【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第7話 メルと大浴場

 富士山ダンジョンの13層。先ほどまで、マンイーターとの死闘を繰り広げていた現場は、誰1人として死なないという、ダンジョン内の遭難事件としてはかなり異例の事態となっていた。

 

「ありがとなの」

 

 濡れたタオルを貰って俺は顔を拭いていた。聖域(物理)は血飛沫やら何やらが弾けるため、飛沫が気持ち悪いのだ。さらにもっと激しくマンイーターを砕いた幸子さんは、今取り囲まれていた。

 

「幸子さん、こちらのタオルを使ってください」

「もうタオルは足りてるよ! 何人目だよ!」

 

 辰巳さんが男を散らす。ダンジョンガイダンスを持ったサメ自慢? サメジマンだっけかは、早々に追い払われていた。

 

「幸子さん、すごい本当にぴちぴちしてる。肌が赤ちゃんじゃないですか」

 

 遭難者にいた女性探索者に加え永見レイナも興味津々に話しかけている。

 

「目元のシミとかもまったくないさね。それにほら?」

 

 幸子さんが女性陣だけに腹を見せる。

 

「妊娠線とかも消えて、肉割れも無いのよ」

 

 うわーとか、うらやましーと感嘆の声。

 

「今なら4人目産めるかもねー?、あはは」

 

 実は旦那さんだった辰巳さんだが、若い幸子さんにそう言われてまんざらじゃないような顔をしている。おいおいおい。しかし、永続的な若返りではない。

 

「魔法が切れると次第に元に戻るの」

 

 そういうと明らかにがっかりする辰巳。

 

「仕方ないねー。で、どれくらい保つんだい?」

「力を使わなければバフは半日は保つの」

 

 みんなが固まる。

 

「おいおい、あんなバフが半日も継続するってか?」

「そうなの」

 

 そこで幸子さんが質問をしてくる。

 

「次第に戻るってどれくらいで戻るんだい?」

「設定…えーと、たぶん3ヶ月くらい」

 

 その回答に女性陣のテンションがMAXだ。もう声が高すぎて聞き取れない。

 

 

 

 その後、13階層から12階層に戻り、順当にダンジョンを脱出したメンバーだった。

 

「メルさん、ありがとうございました。本当に助かりました」

 

 牟田さんから感謝の言葉をもらい、頭を下げられる。

 

「本当に、あのバフのおかげで変種のマンイーターも見つけられたし、毒もへっちゃらだったぜ。感謝するぜ」

 

 狭間さんも頭を下げてくる。

 

「当然なの。感謝はいいの」

「謙虚なところも、ますます聖女だね」

 

 牟田さんがそう言い出す。ネットニュースを見ていたらしい。

 

「好きに呼ぶといいの。メルはメルだから」

 

 そこから質問攻めが始まった。特に支援魔法についてはクランの勧誘も伴いながら追求があった。前衛職が多い野獣の牙としては、あれほどのバフがもらえば戦力の底上げとなる。トップクランの大和がバランス良く職業を集めているが、メルが入れば1番に躍り出ることも夢じゃない。

 

「スキルについては教えられないの。クランにも既に入っているからダメなの。でも、たまに一緒にダンジョンに潜るのは問題ないの」

「そうですね。流石にもうクランに誘われてますよね。仕方ない。でも、いつでも加入可能なので考えておいて下さい。

では、食事が用意できたようなので行きましょう」

 

 ダンジョンから出た後、野獣の牙の発案でBBQが行われた。救助された遭難者達は名残惜しそうに帰っていった。色々と関係者が迎えにきていたのだから仕方ないだろう。そして、残ったのは救援隊の者だけだ。和牛がたっぷり用意してあって、非常に美味しい会になった。

 永見レイナがそこで話しかけてくる。

 

「メルちゃん。お疲れ様」

 

 ツンツンした感じがが無い。

 

「よかったらあの、連絡先交換しない? 同じ回復職として交流して高めあうって言うか、そういうのどうかと思って。あの若返りとかが目当てというわけじゃないのよ?」

 

 お断りしたい。マナを虐めていた犯人かもしれないし。でも、メルは知らないことだし、いざとなればフェードアウトすればいいか。

 

「分かったの」

 

 そう言って連絡先を交換した。きっと若返りが目当てだろう。十分若いんだけどなぁ。

 

 

 もぐもぐと焼肉を食べる。なんか、食べ足りない。野獣の牙の方がせっせと焼肉を焼いてくれる。この人、Aランクなんだけど。

 

「嬢ちゃん。おつかれ!」

 

 そこに辰巳さんがきた。相当酔ってる。

 

「あんたね。ほどほどにしなさいよ」

 

 肩を貸しているのが幸子さん。今は20歳くらいの美女だ。合う服がなかったらしく、ダンジョン横のストアにあったTシャツにカーゴパンツを着ている。

 富士山ダンジョンとイラストが描いてあるお土産品だ。うわ、よく見るとノーブラだ。いかんでしょ。その容姿でノーブラは。

 

「メルちゃん。聞いたかい? 今日の戦闘、実は配信されてたって」

「知らないの」

 

 どうやら、サメジマンは限定配信にせずに、公開配信にしていたらしい。本人はシステムの不具合だったと主張しているらしいが、ギルド側からは厳重注意となっているだとか。今ではアーカイブ自体は非公開になっているそうだが、リアルタイムで配信を見ていた人は多数いたらしい。

 

「それでね。ギルドからも連絡が来ると思うけど、大丈夫かい?」

「何が大丈夫かなの?」

「サメジマンが話しかけてたところなんかも映ってたから、名前もバレてしまったのと、回復とか支援とか、私のこの姿とかね。既にギルドへの問い合わせが鳴り止まないそうなのよ」

 

 あー。そう言うことか。

 面倒だなぁとは思うが、過ぎてしまったことは仕方がない。そのうち、エバーヴェイルに入ったことも知られるんだろう。スマホを使って承認だけしておいたので、システムにはどこかで反映されるはずだ。

  

 

 

 ところで、この日はギルドが用意してくれたホテルでの宿泊だ。多種の温泉があるホテルで竜の巣というホテルだ。着ていたビキニアーマーは脱いだが、髪に匂いがついてしまっているので、早速温泉に入ることにした。後でこのアーマーを返す時は洗ったほうがいいんだろうか。ギルドの人に聞くのを忘れてた。

 ロビーを通ると幸子さん(若い)に会った。

 

「メルちゃん風呂だろう? おばちゃんと一緒に行くよ」

 

 全くおばちゃんと言うビジュアルじゃない幸子さんに断る理由は無い。スキルを使った結果をしっかり観察するのも責任感といえる。そう、言える!

俺はこくりと頷くと、一緒に大浴場に向かう。女湯にしれっと入るメル(俺)。きっと俺のアバターの能力が世間に知られた日には社会的に抹殺されるだろう。バレないのは大事だが、バレた時に抹殺されないくらい社会的な地位を築くと言うのも大事かもしれない。その方向も考えとこう。

 

 

 そんなことを考えていると幸子さんが心配してくれる。

 

「疲れたかい? 仕方ないね。あんな魔法を連発した上に、私をこんな姿になるくらいの魔力もつかったからね」

 

 あまり疲れていないが、疲れたことにしておこう。

 

「じゃあ、おばさんが髪洗ってやるよ! 遠慮はなしだよ。娘の髪も洗ってたからね、うまいもんだよ」

 

 圧がすごい。お言葉に甘えよう。大浴場に着くと、さまざまな年齢層がいた。

 メルと幸子さん(若い)は、中でも若年層だった。姿見を見ると、幸子さんと姉妹のような感じである。

 幸子さんは秒で服を脱ぎ、俺はペルソナを起動して、いそいそとブラのフックを外し、裸になる。

 

「割と着やせするタイプだねぇ。でも、もっと筋肉つけなよ。探索者は後衛でも筋肉が大事だからね」

 

 

「さぁ、入ろうかい!」

 

 全裸にタオルを担ぐ幸子さん。格闘家だけあって引き締まった肉体をしている。俺は恥ずかしそうにタオルを前に抱え込む。これがフレイヤならばーんと見せているんだろうな。

 

「恥ずかしがらずに、風呂は開放感を味わってこそだよ!」

 

 そうなのかもしれないけど、違う気もする。幸子さんにタオルを取られそうになるのを避けながら、洗い場に向かった。幸子さんに促されて髪を洗い始める。洗ってくれる手つきや表情がお母さんだ。

 

「メルちゃん。ありがとね。この姿、実はすごく嬉しいんだわ。女だからね。

 でも、これで何か厄介ごとがおこったら、私が協力するしなんでも言うんだよ」

 いい話だ。俺の意識の半分が顔の横でブルブル揺れる美乳に気を取られなければ。

 

 その後、幸子さんと風呂を堪能した。風呂の湯だけじゃなく、目でも幸せ、そして、自分の谷間でも幸せ。男のロマンが詰まった体験となった。やっぱり、アバターがバレると社会的に抹殺されるなぁ。気をつけよう。

 

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