ハイスクールDxD-月下水月の剣士- 作:水の柱
八坂の屋敷から戻った夜、玄関を開けた瞬間、空気が重かった。
「……」
セラフォルーと黒歌に床の上に正座をさせられる。
「義烈から狐の匂いがするにゃ」
黒歌の目が細まる。
「浮気かにゃ?」
「ギレッちゃん」
セラフォルーがにこりと笑う。
「お話しようか☆」
「……はい」
どこかの白い魔王のような覇気、逆らう選択肢はなかった。
義烈は静かに語る、全てを包み隠さず。
話し終えた後、沈黙。
「義烈が女狐に誑かされたにゃ〜!!」
「八坂ちゃんか〜」
セラフォルーは顎に手を当てる。
「レヴィアたん専属の衣装担当が、厄介なのに目をつけられちゃったな☆」
「……問題か?」
「問題ではあるよ☆」
にこり、だが目が笑っていない。
「ギレッちゃん、価値わかってる?」
「……多少は」
「多少じゃ足りない☆」
即答だった。
セラフォルーは少し考え、指を鳴らす。
「決めた☆」
「黒歌ちゃん」
「にゃ?」
「お目付け役、前倒しね☆」
「え?」
黒歌が目を丸くする。
「そのために、あそこ行こっか☆浮世絵町にいる」
セラフォルーの声が少しだけ変わる、軽さが抜ける。
「関東妖怪の魑魅魍魎の主、奴良組二代目総大将の奴良 鯉伴ちゃんのところに☆」
空気が張り詰める自分は何も言わない。
だが、その名は確かに“重い”。
セラフォルーは正装に着替えていた、フリルではない、魔王として威厳と格式を纏った装い。
「……初めて見たな」
「セラちゃんはそういうとこ真面目にゃからねー」
黒歌が肩をすくめる。
「それじゃあ行くよ☆」
魔法陣が展開される。
「まずは――『化け猫横丁』からね☆」
視界が歪む。
次の瞬間、そこはもう妖怪たちによる歓楽街だった。
「……妖の街か」
「関東の中枢の一つだよ☆」
セラフォルーが軽く言う、視線が集まっていた。
悪魔、人間、猫又、この組み合わせは異質すぎる。
古びた建物、だが中から漂う気配は、ただの組ではない。
「ここだよ☆」
戸が開く、中にいたのは七つの尾を三毛猫。
「おやおや」
声は穏やかだが、底が深い。
「珍しいのが来たもんだねぇ」
細められた瞳が順に見る。
「魔王に……人間……」
そして止まる。
黒歌に。
「それと……藤舞の娘かい?」
空気が変わる、黒歌の表情が固まる。
「……母を、知ってるの?」
「そりゃあねぇ」
参曲はゆっくりと笑う。
「うちの組に居たからね」
静かに、だが確実に重い言葉。
「随分と暴れて、随分と背負ってた女だったよ」
黒歌が拳を握る、自分は何も言わない。
そんな中セラフォルーが一歩前へ出る。
「今日はお願いがあって来たんだ、黒歌ちゃんの件だよ☆」
参曲の尾がゆらりと揺れる。
「なるほどねぇ、面倒なのに目をつけられてるって話かい?」
「そういうこと☆」
もう一人、参曲が声をかける。
「なら話は早いねぇ」
参曲が声をかける。
「良太」
現れたのは一人の男が現れた大きな耳と三毛猫模様とバンダナ、鋭い目、だがどこか軽い。
「呼んだか、姐さん」
「この子、面倒見てやりな」
黒歌を見る、少しだけ笑う。
「……へぇ、藤舞の娘か、俺がケツ持ちになる」
あっさりと言った。
「問題ねぇ、化猫組がついてるってことは――」
少しだけ間を置く。
「奴良組が後ろにいるってことだ、それに首無の奴ならそうするだろうしな」
セラフォルーが満足げに頷く。
「それだけじゃ足りないね☆最終確認、行こうか☆」
参曲が笑う。
「行くんだろう?」
「総大将のとこに」
「……ああ」
短く答える。