ギムリの夜明けは明後日のほうへ   作:nicks

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ちょっと短めですいません。


4話

「ダ~リン♪待って~♪」

「今日こそは逃がさないぞ我が友ギムリよ~~~」

「ぜぇぜぇ…待って…ギ…ム…リィ~~…ぜぇぜぇ」

 

 俺、走る。

 キュルケ嬢、ギーシュ、マリコルヌ追いかける。

 

 

 WHY!?

 

 

 なぜこうなってしまったんだろう?

 この学院に着てからそればっかりだ。

 

 だが、なんだこの状況は?

 

 あまりに理不尽かつヤリきれない思いでいっぱいになりながら私は今日も授業が終わり次第早急に自室まで全速全開でひた走る!

 後ろから追いかけてくるのは、例の如くキュルケ嬢だ。だがなぜか今ではそれにギーシュやマリコルヌまでついてくる。

 あとマリコルヌ!死にそうだって!誰かとめてやれって!汗が噴き出してマリコルヌが通った後に水溜りできってから!!!

 

 

 

 

 

 なんとか自室まで逃げ延び、即座にドアに『ロック』の重ねガケ。

 さらに自分で取り付けた金属製の鍵を閉める!

 一応この学院はアンロックの魔法は使用禁止のはずなのだが、キュルケ嬢にそんなルールは関係無いないとばかしにあっさり解除してくる、先日、突然部屋に強襲され、驚いて窓から逃げ出した事がある経験からドア鍵を備え付けるようにしている。

 

 ルールに縛られないってロックね。

 でもルールがあるから、そのルールに縛られない喜びを感じられるんだぜ。 

 この矛盾を誰か説明してくれロジックボーイ ディスウェイ カモン!

 

 

 

「ふぅ~。今日もなんとか逃げ延びた…」

 

 先日、なぜかギーシュやマリコルヌが自分にキュルケ嬢達と何があったのかを聞き出そうとしてきて、それを誤魔化し続けていたら、とうとう痺れを切らした彼等が実力行使にまで、でてきてくる始末だ。

 

 朝起きる。

 ドアを開けるとそこにはギーシュが待ち伏せ。

 急いでドアを閉め、窓から学院に登校する。

 授業開始前に教室いるとキュルケ嬢の強襲に会う為、時間ギリギリまで粘り授業開始と共に入室。

 

 お昼休憩に食堂に行く。

 ここで登場マリコルヌ!

 我が食堂は通さん!とばかりに通せんぼ。

 

 なんでも、食堂に入りたければしっかりと事情聴取を受けろ、だそうだ。

 

 

 おかげでここ数日はろくに昼食にありつけていない。

 午後の授業まで時間があるため図書館へ行こうとすると、毎日の如く、そこには青い髪の少女の姿が…orz

 結局午後の授業も実習の時以外は午前と変わらぬ感じで、授業が終わると同時に風の魔法で高速移動しながら退出。

 

 

 

 今に至る。

 

 

「ジーザス! クライシス!!!」

 

 

 思わず叫んでしまうが、部屋には常時サイレントをかけている為に響かず無音…

思わずネタに走る自分が虚しくなる。

 この際、洗いざらいすべて話してしまいたくなるが、ここで自分がメインキャラの仲間入りをしてしまうと、後に引けなくなる。

 今は我慢の時期なのだ!そのうちこの騒ぎも止むさと前向きに考える。

 実はここ最近の鬼ごっこも危惧すべき問題なのだが、さらなる問題がここに来て発生しているのだ。

 

 それはずばり金である!

 

 マニーだ!! あれ? エキューか。

 いや別に言い直す必要は無いのだが、とりあえず金欠なのである。

 

 貴族の生活は金がかかるのは当然なのだが、ここら一体の物価がべらぼうに高いのだ!

石鹸や衣服に学院のメイドさんへのチップなど、生活にかかる金がとうとう尽きたのである。

 親からの仕送り?期待するだけ無駄である。

 この前、仕送りしてくださいと手紙を書いたら、1枚の封筒に、これで頑張りなさいとだけ書かれた手紙と数サントが返ってきた。

 

 

 父よ母よ……これぽっちで、どうしろと?

 

 仮にも貴族でしょうが、見栄はれよ!

 

 男の人生見栄はってなんぼだぞ!

 

 

 

 学院のメイドでもそれ以上に稼いでいますぞ?

 今までは足りない分をギーシュ経由で歯磨き粉を売って過ごしていたが、最近はそれもできる状況にない。

 この学院に通っている貴族の子供たちは基本的に家族からの仕送りで普段の生活を賄っている。

 学院での貴族の出費は1ヶ月におおよそ数エキュー程となっている。

 俺の場合定期的な仕送り0エキュー。

 歯磨き粉等を売って自分で稼いだお金1エキューほど。

 ただでさえ最底辺の生活をしている私に唯一の収入源が無くなるのである。

 

 ってか、これって平民並の生活じゃね?

 一応貴族って設定あったような……。

 

 

 持つ者と持たざる者の差はどこにでもあるものであるものだ。

 大事なのは自分がどう生き、どう選択するかなのだよニートボーイ!

 

 

 と、毒にも薬にもならんような事を思いつつ、今後の生活をどうしたもんか~~っとベッドの上でゴロゴロ唸っていると、壁に立てかけられた一本のギターが目に入った。

 

 

「この手があった~~~~!」

 

 

 ギムリにインテルがはいる。

 

 

 明日は幸い虚無の曜日で学院は休日である。私は急いで明日に向けての準備を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、時刻はお昼時に私はトリステイン首都トリスタニアに来ていた。

 服装は平民用の安い布地のものを纏い。

 片手には愛用のギター。

 ちなみにこのギターを『エルヴィス』と勝手に名づけた。

 

 

 キモいとか言うなよ!

 いいじゃねーか! 楽器に愛着持てなくなったミュージシャンなんて存在価値ないんだからさっ!

 

 さておき俺がなにをするか?

 それはもうおわかりだろう。 

 つまりストリートライブを行うのだ!

 元手ゼロ。

 

 

 使用するのは技術と自分の歌声のみ!

 信じられるのは己のみ!

 

 

 大通りでいきなり演奏するのはさすがに気が引けるため、大通りを外れた、ほどほどに人通りの良い道にあるちょっとした広場を選んだ。

 

 見慣れない物を担いだ俺に道を行き交う人々は大道芸でもやるのだろうかと物珍しさ交じりに自分を中心に取り囲んでいた。

 

 

「お集まりの皆様、本日はお日柄も良く。絶好の休日日和でございます。なれば、一時のお楽しみもまた重畳、私の奏でるロンドに少しでも心揺れたお方は少しばかりのお気持ちをこの箱に中にいれていただければと思う次第であります」

 

 

〈ジャーンジャーンジャジャジャーン♪〉

 

 

「ら~んら~らん~らー♪」

 

 

 聞きなれない楽音に聞いたことも無いようなテンポとリズムで歌われる曲に、行き交う人々は一人また一人と足を止めていく。

 私は1曲目はできるだけ多くの客を弾きつけるため、陽気な、休日にピッタリなポップ調の曲を演奏した。

 

 基本的にハルケギニアの音楽といえば、歌声中心のオペラのようなモノが基盤となっている為このような明るくリズミカルな音楽は珍しい。

 

 ちなみに元曲は前世で聴いていた曲をハルケギニアの言葉に訳したりして、それなりにオリジナルも込めたものだ。

 

 

 

 このハルケギニアの大地では基本的にハルケギニア語に統一されているが地方や国よっては、けっこうな訛りやスラングがある。

 

 これが、差別なりにも繋がったりするのだが、私は訛りやスラングもどこと無くカッコイイものがあると思い、演奏する曲に混ぜたりとアレンジしたりするのが好きである。

 1曲目を歌い終わると周囲には5人ほどのギャラリーがいた。

 その客の一人、平民風のダンディーなおじさんが歌い終わって礼をした後に話しかけてきた。

 

「おい兄ちゃん!珍しい歌だな?どこの曲だい?」

「はい。遠い異郷の曲でございます」

 

 

 嘘は言っていないですよ?

 

 

 

「ほう~なかなかいい歌だな!もっと歌ってくれよ!」

「ありがとう! 続いてはある少女の心情を歌った『少女じゃない、でも女性でもない』です。どうぞ」

 

 

〈ジャガジャーン!トゥントゥントゥルーン♪〉

 

 だんだん楽しくなってきた私は2曲目3曲目と歌っていく。

 ギャラリーも次々入れ替わるように流れては入ってくる。

 ギャラリーの中には、

 

「こんな歌はないか?」

「私達みたいなカップルにおススメなのを!」

「こういう曲をを歌って欲しいの!」

「さっきの唄もう一度頼むぜ!」

 

 

 とリクエストがでてきたりと結局歌い疲れる頃には計20曲以上も熱唱し、ギャラリー達も1曲が終わるたび満足気に私が用意した集金箱にお金を入れてくれるようになった。

 気がつくと時刻は夕方になり、広場に集まったギャラリーの数も30人を越えるほどとになっていた。

 

 

 やべぇ、めっちゃ楽しい。

 

 エクスタシーーーー!である。

 

 時間も遅くなってきた為最後の曲を終えありがとうございましたとお辞儀をすると大勢のギャラリーがたくさんの拍手をくれた。なかにはまた来週もこいよ!っと言ってくれる人もいたりした。

 

 ギムリ…感無量である。

 

 

 集金箱を覗いてみると今日1日で稼いだと考えれば十分な額が確実に入っていた。

 これで明日からまた頑張れると涙を流しながら喜んでいると、先ほどまでいた客の一人が話しかけてきた。

 

「今日は良かったぜ?どの唄も聴いたこと無い唄ばっかだったが、楽しめたぞ」

 

 

 よく見れば、はじめに話しかけてきてくれたおじさんだった。

 最初から最後まで付き合ってくれたのかと感謝を述べるとおじさんは、顎を手で撫でながら

 

「おい坊主、俺はウィルソンっちゅーもんなんだがな?お前さん。

 よければウチの店で歌わないか?」

と驚く事を言ってくれた。

 

 

 話を聞くと、このいかにもダンディーなおじさんは此処トリスタニアで酒場を開いているそうだが、最近客の入りが悪いという。

 

 そこで客寄せに私が演奏をしてくれないかという話だった。

 もちろん客の入りに応じた給料を払うしチップも好きなだけ自分のものにしていいとの事。

 こんな話、普段の私なら派手な事はしたくないと断るだろうがストリートライブで興奮していた私は2つ返事で了承してしまった。

 

 結局、学院とのバランスも考え、月に3・4回虚無の日におじさんの経営する酒場『浮島の酒場亭』で演奏する事になった。

 

 捨てる神あれば拾う神ありである。

 

 

 

 

 

 

 後年、語られるトリスタニアに誕生したひとりのシンガー門出の瞬間だった。




5話へ続く!
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