ハイスクールDxD-月下水月の剣士- 作:水の柱
奴良組に黒歌が保証されてから数日、八坂が九重を連れてお礼に来た。
「では改めまして、九重を助けていただきありがとうございます」
「は……初めましてなのじゃ、九重と申すのじゃ、改めて助けていただきありがとうなのじゃ!」
「水戸義烈だ、気にするな。助けられる者は助けたかったからやっただけだ」
「そうですか。それともう一つ、鞍馬天狗が貴方に興味を持った様で修行をつけても良いとのことじゃが、どうする?」
「鞍馬山の大天狗……牛若丸を鍛えた天狗か、その提案は有り難く受けさせてもらう」
修行の曜日な話しも纏まり、週末は黒歌も良太猫や参曲の所に修行に行くので週末に受けることにした。
週末、言われた修行場所である鞍馬山に行くと、天狗とわかる長鼻の翁と予定にない強面の白髪の老人の妖怪と顔半分を卒塔婆で覆い隠している青年がいた。
「うむ、牛若丸以来の鍛えがいのありそうな小僧じゃ」
「なるほどな、この歳にしては練られている」
「チッ、何処となく雰囲気が綱のクソ野郎に似てやがる」
天狗は鞍馬天狗で老人はわからないがもう1人は綱と言っていることから頼光四天王と関わりがあったのだろうと推察する。
「では名乗ろう、儂は鞍馬天狗……だがこの姿では鬼一師匠と呼ぶが良い!」
白や黒の羽飾りを備えた、紅色の甲冑に身を包んでいる白髪ロングの女性、自分の前世にやっていたFateの鬼一法眼の姿に変わった……なんで?
「鞍馬、お前のその弟子に対して女性の姿になる癖はどうにかしろ」
「そう硬いこと言うな茨木、この姿だとだいたいの弟子が今で言うもちべーしょんが上がるのだ」
「この2人は放っておこう、私は鬼童丸だ」
挨拶と同時に神速の抜刀が放たれる、それを半歩後ろに下がり村雨を抜刀して受け流すしすぐに刀の範囲内に気で感知範囲にする、横から茨木童子が雷を纏う輪から無数の雷撃の矢が飛んで来るのを水の技法弐之技-水精の舞い-で避ける。
「へぇ、鬼太鼓を避けるか」
「なるほど、正しく流麗!」
鬼一が羽の大団扇から風の刃を放つ、それを水の技法参之技-潮流(ちょうりゅう)-で遊撃する、その隙に鬼童丸が刀から無数に拡がる梅の枝のごとく斬撃を水の技法玖之技-治水(しすい) -で防ぐ。
「“梅木”も流すか、面白い技だが、もっと思考と反射を同時におこなうと良い」
茨木童子が殺気全開で切りかかるのを鬼一が大団扇で受け止めて言う。
「うむ、惜しいな。義烈、お主は目が良いな、しかも判断が速い上に刀の範囲内のみに限定して気の感知を展開しておる、大半それで対応できるせいで入れる領域に来ているのに入りきれておらん」
「……何をすれば良い?」
鬼一が呪符を出して額に付けると視界が見えなくなる。
「気の感知を使うでないぞ、視界に頼らず世界を感じてみよ」
「もういいよな、鞍馬!!」
「ぐっ!」
殺気全開が今度こそ切りかかる茨木童子に一瞬反応が遅れて完全に避けきれずに少し切られ、呼吸で無理矢理切られた場所を閉じて血を止める。
「どうしたよ、殺気を感じてから動いてんじゃ遅ぇんだよ!綱のクソ野郎はな、俺が殺意を抱いた瞬間にはもう間合いに入って無表情で刃を置いてやがった。殺気に怯むな、殺気を雑音として受け流せ!」
自分は直感で咄嗟に水の技法漆之技-渦潮-で鬼童丸の剣戟を防ぐ。
「見えてなくても防げたのならそのまま斬り殺せ、お前の思考なら同時に反射で切れるはずだ」
何かが落ちるて来る音が聞こえ後ろに飛び退く、自分のいた場所にズドン!と重たい物が落ちる。
「ほれ大岩だ、それと音に気を取られすぎておる」
「ガッ⁉︎」
背中に茨木童子の鬼太鼓の雷撃の矢をくらい痺れながらも踏み込み倒れるのだけは防ぐ。
「(思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ!!透き通る世界の入り方を!!無駄を全て消せ!そして……思考と反射を同時に、雑音を受け流す!)」
一度深呼吸をする、痺れから力が入り辛くなり余分な力を抜いて脱力していく、一瞬音が消えて茨木童子が切りかかる時の筋肉の動きが見える。
「……見え」
余計な力を使わずになんとか避けることができたがすぐにまた見えなくなる。
「……へぇ」
「義烈!そのまま無駄を省き続けろ!!鬼童丸、頼むぞ」
「わかった」
全ての無駄が無くなったのを感じる、視覚が無いのに鬼一たちの肉体が透けているように見え、さらに周囲の時間流も遅く感じ、畏や妖力など水流の筋のようにすべて透けて見える。
鬼童丸が二刀の“梅木”よりも速い斬撃も先程では絶対に見えなかったのに今なら見えて、あれも使える。
「水の技法……拾壱之技-弘原海怒涛-」
脱力をして津波の様に広範囲を無拍子で切り刻みながら鬼童丸に向けて駆ける。
「いいぞ、ようやく殺す者の目になった。ならばこの“櫻花”を破り殺す気で来い!」
「(ッ!呼吸がし辛い、脳が焼ける様に熱い、負荷が大きすぎる……だがまだ止まるな!アレを打ち破るまで!!)」
億万の花が吉野の山に散るかのごとく櫻花の斬撃と弘原海怒涛の荒波がぶつかる、今この透き通る世界が開いて見えている流れのまま必要な斬撃のみ取捨選択して切って近づいていき、鬼童丸を切る直前に酸欠になり体力もドッと消耗して常中も維持できない程過呼吸になり透き通る世界が閉じる。
「惜しかったな義烈、あの技のことも加味すると、非戦闘時なら3分といったところか」
「それにしても、俺たちが見えていたな、てことは綱や他の四天王とはまた違うってことか?アイツらは大具足を召喚してたが」
「そうだな、あの呼吸法は見た限り大量の酸素を血中に取り込む事で、血管や筋肉を強化・熱化させて瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる技術だ、自身の血管や筋肉を把握する延長で見えているのだろう、義烈は気を使えるから他の畏や妖力、魔力なども見えていてもおかしくはない、透き通る世界とでも呼ぼうか」
「なるほどな。それに茨木よ頼光や金時は感情の昂りによって召喚していたから違うだろう、どちらかと言えば綱や貞光寄りの無我の境地に入り召喚する方だ、まあ義烈は源氏ではないのだ、召喚できなくても当然だろ」
さっきから源氏の大具足の召喚という不穏なワードが聞こえるのだが?
「へえ、アレがないのは寂しいがまあ及第点といったところだな、まだまだ頼光や四天王の奴らほどではねぇ」
「それはそうであろう、まだ成長するのだ、それに牛若丸は召喚できなかったのを考えればこちら方面では牛若丸よりも才能はある、彼奴は騒がしくて兄に犬の様に懐いており敵の首を切って兄に褒められたいとしか考えてくて入りきれておらんかったからな」
「そうかよ、週末だったな。気が変わった、暇だからまた来てやる」
茨木童子に礼を言う前に去って行く。
「八坂様や鯉伴が気に入ったのが理解できた、私も週末にまた来よう」
「儂も約束通り週末に来よう、義烈よお主の目はまだまだ相手しか見ておらん、更なる境地を目指すのなら透き通る世界でその名の通り世界を見よ」
鬼一が呪符を解除してようやく視覚が取り戻せた。
水面の月は、まだ遠い、だが確かに、あの格上の妖怪たちとの師弟関係でその輪郭が見え始めていた。