俺が見ているのは夢なのか現実なのか   作:月島柊

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過労からふらついた状態で歩道橋から落ちてしまった柊。しかし、目が覚めたのは見たことのない場所だった。
そこで声をかけてくれた女性、雪花ラミィ。まだ場所が分からないままで、どうすればいいのか分からない。
柊はこれからどうするべきか。第1話が始まる。


第1話 現実……?

 

 雪花ラミィ。彼女はそう名乗った。そもそも青い髪の時点でそこまでいないとは思うが、それでも言葉が通じているらしかった。

それに、俺は初めて会った気がしなかった。実際に会っていたわけではないが、スマホで何度か見たような、そんな感じがした。

 

「ラミィ……ホロライブ……」

「うん。そうだけど、新しい先生?」

 

どうしても見たことがある気しかしない。俺は確信を得るためにラミィに1つお願いをした。

 

「ラミィ……耳を見せてくれないか」

「え?耳?まぁ……いいけど……」

 

ラミィは少し恥ずかしがりながらも青い髪を耳にかける。その耳は尖っていて、人間離れした形をしていた。

間違いない。俺が見ていたラミィはエルフなのだ。ということは、ここは……

 

「ってことは……ねぽらぼ?」

「知ってるんだ?もしかして前からいた先生?」

 

その先生とやらに一切の心当たりが無いが、学園と言う以上ここは学び舎なのだろうか。

 

「その先生って──」

 

俺がラミィにそう言い欠けると、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。大人っぽく、色っぽい声が。

 

「月島さま〜!探しましたよ〜」

 

遠くから胸を上下に揺らして小走りでやってくる。医者のような服装で、胸元は大きく開き、谷間が見えている。

視線のやり場に困った俺は、とっさに走ってくる人から目を逸らした。間違いない。あれは……

 

「あ、ちょこ先!」

 

癒月ちょこ。だが、これで何となく分かってきた。癒月ちょこが俺の名前を知っているということは、俺はここで前から関わりのある人物だということなのだろう。

 

「月島さま、あなたのクラスが待ってます!」

 

あなたの、クラス……そもそも先生であることを今この場所で初めて知ったのだが、俺のクラスっていうのは。

 

「えっと……ちょこ先生、ちょっとこっちに……」

 

俺はちょこ先生の手を握って、ちょこ先生のやってきた建物の中に連れていった。後ろから「バイバーイ!」とラミィの声が聞こえたため、俺は右手を挙げて手を振った。

 

 

 

 入口の前でちょこ先生を止め、俺は今の状態をちょこ先生に話した。

 

「ちょこ先生……実は俺、ここにいた記憶が……」

「あら、そうだったの……ごめんなさい、てっきりあるものだと……」

 

ちょこ先生の理解が早くて助かった。ここで色々聞かれても答えられない気がしていたためだ。

 

「ただ名前については把握してるから、その点は大丈夫だと思

う」

「そうですか!なら安心ですね。じゃあ、クラス案内します」

 

ちょこ先生は俺を先導して学園の中へ連れて行く。

 

 

 

俺のクラスは1組らしく、俺たちいわゆる「ホロリス」が思っている0期生と1期生が所属しているらしい。クラスの委員長はときのそらで、副委員長は夏色まつり。そらちゃんはともかく、まつりは……意外とサポートが上手かったりするのだろうか。

 

「こちらですよ、月島さま」

「ああ……ありがとう、ちょこ先生」

 

ちょこ先生は小さく手を振って来た道を戻っていった。本当にお姉さんっぽい人なんだな……

そう浸っている暇もない。クラスでは俺に視線が集中している。おそらく案内されているのが不自然だったのだろう。

 

「あー……ごめんな、俺ここにいた記憶がないんだ。名前は分かるんだが、部屋の場所とかは……な」

 

そう言うと、やはり大半は不思議そうな表情を返す。それもそうだ。それが普通の反応だ。

 

「そしたら、私が案内しますよ?」

 

言ってきたのは委員長、そらちゃんだった。やはりここは委員長が適任なのだろう。

 

「なら、案内はそらちゃんに任せようかな。とりあえず、みんなの名前を確認したい。呼ばれたら返事をしてくれ」

 

そう言うと、みんなの視線が再び俺に集まる。最近無かったこの雰囲気、学生の頃に戻った感じがする。

 

「えっと……赤井はあと。なんて呼べばいいかな」

「はあちゃまっちゃまー!はあちゃまでいいわよ!」

 

やはりはあちゃまだったか。しかし、俺に敬語を使う、使わないはやはり性格から来るものなのか、ただの気分なのか。少なくとも統一したほうがいいだろう。

 

「俺に敬語はいらないから。気軽に呼んで。えっと、次は……」

 

俺は名簿を見ず、記憶のなかにある0期生と1期生の名前を名簿順に並び替えていく。次は……

 

「アキ・ローゼンタール。アキロゼでいいかな」

「はい。よろしく、先生」

 

アキロゼも俺の思っていた通りだった。お姉さんっぽい性格してる。

 

「次、あずきち……あ」

 

自然に呼んだが、AZKiって呼ぶべきだったと呼んでから思った。俺は何を隠そう、開拓者なのだ。ずっとそう呼んでいたためかここでもその呼び方が出てきてしまった。

 

「いいよ、あずきちで」

 

あずきちの優しい声が届く。会社帰りの疲れた時に聴いていた声だ。

 

「あ、あぁ……悪かったな……えっと、次は」

 

ここまであ行が続いていたが、次は多分少し飛んでフブキか。

 

「白上フブキ」

「はい!」

 

狐耳が動く。そうか、ケモ耳がいるんだよな。かわいい。

 

「よろしくな。あ、ケモ耳も好きだぞ」

「えへへ〜……ありがと!」

 

そうして俺は一人一人名前を呼び、ひと言だけ話し、自己紹介を済ませた。

 

 

 

 まだ夢ではないかと思っていた。いや、もしかしたら夢なのかもしれない。周りの風景も現実とは違うような見え方をするし、ホロライブのメンバーだって俺のいるところになんているはずない。何より、歩道橋から落ちたのだから──

 

「──何回同じミスをしたら分かるんだ!」

 

「──仕事が終わってから帰れよ。特別だ」

 

俺の中に、落ちる前の景色がフラッシュバックしてきた。無謀な仕事量、毎日のように浴びせられる罵声、他人の仕事で帰らせてもらえない毎日。

 

(現実だったら……また……)

 

目の前が真っ暗になる。俺は、現実にいるのだろうか。それとも、もうあの世界の俺はいないのだろうか。

 

(ここで死んだら、どうなる?)

 

無意識下で、俺はそんなことを思った。もし現実で死んでるんだったら、ここで死んだって痛くないだろうし、現実にはどっちにしろ戻らない。反対にここが現実だとするならば、死んだら会社も行かなくていいことになる。

 

──つまり、どっちにしろ不幸にはならない。

 

(……一回死んでみればいいんだ)

 

俺は何も考えず、窓を開ける。ここは3階。高さは10mを超える。下はコンクリート。落ちれば恐らく死ぬだろう。

俺は窓のサッシに足を乗せる。このまま前に体重を──

 

「先生!」

 

俺は後ろから身体を持っていかれた。その時に俺の意識はようやくハッキリとした。目の前には、そらちゃんとすいちゃん。目を見開いて俺の顔を見つめていた。

 

「あ……あ……?そら、ちゃん……すい、ちゃん……」

 

俺はまだ声が喉に引っかかるような気がして、思うように出せなかった。

 

「先生、なんで飛び降りようとなんか!」

 

すいちゃんが倒れかかっている俺を起こし、肩をつかむ。すいちゃんの目にはうっすらと涙があるように見えた。

 

「あの……転生前で何かあったの?」

 

そらちゃんは心配そうな声で言う。

 

「君たちは、心配、してくれるんだね……」

 

俺はふいにそう言葉を漏らした。すると、すいちゃんとそらちゃんは俺の手を握り、優しく言う。

 

『するよ。仲間だから』

 

この2人にだったら話してもいい。いや、ホロライブのメンバーだから話してもいい。そう思えた。

 

「……そうか。なら、話してもいい、かな」

 

俺は以前のことをつつみ隠さずに話した。少し聞くに堪えない話も中にはあるが、そこに関してだけは少しだけ、オブラートに包んで話した。

 

 

 

 「……これが全てだ。だから、ここは現実なのかそうじゃないのか。それが知りたかったんだ」

 

俺が話し終わると、2人は涙を流した。俺は慌てて2人の涙を拭う。

 

「な、泣かないで。君たちは何も──」

「だって……先生にそんな事があったなんて……」

「なんか悲しくなってきちゃったんだもん……」

 

2人は俺のことで悲しんでいた。初めてかもしれない。俺の過去にここまでなっている人を見るのは。

 

 

 

 

 翌朝、クラスに昨日と同じように出向いた。0期生と1期生のメンバーが全員揃っていて、俺からすれば夢のような空間だった。

昨日のこともあったが、そらちゃんとすいちゃんは通常運転だった。

 

「先生、今日なんかちがう!」

 

はあちゃまが声を上げた。

 

「ん、そうか?」

 

俺が聞き返すと、はあちゃまは顎に指を当てて言う。

 

「なんか昨日より明るいっていうか、笑ってるっていうか。雰囲気よくなってる!」

 

はあちゃまがそういうのであれば、俺が自然とそうなっていたのかもしれない。

 

「よかったじゃん、先生」

「明るく見えるよ」

 

すいちゃんとそらちゃんが言う。きっとこの子たちは分かっていたのだろう。

 

「……そうか。そしたら、みんなも明るくいこうな!」

 

俺が言うと、クラス全員が拳をあげて「おー!」と一緒になって声を出した。一致団結したようで、俺も少し嬉しくなった。

 

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