【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第21話 マナと衣装探し

 マナこと須藤 愛美は、幼いころから剣道の道にいた。ダンジョンがあることがあたりまえの世界で生まれたマナにとってダンジョン攻略のために剣を学ぶことに違和感はなかった。ダンジョン以前の世界よりも武道は実利で学ぶものが増え、スポーツよりも実戦向けの流派が好まれた。マナの祖父、増田道場の剣術はその意味で人気があった。

 

 そして、マナ自身、剣の道については嫌いではなかった。小さい頃は男の子に混じって、チャンバラごっこもしていたし、うまくなれば大会にもでた。しかし、華やかに活躍する女性探索者などの写真や映像を見ると、飾り気のない道着が無性に味気なくなったのだ。

 

 マナは年頃になるとギャルにあこがれた。なぜなら、Mu-tubeで連日みていた女性探索者は、ミスリルのリリーというインフルエンサーでギャルだったからだ。モデルやタレントもこなし、探索者としての装備も華やかだった。しかし、家庭は特に祖父が厳しく、チャラチャラした服については禁止となっていた。

「増田道場の者が恥ずかしい行動は許さんぞ」

 それが祖父の口癖で、高校と短大でも門限があり、服装も黒髪眼鏡という地味な姿で生きるしかなかったのだ。

 

 

 そんな彼女にも転機が訪れる。祖父が入院し道場が開店休業状態になったのだ。彼女も成人し、探索者をやりながらバイトをするという生活に移行した。ギャル服に身を包み、探索者をやることでミスリルのリリーへのあこがれが実現できたような気になっていた。

 

 しかし、パーティクラッシャーよばわりされて、なんの思いも抱いていないパーティーリーダー(男)が勝手に告白してきたせいで、寝取られたとか寝取ったとか騒いで、彼女なのかセフレなのかパーティメンバー(女)から追い出された。パーティーリーダー(男)はかばうこともなく、なんならマナが悪いとまで言い切って、断罪を始めた。笑えるけど、笑えない。そこから、スライム生活が始まったのだから。

 

 1対1で2層以上の敵を倒せないマナは、スライムの核を壊す生活を進めていった。地道だが、魔石は獲得でき、多少のレベルアップも可能だ。しかし、バイトは掛け持ちしないとやっていけなくなった。

 

 

 そんな時にバイト先の下着屋さんに、フレイヤが現れた。そこからは、偶然、探索者に登録するタイミングで遭うことができ、なんとクランメンバーになってしまった。そして、こじにーとも再会することができ、一か月前の閉そく感のようなものがきれいさっぱりと消えていることに笑みがこぼれた。

 

 フレイヤといると安心するというのもあるなーと思い、マナはふと思う。

 

「フレイヤって、こじにーと仲いいからか、こじにーと同じ優しさを感じるんだよねぇ。2人ってやっぱり付き合ってるのかなぁ…。フレイヤは否定してるけど、あんなに美人だもん」

 

 そこまで考えて、マナは頭を少し振る。今日は、フレイヤの衣装を探しに来たのだ。今は大須商店街の中にある服屋をはしごしている状況だ。ミスリルのリリーとは異なるが、フレイヤという素材は光る。素材がいいだけに、何をしても光る。ただ、光らせ方が重要なのだ。

 

 マナは赤いブーツなんかも目にとめる。

 

「フレイヤの炎とは、ちょっと赤みが違うかなぁ。あ、このショーパン可愛い。このタイツもいいかも」

「帽子ってすきかなー。あー、髪留めもありかも。ティアラ? そういう方向性も捨てがたいよー」

 

 とりあえず買えそうなものは買ってしまう。今はマナも少々散財しても問題ないくらいのお金を持っている。いろいろと想像が膨らむ。どれもフレイヤには似合うだろう。

 

 

 ところで、マナの観察でフレイヤは薄着を好むことが分かっている。

 

「これなんてどうかな…」

 

 今見ているのはコスプレ寄りの店だったりする。バニーガールの服なんかもあるが、フレイヤが着れば配信が盛り上がること間違いないと考える。網タイツかー。ちょっと攻めすぎかな。あたしも着るっていえば、着てくれるかなぁ。

 

「ビキニアーマー?」

 

 吊り下げられたビキニアーマーに目を止める。ただのビキニみたいに見えるが、素材が金属のようだ。刺突試験通過済みと書いてあるが、そもそも数センチ横に地肌がありますけどと思ってしまう。一応、腰の部分には薄手のスカートもついているが、透けていてビキニにパレオのほうがまだ露出が少なく見える。

 

「んー、サイズは合いそうだから、いちおう参考に買っておこうかな」

 

 フレイヤなら似合うだろうの精神は財布の紐が緩む。

 

 ちなみに後日フレイヤからは、ビキニアーマーは戦士とか剣士むけだから、マナが着ればいいと言われてしまい困惑する。だが、このタイミングでは気づかない。

 

 

 そこでマナはひらめく。

 

「逆に厚着というのもあり?」

 

 そこには赤と黒のドレスがあった。パーティ用というよりもダンス用なんだろうか。下には、ダンジョンでの着用も可能と本当か嘘かわからないポップが張り付いている。

 

「すみません。この赤と黒のドレスって、ダンジョンで着れるって書いてるんですけど…」

 

 眼鏡をかけた小柄なおじいさんが相手をしてくれる。

 

「えーと、あー、これは、難燃性の素材で、中にワイヤーが入っててね。防刃用のコルセットなんかも入ってるんですよ。ただ、露出もあるから、そこは守ってくれないってんでね。なんともどっちつかずになってるんですわ。はっはっはっはっは」

 

 笑いすぎ、入れ歯がずれそうになって、口もごもごしてるし。

 ビキニアーマーなんかは、そもそも防御を捨ててる。

 

「でも、生地とかよくって、これいいですね」

 

 マナがそういうと、うれしそうなおじいさん。

 

「一品ものなのに、胸元が大きくてね、ウエストが細くて、なかなか着れる人がおらんのですわ。えーと、あんたは…えーと、まぁ、着やすい防具を選んだ方がいいやな」

 

 マナも人並みよりはグラマラスだし、ウエストは引っ込んでいる。しかし、おじいさんは眼鏡の奥からスリーサイズを読み取った節がある。そして、あなたは着れないとほのめかしているのだろう。

 

「いえ、あたしじゃなくて、友達が…友達でいいよね、ふふ。友達に着せようかと思って」

 

 内心むっとしてたが、フレイヤのことを友達と表現したことで気分が高揚し、すぐにいらだちを忘れてしまう。結果としては、やはりマナはドレスを購入した。

 

 ところで、同じお店で仮面も扱っていた。フレイヤが目立つので、顔を隠せば目立たなくなると思ったマナだった。

 

 そんなわけで、休みの日にかかわらず、配信向けに衣装を探すマナだった。ところで、衣装のストックは色々溜まりつつあったが、最初に日の目を見たのは仮面だったりするのは別のお話。

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