サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】   作:ローマ市民兼インド村住人

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前回のあらすじ
円堂神セーブ

誤字報告ありがとうございます。


第15話「最強の名を懸けて」

 目白学院のコーナーキックで試合が再開。キッカーは辺留(べる)で、ペナルティエリア内には来緒(らお)・真久理(まくり)・悠里(ゆうり)の3人。

 

 

 来緒に2人付けているからか、雷門側は5人ほどエリア内にいることになり、ゴチャゴチャしている。

 

 

 連携が取れていないとも言えるが、円堂が特に言及することなくボールを見ているため、問題ないらしい。

 

 

 ────ホイッスルが鳴り、辺留がボールを蹴る。すると、少し離れたところで立っていた少林が飛び、胸でトラップした。

 

 

「なっ……!?」

 

 

 彼の背が小さいからか、思わず驚きの声を漏らす辺留。そして、すぐさま奪いに行くべきなのだが、足が動かない。

 

 

 幼い頃のトラウマがきっかけで、男性が苦手となった彼女。それでもサッカーはやりたかった。どうすればいいかを必死に考えに考えた結果が、"男性から距離を取りたい"という無意識の反応を利用したドリブルだった。

 

 

 そのため、ボールを奪いには行けないのだ。チームはそれを理解した上で運用しているし、未だに対策を取られていない。これまでの相手は彼女のプライベートな事情を知り得ないからだ。

 

 

「くっ……」

 

 

 しかし、照奈は前世を通して把握済み。だからこそ、別に相手取る必要がないのも分かっていた。ここぞというタイミングで止めればいいだけであり、そして、この後半でそのタイミングが訪れないのも分かっている。

 

 

 さらには、来緒のマークがもう1人増えた。沈みかけていた空気をなんとか持ち堪えさせた彼女の闘志を見て、即座に対策を取る。これは、河平来緒というストライカーをリスペクトしている証でもあり、裏を返せば、それ以外の選手はどうでもいいということである。

 

 

 その事実を悔やむ暇はない。来緒が背中で示している以上、彼女らは自分たちのエースについて行くのみ。

 

 

 ────少林が宍戸へパスをすると、彼の前に浅井(あざい)あかりが立ち塞がった。

 

 

「通しませんよ~」

 

 

 首を振ってパス先を探す宍戸。パスを出した少林が唯一のフリーで、なおかつ近くにいる辺留が何故か動けない。そのため、一旦戻してから再度組み立て直すという選択肢が思い浮かんだが────

 

 

「あ、そっか」

 

 

 そのまま待つことにした。

 

 

 監督の命令が"試合終盤での得点"である以上、今の自分たちの役目はタイムイーター。相手が痺れを切らすまで待ち、そのタイミングで少林に戻す。

 

 

 相手を抜ける技量はまだないが、だからと言って無理に勝負する必要はないのだ。

 

 

 

★☆

 

 

 

 目白学院側ベンチ。

 

 

 奈瀬は左腕の時計で時間を確認しながら、一向に仕掛けないあかりと、一向に動かない宍戸の1v1に焦りを感じていた。理由は、この状態で1分経過したからである。

 

 

「まずいな……。他の誰かがあのアフロからボールを取ればいいのはそうなんだけど、下手に動けないし……」

 

「まさか、あかりさんの弱点がバレてしまったのでしょうか?」

 

 

 コーチの指摘に、奈瀬は首を横に振る。

 

 

 浅井あかりの弱点とは、"後出ししかできない"ことだ。

 

 

 要するに相手の動きを見てから対応するタイプのDFであり、自分から動くことはない。その分、後から動いた際の勝率はほぼ100%に近く、なんなら必殺技も無効化してしまうことがある。

 

 

「運悪く嚙み合ったとしか言いようがない。ハーフタイムにも言ったけど、雷門は試合の終わり際まで時間を稼ぐつもりだ。でも、そんな戦法を示されてたのに、監督に逆らうことなく素直に遂行しているとなれば、彼女の一言で雷門の方針が変わっても不思議じゃない」

 

 

 そして、奈瀬は芹坂照奈を誤解していた。彼女が何を危惧しているのか未だに分かっていないのだから、当然ではあるが。

 

 

「つまり、他の誰かがカバーしに行くことで生まれた隙を突かれてもおかしくない、と?」

 

「そういうこと。現に、アフロは首だけを動かしている。あかりが気付いてくれたらいいんだけど、彼女の性格上は期待できない」 

 

「伝えると相手にバレてしまうのが、歯痒いです」

 

「こればかりは割り切るしかないね。……雷亜が気合で止めるか、取られた直後に死ぬ気で来緒が取り返すか。君はどっちだと思う?」

 

「後者だと思います」

 

「そうなんだ。僕は雷亜が気合で止める方に賭けるよ」

 

 

 

★☆

 

 

 

 試合は特に動きもなく、後半20分が経過していた。目白学院は持ち味のポゼッションサッカーを完全に捨て、縦ポンによるカウンタープレーに移行。

 

 

 だが、来緒の進路方向には風丸が立っており、彼がいない方へ動こうとすれば影野が妨害する。そして、悠里は半田に抑え込まれる。

 

 

 阿流と辺留のドリブルこそ通るものの、一度もシュートに繋がることはなかった。

 

 

「流石に疲れてきているみたいね」

 

 

 何度やっても成功しない。そんな状況になれば、疲労はあるし集中力が切れる。ついにボールタッチをミスってマックスにボールを渡してしまった阿流を見て、夏未は安堵する。

 

 

 やることなすこと全てが風丸と影野によって上手くいっていないのにもかかわらず、闘志が消えていない来緒が異常なだけであり、普通はこうなるのだ。

 

 

「にしても、河平来緒のガッツは凄まじいですね。キャプテンに負けてないのでは?」

 

「勝利への執念なら、円堂くんよりあると思うわよ」

 

 

 音無の言葉に肯定する照奈。実際に彼女の走りを見たわけではないが、メジロラモーヌがターフを愛していたのは分かる。

 

 

 今はそれがサッカーになり、こうして背中で見せてチームを引っ張っているのは感慨深いと言うべきだろうか。上から目線だが。

 

 

「とはいえ、流石に影野くんが疲れてきているわ」

 

 

 そしてついに、影野は来緒の動きに追いつくので精一杯になってきた。後半が始まったときと比べ、明らかに反応が鈍っている。

 

 

 だが、本来は前半のみマンマークだ。ここまでの頑張りに対して、照奈は褒め称えたい気分である。今回は貴方が主役だったわよ、と。

 

 

 裏を返せば、来緒が勝ったということでもある。だが、時間を掛け過ぎな上に風丸という第二ラウンドが並行で行われているのだ。

 

 

 雷門のMF・DF陣は来緒のパスカットをケアしながら、自陣でボールを回していく。目白学院の選手も声を出しながらの対応を試みるが、間に合っていない。

 

 

 照奈は目白学院側のベンチに視線を向ける。不安そうに見守るコーチと、焦りが見られる奈瀬。諦めていないのは分かるが、逆転の一手を見出せていないように思えたのだ。

 

 

「監督、冷静に考えてみたのですが」

 

「何かしら?」

 

「雷門が慢心していない以上、奈瀬文乃であっても、戦力差を戦術でひっくり返すのは難しいのでは?」

 

「それは────そうね」

 

 夏未の質問に、照奈は首を縦に振るしかなかった。

 

 

 

★☆

 

 

 

side:Gouenji

 

 

 監督は「30分でトドメを刺せ」と言っていた。風丸がぶっ飛んだ分のアディショナルタイムが設けられるはずだから、ということらしい。

 

 

 まあ、延長戦に突入したところで、体力勝負は雷門が圧倒的優勢。途中からマークが2人に増えても、未だに息を切らさない河平来緒に感心するが、目白学院の前線はボロボロだ。

 

 

 何よりも、監督がハーフタイムで喋った作戦が当たり過ぎている。

 

 

 「目白学院はポゼッションを捨ててくる」「小窪辺留(こくぼべる)は基本的に放置でいい」「河平阿流(かわひらある)が何か狙ってそうだけど、気にしなくていい」など、まるで人読みをしているかのような的中率。強いて言うなら、河平来緒の前線復帰だけ外したが、そのリカバリーで風丸もマークにつけさせた。

 

 

 あれほどの天才になると、過去試合を一通り見ただけでやってしまうのだろうか。

 

 

「豪炎寺、突っ立ってるぐらいなら準備しておけよ」

 

 

 試合中にもかかわらず考え事をしていたのは、時間までオレの出番がないからだ。なので、染岡の指摘はごもっとも。

 

 

「悪い、そろそろ準備をする」

 

 

 ───────後半開始から30分が経過する直前、ボールが円堂に渡ったところで、果てしなく長く感じたであろうボール回しは終わった。

 

 

 オレはオフサイドラインを割らない位置まで上がり、待機する。その瞬間、目白学院のDF陣の視線が一斉に降り注いだが、あまり関係ない。

 

 

 円堂は頭上に巨大な拳のオーラを生み出し、パンチを繰り出す。"メガトンヘッド"だったかな。

 

 

 それを見た河平来緒がカットしようと飛び出そうするも、壁山が立ち塞がる。

 

 

 円堂の必殺シュートは少林に渡り、一度止められてしまった"ラピッドファイア"で宍戸へとシュート。

 

 

 宍戸は"グレネードショット"で染岡へ。そして、染岡が右足に力を込め始めたところで、オレは回転しながら高く飛び上がり────

 

 

「"ドラゴン────」

 

「────トルネード"!!」

 

 

 ────DFたちの上から叩き込む。

 

 

 これを4チェインとするか5チェインとするかは人それぞれだと思うが、それぞれの火力が積み重なった赤き竜は、目白学院のGKが必殺技を構える前にゴールへと突き刺さった。

 

 

 上手く着地をし、すぐに自陣へ戻る。仕事は終わったのだが、キックオフ直後にボールを奪って時間を稼ぐのが理想形だ。

 

 

「これでとりあえずは全国出場か」

 

「何もなければな」

 

「あからさまなフラグを建てるのはやめろよ」

 

「だったら、染岡が折ればいい話だ」

 

 

 染岡とちょっとした軽口を言い合いながら、位置につ──────

 

 

 

★☆

 

 

 

side ???

 

 

 

 どこまでも、どこまでも堕ちていく感覚。空は暗く、周りがよく見えない。

 

 

 せっかく点け直してくれたのに、消えてしまった。"河平来緒"という決して消えぬ炎があっても、物事には限界がある。

 

 

 冷たい風が私の肌を突き刺す。これまでの努力は一体なんだったのかと咎めるように。

 

 

 この試合、自分は何をした?

 

 

 幾度もボールを奪われ、仲間との連携も上手くいかずにミスをする。一度もチームの役に立てていない。

 

 

 きっと、来緒さん以外はそう思っている。みんな、"自分は役立たず"だと思っている。

 

 

 この落下はいつまで続くのだろうか。

 

 

 完全に諦めていないから続く? けれど、アディショナルタイムは恐らく1~2分程度。仮に同点になって延長戦へ突入しても、体力は限界を迎えている。

 

 

 また何もできずに、役に立てずに、迷惑をかけて無様に負ける。それでいいのかと自問しても、"それは良くない"以外の答えはない。

 

 

 ────────赤く光る羽根が、こちらの落下よりも速く降ってきた。

 

 

 それを両手で握り締める。

 

 

 ……ああ、そうですね。

 

 

 来緒さんの炎で無理なら、自分で灯すしかない。

 

 

 でなければ……来緒さんに、監督に、コーチに、チームの皆さんに、

 

 

「キ(・)ャ(・)プ(・)テ(・)ン(・)として合わせる顔がありませんわ」

 

 

 空が晴れる。光が差す。背中に羽根が生え、これならどこまでも行ける気がする。高く高く、どこまでも羽ばたける。

 

 

 昇ってみせましょう、果てなき未来へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────試合再開。

 

 

 私は来緒さんからボールを受け取り、雷門のFW2人の間を通り抜ける。今までと打って変わって、身体が軽い。軽すぎて不自然まである。

 

 

 ボールは吸い付くし、思い通りに動かせる。

 

 

 この感覚が途切れる前に確実に1点を決めてみせる。そうすれば、あとは来緒さんに丸投げすればいい。

 

 

 両サイドにいるMFは無視。他の選手も無視でいい。一気に突き進んで、円堂守との1v1へと持ち込む。

 

 

 ピッチ上にいる22人の中で、今一番強いのは私だ。だから、どんな対面でも必ず勝てる。

 

 

 ペナルティエリア。来緒さんについていた2人がいるからか、6人の包囲網が出来上がっていた。あまりにも多すぎるし、私の変貌ぶりにすぐ対応できたのは流石とも言える。

 

 

 でも、天の果てまで飛べば、誰も手を出せないでしょう?

 

 

 ボールを蹴り上げ、先程の豪炎寺修也よりも高く飛ぶ。ほら、貴方たちは空を見上げることしかできない。

 

 

 私は再び羽根を生やし、ボールを白く光らせる。勢いをつけるために少し離れ、回転しながらボールに蹴りを入れようとして────

 

 

 風の弾丸がボールにぶつかり、落ちた。

 

 

 

★☆

 

 

 

 真(・)久(・)理(・)がシュートに失敗し、ボールが地面に着いた瞬間に笛が鳴る。

 

 

 試合終了、1-0で雷門中の勝利。だが、彼らが喜ぶ様子はなく、寧ろホッとしていた。

 

 

「ふぅ……なんとかなったか」

 

「オマエ、すっげーな!!」

 

 

 雷門メンバーが風丸に駆け寄る。そう、彼が真久理のシュートを止めたのだ。

 

 

 自分の跳躍力では届かず、竜巻落としの要領で壁山に補佐をしてもらうとなれば、恐らく時間が足りない。

 

 

 そう判断した風丸は、"エアーバレット"という必殺技を使用した。空気を練り上げ、風の弾丸を生み出し、それを蹴って相手にぶつけるという技だ。また、ボールにぶつけることでシュートの威力を軽減させる役割もある。

 

 

 今回は、手(・)の(・)届(・)か(・)ぬ(・)位(・)置(・)か(・)ら(・)シ(・)ュ(・)ー(・)ト(・)が(・)放(・)た(・)れ(・)る(・)前(・)に(・)ぶ(・)つ(・)け(・)る(・)ことで中断させた。

 

 

「この技を教えたのは私だけど、咄嗟にあの判断ができるかとなったら微妙だわ。風丸くん、あなたはとんでもないことを成し得たのよ」

 

 

 流石の照奈も称賛を送る。教え子が自分の期待を超える瞬間を目撃したのだ。教える側の立場として、これ以上に達成感を得るモノはない。

 

 

「いや、監督は普通に飛んで取りますよね」

 

「まあ、そうとも言うわね」

 

 

 褒められても喜ばずにツッコむ風丸に、ドッと湧く。

 

 

「影野くんもよく頑張ったわ」

 

「はい。最後の最後でMVPを取られましたが」

 

「そんなことないさ! この試合のMVPは間違いなく影野、オマエだ!」

 

 

 恨めしく喋る影野をフォローする円堂。彼がMVPであることは皆が思っていることであり、異議を唱える者は当然ながらおらず。

 

 

 それが分かれば、影野は「練習してきて良かった……」と涙ながらに想いを零した。

 

 

「とりあえず、全国大会出場は決定したのですが……」

 

 

 しんみりとした雰囲気の中、携帯を見ていた音無が言いづらそうしながら話題を変える。

 

 

「何かあったの? 総帥が死んだ?」

 

「いえ、違いますけど……。先程、東海地区の決勝戦も終わりまして。"笠松学園 対 戦国伊賀島中"の試合なのですが」

 

 

 "笠松学園"という単語を聞いて照奈が一瞬眉を上げるが、誰も気付かない。そのまま音無は、驚きと困惑が入り混じった表情で携帯の画面を見せる。

 

 

「24-0で笠松学園の勝利らしいです」

 

 




今月中にあと1話投稿できれば
あと、目白学院の主要キャラのプロフィールは次回出します
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