【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない   作:月森朔

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第7話 フレイヤとペルソナ

 ダンジョンで21万円を稼いだ俺は、愛美ちゃんと一緒におしゃれなイタリアンレストランにやってきた。もちろん服は着替えているし、荷物なんかはギルドに預けてある。俺も愛美ちゃんもかなりギャル感がある恰好だが、周辺も同じような若い女性が多数いるため紛れ込んでいる。

 

「フレイヤさん、かんぱいしましょ、かんぱい」

 

 21万円というのは愛美ちゃんからしても大金だったようで、はしゃぎようがすごい。

 

「ええ、乾杯」

 

 ワインが飲みたくなって乾杯もボトルであけてしまった。愛美ちゃんもお酒は好きなようだ。前菜を食べ進めるタイミングで既に赤くなった愛美ちゃんが小首をかしげて質問をなげてくる。

 

「フレイヤさんって、もしかして実はどこかの国のスパイとかエージェントだったりしますか?」

 

 あやうく噴き出しそうになってしまう。ごくりとワインを飲み込むと、くくくと笑ってしまう。

 

「あー、えー、そんなに笑わないでくださいよー。講習会受けたばかりなのに、あんなに強いのなんて不思議すぎます。教えてください。私もつよくなりたーい」

 

 

 小説の設定にはあるんだが、答えたものかどうか悩む。ちなみに設定は、実は亡国の貴族でスキル書を親から譲り受けたという偽の設定だ。亡国ってどこだよ、とか、貴族だったらどんな対応をすべきなのかとか、かなり穴が多い。ぼろが出そうだなーと悩む。

 

「ごめんなさい、困らせちゃいましたー」

 

 黙っていると、めそめそと愛美ちゃんが泣き出す。なかなかの酒癖だなぁ。

 

「まだ秘密かしらね。ふふ」

 

 我ながら小悪魔? いや、魔女な感じだな。炎の魔女の設定は、ダンジョン人がこちらの世界を助けにやってきたという裏設定がある。それが、このアバターというスキルにどれくらい影響を与えているかはわからないが、こうやってフレイヤのふりをしていると、なんだか本当にフレイヤになったような気になってくる。不可思議だけど、心地いい。なりきりって楽しいよね。こんな美人だし、おっぱい大きいし、可愛い女の子とは友達になれるしね。

 

「あ、連絡先を交換してください。また、一緒に遊びたいです。服えらびとかもしたいし」

 

 いけね。フレイヤの連絡先って作ってねーや。

 

「あの、少し前にスマホを紛失しちゃって…」

 

 愛美ちゃんが絶望の表情を見せる。きっとお断りの常套句と誤解している。

 

「いえ、なので、愛美ちゃんの連絡先を教えてくださいな。スマホを新しく契約したら知らせるわ」

 

 ギルドカードを使えばスマホの契約もできるはずだ。

 

「わかりました、はい、えーと、ちょっと待ってくださいね」

 

 愛美ちゃんは鞄からペンを取り出すとメモ帳を1ページ切り取って渡してくる。

 

「DINEのアカウントがこちらで、電話番号がこれです。本当に連絡くださいね」

 

 すがるような顔でのぞき込んでくる。あざと可愛い。

 

「ええ、連絡するわ」

 

 それから何時間飲んだんだろう。愛美ちゃんに言い寄っていた男の悪口なんかを聞いたり、他のダンジョンのどこがおすすめか、装備のいいメーカーはどこかなど他愛ない話を聞いている。

 

「今日はタクシーで帰ろうかしら」

 

 だらだらと飲んでしまって、フラフラしている愛美ちゃんを連れてタクシーに乗り込む。どうやら住んでいるところは同じ路線だけあって近いらしい。途中で下して家路についた。大きな通りですぐ近くだからと降りて行った。ここは俺の実家に近いし治安もいいことを知っているのでそのまま帰すことにした。

 

 お金があれば、タクシーに乗れる。これ大事。もっと稼いでいこう。その日は疲れもあって、風呂に入って寝た。翌朝のこともあるので、寝る前に髪をまとめたり、いろいろと手間がかかった。女は大変だなと思うが、慣れてきたのか苦では無くなっていた。

 

 

 

 翌朝、俺は久々に小次郎の姿に戻った。どうやらアバターに時間制限らしきものが無いことが分かった。フレイヤに変身するとき、アバターを使うときにMPを50消費するが、その後は何も消費しない。一生フレイヤで過ごすことも可能ということだ。いや、しないけど。

 

 そして、ステータスを眺めていると、アバターの横に▼マークを見つける。それを押してみると、『ペルソナ』という項目があった。昨日は見た覚えがないので、マーダービーを倒した結果、小次郎のアバタースキルが成長したと考えられる。履歴を確認し、間違いないことが分かる。ペルソナはアバター起動時にしか使えないようだ。

 

「アバター フレイヤ」

 

 名前だけで変身が可能だということも確認できた。フルネーム長いんだよね。ちなみに声に出さなくてもいい。

 俺は服の中に生まれる双丘をちゃんと目と手で確認しながら、『ペルソナ』という言葉を発する。すると、何かスイッチが入ったような、そんな感覚に襲われる。

 

「何事ですか? 口調が急に変わってしまいましたわ」

 

 俺は普通になんだ?と言ったつもりが、口調に変化が現れる。試しに、何か話してみよう。今日は天気が悪いから、家でだらだらするぜ。

 

「今日は天気がすぐれませんから、家でゆっくりするわ」

 

 どうやら、フレイヤ感のある言葉にしてくれるスキル? んー、使える? 使えない? 割とできてたしな。いまいち判断に困るが、スキルのテストは必須だ。俺は、このままペルソナの維持とどんなことができるのかを試していこうと思う。

 

「では、着替えて外に行きますわね」

 

 さっきと言っていることが違うが、今日は晴れている。そして、着替えようとしたが、なんと下着のつけ方や服の着方について淀みない動きで完了してしまう。ちゃんとカップに胸がおさまっているのが分かる。これ、難しくてできなかったというのに、ペルソナすげー。プロの女性になってるじゃないか。えっと、プロってなんだ? 

 そして、洗面台の鏡を見るとなんだか物足りない。女性がすむ部屋じゃねーなー。

 

「この部屋は必需品がなさすぎますわ。化粧品もありませんし…」

 

 そこまで詳しく考えてはいないが、アバターがいろいろ補完してくれているのだろうか。

 

「今日は化粧品を買って、スマホを契約して食料品の買い出しかしらね」

 

 ふふっと笑うフレイヤはとてもキュートだった。俺、自分に恋しそうです。不毛なので、全力で回避だが…。学生の煩悩と大二病?が生み出した炎の魔女、その美女っぷりは半端ない。今まで化粧してなかったのにあの美貌。化粧したら本当にどうなるんだ。

 

 しかし、まだまだ暑いよな、9月だというのに。

 

「この服もちょっと暑いわね。もっと薄着でも良いのだけど」

 

 いま、俺そんなこと思ったっけ? ショートパンツにへそ出しの次に向かうのは、ショートパンツにビキニとかじゃないか? 本当に困る。これ以上は、日本の風紀が乱れてしまう。逮捕されてしまう。

 

「窮屈な町ね」

 

 そんな気もする。え? いま会話してる? そんな訳ないか。では、化粧品を買いに行こうか。バッグもなんか無骨だなー。昨日のお金が残っているし、新調してみるか。そうして、サンダルをはいて出かけようとするがサンダルの履き方から歩き方までが女性のそれだった。昨日はなんとなく女性の振りをする俺ががんばってたが、今は自然と動きがたおやかになっている。もちろん、自分の動きたい方向に動いたり、物をとったり動かしたりもできるので問題はないのだが、自分の中のOSが切り替わったような感覚だ。ペルソナおそるべし。

 

「もしかして、これってスキルを使うときの最適化もできるのかしら」

 

 ふと思いついたが、ネイティブで魔法をつかう炎の魔女の熟練の魔法を体得できれば、既に強いアバターもさらに強くなると思われる。何ならペルソナを使いながら戦うことも可能かもしれない。試すことが増えた。

 

 

 ペルソナに対する期待が膨れ上がる。アバターの使い方をマスターするためにもペルソナを使いこなしていくのは重要だな。これならば、次の計画である配信探索者としての地位確立にも役立つかもしれない。

 そんな時、商店街に差し掛かる。男性化粧品のポスターが貼ってある。誰かなのかは全く知らないが、イケメンだな。

 

「まぁ、可愛いわね…ふふ」

 

 え? フレイヤさん視点だと可愛いのか。というか、ペルソナ使いこなしすぎたら、男のことが好きになったりするのか? いやいや、あぶない。ちょっとその辺は注意しておこう。ペルソナの使用中は、よくよく注意しよう。そう心に決めた俺だった。

 

 

 駅ビルについた。愛美ちゃんの働く下着屋さんと同じビルだ。少しのぞいてみると愛美ちゃんはいなかった。化粧品店は同じフロアにあり、そこに向かう。化粧品の料金がよくわからないが、10万円くらいあれば足りる?? ここは、予算を言ってお任せで見繕ってもらおうか。

 しかし、偉大なペルソナは、自ら化粧品を取捨選択するようになり、店員さんのよくわからない解説に対して、逐一反応を返した。最後は満足のいく化粧をすることができた。

 

「ありがとうございましたぁ」

 

 店員さんは基礎化粧品とか、ファンデーション、口紅、マスカラなど色々と売れてほくほく顔だ。予算はオーバーし15万円近くになってしまった。これは、またダンジョンに行かねばならないことが確定した。

 

 化粧したことで、ノーメークのフレイヤさんから魅力度の戦闘力みたいなものが倍くらいに伸びている。道行く人が顔を見ては驚きの表情を隠せていない。

 

 俺は、なのか、フレイヤのペルソナなのかは既にわからないが、とても楽しい。その後は、スマホの契約もギルドカードによって完了した。便利なものだ。

 

 しかし、鞄の新調は予算の都合で次になってしまった。仕方なく、食料などを買い込んで家に戻り、次の活動に向けた準備を開始した。

 

 名付けて「炎の魔女、人気配信者になる!」だ。

 

 単なるダンジョン攻略をするよりも、ダンジョン配信で稼ぎつつ、ダンジョンの収入も得るというのを進めていきたい。フレイヤとして半永久的に変身できるならば、小次郎のレベルが高くなるまで猶予ができる。その間に金策をすることができるならば、もう配信者としてフレイヤを表舞台に立たせるのもアリだと考えた。

 

 そんなわけで、俺はフレイヤの配信チャンネルなどの準備を開始することにした。そして、その協力者は愛美ちゃんを考えている。女子二人による攻略は絵になるんではないだろうか。これは、腕が鳴る。よし、それも含めて計画を練らねば。

 

「よーし、頑張るわよ」

 

 俺はパソコンを前に片手を高く掲げた。




新たな能力が芽生えました。
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