ポケットモンスター ハートブレイク   作:黒影時空

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第17話「BURSTハートの答え」

 第3回戦が終わり、ほぼ確定していたとはいえリョウガは無事進出して山岳地帯はほぼ3人確定。

 クランとミルトも進出して沼地の方も進んだのだが……シンがいるのならルリマルも先に進んでいそうなものだと思っていたが姿が見えない。

 シンの方もルリマルの姿は見ていない……どころか、ラグに倒されたカルタもラグも姿を消している。

 突然このようなことが起きて……BURST戦士がいなくなってきたという。

 

 あんなに豪勢だった豪華客船も準決勝12人になるころにはかなり寂しく感じられる、どうやら3回戦が終わるまでの間に観客もほぼいなくなってしまった様子。

 

「こうしてみると広すぎてもったいないな」

 

「俺は人が少ないほうが好きだ」

 

 ルリマル達の安否も気になるが観客さえもいなくなるのが妙なところ、あんなにBURSTハートに夢中になっていた姿を見ただけにサクラを雇っていた……のもあるにしても冷める勢いが凄まじい。

 もしかしてBURSTハートを一つ使うだけであのポケモン達のようになんでもありになれると思ったのか? だとすればそれもそれで身勝手な話だ。

 

 BURSTハートを自身の力として扱っているものを見ただけに……クランはそういう疑いの目を向けてしまう。

 一通り出てきた食事を済ませて栄養補給をしたクラン達はまた遺跡の真下で発見されたゼルネアスとイベルタルが眠るあの空洞へ。

 今度はラズのウォーグルの力を借りて一気に空高く進む。

 

「ちょっと私も置いてかないでよ」

 

「ミルトはあれだけBURSTしたんだから羽くらい生えるだろ?」

 

「それもそっか」

 

「リョウガもリョウガでミルトのことをなんだと思っている」

 

 ──

 ……その一方でノウムは会場内でミラージュポケモンの宣伝を生配信してBURST戦士や残された観客にも説明していた。

 

「……ということで、世界各地に設置したミラージュシステムから展開することでデータを無から構築して理想のポケモンを作れる、それが新世代のポケモン、ミラージュポケモンです!」

 

 データを使えば好きな性格、好きな技、好きな特性……覚える能力や技術の垣根を超えてどんな見た目でもどんなことでも出来る、それがミラージュポケモン。

 Dr.ユングと呼ばれる科学者の失踪後にリーフカンパニーが技術の復元に成功し実用化させた……BURSTハートと共に。

 視聴者や観客にミラージュポケモンを既に見せていたことをアピールする。

 

「もはやモンスターボールは古い、リモコン一つで好きなポケモンを好きな時に好きな形で過ごし、BURSTハートでどんな戦士にすることにも……」

 

「素人質問で恐縮ですが」

 

「素人は口を挟むんじゃねえです大人しく上にペコペコ脳死で従いなさい」

 

 強引すぎる言論封殺でミラージュシステムをゴリ押して宣伝しようもするのだがそれでも止まらない挙手。

 素人質問ではないことを願って仕方なく質問させることにしたのだが……相手はポケモントレーナーのようだった。

 

「ミラージュシステムはどんなところからでも好きなようにポケモンを、覚えない技とかも使えるとガイドにありますが」

 

「うんそうです、BURSTハートには特定のタイプの技しか使えないという欠陥は見つかりましたがポケモン自体のタイプを変えることでそれを補うことも……特定のポケモンを利用しないといけない雇用問題を含めてあらゆる面がこれで解決します」

 

「我々はそんな茶番を見せられる為に変身ごっこを押し付けられたのですか?」

 

「えっ」

 

 ──

 

 少し船の中が荒れていることは露知らずで遺跡からまたヨーギラスが開けた穴を目指そうとしたが……人影が見えたので近くに降りてみるとそこには……フロードとハリル?

 

「フロード? どうしてここに」

 

「おっと、大きな穴が開いていたのでもしやと思ったが君もここに気づいていたが」

 

 互いにあの地下の空洞を知っていたことを想定していたのか……? しかもフロードは慣れた手つきで遺跡の隠し階段を出したことで行き慣れている様子。

 これにはリョウガも首を傾げる。

 

「フロードはここに来たことがあるのか? あそこには父さんの石像があって」

 

「アレも見たのか……なら、話すのか」

 

「ああ、知る権利があるもの全員で真実を共有したいからな……まず改めて自己紹介をしよう、リョウガには世話になっているからね」

 

 

 

「私はフロード、私こそ君の父とも何かと世話になっているグレートガベルを従えるものだ」

 

「なっ……何!? フロードが……グレートガベルのボス!?」

 

 リョウガは驚き、クランの方を見るが……クランにとっては宿敵の大元だが大人しくしている、リョウガやミルトからすれば今にでも飛びかかるものだと思っていたが冷静そうにフロードたちのほうを見ている。

 

「隠しておきたい面倒事なら俺たちを見つけた時点でキリキザンの力で首を跳ねている……イベルタルのことは大した問題ではない、今はBURSTハートからの解放について知れることがあればなんでも知りたい」

 

「冷静な判断だ……ひとまずは遺跡の下に降りよう、心配せずとも部下は全員避難させている」

 

 階段を下りた先……まず見えてくるのがいつ目覚めてもおかしくない破壊の繭。

 もしイベルタルが覚醒すれば否が応でもフロードの手を借りなくてはならないことも考えなくてはならない。

 しかし空洞に下りて確認したいことは……。

 

「少しいいかフロード……ラズ達、俺達の仲間の安否が気になる、先にそっちを寄らせてくれ」

 

「それに私たちは気になるのよ、ここにあったものが」

 

「構わない、まだ時間に余裕はある」

 

 ──

 

 

 空洞に口を開けた巨大なトンネルへと足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。リョウガたちが最初に見つけてから数時間が経過していたこともあり、その奥には驚くべき光景が広がっていた。無数の骨が、まるで博物館の標本のように整然と並べられていたのだ。

 それらは物によっては鳥のようであり、またあるものは全く見当もつかない未知の形状をしていた。全身の骨格を成しているわけではないため、ポケモンの生態に詳しいラズの目から見ても元の姿がどんなポケモンであったのか即座には判別がつかない。

 

「おっと……部下数百人をかけて発掘作業を進めていたが、まだこれほど残されていたか」

 

 フロードが並べられた骨の山を見て感心したように呟いた。

 彼がトンネルの近くに寄るとカモフラージュされていた岩壁の一部が静かにスライドし、荷物運搬用の巨大なエレベーターが現れた。そこから、これまでグレートガベルが発掘してきたであろう大量の骨が、何台ものトロッコに乗せられて運び出されていく。

 

「あの下っ端達が発掘していたのは、この骨だったのか……」

 

 ハリルが呆然と呟く横で、ラズは息を呑んだ。

 

「下っ端……まさかこの人が、グレートガベルの……」

 

 ラズもまた、自ずとフロードの正体を察していた。

 しかし、これまで観戦してきたBURST戦士たちから感じたような刺すような殺気は彼からは微塵も感じられない。

 今すぐにでも自分達をまとめて潰すことができる力を持っているはずなのに、フロードは静かに佇みラズ達にも等しく『真実』を伝えようとしている。

 張り詰めた空気の中、ミルトが口火を切った。

 

「せっかくここに来たから聞いておきたいけど、この骨は何なの? わざわざ掘り出してたってことは、何か強大な力が……」

 

「何か強大な力……までは肯定しよう。だが、この骨がかつてどんな姿だったかまでは私にも見当がつかない」

 

 フロードは淡々と答えた。

 この骨の山自体が、イベルタルの痕跡を辿り破壊の繭の周辺で発見されたものだという。

 BURSTハートとイベルタルに深い繋がりがあると考えるならば、命が尽きたあとの生物に平等に残される『骨』にも、何かしらの力が宿っているのではないか? そう考えたフロードは、部下に回収を命じていたのだ。

 

 だが、それらの骨を一通り並べ、1つずつ頭蓋骨の形状を組み合わせていったとき──ラズは、ある恐るべき事実に気がついた。

 それは理解はしたものの、到底信じ難い事実だった。

 

「これ……普通のポケモンの骨じゃないです」

 

 ラズの震える声に、全員の視線が集まる。

 

「可能性として、ですが……此処にある骨は、歯や骨格の形状からして……海の化身と呼ばれるポケモン、カイオーガ」

 

 その名を聞いて、クランの顔色が変わった。

 

「カイオーガ、それにヒードラン、サンダー、ケルディオ、ボルケニオン……! そのいずれも、世界を大きく揺るがす天変地異の力を持つ、ゼルネアスやイベルタルに並ぶほど膨大な力を持つポケモン達の遺骨です!」

 

 ラズの言葉が、冷たい空洞に木霊した。それほどの伝説のポケモンたちが、なぜここに集まっているのか。そして、さらにラズを戦慄させたのは……。

 

「それだけじゃありません。この骨……骨になってから、まだ新しいんです」

 

 ガリュウが連れてきたゼルネアスを除き、これだけの伝説のポケモン達が、このダブルパークに集まっていたとでも言うのだろうか? いや、何かの理由で集められ、そして命を落としたということか。

 

 沈黙が落ちる中、フロードが低く笑った……それは嘲笑ではなく、深い納得を伴う響きだった。

 

「いや……私はようやく謎が解けたよ」

 

 フロードがずっと抱いていた疑問……ノウムはどうやって、この巨大なダブルパークを作り上げたのか? その答えが、この骸の山だ。

 

 フロードは確信を持って、断言した。

 

「ノウムは、アルカデスどころか、BURST戦士の素質すら持っていなかったか……」

 

「素質が無い……変身できないってことか!?」

 

「だから奴はアルカデスを継承出来ていない……商品として使う為ではなく、元よりその力を使えないのだからな」

 

 カイオーガで海を作りボルケニオンの水蒸気で開拓し、サンダーの雷でエネルギーを作り、ヒードランがマグマから大陸を作り、聖剣士ケルディオがポケモンを導く……この骨の数からしてそれ以外にも数々のポケモンがこんな有様になっているのだろう。

 

「どうしてここで言い切れる? お前の仕業と考えてもいいんだぞ」

 

 クランからの当然の疑問にもフロードは機嫌を損ねることなく冷静に答える。

 ポケモンを傷つけるなといかにも悪の所業であり、掘り出してたのではなく埋めていたと勘ぐることも容易にできるが、フロードにはそれだけの根拠を信念として持つ。

 

「我々グレートガベルにとってポケモンは兵器だ、どんな強力な兵器でも壊れては意味がなく、扱いを怠って壊すような人間は総じて無能だ、やり方によっていくらでも使うのは善も悪も変わらん、君もポケモントレーナーだったなら覚えがあるだろう?」

 

「つまり、伝説のポケモンをわざわざこんな形にするようなヘマは自分はしないという確固たる自信があるんだな?」

 

「当然だとも……それにしてももったいない、カイオーガの雨を振らす力を有益に使えればもっと多くの使い道があるというのに、せいぜい海をかさ増しした程度か……サンダーの羽ばたき一つでどれだけの電力を賄えると……いや、それよりはどちらも天候による牽制も行えるか」

 

 フロードは骨をしみじみと眺めながら自分ならどういう風に使うかをぼやいている、はっきり言ってどっちにしても悪用してる時点で人のことを言える立場ではないのだが、何をどうしたら伝説のポケモンのような頑丈で長命な存在をここまで出来るのか……ここでリョウガは嫌な可能性を考える。

 

「俺外の世界には詳しくないんだけどさ……トレーナーじゃなくてもポケモンを従える方法ってあるのか?」

 

「勿論ある、モンスターボールが一番安値かつ実用的というだけでポケモンを奪う、操る手段はいくらでもある、我々グレートガベルも副産物でそういう武器はいくらか作ったな」

 

「俺がマドロシティで見たオモチャみたいなやつか」

 

「あれですら実際のポケモンの力と比べると落第点も同然だ、しかしそうか……可能性としては……私にとって反省点でもないがグレートガベルが試行錯誤で作ったものを使ったか」

 

 気付いたというよりは開き直ったような形でフロードはあっけらかんと話す。

 つまり、本来伝説のポケモンをBURSTするために用意した装置……あるいはポケモンの力を利用して使う道具の技術を無理に使ったか加減を考えずにぶちまけたことで、骨になるまで力を使い切ったのではないか? せっかくの伝説のポケモンの力を?

 

「それってまさか……伝説のポケモンが絶滅させたんじゃ……」

 

「伝説のポケモンが一匹とは限らない……それより奴はポケモンの扱いがここまで下手だったとはな……ダブルパークを作るだけならもっといい手段があるというのに……これで充分かな」

 

 話すだけ話したフロードはまたトンネルを越えて……おそらくあのガリュウの石像のところに向かったのだろう。

 

「その骨は全部あげよう、試してみたがやはり失われたものには力も残ってなかった……博物館の名物くらいにはなるだろう」

 

 ダブルパーク……にわかには信じられない、ポケモンの力を利用してこの島を作ったなど核心的な話もないし、普通そこまでやるはずもない。

 ポケモンの命を擦り減らしてまで楽園を作るなど矛盾している……いや、ハリルは気付く。

 

「イベルタルがここに眠っていたのなら、それ以前から奴はこの島を作って……これまでの全てが後付け?」

 

 ポケモンの保護、BURSTハートやミラージュシステムの販売、グレートガベルの利用、アルカデスとしてのイベルタルの阻止。

 その全てがノウムが周囲に話す上で大義名分としていたものだったら……? しかし今は、本筋を知らなくてはならないというところで、ラズはまだ骨を並べていた。

 

「どうした? まだ気になる骨があるのか?」

 

「いえ……大半は分かったんですが全然見たことのないものがいて……」

 

 ラズが苦戦している骨はかなり大型で巨大な顎と牙を持っている、似たようなポケモンは存在するものの正確には一致していない。

 というよりはラズでも分からないものがクランやリョウガにも分かるはずがない……この世に未発見のポケモンはまだ沢山いるのでまさか新種……? と全員で頭を悩ませていると、その骨の方を見たミルトが口を開いた。

 

 

「あっ……もしかしてそれ『ティラノサウルス』じゃない? 懐かしい〜、子供の頃図鑑でよく見たわねこの形!」

 

「……え? ああ、そうなんですか」

 

 少し言葉が詰まりそうになったが今はこの件は忘れよう。

 まだ自分たちはフロードからアルカデスの話を聞かなくてはならないのだから……。

 

 ──

 トンネルを抜け、さらに地下深くへと進んでいくと、やがて視界が大きく開けた。

 そこは先ほどの骨の山が置かれていた場所よりもさらに広大なあのドーム状の巨大な空洞だった。

 空洞の中心には……昼頃見た時のように世界の終わりを告げるかのように禍々しい脈動を放つ赤黒い『破壊の繭』と、生命の息吹を一切感じさせない、化石のように変色した巨大なX模様の『枯れ木』が鎮座していた。

 

 イベルタルとゼルネアス。

 伝説と謳われる二体のポケモンが、相反する力を抱きながら静かに眠りについている。

 その光景にクランたちが圧倒されている中、フロードは繭と枯れ木を見据えたまま、静かに口を開いた。

 

「聞いたところ、君はBURSTハートのポケモンの解放を目的としている……知りたいだろう、戦いの最終地点を。そして、その先には何も無い虚無が残されていることを」

 

 その言葉は、背後に立つクランに向けられていた。

 ハリルがフロードに連れられて初めてこの場所を訪れた時、彼に簡潔に伝えられた真実がある。

 それは、リーフカンパニーやグレートガベルが作り出している『人工的なBURSTハート』は、イベルタルの力だけではなく、ゼルネアスの恵みの力を合わせて初めて完成する代物であるということだった……しかし、それはあくまで『人工物』の話だ。

 

「ここにある中でキリキザン、ゾロア、ゼクロム、レシラム、そして彼の持つフシギソウ……これらはイベルタルの破滅的な力によって直接BURSTハート化したものだ。便宜上『オリジナル』と呼ばれるが、このBURSTハートに入れられたポケモンは……」

 

 フロードは一度言葉を切り、無慈悲な事実を冷徹に告げた。

 

「生きていない」

 

 空洞の中に、その声だけが残酷に響き渡った。

 

「な……んだと?」

 

 クランの顔から血の気が引く。オリジナルのBURSTハートは正式には『ポケモンを封印』しているわけではない、イベルタルの影響を強く受けたことにより、『命』が完全に失われた状態なのだ。

 厳密には死んで腐敗したわけではないが、もう二度と生きているとは言えない……完全に静止した状況。

 

 フロードは耳を疑い言葉を失うクランたちに向けて、淡々と説明を続ける。 

 そもそもポケモンという様々な大きさの生物が、どうやって皆同じサイズ、手に握れるほど小さな水晶の中に入るのか。

 

 ポケモンという種は共通してポケモンバトルなどで瀕死状態に近づく際に自己防衛の為か体を何十分の一とまたたく間に縮小化させる性質を持つ。

 この『小さくなる原理』を発見して応用して作られたのがモンスターボールだというのは有名な話。

 

 肝心なのは、命の危機に瀕した際に小さくなるのがポケモン本来の力であり、たとえ『ぜったいれいど』のような一撃必殺級の技を受けても瀕死状態のまま持ち堪えるくらいには頑丈に出来ているということだ。

 

 だが……イベルタルの力は次元が違う。

 破壊のポケモンによって生命力を根こそぎ奪われた場合、防衛本能が働く間もなく『生命』と呼べるものを消し飛ばされ、結果としてあの水晶の石へと変えられてしまうのだ。

 

「それが……生きていないと言い切れるのか!? まだ分からないだろう!」

 

 クランが激昂し、フロードに食って掛かった。

 相棒であるフシギソウを助けるために彼は今まで戦ってきたのだ……その根本を否定されることなど、到底受け入れられるはずがなかった。

 

「分かるさ。人工的なBURSTハートが破壊された時にポケモンが解放されることが、何よりの証明だ。あれには、ゼルネアスの恵みの力が多少込められているのだからな」

 

 フロードは全く動じることなく、枯れ木──ゼルネアスを一瞥した。

 不老不死で永遠に尽きない生命エネルギーを持つゼルネアスは必然的にBURSTハートにならない。

 そしてゼルネアスは、周囲にそのエネルギーを少しだけ分け与えることができる。

 かつてガリュウに連れてこられたゼルネアスは状況を理解したのか、イベルタルによって奪われる命を守るためその力を島全体に放った。

 その結果、この島の周りでのみ石の状態で命が尽きていたと思われていたポケモンたちに、極わずかな火の粉のような命が吹き込まれた。

 それが『人工的なBURSTハート』と呼ばれるものだ。

 

「BURSTハートの破壊による解放は、ポケモンの技を受けることによって引き起こされる。技とはすなわち炎、水、大地……様々な形でポケモンから発せられる生命の力だ。それが止まりかけていた命を活性化させる……状況としては心臓マッサージに近いか」

 

 外部からの強い生命エネルギー(技)のショックを与えることで、ゼルネアスが残した火の粉が燃え上がり、ハートを砕いて息を吹き返す……それが解放のメカニズムなのだと。

 裏を返せばゼルネアスの力が込められていない『オリジナル』には、発火するための火の粉すら残っていないということになる。

 

「考えてもみろ。私はここにレシラムのBURSTハートを持っている。圧倒的な力だ……青い炎を放ち、空を飛び、凡そのポケモンには負けない、これを少し使うだけで私は3回戦をほぼ蹂躙した」

 

 フロードは自らの胸元にあるBURSTハートに触れた。

 

「試さなかったと思うか? オリジナルを人工的な物に再構成させることを、あらゆる手段を使ってな」

 

 彼の目には、確固たる諦念が宿っていた。

 グレートガベルの技術力、ありとあらゆる実験、そしてフロード自身の執念。

 それら全てを以てしても、オリジナルのBURSTハートからポケモンを蘇らせることはできなかった。

 

「0は二度と1にならない。『再生』の力があろうとも、『無い』ものは直しようが無い」

 

 フロードの言葉が、重い楔となってクランの心に突き刺さる。

「これが……BURSTハートの真実だ」

 

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