【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第2話 小次郎とクラン方針

 ハイランドスクエアには、カフェがいくつかある。そこに、フレイヤとマナ、そして俺という初めての組み合わせで立ち寄っている。

 俺の方をマナがこちらをじっと伺っている。

 

「だから、昨日のは、目にゴミが入ったのを見てあげてたのと、今朝はちょっと魔法の実験的なのに付き合わされてたんだって」

「あの、別に付き合ってても問題ないというか…2人が一緒にいるところを初めて見たのでびっくりしたというか…くっつきすぎというか」

 

 マナがぼそぼそと話し始めるが、フレイヤが口を開く。

 

「笹木のいうことは本当よ。マナも変なことを気にしないことよ。それよりも、すごい発見があったから共有したいのだけど」

 

 フレイヤが話の方向性をかえて、スキル書の合成について説明を始めた。マナは腑に落ちないといった顔をしながらも、フレイヤの話の重大さに次第に熱が入り始める。

 

「あの、それって世界が変わりますよ!? スキルってなかなか出ないし、出ても下位の弱いスキルばかりだったり」

 

 本当にその通りだ。スキルを自然に習得するには、長年の訓練が必要だったりするし、取得したスキルを育てるには、さらに年月を必要としている。そんな中で、スキルの合成は確実にブレイクスルーの手段となる。

 

「それをギルドの国際イベントで公表しようというのは、既に南さんと話してるよ」

 

 ミルクティーに砂糖を入れながらマナはうなずく。

 

「でも、それは大きなネタだからってだけで、他にもいろいろ小ネタがあるんだ。そういうのは、エバーヴェイルの配信で公表していくのもありかなっておもう」

 

 どうして小ネタがあるのか。そこは、俺がダンジョン研究者だからという話をでっち上げた。フレイヤの魔法の知識を組み合わせて、いろいろと今後やりたいことがあるのだとマナにも説明する。すると、最初の気まずそうな雰囲気が晴れたマナが、協力を申し出てきた。

 

「ありがとう。助かるよ」

 

 

 

 その日、午前中に俺、フレイヤ、マナと南さんがそろい、メルは学校という設定だ。俺とフレイヤが揃うことがなかった今までだが、ドッペルゲンガーのおかげで俺とフレイヤという夢の共演が実現したというところだ。

 そして今は、クランベースの会議スペースで顔を突き合わせている。

 

「不在がちにしてたけど、少し余裕が出たので、ちょくちょく顔を出せると思う」

 

 そう言って俺は話始める。

 

「フレイヤに誘われてクランを立ち上げたわけだけど、少し先のことを考えてみたんで、聞いてほしい」

 

 昨日、寝付けなくて考えていた話をしようと思ったのだ。フレイヤにキスをされて、小説の中で俺は何をしていたかを思い出した。

 

 

 俺の小説は、ダンジョン人が地球の侵略のためにダンジョンを作り出したというのが仮説かつ世界の設定だ。今のこの世界でもダンジョンの成り立ちについては所説あるのだが、いきなりステータスが見れるようになったことなどを含めると何かの仕業と考えることが妥当だというのが通説だ。そして、その元凶は宇宙人や神、別次元の住人、並行宇宙からの贈り物だの、様々な説で溢れている。

 俺は、その中からダンジョン人という宇宙人による侵略だというのを背景に話を作っていた。そして、ダンジョン人も決して一枚岩ではなく、侵略を憂いたダンジョン人のフレイヤが地球を守るためにやってきて地球人の探索者である俺を助け、ダンジョンに挑むというストーリーだ。

 フレイヤがアバターというスキルだとしても、地球を守るためにフレイヤがやってきたかのように思えたのだ。フレイヤは小説のキャラクターだが、モンスターの知識やダンジョン語をしっていることから、現実のダンジョンとのつながりが強固だ。そう、それならば、ダンジョンが侵略のための装置であり、地球人が危機に陥っているという想定も現実である可能性があるんじゃないかと考える。

 

「先日、俺はある人からダンジョンがより強力になってきているという話を聞いたんだ」

 

 忍者黒壁のことだ。

 

「だから、俺はダンジョン攻略はしない」

 

 みんなポカンとしている。

 

「まてまて、自分で攻略はしないけど、ダンジョン攻略の手助けをしていこうと思う。

 エバーヴェイルは、フレイヤやメルは規格外に強い。そして、マナも強くなっていくと思う。でも、それでは足りないんだと俺は思ったんだ。

 俺たちが立ち向かっても、強い小さな集団にしかならない。でも、それじゃあ、無数にあるダンジョンに立ち向かうには足りないんだ。なので、俺は、人類に有益な情報なんかをどんどん渡して強くしていきたいと思う」

 

 俺の小説は予言の書ではないと思う。しかし、何らかの予兆のようなものを感じる。フレイヤが俺の想像の産物というだけなら、ダンジョンの情報やダンジョン語などとは全く無関係に出鱈目な情報しか持たないはずだ。

 俺の小説では、主人公がダンジョン人の世界に放り出された後、自分の無力さに打ちひしがれるというバッドエンドを迎えている。

 

 

「なんか悪い予感がするというレベルなんだけどね。せっかく色々情報があるし、ダンジョン攻略の助けになるような活動をしていきたいと思ってる。そして、ついでにお金を儲けておいしいものを食べる」

 

 そこまで言うとマナが小さく拍手してくれる。フレイヤはもちろん俺なので、頷いてくれている。

 

「素晴らしいと思います。今、ダンジョン攻略の助けになる活動は何なのか決まっていますか?」

 

 南さんが質問をしてくる。そうだなぁ。

 

「たとえば、今回のスキル書の合成みたいな様々なノウハウの提供、モンスターの倒し方とか、そういうのかな」

 

 南さんがそれを端末に打ち込む。そして、顔をあげると端末の画面を見せてくる。

 

「私から提案があります。ダンジョン攻略に役立ちそうな会社を買収しましょう」

「「「え???」」」

 

 いきなりの話で俺、フレイヤ、マナが同じ反応をする。フレイヤよ、俺の地が出てるぞ?

 

 

「唐突のように聞こえるかもしれませんが、資金力があるクランは企業買収を進めるところが多いです。クラン優遇税制のため、買収資金が経費として認められることが理由のことが多いですが」

 

 いまいちピンと来ていないため、何個も南さんに説明を求める。マナがじっくり聞いてから口を開いた。

 

「えーと、ダンジョン関連の会社さんをクランが買い取って、ダンジョン攻略に必要なものを作って売るというんですね」

「はい、平たく言えばそうです。現時点の資産で買い取れそうな企業についてはピックアップしてあります」

 

 なんか、表にまとまっている。

 南さん、こんなのを作ってたのか。

 

「へー、エッジ&スピアーズ、シャークハンド、桜花魔道具、オーブマシナリー…いろいろありますね」

 

 いくつかは聞いたことがある。

 

「エッジ&スピアーズは、フレイヤの着ている服を出しているブランドですよ!? え、ここを買収するんですか? フレイヤ、ブランド立ち上げませんか!?」

「なんだか楽しそうね。わたくしも協力するわ」

 

 フレイヤはパンケーキをつつきながら、ニコニコしている。こう見ると、俺2号とは思えないな。パンケーキを切るために前かがみになるたびに、目線が吸い寄せられる。

 

 

「オーブマシナリーは前職のお得意様だな」

 

 俺も知っている会社があったわけだ。そして、南さんの提案のおかげで、何をすべきかが明確になってきた。

 俺の書いた小説にはパーティに魔道具師がいて、ありえない機能を持つ道具を多く製作していた。その小説の中の俺は、俺が強くなることに使うが、それを人類に普及させることはしていなかった。よし、アバタースロット3が出れば次に設定するのは魔道具師だな。

 魔道具師のキャラが出るとは限らないが、ダンジョン攻略に役立つ道具を多く生産する企業体を作っていくのもおもしろいじゃないか。

 

「笹木さん、いかがですか?」

 

 南さんが質問を投げかけてくる。

 

「ぜひ、やりましょう。俺たちだけでできないことは、人を巻き込んでやっちゃいましょう」

「よかったです。そこで、マナさんにはお願いがあって」

 

 マナが少しおびえている。

 

「配信は継続してください。フレイヤさん、マナさん、メルさんでエバーヴェイルの活動を逐一配信してほしいんです」

 

 どういうことかと聞くと、クランの等級をあげていくためらしい。クランの等級とは、国が定めているものらしい。信用度などを多角的に分析して出すとか。そこに、国民からの周知や評判といった項目もあるらしい。その等級が何に影響するかというと、クラン優遇税制の税率に関わるらしい。つまり、評判がいいクランであれば優遇税制を受けられるし、そうでなければ、一般税制となるということだ。

 

 

「配信はしますけど、なんだか責任重大ですね」

 

 マナが不安そうだ。

 

「大丈夫よ。今まで通り、ダンジョンで楽しく配信すればいいのよ。今度はメルも誘っていくのもいいわね」

 

 フレイヤがそういうとマナも安心したのか、「はい」と元気な声で返事をした。

 

 

 そういうわけで、この日、クラン勧誘を避けるためだけにフレイヤが作ったエバーヴェイルに大方針「人類のダンジョン攻略を助けること」が生まれたのだった。

 

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