【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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興奮冷めやらぬ笹木の話です。


第2話 フレイヤと下着

 俺は風呂から上がると一心不乱にパソコンにメモを書き込んでいた。

 

今朝、フレイヤの姿になれることがわかった後、情報を整理したのだ。フレイヤは、自分が作中で設定した姿だった。しっぽがあるとか、角が生えているなどといったこともなく、ひたすら美しい女性の理想を描いたらこんな感じ?といった姿だ。そして、人類としては魅力度が高すぎて、周囲に諍いが生まれるレベルだと思う。

 

 ふぅ…。

 

 

 そんなわけで、アバターを一度解除した後、スキルを改めて確認を進めている。まず、ステータスからわかることは、笹木小次郎としてのステータスとフレイヤのステータスは別系統となっていること。笹木小次郎が主で、フレイヤが従の関係ではあれど、異なる人物としてステータスが全く異なる。

 

 問題なのは、レベル2はあったはずの俺のレベルがあがるでもなく、1に下がっていたことだ。これは、ログをあさってみたことで分かったのだが、窒息死でダンジョンモンスターを全滅させたことで、一度レベルが500まで上がった。しかし、アバターのスキルが生まれた後、フレイヤのキャラを作成するにあたってそのレベルが消費されたということだ。どうやらアバターはメインキャラ?の俺からレベルを分け与えて作り出すようだ。解説があればいいんだが、そのあたりはどこにも記載がない。

 

 そして、その辺の工程について、寝ぼけていたのか、その操作の記憶は一切ない。しかも、アバターというスキルはダンジョン庁のHPにも乗っていないし、検索にもひっかからない。ユニークスキルという概念自体も知られていない。極めて希少なものなんだろう。ただ、おかしな点は、MPが200に増えていることだ。たしか、5とかだったはずなのだが。これもアバターのおかげなのかもしれない。

 

 

 ◇笹木小次郎

 

 レベル1

 

 HP:20/20

 MP:200/200

 称号:ダンジョンスレイヤー

 ユニークスキル: アバター

          アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)

 

 

 俺は、期待に胸がいっぱいになる。

 

「500レベルの美女アバターがあれば、なんでもできるし、なんでも稼げる」

 

 

 きっとどんな金策もできるだろう。フレイヤの美貌ならば、Mu-tubeでインフルエンサーとなることも可能だろう。レベル500が本当ならば、どんなダンジョンにも行って、モンスターを倒してドロップ品や宝箱からアイテムをゲットも容易いだろう。

 

 期せずして俺は人生設計を見直すことにした。3か月前には、会社が倒産したわけだが、新たな幸運が舞い込んできたものと捉えた。

 

 大金持ちになる道筋はつかめそうな気がするが…、気になることが一点ある。俺がレベル1で弱すぎることだ。フレイヤが強いアバターだとして、俺がその本体だとばれた場合には、容易にお金をとられる。誘拐なんかも考えられる。ダンジョン関係は、国際的にもヒートアップしている。ダンジョンは、単にモンスターからお宝をゲットする場ではなく、魔石と呼ばれる物体が新エネルギーとなっており、エネルギー分野ではクリーンエネルギーとして重宝されており、エネルギー市場を瞬く間に塗り替えてしまった。そのため、有能な探索者は企業だけでなく国家からも需要が高い。不穏な活動をする国家では、探索者の誘拐なんかも噂されている。

 

「よし、決めたぞ。当面は、俺が強くなるまで、フレイヤとして活動しよう」

 

 フレイヤとして活動するにしても、いきなり無防備に目立つMu-tubeはやめておこう。目立ちたい気もする。こんな美人なら、がっぽがっぽだろう…。いや、今は我慢の時だ。

 

 そういうわけで、まずはダンジョン活動をして、軍資金を稼ぎつつ自分の能力を調べていくことにした。

 

 

◇フレイヤ・リネア・ヴィンテル(アバタースロット1)

 レベル500

 HP:2050 /2050

 MP:12020 /12020

 称号:炎の魔女

 スキル:フレイムマジック

     フェザーステップ

     エナジードレイン

     サイコキネシス

 

 

 HPは低め? いや、MPが高すぎて低く見えるだけだ。そして、スキルも4つある。少ないように見えるが、これが俺の設定ならばフレイムマジックは炎系の魔法全般が扱える上位魔法。フェザーステップは何なら空も飛べるほどの移動魔法。エナジードレインは空中や対象のモンスターからでも魔素を吸収してしまう能力だ。サイコキネシスは物を動かすだけでなく、空間をも掴む力となる。

 

 ただ、俺の作った小説とは若干名前が違うが、そこが一致しない理由もよくわからないし意味があるかもわからない。ひとまず保留。

 

 とは言っても。ダンジョンに入る前に自分の能力をちゃんと使って確かめなくてはいけない。炎系のスキルをワンルームマンションで試すわけにはいかない。外に出て、どこか安全な場所で確かめるしかないのだ。まぁ、日本は狭いし、遠出するにも、俺は着る服がない。いや、笹木小次郎の服はあるが、もちろんフレイヤの服はない。彼シャツ的な感じで、着られる服を探して、近場で調達するしかないだろう。いや、小次郎の姿で行って女性ものの下着とか…買えんな。フレイヤで出かけよう。

 

「ブラジャーとか買うのか、まじかー」

 

 アバターのスキルはめちゃめちゃ有用な印象だが、服とかどうやって着替えたらいいんだ。そもそも、女物を持ち歩かないといけないのか? あー、ダンジョンって身分証いるんだったわ。その辺、調べないと。

 

「あー、腹も減ったな…。仕方ない、ひとまず着られる服で腹ごしらえするか?」

 

 アバターの姿が維持できる時間なんかも測りたいところだからな。そういう意味では、今持っている服をそのまま着ていくか。

 

 そんな訳で、ボクサーパンツにタンクトップに厚手のTシャツ…やばい、胸ぽちが見える。というわけで、ちょっと暑いが秋物のパーカーを羽織ってみる。さすがに男の俺がジャストサイズというわけできつくないだろうと思ったが、胸のあたりはすごく主張している感じがある。ズボンはMu-tube撮影用に買ったカーゴパンツだ。ベルトで絞って裾を…上げる必要はないだと…。足長! 身長は元の俺よりも10センチは軽く低いのに…。

 

 あと帽子か。キャップしかないから、それを深く被る。しかし、この恰好、暑い。いつも以上に暑く感じる。しかたないか、パーカーだし。

 

「そんなわけで、買い物いきますかー」

 

 Mu-tubeの癖でいちいち声に出すようになってしまっていたが、なんとも可愛い掛け声だ。

 

 そこでなんか違和感。フレイヤのキャラはもっとこう貴族然とした感じだった。設定では、ダンジョン人の元貴族…。ダンジョン人の派閥争いで負けた貴族令嬢という設定になっていて、在野に落ちた。こんな設定だ。やはり面白い、ここは、なりきってみよう。

 

「では、買い物にいきますわよ」

 

 こんな感じか。いいね。よし、フレイヤの決め台詞でもやってみるか。

 

「わたくしは裁きの炎。その名を刻みなさい」

 

 おー。小次郎でやったら寒すぎるが、フレイヤの見た目だと様になる。いつか使ってみたいな、これ。

 

 そして、ひとしきり楽しんだ俺は、財布とかスマホなんかも鞄にいれて持って出る。電子決済であれば、本人確認は無いだろう。そこで、外に出ようとして靴もないことに気づく。仕方なく、履き古したサンダルを使う。俺の住んでいる部屋は、住宅街の真ん中に建っている4階建てのマンションの1階の角部屋だ。そのため、一方だけ確認して、マンションからは誰にも会うこともなく出ることができた。

 

 

 俺は駅前に向かう。

 

 さすがにマンションから歩いていると人と出くわすので、キャップで顔を隠しつつ歩く。見られたからと言って何があるわけではないんだが。

 

ちなみに俺が住んでいるところは東海地方の沿岸部の地方都市で、人口もそこそこあり栄えているほうだ。駅にも近い位置で、住宅や商店が立ち並んでいるところにマンションがある。家賃もそこそこ高いため、このままだと後半年ほどでお金が尽きる計算だ。

 

 そうこうするうちに駅ビルについた。周囲の人がちらちらとこちらを見てくるような気もするため、さくっと買い物を済ませたい。

 

「えーと、まずは下着かしらね」

 

 ここまで歩いてきたが、胸がブルンブルンと揺れる感覚はよろしくない。乳首が擦れるし、パーカーの中からこぼれ出そうな感覚がまずい。腹は減っているが、まずは下着だ。そして、俺は駅ビルにある全く縁のなかった店の前に立った。下着だけを扱っている店で非常にピンク色だ。覚悟をきめて入るしかない。

 

「いらっしゃいませー」

 

 店員さんがこちらを見て声をかけてくれるが、ちらりと見てバックヤードに向かっていった。忙しいのかと思いきや、「めっちゃ美人の外人さんきたー」とささやくような会話が聞こえてきた。

 

 いま気づいたが、この体は耳がいいのかもしれない。ひとまず、自分だけで下着を見てみるか…。フレイヤでやってきたものの、下着の店に入り込んだ異物なような感覚に襲われる。しかし、バックヤードからちょこちょこと見えた人影がつぶやく「ほんとに、女優さんとかモデル!?」といった声が異物感を取り除いてくれる。そして、ようやく一着目のブラジャーを手に取ろうとしたところ近づいてきた店員さんに声を掛けられる。

 

「いらっしゃいませー。お客様のサイズですと、そちらの商品では小さいかと思いますよ。えーと、ハロー?」

 

 22,3歳くらいのギャルっぽい店員さんだった。どの辺がというと、髪とか化粧とか? 最後にハローはどうなんだろうと思うが、今の見た目は北欧美女だもんな、仕方ない。

 

「日本語で問題ないわ」

 

 にこりと答えると明らかに店員さんがほっとしたように笑顔になった。

 

「あ、あ、よかったー。日本語お上手ですね。あの、良ければお選びしますよ」

 

 日本語が上手というか日本語しか喋れないのだが、あいまいに笑っておく。そして、サイズもわからない旨を伝えると、採寸もしてもらえることになった。フレイヤのスリーサイズは小説の設定では作りこんだ。ステータスにはスリーサイズは記載されていないため、ここでようやく答え合わせができるわけだ。

 

 広めの試着室に2人で入ると、パーカーを脱ぐ。ギャル店員がぎょっとした。汗だくのタンクトップがぴったりと張り付いて、いろいろ透けていた。おれはべた付くタンクトップも脱ぐと胸を突き出す。どうだい? おっきいだろう。

 

 店員さんは抱きつき胸に埋もれながらメジャーを巻きつけてくる。手際はいい。

 

「えーと、アンダー68のGカップですね」

 

 設定とぴったりだったと言いたいところだが、カップ数だけが一致していた。店員さんに測ってもらうこと自体は、くすぐったいというのが感想だった。若い女性によられて興奮するかと思いきや、反応するものがないためか女性の体のせいなのか興奮までは行かない。ただ、得難い体験としての感想が近かった。

 

「すごいプロポーションですね…。うらやましい」

 

 営業トークとも捉えられるが、目のうっとり感が違う。本当にそう思っているのだろう。

 それからはいくつかのブラジャーを見繕ってもらい購入に至った。ブラジャーとパンツがセットになっているなんていうのも初めて知ったが、いいものが買えたんではないだろうか。店員さんが、このサイズだとかわいいものが少ないのが残念ですと言っていたが、十分かわいいんではないだろうか。そして、ブラジャー初体験は、寄せられて谷間がえらいことになったことと、今までの振動が抑えられて歩くのが楽になったことを実感した。

 

 着替え用に3着ほどかうと、3万円ほどが飛んで行った。バカ高い。恐ろしい。一着はそのまま着てみたが、次は服が必要だ。せっかくだから、フレイヤっぽくて似合う服がほしい。そして、ギャルの店員さんに聞いてみる。

 

「服がほしいのだけど、おすすめのお店をご存じ?」

 

 その店員さんは、それはもう饒舌に4,5軒を教えてくれた。地図まで書いてくれたので助かったが、全部回るのは大変だぞ…。案内したいけど、バイトの時間がまだ残っているので悔しいとまで言っていた。

 

 

 胸ぽち問題も解決したため、暑いパーカーを脱いで服を買いに行った。駅前の人通りが多いせいか、見てくる人が多い。パーカーの下がタンクトップでばっちりと谷間が見えている。多少、ブラも透けているが、暑いのだから仕方ない。通り過ぎる会社員は二度見をするし、大学生集団なんてあからさまに興奮してニヤニヤが止まらない感じだ。中には、スマホを向けてくる不埒なものも居る。それはダメだ。お金出せよ。

 

 

 俺はギャル店員に教わった最初の店で、店員さんに見繕ってもらい数着買った。上下ともに丈が短い服を多く扱っていた。ジーンズもダメージジーンズというものだろう、大きな穴が開いている。さすがにそれは避けて、ショートパンツにクロップドシャツというのを買う。へそは出てるし、足は出ていて着心地のいいものが手に入った。なんか、こういう服好きなんだよね。ん? 見るのが好きってことだっけ。まぁ、似合うのならそれも良し。その店では、靴も扱っていたおかげで、俺はおしゃれなサンダルを気に入り、それを買うと店を出た。履き古したサンダルは紙袋に入れてもらって、着替えた服は鞄にいれて持ち帰ることにした。すごく気持ちいい。空気にさらされている感じがいい。

 

「アバターになるたびに服を着替えるのは、少々面倒ね。どうにかならないかしら」

 

 なんか魔法的なスキルなら、服も出してくれてもいいのにと呟きながら町を進む。相変わらず視線がすごい。何人もの男性が立ち止まって見てくる。このままだと、付いてこないか心配なレベルだ。俺は仕方なく、店で飯を食うことはあきらめてコンビニに向かった。




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