荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど、私は元気です りろーでっど 作:ラッドローチ2
そして唐突で露骨なOFURO回、はたしてどこまでがセーフなのだろうか。
新たに家族の一員となったハスキーの大活躍により、ゾンビパラダイスin地下施設を乗り切ったアルト。
帰りが遅いアルトを心配してやってきた酒場の常連客と鉢合わせたりしつつ、まず彼女がした事は……。
「ほらハスキー君、暴れないの!」
「キュゥーン」
家の裏手のお風呂で、ゾンビ汁やら何やらが付着した愛犬を丸洗いする事であった。
お風呂と言っても、衝立で外から見えないようにして地べたに簀子を置き……中央に風呂釜代わりのドラム缶が置いてある程度の、間に合わせな代物だったりする。
ちゃんとしたシャワーや水道が付いた風呂は、この世界に置いてはトップクラスの高級品なのであった。
「わぷっ……もー、おとなしくしてよー!」
「クーン」
さり気なく地下施設でナップザックがパンパンに膨らむレベルに詰め込んできた、未だに品質を保っていた石鹸を早速使い、自らの窮地を救ってくれた愛犬を丁寧に洗っていくアルト。
しかしハスキーにとっては、ある意味で水攻めとも言える有様である為……イヤイヤとばかりに身をよじり、逃れようとする。その結果。
「きゃっ」
水しぶきが跳ね、タンクトップに短パンというラフな格好で愛犬を洗っているアルトにも水が大量にかかる羽目となってしまう。
水分をたっぷりと含んだタンクトップと短パンは、少女の体にぴっちりと張り付きその凹凸に乏しい体のラインを露にしたりする……が。
衝立のおかげでソレを見ている人間は誰も居ないので、少女は気にせず愛犬の丸洗いを続ける。
そして。
「ふぃー、ようやっと綺麗になったね。ハスキー君!」
「ワフゥ……」
良い仕事をした、とばかりに良い笑顔をアルトは浮かべてその手で汗を拭い。
綺麗に丸洗いされてしまったハスキーは、ぐったりとした様子で簀子の上に寝そべっていた。
そんな愛犬の姿に少女は口元に笑みを浮かべつつ、愛犬を洗う為のお湯をくみ取っていたドラム缶を覗き込み……。
「ハスキー君洗うのに結構お湯使っちゃったなぁ……水汲んでまた沸かすのも大変だし、今日はお湯浴びるだけにしよっと」
湯船という名のドラム缶に浸かるには少々心もとない湯量に、少女は若干眉尻を下げて溜息を吐くと。
腰、とまではいかないがそれなりに長く黒い髪を一本に束ねている紐を解き、今は亡き母親に良く褒められていた髪を広げ。
逃げ回った時に結構あちこち汚れた事もあり、まだ日は高めであるが体を綺麗にしようと少女はタンクトップをまくり上げ、短パンを下ろし……。
凹凸に乏しくも、若干のふくらみを主張しているサラシのような布を巻いている胸と、飾り気に乏しい下着が露となり。
衝立がある事に、そして今まで一度も覗かれた事がない経験から少女は躊躇いなく布を取り、下着を下ろして一糸纏わない姿となる。
「あれ? ハスキー君どうしたの?」
未だ湯気を立てているホカホカのお湯を浴び、ほふーと溜息を吐きながら少女は振り返る。
そこには、簀子の上でやる気なく寝そべってたはずのハスキーが4本の足で立ち、忙しなく耳を動かしている姿があった。
「何か聞こえたのかなぁ?」
しかしアルトは、愛犬の変化を気に留めず。ケロヨソと書かれた大破壊前の産物な樹脂製の手桶でお湯を汲んでは自らの体にかけていく。
普段の警戒心が強い少女であれば、即座に違和感に気付いたかもしれなかった。が。
今は、命の危機を脱した事による虚脱感と……。
「うーふーふー、ちゃんとしたボディソープとかシャンプー拾えただけでも。頑張った甲斐あったなぁ」
鼻歌混じりに、今先ほどもハスキーを丸洗いするのに使った乳液状の薬剤を使い……凹凸に乏しくも確かに膨らみは存在する胸や、その頂点にある突起。
普段からの狩りによって、適度に締まっているほっそりとした腰に。かもしかのような足や下半身を洗っていき。
ボディソープによって作られた泡をアルトはお湯で洗い流していく。
そして、お湯を頭へ被ると……その手にシャンプーをつけ、髪を洗い始めた。その時。
「……アレ? ハスキー君?」
一際大きい音がしたことに驚き、アルトが振り向いてみれば。
先ほどまで耳を動かし警戒していたハスキーが、衝立を軽々と飛び越えて外へ飛び出していた。
「え、え、ええぇ?!」
突然の愛犬の行動に思わず目をきょとんとさせるアルト、次の瞬間目に染みるシャンプー。
この世界に産まれ落ちて初めて経験した、目に染みるシャンプーの刺激に少女は若干悶絶しつつ……。
急いでお湯で髪を洗い、目を洗い……飛び出していった愛犬を追いかけるべく体を拭こうとして。
「ワフゥー」
「……あ、お帰りハスキー君」
タオルを手に取った瞬間、軽々と衝立を飛び越えて戻ってきた愛犬の姿に、少女は毒気を抜かれた。
「もーハスキー君、どこ行ってたのさー?」
「ワゥー」
ワシャワシャと、一仕事終えてきたとばかりに表情を浮かべている愛犬の首筋を撫でまわすアルト。
そんな少女の行動にハスキーは目を細め、気持ちよさそうになすがままに撫で回されていくのであった。
しかし、この時少女は見落としていた。
愛犬の口元に、若干の紅い汚れがあった事を。
後日、街の外れで……ズタボロのボロ雑巾同然の姿で一人の男が発見された。
その男はうわごとのように「犬が、犬が……」と呟くのみであり、その全身には膨大な数の噛み傷が確認されたが……犯人は不明なままである。
・
・
・
・
・
愛犬丸洗い祭、およびボディソープとシャンプーを使って心と体の洗濯を終えたアルト達。
いつもならば酒場にウェイトレスのアルバイトに出ている時間帯であるが、一仕事を乗り越えてきたと言う事もありマスターからはお休みをもらっていた。
そんな彼女達が何をしてるかと言うと……。
「ふーむふむ、ハスキー君って普通の犬とは違うんだねー」
「ワォーン」
地下施設にて回収してきた本を、ベッドに腰掛けたアルトが読み漁り……。
ハスキーはと言えば、アルトの足元でやる気なさそうに寝そべりアルトの足で背中をワシャワシャと撫で回されていた。
ちなみに、今アルトが読んでいる本はバイオドッグに関する書籍だったりする。
「専用の武装を装備可能、ねー……」
「ワゥ?」
足元で為すがままにされているハスキーをアルトは見下ろし、愛犬が武装した姿を思い浮かべる、が。
ゾンビの群を特に何も装備しないまま蹴散らしていた愛犬の姿が印象強かった事もあり、ハスキーが武装している姿が特に思い浮かばなかった。
「まー、そんな物騒な代物いらないけどねー。うりうり」
「ワフィー」
本をパタリと閉じ、アルトは両足でハスキーをくすぐるように撫で始め。
為すがままとなっている、生物兵器ことハスキーはごろんと寝そべってお腹をアルトへ見せ……洗われてふかふかとなった、ハスキーの腹毛に少女の素足が埋まる。
「こんなに可愛いのにねー、なんで昔の人って兵器にしようとしたんだろ」
「ワフワフ」
ちょっとした足元専用暖房がごとき有様になっているハスキーのふかふかの腹毛を足で堪能するアルト。
色々と大暴れし、大破壊前の技術の結晶ともいえる強力な力を持つバイオドッグであるが……。
少女にとってハスキーは、用心棒や武器というよりも……大事な大事な家族で愛犬でしかなかった。
ボロ雑巾さんは、特に酒場の常連とかではなく……なんかとても賑やかな衝立の向こうがきになったので、少し穴をあけて覗いてただけの善良な通行人さんです。
しかし、お風呂描写はどこまでセーフなんだろう。
教えてエロい人!