荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど、私は元気です りろーでっど   作:ラッドローチ2

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お待たせしました、ようやく6話お送りできました。
ちゃうねん、某幻想人形演舞にハマってたワケとちゃうねん。
9日にDLして、10日時点で紅魔館突破したけどちゃうねん(震え声)


06 さぁ、素敵なパーティしよ!

 

 

 

 ガラスシリンダーの中に囚われていた大柄なシベリアンハスキーに押し倒され、顔を舐め回されるという熱烈なアピールを受けたアルト。

 

 少女は多少面食らったものの、お返しとばかりにシベリアンハスキーの顔から首にかけてワシャワシャと撫で返し……。

 

 シベリアンハスキーは囚われていた自分を解放してくれた少女への感謝の気持ちを、満足いくまで伝え。

 

 少女はと言えば、ゾンビの群に追い掛け回されてささくれだった心をこの世界に産まれ落ちて初めて触った犬の感触に心を癒された、ある意味でWin-Winと言えるかもしれない。

 

 そんな一人と一匹は、今……。

 

 

「おいしい?」

 

「ワフッ!」

 

 

 アルトが持ってきていた、携帯食料を仲良く分けて腹ごしらえをしていた。

 

 なお、携帯食料の内訳は……シェーラが宿で出しているパンの売れ残りを固く焼き上げたビスケットと、辛目に味付けした鳥のササミだったりする。

 

 そんな簡素なモノではあったが、シベリアンハスキーは瞬く間に分け与えられた分をペロリと平らげ……ジっとアルトが手に持っている分を無言で見詰める。

 

 そんな食いしん坊なシベリアンハスキーの様子にアルトは気付くと、ふわりとした苦笑いを浮かべ……。

 

 

「もー、しょうがないなぁ」

 

「ワォンッ!」

 

 

 ワシャワシャとシベリアンハスキーを撫で回し、自分の分も殆ど躊躇せずに与え……おねだりに成功した食いしん坊は千切れんばかりに尻尾を振ってあっという間に食べつくしてしまう。

 

 

「そう言えば、君の名前考えないといけないね」

 

 

 なすがままにされているシベリアンハスキーを撫で回しながら、少女は呟き。

 

 人差し指を口元へ当て、もう片方の手で撫でもふりを継続しながら考える。そして。

 

 

「よし、決めた! 君は今日からハスキー君だ!」

 

「ワォーーーーン!」

 

 

 シベリアンハスキーに、名を与えた。

 

 悲しい事に、少女のネーミングセンスはお察しの有様であった……が、ハスキーと撫でられた当犬は大喜びで遠吠えを上げているので、問題はなかった。

 

 

「しかしさー、うん。どうしようハスキー君」

 

「ワフ?」

 

 

 ひとしきり撫で回し、今自分が置かれている状況を思い出したアルトは今この時も部屋の入り口の前で出待ちしているであろうゾンビ達を想い、溜息を吐きながらハスキーに抱きついて全身をそのモフモフで包み込む。

 

 そんな主人の様子に、ハスキーは尻尾を振りながら首を傾げる。

 

 

「いやねー、ボクってゾンビに追われて逃げ込んだんだけどさー……出口そこしかないんだよねー」

 

 

 困ったもんだよねー、と乾いた笑いを上げながら少女は全身でハスキーに抱きつき。

 

 その顔をハスキーの腹毛に埋める。

 

 ハスキーはくすぐったそうにしつつも為すがままにされ……不意にスクっと立ち上がると。

 

 彼が立ち上がった際にこけたアルトを尻目に大股で重厚な扉へ近づいていく、そして。

 

「ワォン!」

 

 

 アルトへ向かって振り返り、力強く一声咆えた。

 

 まるで、自分が血路を切り開くと言わんばかりに。

 

 そんな頼りになり過ぎる様子を見せるハスキーの姿に、一瞬少女はあっけにとられ。

 

 

「……本当に、大丈夫?」

 

「ワフッ」

 

 

 恐る恐る問いかける少女の言葉に、当然。とばかりにハスキーは鼻息荒く一声で答え。

 少女もまた、ハスキーの様子に覚悟を決めると……逃げ回る間リロード出来なかったライフルへのリロードを始め。

 

 幾度となく繰り返したその作業を、いつも通りの時間で終えた少女は立ち上がり……。

 

 無言のままハスキーと視線を交わすと、扉脇にあるコンソールを操作してその扉を解き放つ。

 

 そして、強く軋む音と共に扉が開く中。うめき声が扉の隙間から聞こえ始める。

 

 扉が開いたその先には。

 

 

「う゛ぁーーー」

 

「ぁ゛ーーー」

 

「も゛りぞぉぉぉぉ」

 

「ぎっごろ゛ぉぉぉぉ!」

 

 

 アルトが逃げ込んだ時よりも、更に数が増え……作業用外骨格を纏ったゾンビ、強制労働神話まで追加された事で質、そして量が充実してしまったゾンビの群が少女たちを出待ちしていた。

 

 良く聞くと何人か妙なうめき声を上げていたりするが、短く引き攣ったような悲鳴を上げる少女にはそんなうめき声に気付く余裕などなかった。

 

 そして、少女が一瞬たじろいだその一瞬の間に。

 

 

 

 

 ハスキーは砲弾のごとき速度で飛び出し、その爆発的な加速でその大質量な大型犬ボディをゾンビの群へ叩き付けて。

 

 少女が事態を認識しようとしている間に……ゾンビ達は、まるでボーリングのピンのように錐もみ回転しながら吹き飛ばされていく。

 

 

「……す、すとらーーいく」

 

 

 手に持ったライフルで支援を行う事も忘れた少女が、思わずそんなことを呟いてしまったのを誰が責められようか。

 

 その間にもハスキーは自らに覆いかぶさろうとしてきたゾンビの攻撃をサイドステップで避け、そのまま壁を蹴って三角飛びし……攻撃を回避されてたたらを踏んでいるゾンビを踏み潰す。

 

 しかし、ハスキーの猛攻はこの程度では止まらず。

 

 ゾンビだったモノに転職させた腐リーマン(生前の趣味:ヅラ防衛)を踏み台にして回転しながらジャンプ。そのまま前方に居た強制労働神話へ襲い掛かり、中身ごとミンチより酷いスクラップへ変貌させた。

 

 

 一瞬、場に満ちる沈黙。

 

 未だゾンビの数は多く、ゾンビ達には既に理性も感情も残ってはいなかったのだが……。

 

 瞳をぎらつかせ、狂気とも言える闘志を滾らせているハスキー犬を前に。

 

 今確かにこの瞬間、ゾンビ達は行動を停止させていた。

 

 

 ゆっくりと前足を前に出すハスキー。

 

 見えない圧力に押されたかのように、後ずさるゾンビの群。

 

 そして。

 

 

「アオォォォォォォォォン!!」

 

 

 一際大きい雄叫びをハスキーが上げ、吶喊を開始。

 

 ゾンビの群もまた、負けじとハスキーへ襲い掛かろうとする。が。

 

 まるでフィルムの焼き直しがごとく、タックルで次々とゾンビが衝撃によって四肢をもがれながら吹っ飛ばされ。

 

 ソレらを歯牙にもかけずハスキーは跳躍、強制労働神話が集中してる場所の中心へ着地。

 

 いきなり飛び込んできたソレに、強制労働神話達(生前の趣味:エクストリーム女風呂覗き)はハスキーを蹴り殺そうとするも。

 

 ハスキーはその中の一匹の軸足にタックル、その結果バランスを崩した強制労働神話Aは仲間へヤクザキックを炸裂させてしまい、その行動によって攻撃を受けたと認識した強制労働神話Bは強制労働神話Aへ攻撃を開始。

 

 急に仲間割れし始めた仲間に強制労働神話C自分だけでも、と思考しているわけではないがハスキーへ攻撃しようとしたが、この短時間で身を屈め力を溜めていたハスキーの超短距離タックルが強制労働神話Cへ炸裂。

 

 まるで、高層ビルを粉砕する重機のハンマーにぶん殴られたかのように強制労働神話Cは吹っ飛ばされ……。

 

 吹っ飛ばされた先に居た腐リーマンの群を、強制労働神話Cごと木端微塵に吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、時間にして半刻にも満たない時間……ノンストップで暴れ続けたハスキー。

 

 もはや虐殺としか形容できない素敵なパーティは、駆逐目標の殲滅を確信したハスキーの勝利の雄叫びによってようやく終了した。

 

 




ハスキー君、どこぞの夕立さんリスペクトな勢いで素敵なパーティをやらかしました。の巻。
そしてアルトさん、ボディガード兼もふもふ精神安定剤な愛犬と合流です。

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