ポケットモンスター ハートブレイク   作:黒影時空

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第11話「HAMの真実」

 

 クラン達が船に戻ると、まるでナイトパーティーのようにメインホールは整えられており、その奥にはランキング表に加えて楽しめるように設備が充実して、まだ優勝してないのに記念パーティーみたいだ。

 入り口前ではスタッフが待機しており、改めてBURSTハートを回収することになり……敗退となるものはこのままBURSTハートを没収されることになる、それまでパーティを楽しむことになるらしい。

 

「随分大掛かりだな……リョウガ、俺はラズ達を探してくるからまた時間になったら呼んでくれ」

 

「ランキングは見なくていいのか?」

 

「俺は100位だ、まあ同数ポイントが多いからそういった同率ランキングが多く占められているんだろう、1回も勝てなかったやつが落とされるとしてもまだまだ多い」

 

 クランとしてはラズ達に近況を話しておきたいので早めに客室に向かい、リョウガはニドキングのBURSTハートを返して他の選手達がいる所とランキングへ。

 

「えっと俺のところ……俺は……8位かぁ、なんかそこそこだなぁ」

 

 上の方を確認してみると、ハリルはなんと4位まで上り詰めておりフロードは1位をキープどころか圧倒的、ここから逆転して優勝するには大進撃を見せなくてはならない。

 それ以外のメンバーも一通り確認しなくてはならない、トップ10を観ることにすると……BURSTハートを返して合流したカルタも後ろにいた。

 

「さすがはリョウガ殿、ここまでの好成績……拙者はまだそなたに全く及んでないでござる」

 

「ん? でもカルタだって10位じゃないか、ここから逆転だって全然できるだろ?」

 

「ご気遣い感謝いたす……それで今はリョウガ殿より上の者は?」

 

「厄介だぞ……いいか、あそこにいる3人」

 

 リョウガが指を差した先には、またしても大量の料理を小さな体に詰め込んでいたキャロラ、そしてヒルグレイツに絡まれているハリル。

 現状……グレートガベル七戦騎で把握しているものは皆自分より上だ。

 この中だと元々ゾロアのB戦士だったハリルはあの入れ替わりの影響を受けないとしても、あの2人にも何か及んでいることだろう。

 あいつらでも知らない体になったら焦ったりとかするのかな……とも思ったがそれどころじゃない。

 

 

「ようリョウガ、今回はオレ様が上回ったようだな」

 

「お前は6位でそこまで偉く言える立場か……だが、不慣れの完全でもないBURSTでここまで勝ち進む辺り、腐ってもその辺の有象無象とは違うようだな」

 

「それでもヒルグレイツと私を超えられない限り、貴方のBURSTハートは遠く離れた先に……あっ」

 

 キャロラが食べていたステーキが引っ張られて遠くへ……離れた先には中身を飛び出していたミルト、ド素人から今回の勝負で一転してナマコブシのB戦士として使いこなしている。

 まあ、内蔵出しながらご飯を食べたので若干吐きそうになっているのだが。

 

「ハリルあいつぶっ飛ばしてくれない?」

 

「俺の分もやるからあまりムキになるな」

 

「なんだありゃ曲芸師か? 随分おもしれえ姿になったな」

 

「ミルト! お前はナマコブシのBURSTハート預かってないのか?」

 

「いや預かってもらったんだけど……なんでか知らないけど全然口の中治んないんだけど……ちょっとどうなってるの?」

 

「俺に聞かれても……ところでミルト何位だった?」

 

「ギリッギリの165位」

 

 ミルトとリョウガはさりげなく話しているが、楽観視してたヒルグレイツもハリルも手が止まる。

 この女、今何を言った? BURSTハートを持っていないのにBURSTしたポケモンの力が残り続けている?

 グレートガベルとして、この大会でも色んなB戦士を見てきたが……ハートを外してもその効果が残り続ける人間なんてものはこれまで一度も見なかった。

 

「ハリル、お前も1回あの小娘見てたろ? その時はどう思っていた?」

 

「B戦士以外などノーマークのつもりだ、だがこれは……」

 

「ああ、あのガキ使えるかもしれねえぞ」

 

 七戦騎の二人がミルトを密かにロックオンしている中……それどころではないキャロラが怒りを両腕に宿してミルトの肩に張り付き口を思いっきり引っ張り、ミルトも伸びた内でキャロラにビンタして反撃する。

 多分ポケモンを使った上で最も汚えキャットファイトである。

 

「返せっ!! 返しなさい私のステーキ!!」

 

「うるさいわねこっちはステーキどころかろくにご飯も食べれてないのよ! そっちなんて私の10倍は食べてるじゃない!」

 

「やめろミルト! なんか色んな意味でみっともないから」

 

 普段力技で解決していたリョウガが逆にミルトをなたまめるというカオスな図だったが、そんな異常事態を一蹴するように……というよりは凄まじいインパクトでデザートを食べながら2人を引き離すこの男。

 

「騒ぎはそこまでだ、少年たち」

 

「フロード!」

 

「……そして、あの少女と入れ替わっていたのが君か」

 

「ああ! 改めて俺の名前はリョウガだ!」

 

「リョウガ……なるほど、まさかお前が例のゼクロムのB戦士だったとはな、私と共に期待されているはずだ」

 

「え? 期待?」

 

「面白いことを教えよう、このBHSを開催したノウムという男は……当世のアルカデスだ」

 

「えっ!? 社長が……って、ハリル!?」

 

 フロードの発言にハリルは持っていたものを離して一目散に走り去っていく……向かった先はノウムの場所であることを知るものは少ない。

 だがキャロラだけは理解していた、たとえ大会から追放されることになっても、グレートガベルの作戦に泥を塗ることになっても果たしたい復讐がある。

 ……ハリルは、アルカデスを根絶したいと思っている。

 

 

(こんなところに……ここにいたのか、アルカデス!! 父さんと……村の仇!!)

 

 ────

 

「ラズ? ……妙だ、やけに静かだな」

 

 クランはこの間にも船を渡り歩いてラズとベリーを探しているのだが全く見つからない。

 この船から出ているようには思えないししっかりと荷物が残っている……勝手に抜け出すようにも思えないし任務ならしっかり連絡は入れるはずだ。

 

「こういう時はスタッフにでも聞くか……? しかしBHSで忙しそうだしな……ん?」

 

 クランがどこからラズと再会しようか悩んでいると、窓を叩く音がする……それはラズの相棒のミノムッチではないか、ベリーがよく抱きかかえているリグレーまで近くにいるのですぐにただごとではないと分かりミノムッチ達を招く。

 

「どうしたミノムッチ、お前の仲間はどうした?」

 

 ミノムッチはラズに会うと、自分のミノとして使っていた葉っぱを少しずつ外して床に並べていく。

 ……意思疎通のために言葉を覚えていたらしい、人間の言語を口に出せなくてもコミュニケーションの為、理解する為に行っていたミノムッチなりのやり方。

 葉っぱを一生懸命並べて、おぼつかないやり方で単語を作り出す。

 

 ア

 フ

 ナ

 

「あふな……まさか、危ないか!? あいつらに何かあって……」

 

 これはミノムッチが自分のために精一杯伝えてくれたSOS……それを無駄にしないように二匹を掴んで外に出ようとすると……空からこれまたラズのポケモンであるウォーグルであり……その背中には……ずっと探していたラズとベリーがいた。

 しかしただ会えなかったのではなく、向こうでも何か揉め事があったことが2人についている薄汚れた服と多少の怪我から見て取れる。

 

「ラズ! 今そっちに行く!!」

 

 クランは窓から飛び出し、ウォーグルに飛び乗ろうとするが……その瞬間、明らかに不自然な軌道で岩石が跳んでくるが……ミノムッチがいてくれたおかげで『まもる』で防ぐことができる。

 ……なるほど、確かにこれは異常事態だ、ミノムッチがクランにSOSを送る理由もわかる、相当混乱していたことだろう……自分にとって頼りになると思っていた存在に裏切られるというのは。

 

 

「どういうつもりだ!! チーフ!!」

 

 岩石を打ってきた先に……HAMで自分達を助けてくれたチーフ……ドサイドンに向かって叫ぶ。

 しかしウォーグルはそれどころではないとばかりにクラン達が乗るのを確認して飛ぶ、小さいとはいえ3人も乗せているのにも関わらず重さを感じさせない飛び方をする……ウォーグルはダブルパークの花畑まで一気に移動してラズ達をオドリドリやマメパトといった穏やかな鳥ポケモン達のいるところに隠す。

 そしてクランには一緒について来いと合図を送る、短い付き合いだがウォーグルは野生で生きてきた勘でそういった選択が出来るようだ。

 

「……後で詳しく聞くが、一体何があった?」

 

「ミルトが見つからなくて探して……ベリーがミルトの鞄を漁っていたら、リーフカンパニー社長の個人携帯と何か起きた際のHAMのコールの番号が一致していたんです、それを見てから急に殴られて、閉じ込められて……」

 

「緊急コール……? リーフカンパニーがHAMのスポンサーということか……そうか、保護した際はダブルパークに送っていたんだな……しかし考えてみればそれだけのことでそんな問題があるように見えない……」

 

「そうですよね……? 僕もウォーグルがいわくだきで助けてくれましたが、檻のようなところに入れられていて……」

 

「そうか……ここは社長本人に聞いたほうが良さそうだな、ウォーグル案内してくれ……ミノムッチ達はこのままラズ達を守るんだ、俺は……気にするな、それとこれを」

 

 ミノムッチ達を下ろして再びウォーグルに乗り、また船の中へひとっ飛び……クランがラズに渡した紙はこれまで起きていた事のうち話しておくべきだろうという情報がまとめられている。

 BURST戦士は融合したポケモンのタイプの技しか使えないこと……それに加えて、今回出場者の中にグレートガベルのボスが紛れているということだ。

 

「あの中にグレートガベルのボスが!? それにBURSTハートの没収……まさか、それじゃあ僕たちがやってきたことは……」

 

 ウォーグルの背に乗り、海風を切り裂きながらクランは迅速に船へと舞い戻った。

 BHSの熱狂が渦巻く船内を抜け、ノウムのいる最奥の部屋へと向かう。

 念の為にウォーグルには姿を見せずに背後で待機し、周囲の見張りを兼ねるよう指示を出しておいた。

 現在開催中のBHSの真っ只中であり、多忙を極める社長の時間を長く割いてもらえるとは到底思えない……だからこそ、クランは歩みを進めながら、彼から聞き出すべき情報を頭の中で簡潔にまとめ上げていた。

 

 ……だが、目的の部屋に近づくにつれ、明らかな異変に気付かされた。

 ノウムの部屋の前には、屈強な護衛たちが何人も地に伏している……呻き声を上げる者もいれば、完全に意識を失っている者もいた。

 これではまるで既に何者かによって強襲を受けたあとのような有様だった。

 

「一体何が起きたんだ……」

 

 ただ事ではない状況に警戒を強めながら、クランは倒れている護衛の一人を抱き起こした。

 薄れゆく意識の中で、その男は喘ぎながら信じられない事実を口にした。

 

 BHSに参加していたBURST戦士が、たった一人で乗り込んできたのだという……そいつは没収されていたゾロアのBURSTハートを奪い返し、立ちはだかる護衛たちを次々と蹴散らして、ノウムの待つ部屋へと押し入っていったらしい。

 

(ゾロアのBURSTハート……確か、リョウガが前に言っていたGG七戦騎のハリルという男か!)

 

 グレートガベルの幹部が急にこれほど大胆かつ直接的な行動に出たことには驚きを隠せなかったが、何らかのアクションを起こすであろうことは想定の範囲内でもあった。

 現在クランは自分のBURSTハートを預けており、文字通りの手ぶらだ。生身でBURST戦士とやり合うのは無謀極まりない。万が一の際には、窓外で待機させているウォーグルを突っ込ませて鎮圧することも視野に入れつつ、クランは重い扉を蹴り開けて部屋へと突入した。

 

「うっ……これは」

 

 そこには一触即発の光景が広がっていた。 

 まさにハリルがゾロアの姿へとBURSTを遂げ、ノウムの目前で強烈な『あくのはどう』を解き放とうと構えている瞬間だった。

 文字通り命の危機が間近に迫っているというのに、豪華なデスクの向こう側に座るノウムは、身じろぎ一つせず、全く動じていない……その不気味なほどの落ち着きが、部屋の異様な空気を一層際立たせていた。

 

 踏み込んできたクランの気配に気付いたハリルは、鋭い眼光をこちらへ向け、放とうとしていた技の標的をクランにも定めようとする。

 

「消えろ……このチャンスを無駄にするわけにはいかない」

 

 低く唸るようなハリルの声には、ただならぬ殺意と執念がこもっていた、七戦騎の実力は身に染みて理解しているクランは喧嘩を売らないように言葉を選ぶ。

 

「……なぜ急に社長を襲ったか、それだけでも聞いていいか?」

 

 クランは両手を軽く上げ、敵意がないことを示しつつ、冷静な声色で問いかけた。

 

「お前にとっても恐らくは……縁のあることだ。この男は現在の『アルカデス』だ!」

 

 ハリルの口から放たれたその言葉に、クランは息を呑んだ。

 自分やリョウガが追い求め、探し続けてきたBURST戦士の頂点。その現在の代が目の前にいるノウムだというのか。

 無数のピースが、クランの脳内で音を立てて組み合わさっていく。

 BURSTハートを突如として集め、世間に広く認知させた理由……自分にとって都合よく解釈するならば、全てのBURSTハートを回収し、閉じ込められたポケモンたちを一斉に解放するための準備だと思いたかった。

 しかし、このような見世物じみた大規模な大会を開き、人々に争わせている現状を見れば……それが純粋なポケモンの救済目的ではないことは火を見るより明らかだった。

 そして、ハリルにとっては、それ以上の深い私怨があるようだ。

 

「答えろ……アルカデスは過去に俺の父を殺め、更には村を滅ぼした……その時お前は既にアルカデスだったのか」

 

 ハリルの憎悪に満ちた問いかけに対し、ノウムは微かに肩をすくめた。

 

「俺は人生に色々ありすぎた、だから残念なことに誰に何が起きたのかを全部把握していない」

 

 どこか他人事のような、悪びれもしないその返答。これではハリルの問いに対する進展はない。

 激情に駆られたハリルが暴走するのを防ぐため、クランは彼を刺激しないよう細心の注意を払いながら、自身の質問を切り出した……何をどう聞くべきか、その照準はすでに定まっている。

 

「……HAMという小さな保護団体に少し世話になっていた縁だが、リーフカンパニーは……」

 

「君の考えてる通りウチはHAMを支援しているし、保護してもらったポケモンはダブルパークで放し飼いさせているよ。スタッフが献身的に躾けているから人間を見ればおおよそ友好的な反応を見せる……君の組織の理想通りにね」

 

 ノウムの言葉は流暢で、どこまでも淀みがなかった。だが、その完璧な回答こそが、クランの中に渦巻く疑念をさらに確固たるものにしていた。

 

「なら、俺の聞きたいことは一つだ……BURSTハートを大量に手に入れたのは、アルカデスの力によるものか!?」

 

 クランの鋭い追及に、ノウムは一瞬だけ口をつぐみ、不敵な笑みを浮かべたまま沈黙した。

 

「…………俺の答えは何か、君にとって都合の悪いものになってしまうのか?」

 

 試すようなノウムの問い返し。クランは怯むことなく、その目を真っ直ぐに見据えたまま、決意を込めて言い放った。

 

「内容次第では……俺よりも俺が信じている奴の思いを裏切ることになってしまうとは言っておく。そして状況次第では……グレートガベルもリーフカンパニーもまとめて手にかける!」

 

 クランははっきりと脅すように言った、ハリルも彼の言うことには何か関係があるような言い回しと、ノウムの本質を知れる機会だったので止めることはなかったが攻撃する手は止めない。

 ノウムはこんな体勢のままリモコンを押して、画面をつけるとそこにはBURSTハートの情報が公開される。

 

「前提情報だけど、君は一応完全なBURSTについては把握してるよね」

 

「……グレートガベルから聞いた、ポケモンと心を通わせる……だったそうだな、ポケモンを一方的に悪用しているお前達が言えた道理か? という本音もあるが」

 

「俺のBURSTハートは父さんの形見だ、あちこちにいる木っ端共とは出来が違う」

 

「ああ、君の父は随分よくやっていたか、あるいは元の持ち主も優れていたんだろうね、息子に受け継がれたからといって善良とは限らないのに」

 

「……そんな気はしていたがその言い方、BURSTハートに入れられたらポケモンはこちらを見ることは出来ないんだな!?」

 

「そりゃまあBURSTハートの封印って時を止めるからね、そうでなきゃ寿命で死んじゃうし……さて話がこじれたね、完全なるBURSTを使いこなすためにはそうしてポケモンを飼育して人間が善良であると判断させる、そこからハートに入れたらいい出来になる……BURST戦士はそれを自分の力と思い込んだり、何も語らない石ころに話しかけて心が通じ合ったと勘違いしている」

 

「じゃあ俺が持っていたフシギソウも……」

 

「ああ、君はポケモントレーナーなんだっけ? ならオリジナルでも旧時代よりは出来が違うね、オリジナルハートが多く使われてた時代はまだポケモンを奴隷にしたり兵器として使ってたから」

 

 ……現在BURSTハートは大まかに見て2種類存在する。

 1つはノウムの言う旧時代から存在するオリジナル、封印されたポケモンは二度と出ることはないとされる上に作り方は一切の謎に包まれている。

 クランは解放する手段がアルカデスにあるとして旅をしていたつもりだった。

 

 そして最近生まれたもう片方こそグレートガベルが作り出した人工的とされるBURSTハート、現代に流通しているハートの半分以上がこれらであり……破壊可能な上に壊れたらポケモンが外に出てしまい出力もオリジナルに劣る劣化版。

 故にクランはグレートガベルと戦い人工BURSTハートを破壊して回っていたことで『ハートブレイク』と呼ばれていた。

 

 ……つまりノウムは最初から知っていた、BURSTハートの中に実際にポケモンが封印されていたことも。

 そしてクランにとって肝心なこと。

 

 自分とラズは、この男に利用されている状況だと。

 

 ダブルパーク……ポケモン達の楽園。

 その実態は……BURSTハートに加工するためのポケモンを用意するための都合の良い牧場、まるで奴隷市場……。

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