銀河皇帝のスペアに転生した元社畜、地球軌道上の要塞でネトゲ三昧の隠居生活を満喫する 〜足元では超大国が滅亡級の異星遺産を巡って暗躍中ですが、主人公(ぼく)の命は絶対安全なので特等席で傍観します〜   作:パラレル・ゲーマー

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第89話 狂気の残骸と、太陽の心臓

 世界は今、かつてない規模の「歴史の洗い直し」という熱病に冒されていた。

 

 神話や都市伝説の中に、本物の地球外テクノロジー(アーティファクト)が混じっている。

 その事実が白日の下に晒され、超大国がそれらを巡って公然と覇権争いを始めた現在。人類の認識は、未来への恐怖と同時に、過去の闇へと猛烈な勢いで逆流を始めていたのだ。

 

 古代文明の不可解な遺跡。

 歴史の闇に葬られた未解決の怪事件。

 冷戦期における米ソの不自然な秘密研究。

 各国のインテリジェンス機関が黒塗りにしたまま封印している国家機密文書。

 旧植民地時代に列強が世界中から略奪し、今も大英博物館やルーヴルの地下に眠る未分類の収蔵品。

 あるいは、数世代にわたって秘密結社や個人コレクターが引き継いできた遺品。

 

 これまでであれば、単なる学者の好事家や、オカルト雑誌の編集者が娯楽として消費するに過ぎなかったそれらの「過去の遺物」が、今や国家の安全保障を左右する最高機密のダイヤの原石として、凄まじい熱量で掘り返されている。

 誰もが、歴史のどこかに「まだスイッチの入っていない万象器」や「起動に失敗した神の機械」が転がっているのではないかと、血眼になって過去の文献をスキャンしていた。

 

 そして、その歴史再検証の巨大な渦の中で。

 世界中の専門家やインテリジェンス機関が、ある一つの組織の残骸へと、必然的にその鋭い視線を収束させていくことになった。

 

「……アーティファクトが古代からこの地球に存在していたのなら。あの狂気の人種主義者たちが、それに一つも触れていなかったはずがない」

 

 ドイツ、バイエルン州。

 とある大学の歴史学研究室から半ば独立し、フリーランスの近代史研究家として活動しているクラウス・マイヤーは、自らの薄暗い書斎で、分厚い葉巻の煙を吐き出しながら、目の前の数台のモニターを睨みつけていた。

 

 彼の専門は、第二次世界大戦期における第三帝国、すなわちナチス・ドイツのオカルト研究機関『アーネンエルベ(古代精神史学協会)』の未解明資料の収集と分析である。

 ハインリヒ・ヒムラーによって創設されたこの特務機関は、ゲルマン民族の優越性を証明するという名目のもと、北欧の氷原からチベットの奥地、さらには南米のジャングルに至るまで、世界中で古代の遺物や聖遺物を探索し、莫大な国家予算を投じて疑似科学的な研究を行っていた。

 

 戦後、彼らの残した資料の多くは連合軍によって接収されたか、あるいは敗戦の混乱の中でナチス自身の手によって焼却処分された。

 クラウスが長年かけて世界中の公文書館や個人コレクターから買い集め、デジタル化してきた資料も、その大半は火で焼け焦げ、あるいは戦後の情報機関によって無慈悲な黒塗りの検閲(リダクション)を受けた、断片的なゴミの山に過ぎなかった。

 

 これまでは、学会からも「ナチスの狂信的な疑似科学を真面目に分析するなど、無意味なオタクの道楽だ」と冷笑されてきた。

 だが、クラウスの元には今、欧米の主要なシンクタンクや、身元を秘匿したインテリジェンス系のダミー会社から、それらの「ゴミの山」のデータベースへのアクセス権を求める、天文学的な金額のオファーが殺到している。

 

「連中も、必死というわけだ」

 

 クラウスは、それらのオファーをすべて保留にしたまま、自ら構築したAIによるテキスト解析ツールを回し続けていた。

 彼が今、モニター上で復元とクロスチェックを試みているのは、1944年末期から45年のベルリン陥落直前にかけて、ポーランド国境付近の山岳地帯に存在したとされる、存在しないはずの特務医療施設の輸送記録と、断片的な研究メモの束だった。

 

「……やはり、ただの狂った優生学の実験ではない。彼らは、明確に『何か』を模倣しようとしていた」

 

 クラウスの充血した目が、解析ツールが弾き出した一つの隠語(コードネーム)に釘付けになった。

 焼け焦げた紙の端と、黒塗りの隙間から、複数の文書にまたがって頻出する、不気味な単語。

 

『Projekt Sonnenherz』

 

 ――ゾンネンヘルツ計画。

 直訳すれば、【太陽の心臓】計画。

 

「太陽の心臓……。核開発の暗号か? いや、当時のウラン計画(ウランフェライン)の指揮系統とは完全に部署が断絶している」

 クラウスは、独り言を呟きながら、関連する断片的なキーワードをホワイトボードのソフトウェアに次々とピン留めしていく。

 

 資料は、あまりにも猟奇的で、かつ支離滅裂だった。

 

『被験者番号(Subjekt Nr.)402。……心臓摘出プロセス完了』

『疑似太陽炉(Sonnenofen)への直接接続を試行。……失敗。対象は重度の熱傷により即死』

 

 クラウスは、顔をしかめた。

 ナチスが強制収容所のユダヤ人や捕虜を用いて、おぞましい人体実験を繰り返していたことは歴史的事実である。高高度での低圧実験や、凍水への浸水実験など、非人道的な医学研究の記録は数多く残っている。

 だが、この「ゾンネンヘルツ計画」の記述は、医学の体を成していなかった。

 

『黒曜石(Obsidian)による中継器の埋め込み。……南米由来の儀式プロセスを工学的に再構築する』

 

「……黒曜石? 南米の儀式?」

 クラウスは、葉巻を持つ手を止めた。

 なぜ、最先端の兵器を求めていたはずのナチスの極秘研究施設で、中南米の古代文明で用いられるような祭祀の道具が、外科手術の記録と共に登場するのか。

 

 さらに、残された数少ない観察記録の文章は、クラウスの背筋を凍らせるのに十分な異常性を帯びていた。

 

『被験者番号714。黒曜石のバイパスを経由した接続に一時的成功。……胸腔発光(Thorakale Lumineszenz)を14秒間確認』

『対象の筋力および日光耐性の劇的な向上を観測。……しかし、夜間衰弱(Nocturnal debilitation)の進行が早く、細胞構造が崩壊。失敗体(Fehlschlag)として焼却処理』

 

 胸腔からの発光。日光への異常な耐性と、夜間の致命的な衰弱。

 もしこれを数年前のクラウスが読んでいれば、「ナチスの薬物投与実験が引き起こした幻覚の記録か、あるいはオカルトに傾倒しすぎた研究者の狂った妄想日記だ」と一蹴していただろう。

 

 だが、今はアーティファクト時代である。

 ロシアはシベリアで異星の医療ユニットを掘り出し、生きた兵士の両脚を切り落として機械にすげ替える「能力最適化」を、極めて洗練された無血のプロセスで実現してのけた。

 

「……まさか」

 

 クラウスは、背もたれに深く寄りかかり、戦慄に目を見開いた。

 

「こいつら……ナチスの研究者たちは。

 ……どこかで手に入れた『未知のアーティファクト(動力源)』を、人間の生身の肉体に無理やり埋め込んで、起動させようとしていたのか?」

 

 ロシアのサイボーグ化が、異星のシステム自身による完璧で安全な「医療行為」であるならば。

 ナチスのこの実験は、アーティファクトの構造も安全装置の仕組みも全く理解できない無知な人間が、ただ強大な力を求めて、他人の命を使い捨てのケーブル(導線)のように扱い、強引にスイッチを探ろうとした【最悪の総当たりテスト(ブルートフォース)】に他ならない。

 

「だから、失敗体の山ができた……。彼らは医学研究をやっていたんじゃない。アーティファクトと人体を繋ぐための『儀式』を、力技の工学で再現しようとしていたんだ」

 

 クラウスは、さらに別の書類群――終戦直前の、1945年4月の物流記録――を画面に引き出した。

 

 ベルリン陥落が目前に迫り、ドイツ全土が連合軍とソ連軍の絨毯爆撃によって灰燼に帰そうとしていた時期。

 それにもかかわらず、この「ゾンネンヘルツ計画」の関連施設からは、極秘裏に、そして最優先で、大量の鉛のコンテナと研究データが搬出されていた。

 

『搬送先:南方(Süden)』

 

 南。

 クラウスの脳裏に、戦後のナチス高官たちの逃亡ルートとして悪名高い「ラットライン」の存在が浮かび上がった。

 彼らはUボート(潜水艦)に乗り込み、連合軍の目を掻い潜って、南米のアルゼンチンやチリのジャングルの奥深くへと姿を消したとされている。

 

「……研究は、終わっていなかったのか」

 

 クラウスは、冷たくなった葉巻を灰皿に押し付けた。

 

 ナチスは、ただのオカルトの遺物を抱えて逃げたわけではない。

 彼らは、数千人の命をすり潰してようやく『胸腔を14秒間発光させる』ことに成功した、起動寸前の【本物のアーティファクト】と、血に塗れた人体実験のデータを、丸ごと南米へと持ち去ったのだ。

 

「もし、彼らの末裔が。……あのジャングルの地下要塞で、何十年もこの狂った研究を継続し、今このアーティファクトが共鳴し合う時代に、ついに『完全な起動』に成功していたとしたら……」

 

 クラウスは、自らが掘り起こしてしまった歴史の残骸が、現在進行形の、そして途方もなくグロテスクな安全保障上の脅威であることを確信した。

 

 彼は、この情報を独占して国家機関に高値で売り払う誘惑に一瞬駆られたが、すぐにその考えを捨てた。

「こんなものを、一国のインテリジェンスだけに委ねるべきではない。……密室で独占されれば、彼らもまた、ナチスと同じように命を使い捨ててこの技術を完成させようとするだろう」

 

 クラウスは、まとめたデータの暗号化を解き、自らの独立系研究プラットフォームと、世界中の歴史家、軍事研究者が集うオープンソースのフォーラムへと、そのファイルを一斉に送信した。

 

 タイトルは、『アーティファクト・パラダイムにおける、ナチス・ゾンネンヘルツ計画の再評価』。

 

 歴史の泥底から引きずり出されたその不吉な報告書は、瞬く間に光ファイバーの海を渡り、世界中の大衆と専門家たちの前に叩きつけられた。

 

 ***

 

 《ゾンネンヘルツ計画》。

 その禍々しくも魅力的な響きを持つ単語は、クラウスのレポートが公開されるや否や、インターネットの深層から表層へと、ウイルスのような速度で感染と増殖を始めた。

 

 最初は、熱心な歴史解説系のYouTubeチャンネルや、軍事技術を考察するマニアックなブログ、そして5ちゃんねるのオカルト板といった、限られたコミュニティの中での「極上の考察素材」としての消費であった。

 だが、その内容が孕む『圧倒的なリアリティ』と、現代のアーティファクト騒動との不気味なほどの符合は、すぐに一流紙のコラムニストや、安全保障の専門家たちの目をも釘付けにした。

 

 わずか数日の間に、ネットのトレンドから大手メディアのニュース見出しへと、その言葉は完全に這い上がってきたのである。

 

『旧ナチスの未解明人体実験《ゾンネンヘルツ計画》とは何か』

『“太陽の心臓”を追った研究者たち:彼らは何を見つけたのか』

『ナチスはアーティファクトを研究していたのか? 歴史の闇に消えたオーパーツ』

『南米へ渡った謎の資料。Uボートが運んだ“究極の兵器”の行方』

『人体実験か、兵士強化計画か、それともアーティファクト研究か。シベリアのサイボーグとの不気味な類似点』

 

 各国の主要メディアは、普段であれば「陰謀論」として一蹴するような内容であっても、今の世界情勢においては「無視できない過去の脅威」として、大真面目に識者を呼んで議論を展開せざるを得なくなっていた。

 

 そして、その報道を受け取るネット上の大衆の反応は、かつての万象器や出雲の時のように「怯える」だけではなく、散乱した情報を自分たちの手で繋ぎ合わせ、歴史の真実を暴き出そうとする、異常なまでの【考察の熱狂】に包まれていた。

 

 [X(旧Twitter)日本トレンド及びタイムライン]

 

 @History_Nerd_00

 クラウス氏のレポート読んだけど、マジでこれ「当たり」の歴史文献じゃね?

 当時のナチスが、今の俺たちと同じように「アーティファクトの力」に気づいて、国策でそれをリバースエンジニアリングしようとしてたって考えると、当時のあの狂った軍拡競争の辻褄が全部合う。

 

 @Military_Watcher_JP

「心臓摘出」ってワードがもう嫌すぎる。

 ロシアのサイボーグ化は、異星の医療AIが安全に痛覚遮断して完璧にパーツを置き換えてたけど。ナチスの連中は、AIのマニュアルもないのに、ただ「ここに動力源(太陽の心臓)を埋め込めば超人になるはずだ」って、生身の捕虜の胸を開いて無理やりアーティファクトを突っ込んでたってことだろ。倫理観ゼロの総当たりテスト。地獄すぎる。

 

 @Occult_Sleuth_Z

「太陽の心臓計画」、名前のインパクトが強すぎる。

 でも俺が一番気になったのは、「黒曜石の中継器」と「南米由来の儀式」って部分。

 これ、ナチスが発掘したアーティファクトって、もしかしてアステカ文明とかインカ帝国系の遺物なんじゃないか?

 アステカの儀式って言えば、生贄の胸を黒曜石のナイフで切り開いて、まだ動いてる心臓を太陽神に捧げるっていう超有名なやつがあるだろ。

 

 @Cultural_Anthropo_Bot

 >>@Occult_Sleuth_Z

 その考察、非常に鋭いです。

 ナチスの研究機関アーネンエルベは、世界中の古代神話を「ゲルマン民族の失われた超技術の記憶」として曲解して収集していました。

 もし彼らが中南米で、アステカの太陽神信仰の元となった『アーティファクト本体』を発掘していたなら。彼らはその兵器を起動させるための「パスワード」として、アステカの残酷な生贄の儀式(心臓の摘出と黒曜石の使用)を、そのまま工学的なプロセスとして採用し、人体実験で模倣しようとした可能性は極めて高いです。

 

 @Cynical_Otaku

 ナチスがアステカの神様(アーティファクト)の力を引き出すために、収容所の人間でリアル生贄の儀式やってたとか、マジで設定がエグすぎる。映画の悪役でもドン引きするレベルの邪悪さじゃん。

 

 @GeoPol_Watcher_JP

 一番の問題は、「搬送先:南方」という記録です。

 終戦直前、ナチスの高官や科学者たちがラットラインと呼ばれる逃亡ルートを使って南米(アルゼンチンやチリ)へ大量に逃げ延びたのは歴史的事実です。

 もし彼らが、その『太陽の心臓』のコアと、何千人もの命を犠牲にして得た起動実験のデータを、そのまま南米のジャングルに持ち込んでいたとしたら。……南米は今、完全に逃亡ルートの終着点であり、最悪の兵器研究所になっている。

 

 @Net_Surfer_99

「でも本当にアーティファクトが南米にあるなら、各国動くぞ」

 いや、絶対にもう動いてるって。アメリカのCIAとかイスラエルのモサドが、こんなヤバい情報を見逃すわけがない。今頃、南米のジャングルに特殊部隊が送り込まれて、血みどろのナチス狩り(アーティファクト争奪戦)が始まってるんじゃねえの。

 

 [海外大手フォーラム Reddit / r/Conspiracy(陰謀論板)より翻訳]

 

 u/Truth_Seeker_US (米国):

 誰もがロシアのサイボーグについて話しているが、本物の悪夢は1945年から南米に隠れていたんだ

 ゾンネンヘルツ計画。彼らはロケットを作っていたわけじゃない。人間の血を使って神を創ろうとしていたんだ

 

 u/South_Am_Local (ブラジル):

 南米の人間として、これは恐ろしい。アマゾンの奥深くやパタゴニアに、ナチスの隠しコロニーがあるという噂は昔からずっとあった

 もし彼らが80年間もこの「太陽の心臓」を完成させようとしていたなら……彼らは地下で、どんな化け物を創り出したというんだ?

 

 u/Tech_Ethics_Prof (ドイツ):

 彼らを神秘化してはならない

 文書は彼らが何度も失敗したことを示している。彼らは被験者が苦悶の中で死ぬ前に、14秒間の「発光」を得ただけだ。彼らは理解できない機械を使おうとした人殺しに過ぎない

 だが……もし彼らが80年間挑戦し続けていたなら、もしかすると彼らはついに「失敗しない方法」を解き明かしてしまったのかもしれない

 

 [5ちゃんねる:ニュース速報板]

 スレタイ:【恐怖】ナチスのアーティファクト人体実験『ゾンネンヘルツ計画』、ガチで南米で継続中の可能性

 

 18 :名無しさん@涙目です

 心臓くり抜いて黒曜石埋め込むとか、マジで狂気。

 

 32 :名無しさん@涙目です

 アステカの生贄の儀式って、太陽の動きを止めないために心臓を捧げるんだよな。

 アーティファクトの動力源(太陽の心臓)を起動させるためのアクションとして、その神話の儀式を丸パクリしたって考察、怖すぎるけどしっくり来すぎる。

 

 45 :名無しさん@涙目です

「日光耐性が上がるけど、夜になると衰弱して死ぬ」っていう失敗体の記録も不気味だよな。

 太陽の力で動いてるから、夜はエネルギーが切れて肉体が崩壊するのか?

 それとも、アーティファクトの性質が吸血鬼的な何かと関係してるのか。

 

 60 :名無しさん@涙目です

 お前ら、これがもし完成してたらどうなるか分かってるか?

 ロシアのサイボーグは「機械の体」だけど、ナチスの太陽の心臓は「人間の体に無限の熱エネルギー炉を埋め込んだ超人」だぞ。

 しかも80年間、誰にも見つからずに研究を続けてた連中だ。執念が桁違いだ。

 

 75 :名無しさん@涙目です

 アメリカのヘイズ大統領、今頃ブチギレてそう。

「また新しいアーティファクト!? しかもナチスの残党!? いい加減にしろ!」って机バンバン叩いてる姿が目に浮かぶわ。

 

 88 :名無しさん@涙目です

 でもこれ、本当に各国が黙ってないぞ。

 イスラエル(モサド)なんか、ナチスの残党ってだけで絶対殺すマンなのに、それにアーティファクトまで絡んでたら、国を挙げて南米を更地にしに行くレベルだろ。

 

 102 :名無しさん@涙目です

 世界地図のあちこちで、ヤバい爆弾のスイッチが次々と入っていくな。

 もう、誰もこの流れを止められないのか。

 

 ――《ゾンネンヘルツ計画》。

 それは、最初こそ歴史の片隅から掘り出された、一部のオカルトマニアや陰謀論者のための「不気味な読み物」であった。

 だが、アーティファクトが現実の国際政治を動かし、各国の安全保障を脅かしているこの狂気の時代において。この計画が孕む「倫理の完全なる欠如」と「圧倒的な暴力の可能性」は、もはやネット上のエンターテインメントとして消費しきれるものではなくなっていた。

 

「南米のジャングルの奥深くで、彼らは今も、生きた人間の胸を切り開いているのではないか」

 

 その想像は、大衆の心に極めて生々しい恐怖を植え付けた。

 そして、その恐怖は決してネットの中だけの幻影ではない。世界中のインテリジェンス機関が、この情報の真偽を確かめるべく、すでに静かに、しかし暴力的な速度で動き始めていたのである。

 

 歴史の墓場から引きずり出された『太陽の心臓』は、現代の地政学という名の乾燥した平原に、最も古く、最も邪悪な炎を放とうとしていた。

 

 




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