サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】 作:ローマ市民兼インド村住人
マンマークを練習する影野、死にかけるマックス
原作タグをイナズマイレブンに変更しました。理由は舞台がそっちだからです。
「いよいよですわ……」
「まさか、新監督就任数ヶ月でFF決勝に行けるとは思わなかったけど……」
「
「いやいや、来緒センパイがハットトリックを決めてくれたから、余裕を持てただけだよ」
「……」
「
「いえ、何もないです。
「私は、頑張るしかありませんので」
「まあ、今回は私にボールを渡すのもアリなんで、来緒さんに渡せそうになかったらください」
「分かってますよ、
★☆
試合当日。会場は雷門中となっており、照奈は試合前の息抜きとして校舎内を歩いていた。すると、髪色が紫と黒の二層で青いジャケットを羽織った女性が、窓から外を眺めている姿を見かける。
「久しぶりね、文乃」
「……ああ、照奈か。久しぶり」
奈瀬文乃である。
「まさか、決勝に貴女がいるなんて」
「へえ、僕は"決勝戦の舞台は雷門中"って最初から部員に言っていたけど」
そもそも照奈が帝国以外の出場校を把握していなかったからというのもあるが、当日までひたすら目白学院の対策を行っていたのには、もう1つ理由が存在する。
「違うわよ。だって貴女、
全国大会に出場するまでは日本に戻ってこないと思っていたのだ。
──────実はこれまでの目白学院の試合、奈瀬は現地にいなかった。何故なら彼女は、フランス1部リーグに所属している
しかし、帝国学園戦は現地にいた。であれば、今回の試合中に完璧な対策を施される可能性もなくはない。海外経験は己の人生観を変える出来事になり得ることを、この身でハッキリと理解しているがために。
だからこそ、照奈は女子サッカー時代を含む目白学院の試合を見れるだけ見て、あらゆるパターンを想定することにした。
それ程までに、彼女の手腕を評価している。まだ監督歴が浅いにもかかわらず、だ。
──────スーパークリークにメジロマックイーン、数々の名バたちを栄光へと導いてきた"天才トレーナー"奈瀬文乃。そして、帝国の司令塔として完璧なゲームメイクを展開した"天才ゲームメーカー"奈瀬文乃。
これだけの前提があり、その上で真正面から帝国学園を打ち破れる采配を侮るわけにはいかない。
「別に、監督から許可が出ただけだよ。『しばらくは君がいなくても勝てる』と」
「相当な活躍をしているわね」
「
「それはご愁傷様と言った方がいいかしら?」
「言わなくていい。僕がチームを勝利に導けばいい話だから」
この自信満々っぷりに照奈は敬服する。世界という壁に一度ぶつかったチームメイトが、今や異国の地でチームを背負う選手となった。
そして、監督としても"帝国学園を打ち破る"という結果を出した。まさに天才と言わざるを得ない。
「さて、そろそろ行くよ。またフィールドで会おう」
「ええ、会いましょう」
★☆
キックオフ直前。雷門中サイドのベンチ前では、照奈主導で作戦の確認が行われていた。
「延長戦前提のロングゲームだから、本格的に攻めるのは後半終了間際だけでいいわ。前半で河平来緒を影野くんが抑え込めたら、後半はかなり楽に守れるはずよ」
「奈瀬マジックが炸裂しなければ、ですね。あと、河平来緒以外の要注意選手も軽くおさらいしておきましょう」
音無が手帳をパラパラと捲りながら懸念する。当然ながら、異論を唱える者はいなかった。理想は影野のマンツーマンで来緒が消耗することだが、それが上手くいったかどうかは後半になってみないと分からない。
前半の雷門の作戦を、
「8番の"
続いては7番の"
最後に9番の"
「そうね。お嬢様勢揃いの目白学院の中で唯一ギャルっぽいから、見つけるのは簡単だと思うけど────指示はDF陣が出すのよ?」
「「「「はいっ!」」」」
マンツーマンでマークをつけるのは河平来緒。となれば、彼女が封じられている間は山田悠里がフィニッシャーだろうと照奈は読んだ。
恐らく、知らなければ侮っていた。だが、照奈は知っている。この試合でゲームチェンジャーになり得るのは彼女だと。
前世というフィルターのおかげで、想定外を想定内にすることができた。確かに、目白学院はこれまでにない強敵である。
しかし、主人公はいない。奈瀬文乃もメジロマックイーンもメジロラモーヌも、主人公ではないのだ。
故に言い切れる。
「地区大会優勝は目標じゃなくて通過点よ。……もし焦ることがあれば、ベンチを見なさい。そこに立っているのは、余裕の表情で試合を見守っている貴方たちの監督よ。その監督が焦っていないのだから、落ち着いてやればいいわ」
この試合にイレギュラーは起きない。何事もなく順当に雷門中が勝利する。
そう言わんばかりに仁王立ちする照奈の姿は、部員たちの心を燃やすのに十分過ぎる燃料だった。
★☆
先攻は目白学院。ホイッスルが鳴ると、11番の"
「"オニキス・ライン"」
────次の瞬間、ボールが漆黒に変化して蹴り出された。
「豪炎寺!」
「分かった!」
しかし、染岡は即座に反応してそれを蹴り上げようとする。彼の呼びかけに反応した豪炎寺は、体を回転させながら飛び上がる。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
雄叫びを上げながら、黒く輝くボールの勢いを殺す。そして、進行方向を強引に上へと持っていくことに成功した。
豪炎寺がちょうど頂点に達したタイミングでボールはそこまで上昇。今度は赤い竜が出現し、目白学院側のゴールへと放たれる。
完全な奇襲とも言える開幕ロングシュートは、染岡の対応力によってカウンターシュートへと変えられた。
「よく返せたな」
着地した豪炎寺が感心していると、染岡は満更でもなさそうに答える。
「俺も座学はしてるんだよ。知ってるか? 目白学院のキックオフはあの10番から始まるんだぜ」
「なるほどな……。いつもと違うことに気付いたのか」
「ああ。それをお前に喋って聞こえちまったら意味ないだろ」
シュートはキーパーの"
「それじゃ、影野がどこまで持ち堪えられるかの耐久戦を始めるか」
「そうだな」
来緒が上がって行くのを見て、雷門の2トップは期待する。影野が目白の至宝を完封し、自分たちのところまで繋げてくれることを。
──────現在、ボールを持っているのは辺留。本来はポゼッションサッカーの目白学院だが、雷門が全くプレスをかけてこないため、普通に前線を押し上げている。
それが不気味さを醸し出していた。何かの罠に嵌っているのではないのかと、疑念が生じ始める。
「真久理!」
異様な空気に気持ち悪さを感じた辺留は我慢できなくなり、トップ下の真久理にパスを出す。カットする気配すらない彼らに、流石の真久理も違和感を持つ。
こういうときに見るべきなのは、相手の監督の表情。そう思った真久理は前方のマックスの位置を確認し、一瞬だけ照奈に目をやる。しかし、彼女はコートを見ずに真顔で空を仰いでいた。
「上……」
そう呟いた瞬間、ボールを蹴っている感触がなくなり、足が
「なっ!?」
振り返れば、マックスがボールを持っていた。たった一瞬のチラ見が隙となったのだ。
「真久理! 相手の技!」
何が起きたのか理解ができなかった真久理をフォローするように辺留が叫ぶ。そう、マックスは"クイックドロウ"という必殺技で彼女からボールを奪っていた。
「やりますわね……」
術中に嵌ってしまったが、ここは素直に敵を評価する。そして、次は取られまいと決意して自陣へと戻る真久理。
「プレッシャーはかけなさいよ……」
一方で、照奈は困惑していた。あまりに何もしていない自チームの選手に対して。こういうときに円堂が指示を飛ばせばいいのだが、彼でさえドッシリとゴール前で構えているだけ。
恐らく、辺留の対男性ドリブル勝率100%という実績が、彼らを諦めさせているのだと考える。その理由が分からないからこそ、下手に手を出せないのではないかと。
照奈的に、男性のことが苦手なメジロドーベルと重ねたらその理由は見えると考えているが、そうなると
──────恐らく、もっと近寄ればボールを奪えるはず。と思って、言えていない。前回戦った帝国学園は彼女の動きに後出しで反応するためか、少し距離を取っていた。全てドリブルで突破されたが。
また、今回の要である影野は、ちゃんと来緒の背中に手を添えている。不快そうに何回か影野を睨む彼女を見る限り、作戦は効いているようだ。
「まあ、山田悠里と河平来緒さえ抑えれば問題ないというのが総意でしょうけど、誰か1人ぐらいは
器用なドリブルで次々と相手を躱していくマックスを横目に、照奈は目白学院側のベンチを見つめる。
フィジカルで上回っているのは想定通り。なので、ある程度は個人技で前線を押し上げることができるし、前方へのパスコースが塞がれたとしても無理をせずに後ろへ戻して仕切り直し。
今までの雷門とは打って変わって、消極的なサッカー。それに対して奈瀬文乃はどう手を打ってくるか。とはいえ、一度ボールがライン外に出なければ彼女の出番はない。
マックスから渡されたボールを保持し、ビルドアップを始める半田。阿流がプレスをかけてくるが、すぐさま少林にパスをする。
あらかじめスペースを見出していた彼は、ボールをつま先で浮かせ、構えを取ると超高速で蹴りを2発叩き込む。すると、ボールが燃え上がり────
「"ラピッドファイア"!!」
最後に後ろ回し蹴りをぶちかます。
左から右へ、コートを横断するように突き進む炎の球だが、そこに割って入る者がいた。河平来緒である。
彼女は左足でボールを叩きつけ、拮抗することなくラピッドファイアを止めた。
「えぇっ!?」
止められると思わずに驚く少林。しかし、雷門に動揺が巡ることはない。
「ナイス影野! その調子だ!」
円堂の声援が飛ぶ。ボールが地面へと叩きつけられた瞬間、マンツーマンで来緒についていた影野が取り返したのだ。
すぐさま風丸へとパスを出して攻撃再開。
「……汚らわしいわね」
開幕のオニキス・ラインを止められて以降、ピッタリと影野にマークされている来緒。不愉快と言わんばかりに圧をかけるも、彼が怖気づく様子は全くない。
それどころか、相手にしていなかった。影野の視線はボールに向いている。
色々と噛み合いもあったが、今のところは雷門が戦術面でも上回っていた。
★☆
────目白学院側ベンチ。
「来緒が動けないですね」
「少し甘く見ていたようだ。最低でも2人は来緒につけると思ったのに」
奈瀬は雷門中を再評価する。影野が来緒を封じ込めているため、少林のラピッドファイアをカットしたように、無理やり動かなければボールに関与できず、かといって雷門側の攻撃人数が減っているわけでもない。
4バックを維持しながら、
「どうしますか? 一旦来緒を諦めるしかないと思いますが」
「いや、真久理・悠里・阿流の3トップにして、トップ下はあかりにしよう。来緒はあかりと位置を交換────したところで、自陣に彼を放り込まれるだけだと思うけど」
「でしたら、意味がないのでは?」
「意味はあるよ。だって、来緒は守備の方が上手いし」
目白学院の選手紹介は試合が終わったらやります。