【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない 作:月森朔
俺は俺1号で、今はアリスの姿だ。
アルカトラズでのテロリストの事件は昨日のことになる。その時のことを少し振り返る。俺とジェシーがアルカトラズに駆けつけた時には、ダンジョンは既にスタンピード中で多数のモンスターが外に溢れだしていた。テロリストの対策も必要な中、人手が足りないところを日本からひより役の俺3号を呼び寄せたのだった。俺3号にはフレイヤになってもらい、ジェシーの作った要塞の強力な砲台となってもらいモンスターの排除を任せた。その間、俺とジェシーが両方ともジェシーと化し、10人のテロリストを瞬殺した。いや、殺してはいない。確保したが正しい。そして、人質を開放したのだったのだが、テロリストが仕込んだ毒によって危うく人質が死にそうになる事態も発生した。メルの力も使ったことでなんとか人質も無事に生還することができたが、あれが最善の動きだったかは分からない。
そして、これらの行動中には、お面をつけて対応したので、きっと正体もバレていないだろう。アルカトラズからも退散した際に特に証拠も残していない。これで、南さんにもバレない。よし。
そう思っていた時が一瞬だけあったのだが、ギルド側からダンジョン内の大規模な要塞と安全地帯が見つかり、ジェシーとアリスで対処したことが分かってしまった。俺3号のフレイヤがそこで活動していたかどうかは、ダンジョン内に人間が誰もいなかったことで知られていない。そして、そのスタンピードの功労者である俺3号は事態の収拾後、早々に自らアリスに変身し、ラビリンス・ドリフトを使って日本に戻っていったのだった。
そんなわけで、米国ギルド側からは追及はまだないが、ジェシーとアリスが何かをしたってくらいにはバレているものと思われる。
ところで、俺たちが今いるのは、米国ギルドが用意してくれたホテルの会議室だ。高級ホテルの上層階に部屋を取ってもらい、さらにそこの会議室をフロアごと貸し切りにしてくれたのだ。フロアの護衛と給仕をしてくれるスタッフまで置いており、VIP待遇だ。
そして、用意された広めの会議室には、俺3号を除くドッペルゲンガーが揃っていた。ちなみに、南さんはサンフランシスコのギルド側に出向いており、マナは家族に電話をするために部屋に戻っている。ついでにシャワーをするとかで、1~2時間は戻らないはずだ。
部屋に設置されているテレビ画面を皆で見ている。アメリカのニュースで再三アルカトラズダンジョンのスタンピードについて報道されている。
フレイヤとメル、そしてジェシーと俺がなっているアリスの4人が広い円卓を囲んでいる。
「あ、メルとマナおねーちゃんが映ったの」
「あら、本当ね。この映像は新しいわ」
マナがダンジョンガイダンスを連携させてモンスターをおびき寄せている姿が見える。メルは何時もながら力技でモンスターを弾き飛ばしている。レベルが200を超えてきたマナは、安定感が増している。
「さぁ、今のうちに自分会議をするよー」
俺がそういうと皆がこちらを向く。
「さて、実は、俺3号の頑張りのおかげでレベルがぐーんとあがりました」
HPとMPもかなり上がっており、笹木小次郎本人としても十分戦えるレベルになっているんじゃないだろうか。
◇笹木小次郎
レベル320
HP:8220/8220
MP:12930/12930
称号:ダンジョンスレイヤー
ユニークスキル: アバター▼
アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)
アバタースロット2(金城メル)
アバタースロット3(ハヤト)
アバタースロット4(ジェシー・ラバック)
アバタースロット5(アリス・ラバック)
アバタースロット6(新規追加可能)
スキル:ストーンスキン
レビテート
ドッペルゲンガー Lv.5
エイジファントム
回復強化
防御強化
体術
変装
隠密
危険察知
インビジブル
「ドッペルゲンガーのレベルがあがっているわね。そして、アバタースロットも6つめが開放されたのね」
フレイヤも自身のステータスから状況を確認している。
「しかし、次は500レベルでアバタースロットが開放されると考えていたんだがな」
ジェシーがコーヒーを飲みながら話をする。
「そうなのパパ。今度は少しパターンが変わったわね」
俺のステータス画面には、こうなっている。
『こちらの中から選択してください』
『既存アバターの強化 メル ⇒レベル200』
『既存アバターの強化 ひより⇒レベル300』
『新規アバターの取得』
その状況を話す。そして、メルのレベルをあげることを提案する。メルを一気にレベル300にすることが出来ないのは仕様のようだ。
「賛成よ。メルの力は重要よ」
「おれも賛成だ。新たなスキルが生まれなくても、MPが増えるだけでも十分だ」
新規アバターについても興味はある。
「メルもMPが足りなくなるとは思わなかったの。でも、今後は必要になるかもしれないの」
アビスヴォーカの狙いが何だったのかは明確にはわからないが、大災害を起こすことに躊躇しない連中というのが分かっているため、メルも気持ちは明確に決まっているらしい。
「じゃあ、メルの強化を行うわね」
俺が選択すると、メルのステータスが開く。MPよりもHPの方が上がり方が高いのは、やはり近接戦闘向きの回復職という傾向が生きている気がする。
◇金城メル
レベル100⇒ レベル200
HP:1105/1105⇒ 4801/4801
MP:2520/2520⇒ 6610/6610
称号:血濡れの聖女
スキル:グラディア・コア
マギア・コア
ミレイズ
ブレアド
ミラー・シフト
ストーンスキン
レビテート
エイジファントム
回復強化
防御強化
体術
変装
隠密
危険察知
インビジブル
ここで、新たに選択肢が現れる。
『こちらの中から選択してください』
『くノ一 遠山影子 レベル100』
『ポーター ボンド・トーカー レベル100』
ここで見てみると笹木のレベルが140で止まっている。つまり、レベル残量があるから、新規アバターも選べるということか。
そして、この話をすると、全員が影子の事を指名する。ジェシーが理由を話す。
「ボンド・トーカーは、多分、運搬系のスキルだろう。それよりは、罠の感知や罠の解体、 そして、潜入なんかに向いている影子の方が物騒な奴らへの対処に向いていると思う。
今回、毒物の装置なんかも使われていたからな…設置される前に対処できたが、専門家がいると助かる」
この話について皆が同感だ。
「よし、そうなれば、さっそくだな」
俺は遠山影子を選択する。いつものごとくレベルが消費されていく。
◇笹木小次郎
レベル40
HP:1490/1490
MP:2520/2520
称号:ダンジョンスレイヤー
ユニークスキル: アバター▼
アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)
アバタースロット2(金城メル)
アバタースロット3(ハヤト)
アバタースロット4(ジェシー・ラバック)
アバタースロット5(アリス・ラバック)
アバタースロット6(遠山影子)
スキル:ストーンスキン
レビテート
ドッペルゲンガー Lv.5
エイジファントム
回復強化
防御強化
体術
変装
隠密
危険察知
インビジブル
「じゃあ、さっそく! アバター、遠山影子(とおやま えいこ)」
そして、俺は、くノ一の遠山影子になったのだった。
スマホで早速撮ってもらった姿を見ると、年のころは20歳くらい? もう少し若い感じもする。長い黒髪に、まさに忍者というような濃紺の衣装をまとっている。
「どんな口調だったっけな?」
俺はペルソナを起動してみる。その途端、フレイヤに抱きついてしまう。
「姫~~!」
そういえば、異世界の高貴な姫だとか言って、フレイヤのことを慕っていたという設定だった。そして、くノ一の身体能力を見くびっていた。一瞬でフレイヤに抱きついて、ほっぺたをすりすりとしている。フレイヤも危険を感じなかったせいか微動だにしていない。あぁ、心地いい。
「これはまた濃い感じのキャラが出たな。ハハハ」
ジェシーが笑うが、お前もな?
「姫~、おら会いたかったー」
そういえば、この子の一人称は「おら」だったな。出身は石川県金沢市の隠れ里(常盤村)。くノ一として育てられていて、主人公の俺と一緒にダンジョン攻略を行ったというキャラ設定だ。
「あ、姫、また、こんな薄着を! 風邪をひきますよ。ほら、これ羽織って!」
どこから出したのか不明だが、ケープっぽいものを取り出して、フレイヤに着せようとしている。俺は、そこでペルソナを止める。
「ペルソナを止めたわ。おら、こんなキャラだっけ?」
フレイヤとメル、ジェシーが頷く。確かに、俺の小説では、フレイヤ大好きで姫といって勝手に主君として仰いでいたな。逆に主人公は、幼馴染ということもあって、ぞんざいな扱いという設定だった。
部屋に姿見がないが、ガラスに映る姿を見ると、スレンダーな体躯に長い黒髪。160センチメートルには足りないくらいだろうか。「おら」という一人称は、おばあちゃん子だという設定と方言っぽいものを取り入れたと記憶している。
そして、ステータスを確認してみる。影子のオリジナルは、遠山流忍術、こんこん変身術、ぽんぽこ分裂術、わんわん探知術だな。
なんか可愛い名前が多い。
◇遠山影子
レベル100
HP:2010/2010
MP:1240/1240
スキル:遠山流忍術
こんこん変身術
ぽんぽこ分裂術
わんわん探知術
ストーンスキン
レビテート
エイジファントム
回復強化
防御強化
体術
変装
隠密
危険察知
インビジブル
皆でステータスを確認している。
「ところで、ドッペルゲンガーがもう一人増えたなら、どうする?」
ジェシーが訊ねてくるが、それには考えがある。
「新しいドッペルゲンガーにアリスを任せて、おらは戻ろうかと思う」
俺がそういうと、ジェシーも頷く。
「確かに笹木が不在になりすぎるのはよくないな。ちょうどいいタイミングだ。きっと昨日の活躍で日本でも取材の申し込みが増えるんじゃないか?」
「メルもそう思うの。ひよりを1人にしておくのは可哀そうなの」
「わたくしも同感ね。わたくしたちはきっと帰国が遅れるわ」
南さんから表彰状だけでなく、勲章を与えるみたいな話も出ていて、帰国を遅らせられないかという打診が来ているそうだ。
そして、ドッペルゲンガーを使って、俺6号を呼び出す。久々に見る笹木小次郎の姿だった。
「よう。俺たち。じゃあ、アリスになるぞ」
先ほどまで俺がなっていたアリスの姿に俺6号がなる。アリスの姿を見て、なんだか何かを言いたい衝動に駆られる。これ、ペルソナの感情だろうな。ちょっとペルソナを起動してみるか。
「アリスさん! 本物のくノ一は、おらだからね! そこのところ忘れないでね!」
アリスに熱弁したのは自分なわけだが、頭が痛くなる。さくっとペルソナを切るが、そんなことが言いたかったのか、影子よ。
「私、ウェイトレスだし。あれはフィリピンの人たちが勘違いしてね?って、もうペルソナ解除してるわね」
アリスとなった俺6号が苦笑する。
「それじゃあ、おら、日本に戻ってギルド登録するわ。ひとまず、アリスに戻るね」
俺は再びアリスになると、サンフランシスコと自分たちに別れを告げた。特に、ジェシーとアリスの俺5、6号については、今後、アメリカで2週間掛けてダンジョンに安全地帯を構築する予定だ。フレイヤたちも1週間は帰国が遅くなるんじゃないかと言われている。
「じゃあ、またね」
「あぁ、日本でも注意しろよ。アビスヴォーカみたいな連中が居ないとも限らない」
ジェシーがハグをしてくる。今、アリス姿のため娘への別れの挨拶だろう。となりにもアリスが立っているがな。
そうして、俺はラビリンス・ドリフトを使って日本に戻ってきた。やはり、ちょっと距離が足りず、静岡あたりに降りることになったが、無事にクランベースへと戻ってきたのだった。