サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】 作:ローマ市民兼インド村住人
vs目白学園
普通に忙しくて執筆できませんでした
~数日前~
「もし、河平来緒が下がった場合の話なのだけど」
ホワイトボードにくっついている、"河平来緒"と書かれたプレートを目白学園側のペナルティエリアまで下げ、"影野仁"と書かれたプレートを同じところへ持っていく照奈。
「それでも影野くんはマンマークを続けてほしいわ。最前線から退いたので任務完了、じゃないのよ」
「分かりました」
「しかし監督、別の選手へマンマークを移した方がいいんじゃないですか? 帝国戦の得点に絡んでいた選手、あと3人ほどいましたよ」
影野は了承したが、風丸が立ち上がって影野のプレートを"吉田真久理"のところへ持っていく。エース級を下げることに成功したのであれば、次に脅威的な人物へとターゲットを切り替えた方がいいのではないのかと。
対して照奈は、影野のプレートを来緒のところへ戻すことで彼の提案を否定する。
「河平来緒のマークを外すのは、彼女がピッチから消えたときだけ。どこかでしれっと前に上がられるのも困るし、ケアは常にしておくべきなのよ」
「確かに……。すみません、オレの考えが浅はかでした」
「別に気にしなくていいわ。今回に関してはマークを変えないのが正解────とまで言わないけれど、河平来緒にボールが渡っても大丈夫と言える状況なんてないでしょう?」
監督の問いに、部員全員が頷く。エース級にボールを渡していいわけがない────至極当然のことだが、意見を一致させておくのは大事だ。
「改めて言うけど、前半は影野くんが彼女をどれだけ封じ込められるかに懸かっているの。だから、お願いね?」
「もちろん、完封してみせます」
★☆
悠里がクリアしたボールの先には奈瀬が立っていた。彼女が悠里に耳打ちをすれば、それが目白学園の選手全員へと伝わっていく。
すると、来緒がDFラインまで下がり、真久理・悠里がもう一段前に出た。
「思ったより早く下がったな」
「ていうか、下がった場合を想定してる監督が凄いよ。普通、こういうのって安心しちゃわない?」
「安心はしないんじゃないか。影野を強引に出し抜いて少林のシュートを止めたんだぞ? その判断を咄嗟にできるってことは、いつでもチャンスを生み出せるってことでもあるだろう」
変わりゆく目白学園のフォーメーションを眺めつつ、風丸とマックスが話をする。来緒の胆力をこの目で目撃してしまったからには、ミーティング中の照奈の言葉が嫌ほど刺さる。
『どこかでしれっと前に上がられるのも困るし』──────今度、敵を研究するコツでも聞いておこうと風丸は思った。
「風丸さん、マックスさん。オレって何したらいいですか?」
2人と
まあ、その辺りは自分たちで決めろという暗黙の了解なのだが、1年の宍戸は自分で考えるよりも先輩たちを頼った方が早いと判断する。
「宍戸は────そうだな、
「それって風丸の好みが反映されてたりする?」
「バカお前、試合に劣情を持ち込んだら殺されるぞ」
「分かってるならいいんだよ」
照奈に殺されかけて以来、マックスはマネージャー以外の女の子と話さなくなった。彼女が非常勤講師なのもあり、常に監視されていそうだからだ。
なんでも器用にこなせる男子というのは、女子からすれば素晴らしく魅力的。しかし、器用が足を引っ張ることもある。本来はそんなパターンないけどね。
「でもオレ、監督に聞かれましたよ。『目白学院の選手で誰が一番タイプ?』って」
「……誰なん────クソ、ホイッスルか」
「ま、その辺は試合が終わったら聞けばいいよ」
とてつもなく気になる話は、試合再開を告げるホイッスルによって中断される。いつまでも引きずっていると、照奈に見抜かれて説教を食らうかもしれないので、風丸は頬を何度か叩いて切り替える。
染岡のスローインによって投げられたボールは豪炎寺に渡り、そのまま風丸へと渡る。正面には、敵DFを背負う豪炎寺。そして、自分にプレスをかけてくる真久理。
幾度も首を振り、敵味方の位置を確認しながら、真久理を引き付けていく。そう簡単に豪炎寺がフリーになるはずもなく、かといって出せる場所はないし、そろそろボールを触れる位置まで寄られているところだ。
「"疾風ダッシュ"」
そこを力業で突破できるのが風丸。ワープしたかのような神速に真久理は対応できず、それどころか、風丸は豪炎寺より前にいた。
────ちなみに、疾風ダッシュが披露されたのは帝国戦のみである。映像として残されていない試合の内容を知る術はなく、"ワープするドリブラーがいる"なんて話を信じる方が難しい。
故に、目白の選手全員が風丸に注目した。当然ながら、そんな大きい隙を見逃すはずもなく。
「風丸!」
「ああ!」
マークを剥がして風丸に追いついた豪炎寺が声をかければ、2人は流れるように必殺技の動作に入る。
「"炎の風見鶏"!」
ペナルティエリアより少し外から生誕する火の鳥。目の前にいたDFのことなんて一切考えておらず、問答無用で突っ込んでくる。
照奈曰く『必殺技で1人削れるなら、ゴールよりも大きいわよ』とのことで、あまりにも外道過ぎる考えに当時の豪炎寺は反論したが、『壊れるのがDFかGKの違いでしょう?』と返されてしまい、何も言えなかった。
シュート技とはそういうモノである。かといって、手加減することは言語道断。
「きゃあっ!!」
3番を吹き飛ばし、
その者は、別ベクトルでボールに力を加える。無理矢理にでも方向転換させることでクリアを試みていた。
「体力を消耗してくれるのはこちらとしても助かるが……」
「ちょっと妙だよな。わざわざ影野との対話を拒否してまでシュートを止めるのって」
──────炎の風見鶏を止めようとしているのは河平来緒だった。不審に感じた風丸が、仮にシュートを弾き飛ばした際の進路先を確認しても、既にマックスが立っている。
つまり、クリアに見せかけたパスは見破られており、雷門のDF陣もラインを上げて目白学院の選手を各々マークしている。
「"オニキス・ライン"」
──────首を振って位置を把握していた風丸に漆黒のボールが直撃し、吹き飛んだ。
「……は?」
想定外の出来事に呆然と立ち尽くす豪炎寺。ボールは壁山が持ち技の"ザ・ウォール"で止めたが、風丸はペナルティエリア付近から一気にセンターサークルまでぶっ飛ばされた。
試合中断のホイッスルが鳴る。
考えてみれば、当然のことだった。自分たちがやり返される可能性も考えなければならない。これはお互い様であり、豪炎寺がとやかく言える立場ではなく。
「豪炎寺、ちゃんとペナルティエリア内でシュートした方がいいかもな。アレは相当な怪物だぜ」
しかし、声をかけてきた染岡は仲間の安否を心配するのではなく、指摘を優先した。
「染岡────」
今はそれどころじゃないだろう。そう言おうとした瞬間、染岡が彼の肩をポンッと軽く叩く。
「風丸なら問題ない。アイツはいわゆる、"特殊な訓練を受けています"というやつだ」
「どういうことだ……」
チームメイトを一切心配しない染岡に疑念が生じるも、風丸がムクリと起き上がったのが確認できた。そして、ピョンピョンと跳ねている。
「アイツは俺たちより遅れて入部したが、共に冬将軍を超えた仲間だ。そこら辺のヤツより数百倍はタフだぜ」
「そうなのか……」
彼の発言をイマイチ理解できていないが、ひとまず風丸が無事ということで一安心の豪炎寺。
風丸をぶっ飛ばした張本人を一瞥する。来緒はキーパーの雷亜と何かを話していた。
★☆
「監督、結構動かれてませんか?」
一連の流れを見ていた音無が、心配そうな表情で照奈に問い掛ける。来緒が影野のマークを振り切って二度もシュートを止めていることに、焦りを感じたのだ。
要するに、彼女は河平来緒という選手を少し舐めていた。
「別に問題ないかな。
代わりに木野が答える。考えが一致していたからか、「そうね」と頷く照奈。
「でしたら木野さん、貴女ならここからどう展開させるのかしら? 何回もシュートを返されるわけじゃないと思うけれど、ペナルティエリア外からは撃ちづらくなったわよね」
そして、夏未からの追撃がやって来る。どういう意図で問い掛けてきたのかは分からないが、この短時間で木野はおおよその解答を用意できていた。
「雷門も逆にポゼッションサッカーをする、とか。と言っても、最初にやってた"無理そうなら一旦下げる"をやるだけだよ」
「その心は?」
「少しでも相手に時間を作らせないためのポゼッション。えーっと、9番がクリアしたあとにフォーメーションが変わったよね。で、風丸くんに必殺技を当てたのも、多分わざとだと思う。それを証明するのは難しいけど、そのおかげで話し合う時間が生まれてるし」
「なるほど……つまり、目白学院側が用意した対策を実行させないため、ってことね」
「うん、どうしてもハーフタイムだけは避けられないけど、雷門が何もしなさ過ぎだったら"本当にこれで合ってるのか?"って、誰かしら思うのかなーと」
「言い換えると、我慢比べか」
「そうかも。となったら、風丸くんが必殺技を使っちゃった分、雷門が不利……?」
「アレって連発できないのか?」
「できたら最初からやってるわ。土門くんは今まで何を見てきたのよ」
「ハイ、スミマセン」
土門の問いは愚問だったらしく、照奈に叱られる。
────現在の雷門は、照奈の指示を完璧に守り切れていない。彼女の読みが合っていることもあり、"思っているより奈瀬文乃は大したことなさそう"という慢心から、若干前のめりになっていた。
本当に河平来緒だけ抑えれば、早いうちに点を決めても勝てる。これが雷門前衛陣の意見だった。影野を信頼しているとも言えるが、であればこそ、確実に決められる状況を作り出したい。
────来緒に対してのペナルティはなく、雷門側のフリーキックで試合が再開する。
「ちなみに監督、オレって試合に出れる世界線あります?」
「貴方を出すぐらいなら木野ちゃんを出すから、ないわ」
「マジすか?」
偶然にも木野とスタメンの考えが一致していたのか、安全にパスを回し始めた雷門。それを見た土門が照奈に1つ願い出るも、打ち砕かれた。
「木野ちゃんは私がみっちりと鍛えましたので。他の中学────帝国でもスタメンは余裕よ。
「えっ」
唐突な照奈の暴露に、土門は動揺する。一体どこでバレた、と自分のこれまでの行動を高速で振り返るが、心当たりがない。
それもそのはず。そもそも、椎奈が「スパイを送る」と言ってから送り込まれているのだから。そんな裏のやり取りを知る手段、土門にはない。
「監督、それはどういう意味でしょうか? まさか、土門くんが帝国のスパイ────」
「ご推察の通りよ。とはいえ、今更どうでもいいわね」
照奈がそう言い放てば、木野と音無も土門がスパイであることは些事だと認識する。
この時点で気にしているのはスパイ本人と夏未だけ。また、今コートで戦っている彼らも一切気にしないだろう。雷門サッカー部に所属している時点で、土門飛鳥は仲間なのだから。
「ひとまず前半は凌げそうだわ。アレが早々に下がってくれたおかげで、影野くんの消耗も想像以上に少ないし」
ホームの雷門中グラウンドでやることがパス回しという、ファンからしたら最悪の試合展開を繰り広げる雷門。実況泣かせとも言える。
しかし、露骨な時間稼ぎが後半に繋がってくるのは、サッカー素人の観客でも理解できていた。理由は、今もなお来緒の背中に手を当て、ボールを見ている影野にある。
嫉妬や嫌悪の声がチラホラと照奈の耳に入ってくる。だが、"試合に勝つためには必要なこと"であり、一番嫌な役を請け負っている。であれば、動かなくていいに越したことはないと、観客たちは認めざるを得なかった。
──────試合開始から25分。もう少しで前半が終わるところで、音無が手に持っていたペンを置いた。
「監督、ふと思ったのですが」
「何かしら?」
「後半は雷門ボールですから、速攻で点を取ってガン引きの方がいいんじゃ……」
「あ、私もそれ思いました。ギリギリで点を取りに行く方が、集中力切れそうな気がして……」
音無の疑問に木野が追従する。つまり、「先にリードした形の方が精神的に楽なのではないか?」と聞きたい。
もちろん、照奈がその案を切った上で今回の作戦を選んだのは重々承知している。それでも、想定より良い流れで進んでいる試合を見て、疑問に感じたのだ。
「──────あくまでも私の妄想として聞いてほしいのだけれど」
「はい」
「目白学院に主人公はいない。でも、可能性はできる限り潰しておきたいの」
「……なるほど! アレですね! いわゆる、漫画やアニメであるような覚醒シーン!」
言いたいことが読めた音無は、興奮気味に立ち上がる。照奈は「そういうことよ」とだけ返す。
「でも、仮になるとしたら誰なんですか?」
「さあ? "大物喰い"で言うなら9番の
「……なるほど?」
音無は監督の言いたいことが理解できなかった。
目白学院戦はあと2話ぐらいで終わる予定です。
もしかしたら3話になるかもしれませんが、オリジナルの試合なのでガッツリ書きたいなと。
ポロッとネタバレになりますが、FF編のオリジナル試合はあと3戦あります。ラスト1戦だけ目白学院戦並みに長いと思います。