁ?!」

 

「にゃぁぁぁ!?」

 

「もうゾンビやだぁぁぁぁ!!」

 

 

 曲がり角を曲がるたび、ここならばと部屋へ逃げ込むたびに。

 

 ワラワラと、アルトを追いかけるゾンビの数が増えていく。

 

 大破壊前ならば……まだいたいけな少女を追い掛け回す変態という名の紳士、と言う事で命の危険だけは回避できたかも知れないが。

 

 今アルトを追い掛け回してる面々は、見事なまでに心身ともに腐りきっており追いつかれたその時は、少女の命は間違いなく助からないであろう。

 

 だからこそアルトは全速力で、今にも倒れ込みそうになりながらも必死で走り続けているのだが……。

 

 

「……い、いきどまり……?!」

 

 

 ゼェゼェと息絶え絶えになりながら、たどり着いた道の先。

 

 腐リーマンの群から必死で逃げ惑ううちに、施設の奥へ奥へと進んでしまっていた少女の目の前には……。

 

 一際大きく重厚な、鉄の扉だけがそこに佇んでいた。

 

 

「……ぴぃっ!?」

 

 

 そして、そんな少女を追い詰めるべく……一匹の腐リーマン(生前の趣味:ヅラハンティング)が姿を現す。

 

 逃げ回る内に、ピストルの弾丸は既に撃ちきっており……ボルトアクション式の愛用ライフルは、咄嗟に撃ってからリロードしていないため同様に頼りにならず。

 

 アルトは最後の望みをかけ、この施設に足を踏み入れる切っ掛けにもなったIDカードを道を塞いでいる扉のカードリーダーへ通した。

 

 カードが認証されるまでの刹那な時間、ソレすらも今のアルトにとってはとてももどかしく感じる中……。

 

 少女の祈りがどこに通じたのか定かではないが、道を阻んでいた扉が音を立てて開き始め。

 

 アルトは開き切る前に、その小柄で凹凸の乏しい体を開いた隙間へ滑り込ませると。

 

 入った先にあった、扉の開閉を行っていると思われるコンソールを叩くように操作してその扉を閉めた。

 

 

 

 その上で、アルトは部屋の中を忙しなく見回し。

 

 うろつき回る腐リーマンが居ない事に安堵して、閉まったばかりの扉にもたれかかるようにして座り込んだ。

 

 

「たすかったぁ……こわかったよぉ……」

 

 

 当座の危機を脱した喜びと安堵で、えぐえぐと泣き始めるアルト。

 

 そのまま、人目がない事を良い事に大泣きを始めるが……。

 

 泣いている内に、何かが自分を見ている事に気付く。

 

 

「ひぐっ…………?」

 

 

 しゃくりあげながら、アルトは不安に満ちた表情を浮かべたまま室内を改めて見回す。

 

 そこはまるで、何かの研究施設のような部屋で……いくつかの人一人が入りそうなガラスと思われる物質で出来た、シリンダーが立ち並んでいた。

 

 そのシリンダーの殆どは割れており、中には骨が転がっている割れたシリンダーすらある中に。

 

 何かが浮かんでいる、液体が満たされた唯一のシリンダーがある事にアルトは気付く。

 

 

「なに、かな……?」

 

 

 液体が満たされたシリンダーの中に浮かぶ何か。

 

 ソレは、小柄な少女よりも大柄な一匹のシベリアンハスキーであった。

 

 

「犬……?」

 

 

 よろよろと立ち上がり、ハスキー犬が入ったシリンダーにアルトが恐る恐る近付くと。

 

 シリンダーの中に入ったままのハスキー犬が、首を動かしてアルトの動きに反応を示す。

 

 

「この子……生きてる……?」

 

 

 泣き腫らした事で掠れた声で呟くアルト、その声に反応したかどうかは定かではないが……。

 

 ハスキー犬は、シリンダーの中から理知的な光が見える瞳で少女をじっと見つめてくる。

 

 その視線にアルトは考え込み……何かを決心したのか、肯いた。

 

 

「……うん、出してあげる。一人ぼっちは寂しいもんね……一緒に行こう?」

 

 

 今先ほどまでの理不尽な恐怖を振り払う為にも少女は言葉にだし、シリンダーに配線がつながっているコンピュータを操作する。

 

 そして、中身の液体が抜かれ……シリンダーが開くと。

 

 永い間シリンダーの中で浮かんでいたとは思えない機敏な動きでハスキー犬は飛び出し、しっかりと四本の足で床へ降り立つと。

 

 その身を勢いよく振り、体にこびり付いた液体を弾き飛ばす。そして。

 

 

「へ? わ、わひゃぁぁぁぁぁ?!」

 

 

 そのままアルトを押し倒し、感謝の印かその顔をベロベロと舐め回しはじめた。

 

 




アルト、ゾンビ恐怖症のトラウマと引き換えにハスキー君を仲間にしたでござる。の巻。
何故だろう、設定変更という一言だけでは片づけられないほどに……リメイク前に比べてアルトの人生の難易度が上がっている気がする。
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