【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第14話 天白と東京ギルド本部

 東京ギルド本部は、各種省庁のある霞が関の一角に存在する。名古屋支部のようにダンジョンがある場所に存在するわけではなく、各省庁との連携がとれるということで、政治的な判断で場所が決められていた。

 東京ギルド本部は立派なビルであり、そこの会議室では、あるクランについての検討会が開かれていた。

 

「えー、エバーヴェイルに関する検討会#15を始めたいと思います」

 

 ピシッとスーツを着た男性が会議を仕切っている。会議室には10名ほど、そしてWEB参加でさらに10名ほどが居る。それぞれが、日本ギルドの上層部とギルドのエリア統括の責任者たちだった。本来、クランについての話し合いには、該当クランの所属エリアくらいしか関わってこないのだが、エバーヴェイルは日本規模での話題性があり、参加者が膨れ上がっていた。

 

「まずは、金城メルの使う若返りの魔法。この希望者の選抜についてです。成瀬さん、どうなっていますか?」

 

 成瀬と呼ばれた男性がマイクをONにする。

 

「はい。ギルド本部に対し、諸国の要人、富豪たちが要望を出しているようです。断ってはおらず、順番待ちができる期待によって混乱は沈静化しています。が、早く2人目に対して施術といいますか魔法を掛けないと先走る方がいるかもしれないという状況です。

 優先順位については、ギルド本部が提示してきたギルドへの貢献度による順位付けや、緊急度の高さ、機密保持が可能な人物などを加味しています。そのおかげで当初3万件あった要望を1500件まで減らすことができました」

 

 成瀬はスクリーンに優先順位付けのフローを示して、絞られた人数のグラフなどを見せていく。

 

「では、早々に金城メルには次の施術を行っていただくようにしましょう。日本ギルドとしても、主要理事国に対するアピールになりますからね。名古屋ギルドには早急に対応をお願いします」

 

 そこで末席に座っていた男性、名古屋ギルド支部長の天白が手を挙げる。

 

「なんでしょうか、天白支部長」

 

 司会の男性が、何やら面倒そうに指名する。

 

「その1500人は、いつまでに若返らせる必要がありますか?」

 

 それには成瀬ではなく別の男性が答える。

 

「毎日10人やれば150日で終わるじゃないか。それくらいの計算もできないのかね?」

 

 納期を聞いたのにも関わらず、的外れな指摘をしてくる東京本部のお偉いさんには辟易としている天白。しかし、それを感じさせないまま、天白は答える。

 

「機密を守りながら、毎日10人というのは都会では難しいかと思いますが。特に要人警護などされた方を呼ぶとなると目立ちますからね」

 

 司会の男性が咳払いをする。

 

「金城メルを国内から出すのはナンセンスだとして、空港内のVIPエリアなんかを上手く使う方法もあるでしょう。そこは、成瀬さんのチームで検討願います。金城メルの動員については、名古屋支部側で対応をお願いします。厳しければ、東京で案件を引き取っても問題ありませんよ?」

 

 できないなら、利権をよこせと言っているわけだ。優しそうな顔をして狡猾だと天白は思う。

 

「大丈夫ですよ。そのくらいの説得はしてみます。有能な部下を既に送り込んでいますから」

 

 その議題はそれで終わった。成瀬から天白に連絡がくることとなった。

 

「次は、天白さんからの報告でしたね。お願いします」

 

 天白は演台に上がり、あるアイテムの写真を出す。

 

「こちらはマジックバッグです。エバーヴェイルに新規加入した隼人ひよりという魔道具師が開発したものです」

 

 ざわつく。魔道具師の話は聞いていないぞという声もあちらこちらから聞こえてくる。ざわめきが静まるのを待って言葉を続ける。

 

「このマジックバッグはコンテナが1つ入り、10トンほどの重量も大丈夫だそうです。

 そして、エバーヴェイルの笹木氏は、これら同じものを5つ寄付する意向です。寄付先は、救助の役に立ててほしいと医療コンテナを保有する省庁や団体を想定しているようです。そして、名古屋ギルドがその寄付先の選定を一任されました」

 

 WEBからの参加者が1人発言する。

 

「ばかな。それほどのサイズのマジックバッグなど聞いたことが無い。騙されているんじゃないか?」

 

 天白は肩をすくめる。

 

「騙す理由がわかりませんが、少なくとも名古屋ギルド内にあった備蓄コンテナについては、すっぽりと入りましたよ? こちらのように」

 

 そう言うと証拠の写真まであげてくる。南が撮った写真のようだ。

 

「性能を聞くだけでも、少なく見積もっても数十億円はする代物じゃないか。一体何を考えているんだ。笹木という男は一般人という話じゃなかったのか?」

 

 天白は少し鼻で笑う。

 

「フレイヤ、メルといった逸材を確保している時点で一般人とは、ほど遠いですよ。金城メルのスキルだけでエバーヴェイルの注目度が急激に上がったのは確かですが、笹木氏が起点になっているのは間違いないと思います。これを見てください」

 

 それは、笹木が研究したことで判明したとされるTipsのリストだ。スキル書の合成に関してはギルドイベントで発表することになったため秘匿されているが、それに準じるようなネタがかなりの数、エバーヴェイルちゃんねるの中で公開されつつある。

 

「彼は明らかになっていない魔法体系について明確に提示してきました。ギルドが長年かけてビッグデータを解析したのに判明しなかったピースをいとも簡単に埋めていきました。まぁ、驚いていない方が多いところを見ると、皆さん調査をされているようなので多くは語りませんが」

 

 天白がそう言うと何名かは頷いている。そこに手をあげたのは白衣を着た線の細い男性だった。

 

「魔装開発局としても彼の知識や知見については目を見張るものがあります。ぜひ、技術交流などから始めていきたいと考えています。これは私見ですが、笹木氏がダンジョン人そのものか、その接触に成功した者として見ています。フレイヤ、メルといった人物もその範疇と考えています」

 

 天白が発言する。

 

「その見解には異論はありません。なので、慎重に動きたいというところです。エバーヴェイルは、企業の買収などもはじめ日本の経済に大きく影響を与えていくと思います。皆さんの周辺が変な行動をしないように見張ったり牽制したりするのをお願いします。日本からいなくなられることは国益を損なうものと考えます」

 

 司会の男性がそれに賛同する。

 

「すでに先の若返りの件では、何名かの国会議員が直接コンタクトを取ろうとしていたらしいですからね。名古屋ギルド内への引っ越しのおかげで止めることができました。名古屋ギルドのセキュリティなどは確実に上げていただく必要があります」

 

 できなければ、東京に場所を移すといった話になるのだろう。天白は余裕の笑みを崩さずに聞いているが、問題は山積みだ。

 

 

「もちろん、人員が不足すると思います。私は各エリアから人員を選抜し、名古屋ギルドに派遣するのが良いかと考えますが、みなさんはいかがですか?」

 

 体のいいスパイが来るのかと考えるとげんなりすると天白は思った。でも、建前は崩さない。

 

「いい考えだ。有能な者を送ろう」

 

 関西エリアの統括者が答える。他のエリアからも同じ回答が出てくる。司会は賛同が得られて得意顔だ。そして、言葉を続ける。

 

「派遣については後日名古屋ギルドに直接連絡してください。では、残っている案件、マジックバッグの寄付先について検討しましょうか」

 

 それは、名古屋ギルドで決めるつもりだと言い出す間もなく、寄付先について議論が始まってしまう。会議好きの無能共めと天白は悪態をつくのをぐっとこらえ、成り行きを見守るのだった。

 

 

 天白の手元から離れた後、魔装開発局の白衣の男性が天白に話しかけてくる。

 

「内々に魔装開発局の本局から挨拶に伺いたいという話があります。間をとりもってもらえますか?」

 

 天白は顔が引きつるのが分かった。まさか、局長自らは来ないだろうと思いたいが、これは希望的観測という物だと気づいていた。

 

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