シムリア星人国交断絶RTA 作:非術師
俺は設定が好きだ。
漫画やラノベなどの物語における設定、ゲームにおける世界観の設定、それらは物語に深みを増し戦闘に奥行きを出す。
読者やプレイヤーがあれこれ妄想して「こんなことができるんじゃないか?」「これルール上可能なのでは?」といった考察のできる余地があると最高だ。
前置きはここまでにして、俺は転生したらしい。前世の記憶ははっきりしている。
至って健全な、設定をこねくり回すのが好きなオタクだ。生前は転生モノについて「うおw」とかおもっていたが、まさか自分が転生する側になるとは…
そんでもって転生してみたら全然笑えなかった。まず、ここは日本だった。
始めの頃は普通の日本かぁ〜夢が無いですね、とか思っていた。
なんなら俺が死んでから結構未来らしい。知識無双出来なくて草
ある日まではそんな腑抜けたことを考えていた。
10月31日ハロウィン
街の人々は仮装などせず、静かに黙祷をしていた。まぁ地方のハロウィンとか平日と変わらないしな、とか考えていた時に流れたニュースを見て衝撃を受けた。
『あの凄惨な事件から40年――』
『依然、東京は呪いの影響により放棄区域となっており――』
瞬間、俺は理解した。
「あぁ…ここ呪術廻戦だ」
しかも時系列≡寄り
うーーーーん………えぇ?俺にやれること何もなくねぇ?
本編は既に終わり、原作知識チートはほぼ使えない。
その上≡は何もしない方が平和な世界になる。
これは終わってますね、なんのために転生させたん?
そんなことをベイビーの体でぐるぐる考えていたのはもうずっと前の話。
時が流れ、術式に開花して呪術師として虎杖悠仁や伏黒恵のような傑物を師として仰ぎ、呪いを払う為に邁進して……いなかった。
なんなら術式なかった。クソ雑魚だった。
転生特典とかないんか?
中学生の時にYouTubeの東京外周部定点カメラLIVEを見た時に呪いが見えた時、大興奮したものだ。
勢いで京都の採用窓口(呪霊が一般公開されたので呪術師の求人がかかっている)に電話した時のことは今でも思い出せる。
「呪い見えます!!面接だけでも!!」
「では適性検査を行いますので……」
結果は補助監督採用
本編以降の補助監督の仕事は少し変わっている。今までの補助監督は各地に呪いを祓いに行く呪術師のサポート(討伐対象の事前調査、送迎、失踪事件から呪霊との関わりを確認等)がメインだったが、今となってはほぼ事務仕事。
元々政府とズブズブの呪術界ではあったが、遂に公的機関として国家に組み込まれた呪術界。国家事業として大祓を筆頭とした「呪い」の管理を行う以上これまで以上に事務仕事が増えるわけだ。
呪霊を視認できなければ出来ない業務もままあり、かと言ってそれらの仕事に戦力である呪術師を使うわけにもいかず補助監督に御鉢が回って来るわけだ。
つ、つまらん…しかもクソ忙しい!!
そんでもって夢がねぇ!
原作キャラ達にも会いたかったがほとんど皆お偉いさんでとても1補助監督に会える様な立場にはなかった。更に言えば虎杖は既に失踪してた。何を楽しみにすればいいん?
補助監督から特訓して呪術師になれば俺の想像していた日々が待っていると、頑張ってみた時期もあった。
だが鍛錬をしたところで呪術師は才能が9割、基礎的な呪力強化しかできないし、その呪力もヘロヘロで獲物があっても三級に大苦戦。
でも結界術の才能は多少あったらしく天元様の御仏のお力添え無しでも帷を降ろすことができる。
結界術講習なんて何処もやってないし、教科書作ってくれる優しい呪術師なんて居ないからシン陰サブスクの恩恵をもろに得たよね。
しかしこれが出来て本当に良かったと思う。
お陰で大祓もだが呪詛師討伐にも同行することができている。
「今日の大祓凄かったなぁ…!
そういや瞬殺されてたけどあのカエルみたいな呪霊やばかったな。鳴き声を起点に色々起する術式っぽかったけど…………」
「まーた始まったよ…もう祓った呪霊の術式とかどうでも良いでしょ。」
「まぁまぁ、今後同じタイプの呪霊が産まれた時に役に立つかもしれませんし?あとは趣味ですね、趣味。」
現場に同行し、歴戦の呪術師達の戦闘報告書を書き、呪霊を観測し、誰に共有するでもない考察をノートに溜め続ける。
それだけで満足していた。
世界の裏側に、前の世界とは違う「異能」に関わっているという事実だけで。
――しかし、ある日そんな日常は壊れた。
⸻
2076年XX月YY日
転機は東京の上をゆっくりと巡回している幻影の特級呪霊。ソレは本来東京のわずかに漏れ出た呪力を吸収するだけの無害な存在だった。
消化不良を起こした際に呪力を撒き散らさない様、胎の中に潜入して記憶の整理をする役割も昔有ったらしいが、その程度じゃ抑えきれないほど東京に集まる呪いは大きくなりすぎた。
結果として幻影の特級呪霊はキャパオーバーを起こし爆発四散。
その中に溜め込んだ莫大な呪いが日本全土に撒き散らされる大事件が起きることとなる。
呪術高専、旧御三家の五条家総出といった総戦力で四散した呪いや呪霊を抑え狩る布陣。
「クソッ伊織さんがいれば…!」
「おい!無駄口叩いてんじゃねぇ!また来るぞ!」
「縺�▲縺励g縺ォ縺ゅ◎縺シ縺�シ�」
「祭り騒ぎで興奮してんのかコイツら…!」
しかし、人外魔境を闊歩する一般の呪霊による横槍に手間取り苦戦を強いられていた。
このままでは四散を抑え切るどころか興奮して暴れる呪霊共に圧殺される。そんな時に静観を決め込んでいた彼が動いた。
「あちゃー、やっぱりダメだったか。事前対策を四散する呪霊に意識しすぎてたな。まぁ及第点ってことでケツは拭いてやる。」
“解”
かくして人外魔境東京で発生した幻影の特級呪霊の事件は犠牲者ゼロで幕を閉じた。
窮地に参戦した虎杖悠仁による東京全域に及ぶ的確な斬撃、人命を優先した術式運用。だが彼の実力をもってしても、凄まじい勢いで吹き飛んだ幾つかの呪いは各地に散ってしまった。
それから数ヶ月は我々補助監督が情報を集め、なるべく早く東京外に呪霊がいるという状況を消すべく動き続けることになる。
「ではくれぐれも気をつけて。呪霊またはその痕跡(残穢等)を発見した際には直ぐに引き返すように。」
「はい!肝に銘じます!」
そうして俺は九州に向かうことになる。
⸻
大前提として九州はヤバい。
そういうのに疎い人でも心霊スポットの代名詞である犬鳴トンネルや軍艦島などは聞いたことがあるだろう。東京に呪霊が集中する前は呪いが特に集まりやすい地方で有名だったらしい。
そこに呪霊が根差したら現在の競合無しの無双状態で直ぐに強大な呪霊に育ちかねない。
そんなことを考えながら目星を付けていた幾つかのポイントを順番に巡り、その内の最後である山の中に入って行った。
空中軌道から推測して発見した残穢を辿りこの山に辿り着いたが――この山は妙だった。
何か誘い込もうとしているような…道標のような残穢どこかでーー?
その時引っかかる。
俺の脳内呪術データベースから「幻影の特級呪霊・九州・誘い込むような残穢」と呪術ファンなら嫌でも思い当たる答えに辿り着く。
「朧絶だこれ……あいつ外に存在できたのか…」
特級呪霊 朧絶
それはゲームオリジナルの特級呪霊であり、そのあまりの噛ませ感からアニオリくん呼ばわりされているcv殺せんせー呪霊
重要なのは朧絶は幻影の特級呪霊が作り出した幻影夜行の記憶を増やす鍵でしかないという点。
朧絶がいるということはこの世界はファントムパレードの中で再現された記憶に過ぎない偽物ということか?
……いや違うな
俺目線のこの世界には幻影の特級呪霊が観測できている。
「こっち」がファントムパレード内ではない
一瞬焦ったぜ、イレギュラーが重なるとこうなるんだな
そうこう考えながら山中で残穢を辿っていると道の端に道祖神を確認した。…なるほど、此処より奥を彼岸と定義して生得領域を展開したわけだ。
こうしなければ生得領域の境を定義できなかったと見るべきだろう。
本来なら此処で引き返して皆に情報を渡すべきだ。
だが俺は閃いてしまった。そして天啓を得た。
俺がこの世界に生まれた理由。ずっと考えていたが、そんなことできやしないと放棄していたドス黒い考えが渦巻き始める。
よし、マルルとクロスぶちのめそう。
ずっと思っていた。≡で呪霊も呪力もほぼ無くった世界はつまらないと
異能のない世界なんて緩やかな衰退と退屈が待っているだけだ。そんなの前の世界と変わらない。
ただの妄想だった。ただの妄想で終わるはずだった計画の最後のピースが転がってきた。
これはもうやるしかない。
夏油が死んで因果も壊れて真人見つけた時の羂索の気分がわかった気がする。
これは作戦実行するわ。
俺は呪力を可能な限り抑え込み、どうやって口説こうかなぁ…という不安と期待を胸に俺はその呪霊の生得領域に踏み入って行った。
⸻
入った瞬間ドロッとした呪力の圧と周囲の景色が変わった。
周囲は山中から山岳へ変貌し、日光が空を照らしていた。
聖地巡礼をしているファンの気持ちになりながら一際大きな呪力へ足を進める。
その先にいたのは赤と肌色が混ざった体色、黒と緑の市松模様のズタズタなマフラーを身につけた人形の呪霊。
「はぁはぁ……まだ数が足りない…!碌な準備も無しにアレらと接敵したら私は…!」
ソレは自身の呪力をこねくり回し自身の配下である「器」を懸命に生み出していた。
んーー?思ったより余裕がないぞ?
《クックック、待っていましたよ》みたいなのをイメージしてたんだが、、
とりあえず自分の状況を理解はしてるみたいだな。
察するに吹き飛ばされている最中に歴戦の呪術師になった虎杖悠仁を見たのだろう。
ハッキリ言って朧絶が生きているのは運がいいだけだ。
四散する呪力と呪霊を片っ端から切り刻まれた際の消失反応に紛れて気が付かれなかっただけ、少しタイミングがズレるだけでも雑魚呪霊と同じように解に巻き込まれ祓われていたはずだ。
これは都合がいい。
それに付け込めば多少交渉が有利になりそうだ。
「ッ!!誰だ!?」
おっと気配は隠していたが流石に視線でバレたか
俺は両手を上げて岩陰から朧絶の前に姿を現す
「待ってください。私は貴方の敵ではありません。貴方と取引がしたくてここまでやってきました。」
「はぁ?取引?」
俺がしにきたのはコイツを仲間にする為の取引だ。コイツに合わせて口調は整えないとな。
そして警戒しつつも何言ってんだコイツ?といった様子を隠しきれていない朧絶に俺は畳み掛ける。
「えぇ…貴方のことは知っています。特級呪霊朧絶、幻影の特級呪霊の中で起きていることは『手順書』の管理者経由で知っていますので。
私の理想と貴方の理想を同時に叶えることができるそんな計画があるのです。
お話だけでもどうですか?」
本当は転生知識のおかげだが、手順書の管理者が残した手記にも一応存在が記されていたので嘘というわけでもなし。
突然生得領域に入ってきて隠れてた術師モドキが急に取引とか言い出して戸惑いを隠せていない朧絶
「……………まぁ、殺すのは簡単です。いいでしょう。人生最期にして最大のプレゼンをしてみなさい。」
依然警戒を解かず、自身の創り出した器の後ろで腕組みをしながら怪訝な顔で続きを促す。
「ありがとうございます。
では前提として言っておかなければならないことがありまして……」
「なんです?そうやって引き伸ばすのが目的なら……」
「今から10年後に宇宙人がやってきます」
「は?」
「いや、ですから今から10年後に宇宙人が…」
「………まぁわかりました。なんでそんなことがわかるのかも気になりますが、その宇宙人をどうにかしたいと言ったところですかね?」
「そんなとこです。
その宇宙人は結構話が通じる連中で紆余曲折あって地球人と隣人になります。」
「???インベーダーではないと?では尚更なぜ私に話を持ちかけてきたのです?」
話の先が読めず予測を諦めてさっさと話を聞いた方が判断したようだ。
突拍子もなさすぎる未来だししょうがない。
「紆余曲折の中で地球から呪霊と呪術がなくなります。私はそれが嫌で嫌でたまらない。その元凶となる宇宙人を叩き潰す為に貴方に声をかけました。」
「はぁ?呪術が無くなる?呪霊が消える?そんな規模の術式行使なんてあり得ません。仮に実行できる術式があったとして、それを実現させるだけのリソースはどんな縛りを科しても…」
「
呪力をあらゆるエネルギーに変換する異星の鉱石ムル
特級術師乙骨憂太の特級呪物による呪力供給
そして貴方もよく知ってる術式無為転変
これらを総括して世界の改変をスキップして行う『願い』の具現、混沌と調和
これらを用いて世界の改変を行い、世間一般に言われる平和な世界になりました。」
情報の出し惜しみなんてしてられない。このプレゼンで落とせなかったらおれは証拠隠滅のために殺される。
今必要なのはリアリティ!
コイツを共犯者にするために俺の持つ全てをぶつける!
「……………不確定要素が大きすぎる
貴方が嘘をついている可能性を考える方が現実的だと思いませんか?」
「俺はこの取引において絶対に嘘をつかない。これは縛りだ。」
「本気ですね…ということはここまでの話は真実……?悪夢ですか?」
急すぎる話になんとか付いて行こうとする朧絶に少し声を優しくして語りかける。
「えぇ…ですが私には知識だけはあります。相手の術式、目的、危険人物など事細かに。それらは貴方の術式…奸骨奪胎との相性は抜群です。」
「クックック、見えてきました。我々は呪術のない世界を望んでおらず、上手くいけばその世界の改変をしたという術式も手に入るという取引ですね?」
腕を組みながらニヤリといい笑みをこちらへ向ける朧絶。それに対して俺は内心のガッツポーズを抑えながら微笑み返す。
(よっっっっしゃぁぁぁぁ!!!この作戦で1番の山場を超えたァァァァ!!)
ここに人類の裏切り者と呪霊のトリックスターのコンビが結成された瞬間だった。
俺くんの年齢遍歴
2058年 0歳
2076年 18歳