【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第10話 ひよりとマジックバッグ

 隼人ひよりを召喚した後、俺は徹夜でマジックバッグを作り続けた。工房エリアの備品を南さんが充実させてくれていたおかげで、作業が進んだ。

 そして朝が来て、事務エリアに場所を移した。そして、徹夜の成果であるマジックバッグを手にフレイヤの前にいる。姿は小次郎に戻っている。

 寝起きのはずのフレイヤは簡単に化粧も済ませていて、女子力が向上している。

 

「調子はどうだ?」

「昨日よりはマシになったわ」

 

 気だるそうに答える姿にアンニュイな感じがしてドキッとするわ。俺は早朝に買ってきたサンドウィッチをテーブルに広げながら聞いてみる。出来たマジックバッグについて報告するためフレイヤと朝食ミーティングだ。

 マジックバッグはポシェットのようなタイプだ。

 

「これは、どれくらい入るのかしら?」

「ひよりによると、コンテナ1つ分の容量で重さは10tくらい余裕らしい。しかも、これでお手軽サイズらしい」

 

 その発言にフレイヤも驚いている。コンテナサイズは現在発見されたドロップ品の最大容量のマジックバッグの10倍はあるのだから。

 

「これをギルドのオークションに出そうかと思う。今5つできてる」

 

 現在の最大容量のマジックバッグの相場が数億円に達する。ということは、その10倍の性能をもつマジックバッグならば1桁上がってもおかしくない。

 

「オークションのその後はどうするのよ」

「そのオークションを相場の参考にして、あらためて商品として売りに出そうかと思ってるが、どうだろう」

 

 フレイヤは腕組みをする。考え事をするスタイルが扇情的すぎる。

 

「なんだか儲けすぎるのは小次郎への妬みにつながりそうね。何か小次郎の名誉回復に使えないかしら」

 

 確かにそういう使い方もできる。

 

「権力者にでも無償提供するか?」

 

 フレイヤは、しっくりこないようだ。

 

「そうねぇ。平和的で人命救助なんかに関わるといい気がするわ」

 

 そうだな。そういえば、どっかの省庁が作ってたコンテナサイズの医療用仮設拠点があったよな。そういうのと組み合わせるといいかもしれない。ダンジョン向けに使うのもありだが、スタンピードなんかの災害時に迅速に現場に医療体制が敷けるわけだ。

 

「フレイヤ、医療コンテナやってる省庁に寄付してみるか」

 

 フレイヤも満足そうだ。よし、この件は南さんに相談してと。

 

「しかし、儲けすぎるとよく無いと言われると、魔道具で何をすればいいんだ?」

 

 フレイヤがテーブルに両肘ついて考え始める。視線が吸い寄せられるー。まぁ、自分だし問題ないか。ないな。

 

「見すぎよ。好きなのは知ってるけど」

 

 フレイヤの指摘に同意する。仕方ないんや。

 

「そうね。儲けすぎても、恩恵を受ける人が多ければいいんじゃないかしら。必要悪くらいには評判が戻るわよ」

 

 確かにと思うところはあるが。

 

「しかし、フレイヤもメルもマナも評判いいよな。掲示板眺めてもファンクラブみたいな物もあるようだし」

 

 フレイヤがカフェラテを飲みながら答える。

 

「そのファンクラブが、あなたの敵になるんじゃない? わたくしたちのことを好き勝手にできる男だと思われてるのよ?」

「マナはともかく、フレイヤもメルも好き勝手はしてるな。自分なんだから」

 

 フレイヤは、少し口を尖らせる。

 

「危機感が不足しているわ。それにドッペルゲンガーにも気を遣ってほしいのよ? ちゃんと思考もするし、感情もあるわ。今だってペルソナ使わないのに、小次郎といるとドキドキするのよ? 俺2号としては困るのだけど」

 

 そんなことを言われると俺も困る。そこの一線は越えられない。越えられない。

 

 

「あら、マナが帰ってきたみたいね」

 

 確かにマナがオフィスに入ってきた。昨晩、東京に泊まったはずだから、まさか始発くらいで帰ってきた?

 

「フレイヤ~~~」

 

 マナが帰ってきた途端、フレイヤに抱きつく。

 

「大丈夫? ごめんなさい、昨日帰れなくて」

「いえいいのよ。それに、わたくしが帰ってこなくて良いってお願いしたのよ?」

 

 そこからは、昨日の戦闘の話なんかをペルソナを省いて行われた。マナが、生理中はダンジョンに潜らないとフレイヤに約束したりしていた。

 

「昨日はメルちゃんが回復してくれたんですね。よかったー」

 

 その結果、メルが居れば条件付きでダンジョンに行ってもいいという内容に落ち着いた。

 そこからは、朝食は終わっていたので、朝ミーティングといった感じで情報共有が始まった。マジックバッグについては、ひよりの話をしなければいけないから、そちらからだな。

 

「そうそう。今、魔道具師の子をエバーヴェイルに入れようとしていてね。工房もあるし、ちょうどいいかなと思ってるんだ」

 

 そういうとマナが驚く。

 

「魔道具師って、もっと大手のクランに入るイメージでした。もしくは、大企業とか」

 

 本来は、そうだろう。魔道具師専門のクランなんて物もあるくらいだ。

 

「こっちはフレイヤの知り合いでね。な? フレイヤ」

 

「ええ、わたくしがその方のお父様にお世話になったのよ。そして、今回はその伝手でクランに申し込みがあったわ」

 

 話を振られたフレイヤが話を合わせてくれる。

 

「男の人ですか? 女の人ですか?」

 そう聞かれるので答える。

 

「女の子だよ。名前は隼人ひより、メルよりも少し年下かな」

 

 マナがため息をつく。

 

「あー、また、こじにーの評判が落ちそうですね」

 

 そんなことは…、確かにありそうだ。

 

「また紹介するよ…フレイヤにお願いするかな」

 

 俺2号には検証のためにフレイヤを続けてもらっているから、俺がひよりになるしかない。

 

「いつくるの?」

「今日の午後かな。俺が不在だけどフレイヤに任せるよ」

「ええ、分かったわ」

 マナが楽しみですねと言っている。

 

 

 じゃあ、次は俺の方で南さんと行ったオーブマシナリとの話を共有するか。

 

「昨日訪問したオーブマシナリなんだけど、買収に乗り気だったよ。こちらの持っている情報なんかにも興味があってね。あと、フレイヤのファンらしくて、サインが欲しいってねだられたよ」

「良かったです。買収って、険悪になりそうな気がしちゃって」

「南さんが出してくれた候補は、どこも経営に苦労しているところらしくってね。そういう意味では、向こうからすれば助けてもらう側っていう意識があるみたいだよ。そこに来て、エバーヴェイルの知名度がいい方向に働いたって感じだね」

 

 俺はその時に貰ってきた会社紹介パンフレットなどを渡す。

 

「え、これってここの会社で作ってたんですか?」

 

 それはダンジョンでよく使われるランタンだった。魔石を動力源としているので、壊れなければダンジョン内ではエネルギーを調達できる優れモノだ。

 

「そうだよ。いろいろ作ってるらしいけど、参入企業が多いらしくってね。今年も何社かとの取引を止めたりして延命しようとしていたね…。そのうちの1つが俺が務めてた会社なんだけどね」

「それは、ご愁傷様です」

 

 マナの言葉にお礼を言うが、俺は今の状況が好きなので、むしろ会社がつぶれてよかったんじゃないかと思っている。

 

「それで、買収は早ければ2か月後くらいに完了すると思う。会社の経営なんかは、そのままの経営陣にやってもらって、作ってほしいアイテムなんかを作ってもらおうと思ってね。ちょうどひよりも加入するし、いい協力関係が築けるんじゃないかと思ってる」

 

 まずは、マジックバッグの量産か? いや、他にもある気がする。転送機に必要な部品の開発なんかもお願いしてもいいだろう。

 

 

「こちらも上手くいっていてよかったです」

 

 こちらも? ということは、マナも上手くいっているのだろう。

 

「実はE&Sの方々が、すっごく乗り気で、フレイヤモデルを色々作ろうって話になりました。買収が決まるまでは、表立って動けないんですけどね」

 

 マナも服飾イベントで色々話をしてきたようで、色々と話が収まらなかった。

 そこに南さんが出勤してきて、さらに話が盛り上がってきた。買収計画は、どちらも順調のようだ。問題は南さんの手がいっぱいになってきたので、ギルド側に人手をよこしてほしいとお願いしているらしい。

 

 そんな話をしているうちに午前中が終わろうとしていた。

 

「じゃあ、俺は出かけるから、ひよりの事頼んだ」

 

 そして、俺はハイランドスクエアから出て、ひよりに変身して再びクランベースに戻り、早速ひよりとして挨拶をした。

 

「はじめまして、僕は隼人ひより。魔道具師をしているよ。よろしく」

「よろしくお願いします」

 

 マナと南が挨拶をする。

 

「隼人さんは、なんて呼べばいいですか?」

 

 南さんが聞いてくる。どうしようかな。ペルソナに託してみよう。

 

「んー。仲間内ではひよりでいいよ。外ではハヤトだね。魔道具師になってやっと屋号を名乗る許可もらったからさ」

「じゃあ、ひよりちゃん」

 

 マナがそういうが。

 

「ひよりでいいよ」

 

 そこからは雑談が始まった。特に魔道具の製作なんかの話が多い。出身は長野の安曇野となっている。そこに両親と住んでいたが、ひよりの親父が亡くなって、名古屋に出てくることになったという設定。フレイヤとは面識があるといったところ。このあたりはペルソナだとボロが出そうなので、ペルソナを切って対応する。

 

「じゃあ、さっそくですけど、クラン登録しに行きますか」

 

 マナが一緒にギルドに誘う。

 

「あ、僕、まだギルドの登録もしていないんだ」

「大丈夫ですよ。フレイヤさんに同意書を書いていただければ問題ないですよ」

 

 そういうわけで、ひよりも無事にギルドに登録した。

 手続きを南さんがやってくれたので、事情の説明なども一切なかった。フレイヤの同意書をつかって、登録作業が進む。そして、ひよりは見るからに未成年なわけで、再び未成年保護法の壁が立ちふさがった。しかし、未成年保護法はギルド登録ではなくギルド登録後のダンジョン侵入に対して研修期間を設けるものだ。ひよりは戦闘キャラじゃないし、ダンジョンには潜るつもりは現状無い。このまま仮免みたいな状態でいくのもありだし、都合のつくときにメルが使ったチューター制度を使ってみるのもありだ。研修3か月は避けたい。ところでチューターと言えば辰巳さんと幸子さんは元気なんだろうか。金子さんも最近見かけないな。南さんに聞くと、1週間前は元気だったと教えてくれた。

 

 クランベースに戻るとひより用になった部屋に入ってみる。メルとは違い実家から出て名古屋に住むということにした。そして、俺がひよりの部屋で小次郎に戻って、ひよりの加入届を承認しているとノックされる。マナだった。

 

「ひより。マジックバッグについて話があるとかで、ちょっときてもらってもいいですか?」

 

 フレイヤが南さんに話をしたんだろうな。すぐにひよりに戻る。

 

「すぐ行くよ」

 

 俺が事務エリアに行くと、作ったマジックバッグが置いてある。

 

「ひよりがこれを作ったと聞いたんだけど、クランで自由に使っていいの? こじにーは、寄付する案を考えてるみたいだけど」

 

 フレイヤは俺の案にしたんだな。まぁ、元を正せば俺2号だから同じことか。

 

「いいよいいよ。材料はここのものを使わせてもらったし。それを寄付に回すのもいいよ。いい材料がそろえば、もっと性能のいいものも作れそうなんだ」

 

 ひよりの感覚ならば、さらに2倍くらいの容量のマジックバッグは作れそうだ。そこで南さんがフレイヤに話しかける。

 

「では、寄付先の選定なんかはギルドのほうに任せてもらえるんですね。ギルドとしても顔を立ててもらえて良いかと思います」

「ええ、お任せするわ」

「では、さっそくですけど、ギルドに相談に行ってきます」

 

 そう言って南さんは階下に降りて行った。まぁ、数十億が5つだもんなぁ。かなりの寄付になる。

 

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