ハイスクールDxD-月下水月の剣士- 作:水の柱
中学二年、夢を支え、夢を守る。
そうセラフォルー・レヴィアタンに誓った日から、自分の修行はさらに苛烈さを増した。
彼女がただの夢見る少女ではなく、冥界を統べる四大魔王の一柱であることも聞かされた。
それでも自分の決意は変わらなかった。
むしろ、より強くなった、彼女の夢を守るために、彼女が笑っていられる世界を守るために。
夢を支え、夢を守る。そうセラフォルー・レヴィアタンに誓った日から、自分の修行はさらに苛烈さを増した。
彼女がただの夢見る少女ではなく、冥界を統べる四大魔王の一柱であることも聞かされた。
それでも自分の決意は変わらなかった。
むしろ、より強くなった、彼女の夢を守るために、彼女が笑っていられる世界を守るために。
そのために義烈は、前世の記憶の中にあった“柱稽古”を個人でできる部分を再現し始めた。
滝に打たれ、呼吸を乱さずに山を駆け、地獄の柔軟をし、高速移動の訓練、丸太を三本担ぎスクワット、最後に岩を押す筋肉強化、眠る時すら呼吸を止めない。
呼吸を常に巡らせる――常中。
そして、その先、全てが透けて見える領域。『透き通る世界』
そこへ至ることを目標に、彼は己を追い込んでいった。
その夜。
京都は、冷たい雨に包まれていた、修行で帰りが遅くなった路地裏、石畳に叩きつけられる雨音だけが響く。
ふと足を止めた。
「……まだ生きているな」
薄暗い路地の隅、そこに、一匹の傷だらけの黒猫が倒れていた。
雨に濡れ、黒い毛並みは血でさらに暗く染まっている。
ただの猫ではない、セラフォルーとの付き合いの中で、義烈は人ならざる力の気配を知るようになっていた。
この猫からは、明らかに“別の力”が漂っている。
「追われているのか。……待っていろ」
義烈が猫を抱き上げた、その瞬間だった、背筋を冷たいものが走る。
殺気、振り向く。
そこに立っていたのは、黒い翼を持つ男。
「……堕天使、か」
雨の向こうで、男が笑う。
「そいつを渡してもらおうか」
「断る」
即答で答える。
義烈は猫を庇うように一歩前に出て呼吸を整える。
肺に冷たい空気を満たし、全身へ巡らせる、心拍数を150、体温を38.5℃。
筋肉が熱を帯び、血流が爆発的に加速する。
腰を深く落とし、木刀を水平に構えた。
雨粒が刃の代わりに木刀の先端を滑り落ちる。
「(――水の技法)」
動く、雨垂れが如く一点を狙う最速の突き技。
「(伍之技-雨垂れの穿-)」
穿つ、木刀の先端が一直線に喉元を貫いた。
「が……っ」
堕天使の瞳が驚愕に見開かれ、その身体は崩れ落ちた。
だが、殺気は一つではない、路地の奥、屋根の上、左右の壁際感じるのは複数。
義烈は腰を落としたまま、木刀を構え直す。
「コイツを渡すつもりはない」
雨の中、次々と堕天使たちが姿を現した、黒い翼が夜を覆う。
呼吸はさらに深く、鋭くする。
水の技法と呼吸法を重ね、肉体を限界以上に引き上げる。
この戦いは、ただの防衛ではなかった。
俺にとって初めての――守るための戦いだった。
どれほど斬ったのか、雨と血が混じり合い、石畳を赤黒く染める。
自身も全身が傷だらけだった、肩は裂け、脇腹には深い裂傷。
それでも倒れない、心を凪いだ水面にして、呼吸で筋肉と血管を無理やり収縮させ、出血を抑え込む。
常人なら失血で動けない傷でも、彼は立っていた。
腕の中には黒猫、それだけは決して落とさない。
「……死ぬなよ。もう少しの辛抱だ」
自分に言い聞かせるように呟きながら、雨の京都を歩き出した。
家に戻ると、義烈は真っ先に黒猫の手当てを始める。
傷口を洗い、薬を塗り、温かなタオルで優しく包む、自分の傷よりも先に。
その時だった。
「にゃん……なんで助けたの?」
義烈は少しだけ目を見開く、だが、驚きはすぐに静かな表情へ戻った。
「……傷ついた者を見捨てるほど、落ちぶれたとは思ってない」
それだけ言って、ようやく自分の傷の治療に取りかかる。
黒猫――いや、猫又の少女は、その横顔をじっと見つめていた。
こうして。
俺は、黒歌と呼ばれる猫又と出会った。
それは奇妙で、温かく、そして後に大きな運命へ繋がる共同生活の始まりだった。