【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第6話 メルと幸子ちゃん

 昼から潜って既に4時間が経つ。疲労もみえてくると思いきや、俺(メル)のリジェネのおかげか、体力的な問題は起こっていない。昨日から閉じ込められていた探索者たちにとっても、救助隊が来たことはメンタル的にも良い方向に働いている。その中でもSランカーの牟田遼の存在は大きいだろう。

 

「金城さん」

 

 牟田さんにそう呼ばれるがしっくりこない。戦闘中は特に短いほうがいいだろう。

 

「メルでいいの」

 

 そういうと牟田さんがクスっと笑う。

 

「じゃあ、メルでいかせてもらう」

 

 戦闘中の敬語は不要だ。

 

「オーラ::ウルフ」

 

 彼らに支援魔法を掛けると、歓声が上がる。

 

「ここまで分かりやすいバフは初めてだよ」

 

 牟田が感心する中、声があがる。

 

「前方、10体居ます」

 

 声を上げたのは永見を助けた男性だった。前方には何も見えないが、彼にはちゃんと感じ取れているようだ。

 

「あぁ、私にもなんとか分かる。本当にすごい」

 

 牟田さんはそういうと腰に下げた剣を抜くと、前方に飛び込んだ。俺はそれに会わせて魔法を使う。

 

「リジェネ」

 

 全員に徐々に回復する魔法を掛ける。スタミナの回復もするはずだから、継戦能力の向上も見込める。

 

「ブレアド」

 

 さらに自分のカウンターもセットしておく。俺を狙ってくるだろうことは予測しやすいからだ。俺は杖を固く握りしめる。

 

 

 牟田さんが剣を振るうと中空から腕が生える。切り飛ばされた腕が不可視のスキル外に出たのだろう。

 

「こっちも慣れてきたぜって」

 

 狭間さんも槍を振り回し手ごたえのあったところにすかさず穂先を突き刺す。そんな戦法を繰り返している。マンイーターのカギづめや牙に対し無傷とは言えず、血しぶきが舞うが、リジェネが帳消しにできるレベルの被ダメのようだった。

 

「さすが、SランクとAランクなの」

 

 感心していると、再び警告が発せられる。

 

「さらに20体ほどきます!」

 

 攻撃隊は10人+俺という体制で動いているが、状況が悪くなる。

 

「予備隊投入!」

 

 その声とともに、あと5人が追加される。しかし、更に状況がわるくなる。

 

「さらに、30体きます!」

 

 さすがにSランカーとAランカーとはいえ、勝手が悪い状況で戦っており、焦りが見える。一撃が弱いとは言え、何人かは急所への攻撃を受けている。

 どうしたものか。フレイヤになればフレイムマジックで一網打尽にできるだろう。しかし、アバターは知られたくない。

 そこで俺が選択したのは、他メンバーに対する支援の強化だった。

 

「ミレイズ::ヴェール、オーラ::タイガー」

 

 ミレイズ::ヴェールは、リジェネの強化版、オーラ::タイガーはグラディア・コアの3段階目となる。その魔法の影響で、野獣の牙のメンバーが輝くオーラをまとう。

 正面からの殴り合いのようになったが、消耗戦での力比べになれば野獣の牙は強い。消耗するHPを俺が常に回復しているのだから。

 

 

 支援を行った矢先、パンっと破裂音が背後で鳴り響く。俺の背後をとろうとしたマンイーターの腕と頭が無い状態で仰向けで倒れている。その後、立て続けに破裂音がした。遠くから見ていれば、俺の周囲に壁があり、それに弾き飛ばされてマンイーターが体のどこかを欠損した状態で出現したように見えるだろう。これは、ブレアドのカウンターが働いた結果だ。マンイーターは、俺の聖域に踏み込もうとして反撃される、それを繰り返している。 体が動く、杖が舞う。聖域を形作る杖、いや、杖の形をした棍棒が一定範囲に入ったモンスターを砕いて弾き飛ばしていく。

 そうして、結果的に10体くらいは俺に向かってきたようで、まわりにモンスターの死骸が溜まる。

 

「メル! すまん」

 

 狭間さんが俺の背後を守ろうとして寄ってきてくれるが、俺に向かってきた奴らは倒した。 俺は杖の先に付いたモンスターの血を払いながら、狭間さんに大丈夫だと合図を送る。次々に魔石を残してモンスターが消えていく。

 

「これは、どういうことだ」

 

 周りに倒れているマンイーターの姿に驚愕しているが、今はそんな時間はない。

 マンイーターが次々と姿を現し始めたのだ。

 

「もう降参か?」

 

 誰かが言ったその時、マンイーターが変貌を始める。細い体が太く巨躯ともいうべき体格になり、2mくらいだった全長が5mくらいまで大きくなっていく。

 

「なんだこれは」

 

 途中で変身するモンスターも存在する。しかし、マンイーターでは初耳だ。

 

「本気というわけか。みんな、踏ん張るぞ」

 

 牟田さんが1本ダメになった剣を地面に刺し、2本目の剣を構えながら声をかける。変貌したマンイーターは口から黒い霧のようなものを噴出させた。野獣の牙のメンバーたちは、それを避けて場所を変えていく。しかし、変異マンイーターも数が多く、次第に黒い霧に飲み込まれてしまう。しかし、巻き込まれて、苦しそうにしているものの倒れるといった様子はない。これは、ミレイズ::ヴェールに異常回復などの効果があるからだろうか。

 毒攻撃っぽいものが効果なしということで、物理と物理の戦いになる。見えていることで変異マンイーターは数を減らしていった。巨大化したことによりリーチも伸びパワーも上がったようだが、野獣の牙の連携には及ばなかったようだ。

中でも牟田さんの動きは神がかっており、次々にマンイーターへとどめを刺していく。

 しかし、その時、恐れていたことが起こった。遭難者側に変異マンイーターが向かってしまったのだ。変異マンイーターは、遭難者に向かって黒い霧を吹きかけようとしている。ダンジョン階層の間の安全地帯にモンスターは入り込めない。しかし、物理的な物質は入ることができる。例えば、水や鉱物、空気などだ。そのため、黒い霧が毒で無機物だった場合、遭難者たちに被害がでる。回復できる者はいないだろう。

 

「救助隊側で持ちこたえてくれ! 向かう!」

 

 狭間さんはそういうが、実際に向かうのは難しい。マンイーターとの戦いが続いている。

 盾で壁をしている辰巳さん、離れた位置から狙撃体勢にある金子さん、遊撃としてすぐ出られそうな幸子さん。ここは位置的に幸子さんかもしれない。支援魔法の距離も届く。

 

「強い支援魔法を送るから、幸子さん時間を稼いでなの! オーラ::ベヒモス」

 

 最上級の支援魔法が幸子さんに光り輝くオーラを流し込む。オーラ::ベヒモスは物理能力の向上をするだけではなく、身体をベストコンディションにもっていくという効果もある。そのため、通常の4,5倍くらいの能力UPとなる。そのおかげでCランクでも文句無しのSランクくらいはいくんじゃないだろうか。

 

「おーけー、くぉぉぉぉおんのやろーー」

 

 光り輝く幸子さんが変異マンイーターに突っ込んでいった。幸子さん、素早すぎて見えないし、見えた頃には変異マンイーターの上半分と下半分がちぎれてしまって、ベシャリと地面にくずれおちてしまった。

 

「よっしゃー!」

 

 掛け声一発。幸子さんの声が高い?

 たが、そこにはふくよかなおばさんの姿は無く、20歳くらいの道着を着崩した美女がいた。ぶかぶかの道着を着ているせいで、胸元が緩んでおり、危ない情景となっている。そして、ズボンにしてもウエストが変わりすぎてずり下がってしまい、生足が見えている。その結果、道着がワンピースのようになり、困った光景となっている。前屈みの遭難者(男)が困ってる本人だろう。今の俺には反応するセンサーがなくて助かった。

そう言うわけで、さっきまで幸子さんがいたはずが居ない。頭では分かってるんだけど、理解し難い。あれは…、

 

「え、幸子か?」

 

 その女性自身は、顔についたモンスターの血みどろを払うために気づいていないようだが、辰巳さんが変な質問をする。

 

「ん? あたりまえさね。そんなに血みどろかい?」

 

 確かに幸子さんと言えば、そんな感じだ。しかし、細いし、現れた顔は二重がばっちりとして何より細い。あぁ、細いを2回言った。

 

「幸子、おまえ、若返ってるんだが?」

 

 そう、それは辰巳 幸子さんの20歳、最盛期の肉体コンディションで姿だったのだ。

 

「「ええええええ!!」」

 

 多くの人が驚愕する。

 

「教官…、うつくしい」

「幸子さん? え、俺、初恋、幸子さんになっちゃうじゃん…」

「おい、見るなよ、おれのだぞ!」

 

 辰巳さんが幸子さんを背後にかばう。その脇で胸元がだるんだるんになってしまったのに気づき、赤く成りながらぎゅっと道着の裾やズボンの紐を締める幸子さんは、お世辞抜きに可愛かった。若い時可愛かったんだなー。いまも面影はあるけど、こんなに若返るとは思わなかった。

よし、オーラ::ベヒモスで美容業界に参入するか! なんて、冗談だけどな。

 

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