東方狸囃子   作:ほりごたつ

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EX その22 永久の主従と月のモノ

 出がらし啜ってお茶を濁して、可愛い巫女に睨まれて過ごしていたのは数時間前。

 しつこく何が目的かと聞いてきた紅白少女に、そこまで迫ってくるのなら身体にでも聞いてくれと、おもむろにスーツの上着を脱いで、ブラウスのボタン三つほど外して見せた辺りでもういいと折れてくれた。あたしとしてはそのままの流れでいってくれても良かったのだが、相変わらずつれない巫女さんだ。相手はしてくれないくせに、そんな事ばかりしているとあの付喪神に叩かれるなんて余計な気は回してくれる。

 それでも霊夢相手なら相手が悪かったと諦めてくれるだろうし、叩かれるのも偶には良いと返すと久々に嫌な者、あの胡散臭いスキマでも覗いているかのような目で見つめてくれた‥‥その視線が少しだけ心地よかったのは秘密だ。

 

 そうして僅かな気持ちよさを覚えつつ神社を後にして、本来の帰宅先、竹林にある通いづらい病院へと向かって着いた今、非常に微妙な面構えで永遠亭の縁側に腰を降ろしている。

 きちんとお使いを済ませて帰ってきたのだから、胸を張って盗品を見せて借りを返せたかと問う算段でいたのだが、屋敷にいる者の顔を見てゲンナリとしてしまったのが今のあたしだ。

 庭を眺めて煙管咥えるあたしの背中側、そちらからは何やら楽しそうな会話をする数人の声が聞こえるが、そのメンツがなんとも言えない‥‥なんでいるんだ、宇宙人。

 

「アヤメもこっちに来たら? もう怒ってもいないみたいよ?」

「放っておいて、あたしが少し不機嫌なの」

 

「盗人が無事に盗んで帰って来れたのに、機嫌が良くなるどころか逆なんてどうしたの?」

「言葉を変えるわ、自己嫌悪ってのが近いわね」

 

 よくわからないわね、背中にそんな言葉をぶつけてくる輝夜姫。

 姫様のそんな言葉に、そうね、と同意する姿勢を見せる月の頭脳。

 二人から問掛けられて、返答を背中越しに済ますと、その場にいる二人からも何やらクスリと漏れたのが聞こえた。

 

「しかし、本当に八意様の使いだったのですね」

「兎の他に狸まで飼い始めるとは、読みきれませんでしたわ」

 

 宇宙人姉妹が話すとカタンという音が聞こえる。

 多分アレだ、あたしが永琳に渡した難題の品でも手にとっていて、それを卓に置いた音だ。

  

「離し飼いにしているから、うちにはあまりいないのだけどね」

 

 聞こえるもう一人の飼い主の声が少し大きくなる。

 ピクッと耳を動かすと同時に首根っこを掴まれて、グイッと強引に持ち上げられた。全く、お姫様だというのにこういう時だけ力に任せてくれて、あたしを愛玩動物だと言うのならもう少し愛でるなりしたらどうなんだ?

 子犬や子猫のオツムが足りない者達がするように、見た目アホの子のように手足を伸ばしたままで抵抗も何もせずにいると、ズルズルと引きずられ、皆の集まる卓に拉致された。

 宇宙人二人、正しく綿月姉妹と呼ぶか、顔を見て話す形にさせられたわけだし、その二人と対面する位置にわざと座らせられそれが気に入らず、借りてきた猫のように静かに無言で座っていると、隣に割り込んできた輝夜に何故不機嫌なのかと問われた。

 

「手段、いえ、悪戯する相手と尻尾を振る相手を読み間違えた自分が少し嫌だってだけよ」

「悪戯相手って、この二人に何か?」

 

「お恥ずかしながらその、突き落とされてしまいまして」

 

 輝夜に話していた事を永琳に聞き返され、内容を悪戯相手に説明されてしまう。

 月で突き落とされるなんてつまらん事を言うのに人をだしに使うなと睨むが、あたしは全く見られずに、大昔から慕ってやまない師匠だという八意師匠ばかりを見て話すこの姉。

 あたしの不機嫌、自己嫌悪の理由がコイツだ。

 人が恥までかいて帰ってきたのに、こやつらは何食わぬ顔でスルッと来やがったそうだ。

 詳しく聞いていないし、腹を割って話すつもりなど猫の額ほどもないから推測混じりだが、この姉妹があたしよりも早くに永遠亭に来られたのはこの姉の能力あってこそらしい。

 何をどうする能力なのか、そんな事は知るつもりが無いため全くわからないが、惰眠を貪る寝坊助のような場と場の境界を弄って繋ぐような能力か、どこぞのサボマイスターのように距離だとか、それに類似するモノでも操れるのだろう。

 この能力を先に聞いていれば‥‥

 あの時の扱いやすさから妹に尻尾を振って姉には態度悪く接してみたが、対応を逆にして姉の方に擦り寄っていれば、もしかしたら簡単に幻想郷に帰れたんじゃないかと気付かされたのがご機嫌斜めの理由。

 後の祭りだと言われればそれまでだが、紫がやらかした土地、真剣に事に当たり負けた土地だと聞いて慣れない気負いでもしていたのか、相手を見定めて転がすまでに至らなかった自分が少し情けない‥‥と、無事に帰って来れた今だから思う。

 

 それはそれとて。

 あれを全てあたしのせいだと言われるのは納得出来ない。

 あの悪戯は放っておけば勝手に落ちるところを敢えて早めただけなのだ。

 慕うお師匠様への報告なのだから、その辺りを偽らないでもらいたいところだ、物事は正しく伝えなければいけないと、このお師匠様は弟子に教えてはこなかったのだろうか?

 教えてないだろうな、真っ当な事を仕込んでいるならここの姫様はもっと姫様前としているはずだ、八意先生が里のアレみたいに、名の通りの先生だというのなら輝夜がこんな我儘娘に育ってはいないだろう。

 不死の蓬莱人が成長するなんて言い草、それは言葉の綾として。

 

「お姉様を突き落とし、あまつさえ盗みまで働いていきましたね」

「あれは突き落としたんじゃないわ、一人で勝手に落ちそうな所を少し、そう手助けしたのよ」

 

 完全に思考が逸れていた中、妹の声で我に返る。

 こっちもこっちで突き落としたと言ってくれるからアレは違うと反論を述べる、ピクリと揺れた姉の眉は見なかったことにして、あたしの言い分に耳を傾けた三人にそれとなく嘘偽りを述べておくか。

 さっさとこの場から逃げ出さないと、兎二匹が何処かで相手してくれているお面から、あのガンガン行く僧侶に南無三される話でもされてしまいそうだ。

 

「手助けとはどういう意味でしょうか?」

「依姫様のお姉様、という事はそっちの桃姉ちゃんもやんごとない御方なんでしょ、輝夜と同じく仮にも姫って呼ばれるくらいだし。そんな御方が自爆する姿が見るに絶えなくて、敢えて犯人となってみたわけよ」

 

 身振り手振りもなく神妙に語る。

 隣の輝夜が仮にもって所に食いついてきたが、今は罪人なのだから姫じゃないだろうと思い込み、言ったものは正しいと胸を張って主張した。

 一度尻尾を振ったからか、ほんの少しだけそういう考え方もあるのかと疑いながらあたしの嘘を咀嚼してくれる依姫、そして隣の姉は月で見た時よりも冷たさの見える瞳で睨んでくれる‥‥これもこれで心地良いが、同じ視線ならあっちの巫女さんの方が好みだな。

 なんて、下界にいる者らしく穢れた思考に興じていると、姉妹の色合いを足した誰かさんがフフッと笑って場を和やかにしてくれる。

 

「どう、うちのペットは? 手癖も悪くて口も減らないけど飽きないでしょう?」

 

 微笑んでフォロー、なのか?

 前の二つはどう聞いても悪口にしか聞こえないが、最後の一つは悪くないので、前二つはそこを強調するための言葉回しと捉え悪くないと思う事にする。

 しかしこれもまたあたしのせいか、手癖の悪さも減らず口も否定しないし出来ないが……今回のお宝頂戴は微笑んでくれたお前さんがお願いしてきた事だと思うのだが?

 

「否定するところもないからそこはいいとして、盗って帰って来いって言ったのは他ならぬ飼い主様でしょうに、そこまであたしのせいにするの?」

「あら、私は『とって帰ってくるだけの簡単なお使い』をお願いしたのよ? 盗んでこいとも言っていないし、『月の物』とは言ったけれど月の『都』の物をだなんて、詳しい場所の指定もしていないわ」

 

「それは、月の物を展示するって話をされれば‥‥」

「その話は私ではなく姫様から話されたものでしょ? ともかく私はお願いしていない、というよりも何も聞かずに出て行ったのはアヤメよ? 邪推しただけじゃない」

 

 いかん流れだ、確実に勝てない流れが来ているとわかる。

 ならば隣の我儘姫に矛先をズラしたい、天才に比べればまだこちらの方がやり込める‥‥けれど無駄なんだろうなと言うのもわかる、永琳の口から輝夜の事が話されたのだ、という事ははなっから組んでいるはずだ。

 

「輝夜も『展示に間に合わせたい』って話しかしてないわね、そういえば」

 

 これ以上話されて追い込まれても癪なので自分からネタバラシをしていく、よく理解していると褒めてきた輝夜に尻尾を撫でられ、これから巻き返そうという気概まで散らされて、勝てない流れに立つ瀬が流された気分だ、本当にぐうの音も出ない。

 気概とともに落ちズラされたメガネをクイッと直しつつ、頭を振って気を入れ替える、久しぶりに意識してチャラっと鳴る枷の音を聞き、もうなんでもこいと開き直っていると一番話しかけてこないと思えた相手が語りかけてくる。

 

「たかがペット風情が、随分気を許されているのね」

「そうね、結構気安い仲よ? 貴女のところの兎さんも過ごしやすそうにしていたし、大差ないわ」

 

「あの子は例外です、一妖怪の貴女なんかとは違います」

「そこはなんでもいいわ。あたしはあたしと輝夜達との話をしているの」

 

 食いつく所が違うと訂正すると永遠亭の主従が笑う。

 妹の方は静かに見てくるだけで何も言ってこないが姉は何か言いたげだ。

 けれどそれもはぐらかしておく、紫と違って争おうとは考えていない。

 あたしは楽しく笑えればそれでいい。

 

「仮に失敗した姿を見ても、失敗したと笑い飛ばして終われるくらいの仲ではあるわ」

 

 ねぇと頭を傾けて主従をそれぞれ見る。

 永琳からの難題を説いたあの日のように、目が合った輝夜と互いにウインクをすると、永琳からもあの日と同じように小さい溜息が漏れた。

 漏れた息をかき消すように二度目の煙草に火を入れて、ニヤニヤと天才様に吹きかける。それを見ていた正面の二人が、八意様に何をするのかとガタンと片足を立てて見せてくれた‥‥月を離れて幾久しいらしいが未だに慕われているようで、正しく妬ましいな、お師匠様。

 

「八意様、いいのですか? 今のような‥‥」

「言ったところでやめないし、言えば余計に悪化するわ」

「だからと言って八意様に向かって失礼な‥‥」

 

「ただのペットのお戯れに大袈裟ね。それに煙草で病んだとしても死ねば済む事でしょうに、ねぇ?」

 

 八意様八意様と騒ぐ姉妹は放置して、輝夜に話すとそうねと返ってきた。

 面と向かって死ねと言い慣れているあたしもどうかと思われそうが、言われ慣れていて何も思わない姫様もどうかと思う、が、死に慣れているしこれも慣れ切ってしまっているのだろう。あたしも特には気にしていないし。

 しかし赤い屋敷も地底の姉妹も、付喪神の姉妹もそうだし騒霊も‥‥あそこは三姉妹か、一人多いが多い分には問題ないから別にいいか。

 どれにしろ姉妹が寄れば姦しいな。そういえば後でお礼になんて言っておきながらプリズムリバーの三人に何も言えていないままか、これもこれであたしの心残りなのかもしれない、後で解消しに行ってみよう。

 ついでに彼女達の演奏でも聞くことが出来れば重畳だ、うむ、良い楽しみが出来た。 

 で、なんだったか?

 あぁ、どこの姉妹も寄れば騒がしいってやつだ、それは地上でも月でも変わらないらしい。

 死ねば早いと言ってのけると向けられる刀と扇子。

 またかと感じてちょいと煙管を握って見せる、滅多にも来ないお客様を偶には逃げずにと構えてみせる‥‥ちょっとだけ冷ややかな空気が流れたが、永琳からの『そうね』という穏やかな声で雰囲気を戻された。

 話を振った姫は当然として、思いがけない相手からも同意が得られてチラリと顔を拝むと、あたしと同じように永琳の顔を見る月の姉妹、何やら言いたそうだが無言で見るだけの月の姫様達。

 

「二人共、騒ぐくらいなら戻りなさい‥‥穢れに満ちた世界にあなた達は長くいるべきではないわ。顔が見られて良かったけれど、そう気軽に来ないほうがいいわね」

 

 こちらは見ずに姉妹に帰れと語りかける元師匠役、って今でも師匠か。

 帰れと言われ素直に帰るのか、視線を流して見てみると妹の方とだけ目が合った、姉よりはいいところがあるように感じられた依姫に輝夜と同じようにウインクをしてみるが、当然相手にはされなかった。

 呼び出す神様も巫女っぽければつれない感じまで巫女っぽいのか、そう考えていると姉とも目が合いこちらにもご挨拶‥‥ウインクは返ってこなかったが、声には出さずに調子付くなと口を動かしてくれる彼女。

 何に対してか?

 問う前に一瞬でどこぞへと消えていった。

 

「悪く思わないでくれると嬉しいわ、ただ少し真面目過ぎるのよ、二人共ね」

「なんとも思ってないわよ? 真面目過ぎると言われてもね、依姫の方はわからなくもないけれど、豊姫は真面目というよりも‥‥なんて言うのかしらね」

 

 僅かに苦笑して真面目だと教えてくれるが、妹の方はなんとなくわかる部分もある、わかるこそやり込みやすいと感じて妹の方には尾を振ったのだから。

 姉の方はなんというか、柔軟性を持っていてやりにくいというか、変に俗っぽいというか‥‥やっぱりアレか、紫に似ていると感じながら違う部分があるから反りが合わないとでも感じたのかね?

 刀を持つ方ではない姉に反りが合わないと感じるのも変な気分だが。 

 

「あれでも可愛いところもあるのよ、急に永琳に会いたくなったって言い出して来てみたり、こんな風にしてみたりね」

 

 反りの話をしたからか?

 二度と会うつもりのない者達の顔を見て肩でも凝っていたのか?

 理由はわからないが自然と身体も逸らしていた自分、その体制ついでにあちこち伸ばしていると、以前に月から訪れた時の思い出話を話しつつ、フラッと横に倒れる輝夜姫。

 ポフンとあたしの腿に頭を乗っけて、あの時はこんな風にしていたのだと姿で語るお姫様、長く艶やかな髪が腿の上から漏れ広がり、その下に感じるお姫様の温かみと重さ。

 死のない、終わらないというだけでソレ以外は人間と大差のない輝夜、我儘さも少女のそれなら暖かさも少女らしいそれがあると感じていると、先ほどの永琳の苦笑の意味がわかった気がした。

 髪色や思慮深そうな雰囲気等から紫に似ていると感じていたが、あの振る舞い方などは幻想郷に馴染む前の永琳、身内以外はなんとも思っていなかった頃、始めて会った頃の冷たい美しさだけがあった八意永琳に似ている、そんな感覚を覚えた。

 頭の上がらない師匠を真似つつ理解力辺りで自身のらしさも出す、なんとも面倒な事をしているなと考えていると腿の輝夜から手が伸ばされた。

 両手で頭を捕まえてそのまま引いてくれるが‥‥

 そこから先はどうせないのだろう?

 

「そういえば何を持ってきてくれたの? あの本だけって事はないんでしょ?」

 

 引かれるままに任せていると、クイッと引かれて顔が寄る。

 もうちょっとで触れられる、そんな距離まで近づくと、あたしの鼻先に唇を当てて土産は何かと訪ねてくる永遠の姫。

 口ではなく鼻なんて中途半端な位置だなと感じるが、これはきっと姫様なりの気配りってやつだろう、お使いを済ませてきたペットに向けて、飼い主からのちょっとしたご褒美って感じの物だろうね‥‥あたしも地霊殿の黒猫なんかによくやるし、特に意識するものでもない。

 広がり輝く黒髪を少し払い、持ち出してきた美味しいタレの小瓶をスカートのポケットから取り出す、緩く振って瓶を見せ小指の先に少し垂らし、そのまま姫の唇にあてがった‥‥悩みもせずにパクっと食らい付く、はしたないお姫様。

 釣れた姫の顔を見ていると一瞬瞳が大きくなる、姫の表情からどれと、永琳も手を出してきたので小瓶を渡すとあちらは自分の指に垂らして舐めた‥‥あっちにもやれば面白かったかもしれない。

 

「ほへっへ‥‥はんほのハレ?」

 

 離せばいいのに、小指を含んだまま喋る姫様。

 モゴモゴと舐められて愛玩動物としての気分は良いが、感触は微妙に隠微な感じがしてなんとも言えない、普段つれないなんて言っている意趣返しのつもりかね?

 だとしたら好ましくて焦れったい。

 

「お団子のタレ? そんなものを取ってきたの? というかあの二人もこれくらいの物を盗まれたからって態々来なくてもいいのに‥‥でも、うちにあるのより美味しいわね」

 

 モゴモゴ姫のそれに対して返答した永琳だったが、あれで会話として成り立ったのか、あたしは中身を知っているから聞き取れるが、これは永く一緒にいるからわかるのか?

 それとも阿吽の呼吸ってやつかね?

 いや、主従だし、阿吽のような同僚的な感じではないか?

 どうでもいい事を考えていると『いい加減にしたら?』なんて普段は見せない表情、正確に言えば昔に見せていたちょっと冷たい顔でこちらを見てくれる月の頭脳。

 見知らぬ間柄だった頃によく見ていた顔で寄ってきて、あたしの腕を掴むとチュポンと鳴らして姫が咥えていた指を引っこ抜く、そのまま調子に乗るなと冷たい声色で囁き、あたしの耳も引っ張られた‥‥千切れそうな勢いで持ち上げないでほしい、邪魔だと感じて摘むなら鼻だろうに。

 姉妹の姉が真似ているような顔で似た事を言ってきてくれたが、二人の間に割って入るつもりはないから心配しないでほしい、するとしても味見程度だ。

 ソレを伝えるように、姫から抜かれた小指を咥え永琳を見つめ返す。

 再度睨まれるが冷たさは消えて呆れだけが見えた。

 どうせ見るならその目で見てくれ、でないと悪戯をした甲斐がない。

  

 

 余談だが、さすがに味わいはしなかった。

 姫の味を覚えて、万一気に入ってしまえば本格的に飼われなければならなくなる。

 なんとなくそう思えたし、今のあたしには本命もいるから、この指は本当に試食程度だ。

 永遠の姫も旨い……気もしなくもない。

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