【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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チート的な何かが・・・。


第16話 フレイヤと小次郎アイテムボックス

 俺は朝からストーンスキンのスキル書を眺めている。スキル書は使用すると消費され消滅する消費型のアイテムだ。そのため、貴重なスキルについては莫大な買取価格が設定されている。ストーンスキンは、その中でも出ることが多く安価なものと言える。バサルゲイラがドロップすることが分かって、祭りになっているようだから、より産出されて安くなっていくことだろう。

 

「さて…、どっちにつかってみるか」

 

 悩んでいるのは、俺、小次郎に使うか、アバターであるフレイヤに使うかだ。フレイヤに使って戦力をより強化する方か、最近パワーレベリングのおかげで21レベルにはなったが、まだまだ弱っちい小次郎か。

 

「悩んでもしかたないか。小次郎で使って生存率を上げた方がいいな」

 

 そう思い、俺はスキル書を使ってみる。ストーンスキンがステータス画面に追加されたのを確認する。

 

 ◇笹木小次郎

 レベル21

 HP:45/45

 MP:260/260

 称号:ダンジョンスレイヤー

 ユニークスキル: アバター▼

          アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)

 スキル:ストーンスキン

 

 よし、これで生存率が高まったぞ。フレイヤに何か影響はあるかなと、フレイヤに変身してみる。いつものショートパンツにクロップドシャツ姿のフレイヤになる。今はすっぴんで、すっきりとしている。なにしろ風呂に入った直後にアバターを解除していたから。

 そして、フレイヤのステータスを確認してみて固まった。

 

◇フレイヤ・リネア・ヴィンテル(アバタースロット1)

 レベル500

 HP:2050 /2050

 MP:12020 /12020

 称号:炎の魔女

 スキル:フレイムマジック

     フェザーステップ

     エナジードレイン

     サイコキネシス

     ストーンスキン

 

「チートきましたわ!」

 

 この言い回しはどうなんだとか気にしない。これはまぎれもなくチートだ。小次郎で覚えたスキルが、フレイヤでも使えるようになっている。これをチートと言わずになんだというんだ。この強化方法は役に立つ。何しろ、一粒で二度おいしい、そんなスキル書の使い方ができるのだ。

 

「これは、スキル書をあつめて、小次郎を育てなくちゃいけないわ」

 

 自己啓発みたいになっているが、これはアバターで判明した良い情報だ。メモしておこう。少し調べてみると、スキル書の販売は結構行われている。ただし、有用なものは品不足なこともあり、高価かつ売っていない。回復系のスキルなんかもほしいところだし、近接攻撃なんかもあるといいなぁと考える。

 

 そして、買うことばかり考えるのはフレイヤさんがいるわけでもったいない。

 

「スキル書をドロップするモンスターを狩って、量産しつつ売って稼げばいいのよ」

 

 これだよこれ。市場を破壊するほどの量産を抑えつつ、スキル書を販売していく。きっと探索者たちも喜ぶだろう。スキル書が溢れれば、それだけダンジョン攻略の基盤が整うのだから。そして、良いことをやった感の中、お金が貯まる。きっと、相当な資産が作れるだろう。

 

 

 今気になっているのは、フューリーバット。宝をため込んだ巣に逃げ帰るモンスター。この話は出回っていない。もしかしたら、その習性を見つけた者もいるかもしれないが、その情報は漏らさないだろう。そして、俺も漏らさない派だな。配信せずに、マナを連れて向かってみるのもいいだろうが、アイテムをたくさん持ち帰るという点においてはちょっと難点がある。

 

 名付けて小次郎アイテムボックス。持ち帰るのに支障がありそうな大物以外であれば、小次郎が背負った大型リュックに入れることで、持ち帰ることができる優れものだ。

 

 実は、これは近所の家具屋で試したのだ。一抱えほどある布団をフレイヤで購入した上で、多目的トイレ内で小次郎に持たせる。そして、フレイヤに戻って帰宅。

 

 その結果、布団を持たずに帰宅することができたのだ。こういう検証を行って、リュックにトートバックなど、複数の鞄を持っていても地面に接していない限り、持ち帰ることができた。逆にショッピングカートのような物はダメだった。

 

「小次郎で持ち上げられる物ね…非力だからどれくらいかしら」

 

 自分で言っておきながら、女子に情けない男として言われたような気にもなり、複雑だ。ただ、レベルもあがっているから一般人に比べれば相当重いものも持てる。

 

 もちろんマジックバックが手に入ればいいんだが、出回っていない。いまのところ、フレイヤの記憶?の中でもそれらしいものがない。

 

 そんなわけで、小次郎アイテムボックスを使うためには一人じゃないといけない訳だ。クラン設立にお金もいるし、いっちょお宝探しに行ってみるか。ちなみにマナはちょうど、増田先生の見舞いがあるとかでダンジョンは休みと言っている。

 

 俺はそんなわけでダンジョンにやってきた。フレイヤの姿なので、見られる見られる。

 

「フレイヤちゃん、今日はひとりかい? よかったらパーティで潜らないか? 俺たち、バサルゲイラも狩れるから損はさせないよ」

「バサルゲイラはフレイヤさんなら既に狩ってるからね。よかったら更に深層のモンスター討伐に案内することもできるよ。いろいろノウハウあるから、きっと役に立つし、考えてみて」

 

 実力が知れてきたおかげか、誘い方も紳士的な探索者が多い。もちろん、過半数が俺の胸とか足に視線を注いでくるわけだが、フレイヤとしては慣れたものだ。そして、女性探索者からはなぜか鋭い視線を感じることもある。サークルクラッシャー的な事はするつもりはないので、警戒しないでほしい。ほんとに。

 

 それらのパーティのお誘いを断り、俺は9層に向かった。しかし、ここで問題が起こった。

 

「ストーカーかしらね。こまったわ」

 

 耳のいいフレイヤなので、背後から付かず離れず付いてくる集団に気づく。低層階ではモンスターの沸きも大したことはなく、付いてくる集団を邪魔するようなこともないだろう。

 

「わたくしの行動が気になるようね。当然なのだけど、しつこい男は嫌われるわよ」

 

 そこで俺はフェザーステップを全力で使ってみることにした。このスキルは、足に羽が生えたかの如く早く動くことができる。何しろ、使っているときは地面に足をつけることもないのだから。何なら、宙をかけることも可能だ。そんなわけで木や岩、水場などを飛び越しながら、最速で下層へと駆けていった。バサルゲイラのいる7層まで付いてこられる者はいなかったようで、俺は一息つく。バサルゲイラは、俺の配信の影響で祭りになっているようで、俺は岩陰を慎重に駆け抜けていった。バサルゲイラの沸き場以外は人気がないため、気づかれることがなかった。

 

 そうして、俺は目当ての9層、密林エリアにやってきた。ここは、森林エリアに対してジャングルにあるような高い木やツタに絡まれた複雑な植生によって視界も悪く、モンスターの奇襲も受けやすいということで、割と不人気だ。ただ、採取エリアとしての側面はあり、ポーション作成に使われる薬草類がここでドロップする。

 

「では、フューリーバットを探しましょう」

 

 フューリーバットは音もなく近寄ってきて探索者に襲い掛かると言われている。俺は、ペルソナを起動して、周囲の警戒を行う。すると、フレイムビットを何発か打ち上げてみようと思いつく。なんだか、古い記憶を思い出したような感覚だ。

 

「それっ」

 

 ジャングルの木々にぶつからないように、フレイムビットを打ち上げる。爆竹のような音がなり、そのあたりの木々が揺れ、大きな葉っぱの陰からフューリーバットが飛び出てきた。

 

「そこにいたのね」

 

 いうが早いか、フューリーバットをサイコキネシスで動けなくして、フレイムビットを軽く当てる。爆ぜるような攻撃にせず、飛ぶ能力を失わせない配慮がされている。その結果、フューリーバットは逃げ出した。いよいよということで、フューリーバットの追跡を始めた。

 

 通常ならば難航するであろう密林の中の移動は、フェザーステップを駆使しながら木々と下草を避けてついていく。それでも枝や大きな葉にはぶつかりそうになるわけだが、サイコキネシスではじきながら、フューリーバットにくらいついていった。

 

 そのうち、フューリーバットが地面にあいた洞窟に入っていった。

 

「ここね」

 

 洞窟の入口は木々で見えづらく、今回のような追跡結果でないと見つからないだろうと思った。しかし、中暗いなー、なんか良い魔法ないかなと思ったとたん、フレイヤの口から新しい魔法の名前がでる。

 

「トーチ」

 

 これも聞いたことがない魔法だったが、洞窟の壁面にぼーっとした光の玉がくっつく。光系の魔法であるライトに近い効果だ。

 

 そして、その光に照らし出されて反撃にでたのだろう、フューリーバットが俺に向かって突撃をかけてきた。

 

「フレイムビット」

 

 数個の火のキューブがフューリーバットを迎撃し、その身を魔石に変えていった。そこからは洞窟の探索だった。その後、数匹のフューリーバットが現れたが危なげなく対処し、奥に積まれた風呂いっぱい分くらいある魔石と鉱石を見つけた。魔石はモンスター産のものだろうか。鉱石はどこで産出されるのかは分からないが、魔素により変質した金属だと言われており、武器や防具を製作する材料として取引されている。

 

「ちょっと重そうね。大丈夫かしら」

 

 洞窟にだれもいないことを確認した後、俺は小次郎の姿に戻り、大型のリュックに魔石と鉱石を詰め込んだ。まだ、持てないことはない。両手も空いている。そして、フレイヤの姿に再びなると、次なるフューリーバットを探しに向かった。

 

 

 結果、その後、フューリーバットを3組ほど発見し、その巣の宝をゲットすることができた。フューリーバットは個体差なのか、最初は魔石と鉱石だったが、武器、木の実、ペットボトルなど集めるものが違っていた。

 

「この武器はミスリルのショートソードね。木の実はよくわからないわ。ペットボトルは探索者のゴミかしら…」

 

 そんなわけで、小次郎にリュックと両手に荷物を抱えさせ、フレイヤに戻ると帰路についた。途中、何かを必死に探している集団などをやりすごしたが、あれがストーカーなんだろうな。マナー違反も甚だしいが、情報は金だ。たとえフレイヤだとしても、絡まれればケガをするかもしれないと思い警戒は怠らない。

 

「さて、この辺ね」

 

 最初に目星をつけていたのは、2層にある何もない部屋。本当に何もない小さめの洞窟みたいなものがあるのだけど、本当に何も出ないため、めったに人が来ない。そこで、小次郎の姿にもどり荷物を降ろすと、フレイヤで荷物を抱える。フレイヤのレベルが高いせいか、重さを感じない。しかし、リュックの紐が肩に食い込んでいる様は、美人にはよろしくない。男が見たら、きっと持ちましょうかと連呼するだろう。持たせてもいいかもしれないが。そんなわけで、俺はダンジョンを後にし、買取カウンターへやってきた。

 

 いつもの買取お姉さんが相手をしてくれるが、そのリュックの中から出てくる魔石の量に目を白黒させている。なぜなら、俺は4時間ほどしか潜っていないのだから。買取カウンターはオープンな場所なため、遠巻きにざわついているのが分かる。

 

「フレイヤさん、いったいどこでこんな量を」

「秘密よ。でも、いつか配信するかもしれないわ」

 

 そう言うと、「よっしゃ」とかそんな掛け声が聞こえる。もう隠す気もないくらい盗み聞きをしているのが分かる。

 

「ところで、武器なんかもあるのだけど、持ち帰ることは可能かしら」

「はい、もちろん可能です。外で持ち歩くための条件などはありますが、登録作業をしていただければ、運ぶための容器などもレンタルしております」

 

 そういうわけで、ミスリルのショートソードはマナに持ち帰ってみよう。その他は査定にかける。買取カウンターの査定は自動化が進んでおり、数分待つだけで結果が出てくる。すごい技術だ。

 

「魔石が370万円、鉱石が103万円、武器類が530万円で、1003万円の買取になります。いかがしましょうか」

 

 ついに大台の1000万円越えだった。俺は感動の中、すぐにサインをしてギルド口座に入れてもらうことにした。こうして、俺はクラン開設資金を調達した。

 

 その後、ナンパなのか勧誘なのかもう訳の分からないくらい話しかけられるのを避けながらタクシーにのった。しかし、そのタクシーにもどうも尾行がいるようで、何台か車がついてくるようだ。タクシーの運転手さんも経験があるそうで、家に着けないほうがいいとアドバイスをくれた。そういうわけで、俺はタクシーで途中のショッピングモールに向かった上で、多目的トイレの中で小次郎に戻り家路についた。

 

 いよいよセキュリティの高いマンションとかに引っ越した方がいいらしい。お金もあるし、探すか。

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