【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第2章 聖女になった日
第1話 メルと審査


 5時間耐久配信から二日後、メルの姿でギルドにやってきた。そして、あっさりとギルド登録を進めようとしていた。わざわざ、スマホの回線も増やして小次郎の同意書も作ったというのに、

 

「なんでなの!? メルが登録できないってどういうことなの?」

 

 ギルドの受付カウンターで15歳の美少女が狼狽えながら問い詰めていた。そう、俺だ。

 

「いえ、登録できないわけでなくって、未成年は登録後の研修期間があって、それを終えないとダンジョンに潜れないんです」

 

 舞い上がって忘れていた。未成年ダンジョン保護法ができたとか何とか、そんな話を聞いた。ギルドは国際組織だが、その土地の国民の義務や権利については多少の幅が生まれていた。それが、未成年ダンジョン保護法だ。未成年でダンジョンに潜る探索者の生存率が低いということで日本で施行された法律なわけだ。その内容は、3か月の研修期間の中で、ダンジョンで生存できるほどのレベルアップを測り、ダンジョンでの生存率をあげるというものだ。もちろん、ダンジョンでの生存方法なども学んだりと結構ハードルが高い。それを見てあきらめてくれることを祈っている派閥がいるわけだ。

 

「でもでも、メルは、レベルは十分で! ヒーラーとしても凄腕なの!」

 

 ペルソナをつけっぱなしなので、俺の設定した幼い喋りが正確に再現されている。中身が俺とか考えると苦しくなるので、ペルソナ様様だ。ちなみにステータス画面は他人に見えないため、内容は自己申告となっている。そのため、レベルが高いことについては実力を見せるなど間接的な証明しかできない。

 

「はいはい。でも、規則なんですよ? ね、お嬢ちゃん」

「お嬢ちゃんじゃないもん、メルだもん」

 

 その反応は15歳にしては痛い。痛すぎるぞ、メル! そして、そんなキャラ付けをした俺!

 その時、後ろから声がかかる。

 

「なぁ、割り込んで悪いんだが、チューター制度を使ったらどうだ? 俺たちが監督してやってもいいが」

 

 後ろに立っていたのは、熊っぽい人だった。50歳くらいの探索者然としたおじさんが一人、細眼鏡のおじさんが一人、優しそうなふくよかなおばさんが一人。

 

「あ、混沌の災禍のみなさん」

 

 割と温和そうなミドルたちが厨二感のあるパーティ名で反応に困る。

「でも、チューター制度は、特例であって、そう簡単に使えるものじゃあ…」

 

 細眼鏡のおじさんが話はじめる。

「ヒーラーとして凄腕かどうかはおいておいて、ヒーラーであるならば早く実戦に加えた方がいい。探索者の1%にも満たないヒーラーは特例でチューター制度を使っても問題ないと思うんだが」

 そういわれて受付嬢は黙る。反論ができないらしい、細眼鏡おじさん強い。

 

「そういうこった。俺たちなら、さくっとレベル上げてやれるし、ヒーラーを早くダンジョン攻略に投入できるってわけだ。悪い話じゃねーだろ?」

 

 よくよく聞いてみると、チューター制度とは、未成年ダンジョン保護法の特例事項のようで、レベルが高かったり強力なスキルを既にもっている未成年がすぐにでもダンジョン攻略に入れるようにした抜け道らしい。探索者の数はそれほど増えていないため、苦肉の策として作られたようだ。

 受付嬢は手元で何かを端末に打ち込んだ後、1つため息をついてから回答した。

 

「わかりました。チューターとしての実績もある混沌の災禍の方々であれば問題ないと認めます」

 

 チューターがお墨付きを出せば、ダンジョン攻略が自由にできるようになるらしい。チューターは実績があるランクC以上のパーティが実力だけじゃなく、人格なども評価された上で獲得できる資格のようで、誰もが成れるものではない。信用してもいいパーティということだ。

 

「そういうわけだが、嬢ちゃん。俺たちと高山のダンジョンにもぐらねーか? ちょうど夏の大掃除が終わってるし、ちょうどいい時期なんだわ」

 

 大掃除というのはダンジョン用語で、冒険者の少ないダンジョンは自治体からの依頼で定期的なモンスターの間引きが行われることを指す。モンスターが多すぎるとスタンピードが起こったり、イレギュラーなレアモンスターが沸いたりと、いろいろダンジョンが活発になるためだ。

 岐阜の高山は山間部にある町で、俺も2度ほど行ったことがある。熊っぽい人に聞いてみると、3日間くらい潜って問題なければ合格がもらえるということだった。

 

「メルのチューターをお願いしたいの」

「がんばりましょーね。メルちゃん」

 

 ふくよかなおばさんが手を握ってきた。ちなみに後で聞いたが、お金はいらないらしい。どうやらチューター制度を使うことで、ギルドから支援金が出るのだとか。法外な金額ではないので、混沌の災禍の人たちは善意でチューターをやっているのだろう。

 

 俺は翌日には高山にいた。正確には高山に向かう車のなかだ。アバターを召喚した時に着用していた服で来ている。長い柄の武器は荷台に積ませてもらった。

 ところで、マナはどうしたかって?

 まだメルとしてはマナに会っていない。怒涛の5時間耐久パワーレベリングの後、ホテルに泊まり、翌日からはフレイヤも一週間ほど休むと宣言した。さすがに、パワーレベリング5時間はきつかったのか、マナもすんなり同意した。だが、休んでいる間に、チャンネルの方向性を考えるとかも言っていた。マナよ、休んでいてもいいんだよ。だいぶ稼げたし。

 

「メルちゃん、みかん食べる?」

 

 ふくよかなおばさん、幸子さんは俺にみかんを勧めてきた。名古屋集合で、熊っぽい人の辰巳さんの運転で高山までドライブしている。探索者は荷物が多くなるため、自動車で移動する人が多い。名古屋ダンジョンができたおかげで周辺に巨大な立駐がたくさんできたほどだ。

 

「もうおなかいっぱいなの」

 

 そう断ると、車外を見る。もうすぐダンジョンがある市街地なんだが、観光客ばかりで探索者っぽい人がいない。

 

「やっぱり高山ダンジョンはさびれてるね。いいダンジョンなんだけどね」

 

 細眼鏡のおじさん、金子さんが感慨深そうにつぶやく。

 

「そりゃー、名古屋ダンジョンがゴールドラッシュだもんな。ストーンスキンで儲けたやつらが結構でたっていうじゃねーか。フレイヤって子だっけ、すげーよな」

「そうだね。しかし、魔法使いと剣士のペアパーティというのは気が抜けない。あれほど強ければめったなことはないと思うが、よりバランスのいいパーティに加入することを祈るばかりだね」

 

 この3人組は若いころからパーティを組んでいたが、2人離脱したことで無茶な探索もしなくなり、若者を教え導きながら、自治体からの依頼なども行いつつ堅実に余生に向けたお金をためているそうだ。

 

「そろそろつくわね。メルちゃん、おばさんが言ったことは守ってね」

 

 幸子さんが念を押してくる。幸子さんは、こう見えて武道家らしい。人を守りながら戦うことにも慣れていて、幸子さんから離れないようにと言われている。

 辰巳さんは、盾と剣で戦う前衛。金子さんは、弓や短剣をつかういわゆるスカウトと呼ばれる人だ。ちなみに離脱した2人というのが魔法使いとヒーラーだったらしい。

 

「まぁ、俺たちもバランスが崩れてはいるが、経験と危険回避をモットーに堅実に探索するからな。その辺を見てもらえると勉強になるはずだ」

 

 

 ついたダンジョンの前には温泉が湧いていた。足湯があったりして、観光客が楽しんでいる。ダンジョン前のギルド建物は小さいもので、田舎の駅のようだ。

 

「あら? 磯山さんいないな」

 

 辰巳さんがギルドの受付を覗くが誰もいない。無人駅? 駅じゃないけど。

 

「まぁ、いいか。ゲートくぐれば、勝手に記録はされるからな」

 

 そうそう、俺のドッグタグは発給されている。ただし、チューター受講中の仮のものだ。それを通してダンジョンの中へと入っていく。

 

 

 今、俺は幸子さんに守られながら3階層を進んでいる。

 1,2階層は、まばらにしか敵がいないため、パーティ戦をするには不都合らしい。3階は森エリアとなっていて、獣型のモンスターが多数いるとのことだ。

 

「はぁぁぁぁぁ、いえやぇぇぇぇ、くぉぉぉぉ」

 

 幸子さんの掛け声がすごい。腹からでた声で敵を倒しているんじゃないだろうかと思うくらいの音量で拳をモンスターに叩き込んでいる。フラドウルフと言われる小型の狼型のモンスターに2,3発打ち込んで沈黙させている。

 

「わー、すっごーい。幸子さんかっこいいの」

「俺もまけてられねーな、どーこらせぇいやー!」

 

 辰巳さんは盾ではじいた後に、剣で貫き倒していく。金子さんも弓でフラドウルフの眉間を貫き倒している。

 

「弓もいいもんだよ」

「辰巳さんも金子さんもすごいの」

 

 メルとしてもだが小次郎としても3人が洗練された探索者であることが分かる。音量が大きいとかはあれど派手な攻撃ではない。しかし、研ぎ澄まされていた匠の技を感じる。

 

「こんな感じだ。攻撃か支援に加われば、レベルも自然に上がっていくから、嬢ちゃんもやってみるんだな」

「わかったの」

 

 そこでメルとしては、グラディア・コアを発動する。一応、準備として回復系統は家で試した。この魔法はフレイヤのフレイムマジックと同じで、詠唱の代わりのようなものだ。そこから、個別の魔法を指定する形だ。

 

「オーラ::フェレット」

 

 物理能力をあげる最小の魔法だ。三人に魔法をかけると、急に動きが早くなる。

 

「なんだこれ!」

「まるで20代に戻ったみたいだわ」

「弓を引く腕が軽い!」

 

 3人は驚く。

 

「みんなの能力をあげたの。きっと強くなってるの」

 

 そういうわけで支援が入り、俺も貢献したんだろう。レベル1の小次郎が2にあがった。

 

「これなら奥の方も探索できそうだな。嬢ちゃん、ちょっと奥に行くが、今のところとモンスターは大差ねぇ。ただ、出る頻度があがるだけだ。幸子の後ろにいて、支援を飛ばしてればいいからな」

 

 その言葉は30分後には覆えされる。

 

「いかん、逃げろ。これは、スタンピードの前兆だ」

 

 先行して様子をうかがっていた金子さんが戻ったが、額の汗がすごい。冗談なんかじゃないことは、森の奥から聞こえる無数の足音で分かった。

 

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