【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第12話 エバーヴェイルと契約

 フレイヤとして大浴場を使うのは問題あるんじゃないかと思い、宿泊者じゃなくて入湯料を支払う。

 フレイヤが脱衣所に入ると視線が集まる。ささっと脱ぐと風呂に入っていく。

 

「すごいプロポーションしてる」

 

 高校生くらいの集団がこそこそと話をしているのが聞こえる。元の姿なら、こんなところに居たら立派に檻の中に入れられる俺だが、いまは羨望の的だ。

 いろいろ風呂を楽しむ。女湯にっていいねー。景色とか。アバターのフレイヤさんも人間だからなお風呂に入る権利はある。そう、権利がある。俺は悪くない。

 さて、視覚的にはお腹いっぱいになったし、腹もへったので、上がるとしよう。服を着て髪を乾かした後、休憩室でコーヒー牛乳を飲んでいると、

 

「探索者のフレイヤさんですよね!」

 

 さっきの女子高生の集団が寄ってきた。

 

「ええ、そうよ」

「あの、配信見てます。すごく可愛くて強くて大好きです!」

 

 女子高生のファンが増えて嬉しい限りだ。一緒に撮影したりファンサービスを行なっていく。ぴったりくっついて写真とるもんだから、良い匂いがする。こっちも良い匂いさせてるし、お互い様だからいいんだよ!

 ちなみに、彼女たちは、地元ではなく名古屋の高校から合宿に来ているらしく、高校でも俺は人気らしい。ひとしきり話をしたら去っていった。

 いやぁ、パワーがあるわ。女の子たち。

 

 

 その後、1人で晩ご飯を食べ、メルの部屋に戻る。メルと違ってフレイヤは少食だな。

 そして、スマホでギルドの販売ページを覗く。ギルドの販売ページは、ギルドからの直接販売、オークション、個人間の取引サイトがある。

 俺は直せば販売可能な使途不明品が売っていそうな、通称ジャンク品のページに行ってみる。

 

「いくつか分かるわね。これは、子供用のおもちゃね。これは、ドライヤーみたいなもの。これは、魔素を吸収する装置だけど、壊れてるみたいね」

 

 いろいろとある。フレイヤも全てを知っている訳じゃないらしい。

 

「これはマジックバッグの部品ね」

 

 マジックバッグの部品か、いいね。購入リストにいれてっと買っておこう。

 

「これは転送機のコアね」

 

 え? 転送機? なにそれ。

 

「転送機は階層間を移動するための魔道具よ。同じダンジョン内しか移動できないわよ」

 

 いやいや、今は下層に行けば行くほど、荷物も増えるし、何日もかけて潜るのだ。革命が起きるぞ。

 

「これだけじゃ転送機は作れないわ」

 

 どうすればいいんだろう。

 

「詳しくは知らないわ」

 

 まるで会話しているようだ。それ以降もいくつかの買っておいた方がいいアイテムがゴミのような値段で売られていた。転送機のコアなんて10個で2000円だった。

 そして、俺はそれを見つけた。いや、フレイヤさんの手が止まったというのが正確か。

 

「あら?」

 

 その本はスキル書ではない。そして本でもない。石板?

 

「スキル書の合成方法」

 

 ん? ん? ん? スキル書て合成できるの? そんなこと書いてあるの? ダンジョン柄のついた板にしか見えないんだが。

 

「ダンジョン柄は文字よ?

 そして、スキル書は、複数個使えば、上位のスキル書になると聞いたことがあるわ」

 

 ダンジョン柄は文字なんですね。そうなんですか。

!? それ、世紀の大発見じゃないの!? なんでみんな気づかないんだ?

 

「かなり崩してあるし、文字の数がやたら多いから、気づけないのかしらね」

 

 漢字の草書体みたいなもんか? いや、そこだけじゃない、しれっとすごいことも言っていた。スキル書が上位のスキルになる?

 それが実現したら儲かるんじゃないか?

 ヒールのスキル書が5000万円くらいだろう。そして、ハイヒールが50億円。もし、ヒール書が10個でハイヒールになるとしても40億円以上の儲けになる。ひぇー。

 しかし、ヒール書って品不足というか、売られてないんだよな。別のスキルで考えるべきか。いや、その前に、スキル書の合成について書いてあるであろう板を買わないといけない。2万円? 安い。とりあえず、いろいろ買ってみよう。合計で700万円になった? いける。フレイヤのお財布なら買える。ギルドのアカウントなので決済もすばやく可能だ。送付先は、今の家…。こんなに来たら埋まりそうだな。いや、考えないでおこう。

 

 

 あぁ、人手が欲しくなってきたな。材料調達とか販売とかいろいろできるオールマイティで、税金とかにも詳しい人。前職の友人関係あたるか? いや、前の会社は、そういうのが苦手で追い込まれた感じはあるし、やめておこう。ギルドってそういうコンサルもやってたよな。ちょうど南さんと話する予定だったし、明日連絡ついでに聞いてみよう。

 

 そして、その日はメルで夕食を食べてみた。その結果、小さな体なのにすごい量が入ることがわかった。

 ステーキプレートを5枚と、海鮮丼を三杯。デザートにケーキを10個くらい食べれた。そして、まだ腹八分目。

 こんな大食いに設定したかな? あ、してたわ。魔法を使うのにカロリーめちゃ消費する設定。

 

「きみ、めちゃ食べるね」

 

 その様子が気になったのか、高校生くらいの男の子が寄ってきた。ちゃらいわけではない。合宿に来てそうな子だ。

 

「お腹がすくから、しかたないの。誰なの?」

「ごめん。俺、御手洗太一。バスケの合宿にきてるんだ」

「メルはダンジョンに来てたの。でも、明日には帰るの」

 

 そして、食後の紅茶を飲み干す。

 

「え、探索者? そんなに華奢なのに?」

「そうなの。ごちそうさま」

 

 俺は手を合わせる。席を立とうとすると男の子が慌てる。

 

「あの、おれ、その一目惚れというか、気になって、よかったら連絡先交換してくれないか?」

 

 ナンパだった。どう断るか。ペルソナだとどう反応するんだろうか。俺は興味本位でペルソナを起動してみた。そして、すぐに後悔する。

 

「メ、メルは、こまるの」

 

 赤面して俯いてしまう。鼓動がすごい。やばい、中の俺までドキドキする。ちらりと見えた御手洗くんはイケメンで真面目そうで、ストライクだ。

 え? ストライク? まてまて。

 

「きっと後悔させないから、俺、日頃からナンパするようなやつじゃないから」

 

 いやいや、初めてナンパするやつがこんなに落ち着いてる訳ないし、手慣れてるじゃねーか。

 その後、ペルソナを切るまでに、連絡先の交換が済まされていた。メルってば、めちゃ強いのに恋愛関係、推し弱すぎ。

 

「ともだちなら…」

 

 そんなわけで、メルは同世代の男友達ができた。気をつけよう。安易なペルソナの起動。

 

 

 

 次の日、俺は朝イチに新幹線で名古屋に戻った。多目的トイレで小次郎の姿に戻った上で、新幹線に乗り込んだ。俺の顔は知れ渡っていないから、誰からも声をかけられることもなく、すんなりと名古屋についた。本来ならここから私鉄に乗り換えての移動なわけだが、名古屋のギルドに向かう。いつもの受け付けではなく、会議室だ。

 小次郎に南さんから連絡があったのだ。直接会議がしたいと。俺は、二つ返事でそれに答えたというわけだ。

 

 会議室につくと既に女性がいた。あー、この人が南さんね。何度か受付で対応してもらってる人だ。確かクラン申請の時も会ったから大丈夫だな。

 

「こんにちは。南奈緒です。メールでお伝えしたように、エバーヴェイルさんの専属となりましたので、よろしくお願いします」

 

 うん、メール見てなかった。ごめん。席に促されて対面に座る。

 

「うちみたいなぽっと出に専属なんて、なんか悪いなぁ」

「いえ、エバーヴェイルさんは、既にフレイヤさんと金城メルさんという探索者を抱えてらっしゃいますし、ギルドからの期待もあり、専属がつく形になりました」

 

 たしかに、スキル書の件とか、多量の魔石の納品とか期待されるポイントもあるだろう。

 

「今日は拠点の話ということでしたが、いい物件ありましたか?」

 

 南さんは「はい」といったが、「でも」と続ける。

 

「先に、金城メルさんの件についてお話してもいいですか?」

 

 あぁ、きっと若返りのことだろうな。俺が頷く。

 

「金城さんの富士山ダンジョンでの活躍はご存じかとおもいますが、その際使った若返る魔法なんですが、配信事故によって世間に露見してしまっています」

 

 うん、知ってる。

 

「幸い配信に3ヶ月の若返りの効果時間については配信されていませんでした。

 そこで、ギルド側は若返りの効果について金城さんを保護するためにも、現場にいた探索者の方やギルド職員に緘口令を敷くことにしました」

 

 参考にと何やら誓約書を見せてくれる。喋るとギルド資格の取り消しとか物騒な話がある。

 

「えーと、これはメルには?」

「本人にも、その情報を漏らさないようにメッセージは送っています。ただ、返答がないため、笹木さんからも釘を刺しておいてください。

 今でも数十分という偽の効果時間をテレビ局など報道に流してますが、これでも金城さんへの面会申し込みでギルドは手一杯になっているんです」

 

 ほんと、ごめん。

 

「ええと、すみません。でも、これは苦情というわけではありません。ギルドは非営利団体ではありませんので、ビジネスとしての話があります」

 

 なんか、南さん。隣に座ってきたんだが? まつ毛長いし、受付嬢って美人が多いよな。

 

「実は、こちらがオファーのあった世界の富豪達です。彼らには、機密保持契約と若返りの秘匿条項を付けての若返りプランを提供する準備がございます」

「えーと。つまり、お客を選んで若返らせるということですかね?」

「そうです。ギルドは報酬の2割をいただくことになりますが、面倒な手続きなどはこちらで全て行います。いかがですか?

 わかりやすく言うと、若返りに関する案件の一括窓口を名古屋ギルドが担当します。エージェントをタダで雇うと思っていただくとイメージしやすいかと思います。

 もちろん、金城さんとご相談ください」

 

 まじで、金持ちなら1億円とかぽーんと出してくるかもしれない。俺はお金の魔力と共に、そういう人たちとの人脈があれば、社会的に抹殺されかけてもなんとかなるかもしれない。

 

「あ。でも、幸子さんは出歩いているとまずいんじゃ」

「そのことなら問題ありません。既に手を打っています」

 

 どうやら、辰巳夫妻は、奥飛騨あたりのギルド所有のペンションに夫婦で泊まらされているそうだ。まぁ、体のいい軟禁だな。これも、ごめん。え? 温泉付き? うらやましい。

 

 そんなわけで、俺はクランの代表者として金城メルの保護者代わりとして、いろいろ契約書の内容を確認するのだった。

 

「南さん、何者なんだ?」

 受付嬢、ハイスペックすぎませんか?

 

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