サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】 作:ローマ市民兼インド村住人
雷門中がFF地区予選優勝
目白学院控え室。
覚醒した真久理が繋げたかと思いきや、風丸のヒラメキでシュート失敗。一気に絶望へと叩き落とされた彼女たちは、泣くことしかできず。
しかし、来緒と奈瀬は元気だった。
「中学生活最後の公式試合だと思うけど、泣かなくていいのかい?」
「別に。帝国戦まで露呈しなかった目白の弱点が出ただけのことよ」
「それもそうだね。良くも悪くも君のワンマンチームだから、完璧に君を抑え込まれてしまったら、僕でも成す術がないらしい」
奈瀬は過信していたわけではない。照奈が自分をリスペクトしているからこそ、徹底したガン引きサッカーで仕掛けてきたのは嫌でも感じ取っている。
目白に足りなかったのはフィジカル。攻めも守りも、豪炎寺や雷門初期メンバーに対しての当たりが明らかに劣っていた。
「良かったじゃない。
「ああ、1年もあれば真久理のアレは安定するだろうね」
──────だが、天才ゲームメーカーは既に未来を見ている。
★☆
side:??
『試合終了、16-0で帝国学園の勝利です!』
「んー、やっぱりそうか……」
「何見てるの?」
携帯で試合映像を見ていると、カールした栗毛でショートカットで、中央に白いメッシュが入った子────
「過去の帝国の試合」
「全国大会で当たるかもしれないもんね。でも、
「いや、違うんだ。私が見ているのはもっと前の帝国なんだ」
「なんで?」
と言ったものの、"雷門の監督が気になるから"と馬鹿正直に言ってしまうのはダメな気がする。なんかこう、いわゆる地雷を踏むというやつだろうか。
「今の雷門中の監督は"帝国最強"と言われていたみたいで、彼女が出場している試合を見れば、そこから雷門の戦術のヒントになるんじゃないかと思って」
ヒントになるわけがない、と自分で言っていて思った。彼女は司令塔じゃないから。
「ふーん」
案の定、ベルノは目を細めて見つめてくる。彼女はよく、私が他の女子と話しているところを見ると、こういう感じで少し機嫌を悪くするのだ。
一度、監督の
まさか、
「普段の
「確かに美人だが、本当に違うんだ」
「なーんか、他の女の子にもなびかないなあとか思ってたら、対象は同年代じゃなくて年上の女性だったんだ」
「……」
返答に凄く困る。否定するのは簡単だが、同年代の女子がいいというわけでもない。今のところ、恋愛をする気がないからだ。
────ベルノは間違いなく私に好意を持っている。でなければ、こんな面倒な態……自分にフォーカスしてくれないだけで不機嫌になったりしない。
ここまで悩んでいるのは、彼女が笠松学園サッカー部唯一のマネージャーだからだ。私の選択で部を辞めてしまうパターンが一番困るし、ベルノに対して思わせぶりな言動を取るのも違う。そんなことをしたら、恐らく北原にぶん殴られるだろう。
「小栗に部流乃、ここにいたか」
どう返せばいいか悩んでいたら、薄浅葱色の髪をした女の子が声をかけてきた。
「真知さん、聞いてくださいよ。小栗くんったら、雷門の監督が選手してるときの試合映像を見てたんですよ。年上好きですよ年上好き」
彼女を味方につけようと、ベルノは必死に訴える。しかし、マーチは首を傾げていた。
「年上が好きなら、先日行われた関東地区予選の決勝とかを見ると思うが。部流乃、君は小栗のことになるとIQが2になるのか?」
「うっ……」
ナイス援護、マーチ。いや、今の答えを私の口から言えてたら完璧だったのだが……難しいな。
「とはいえ、わざわざ選手時代の試合を見ていたのは私も気になる。何故なんだ、小栗?」
「『雷門の戦術のヒントになるから』、らしいですよ。絶対ウソだと思いません?」
「嘘だな」
味方から敵に変わるのが早い。こうなったら、嘘だと認めるしかない。だとしても、本当の理由を説明するのもまずい。
「すまない、戦術云々は嘘だ。だけど、理由は言えない。私のプライバシーに関わることなんだ」
「分かった、初恋の人でしょ」「初恋だな」
なんとかして誤魔化そうとしたら、2人が同じ結論に至った。初恋……初恋か……。そういうことにしたとして、後が面倒なことになる可能性がありそう。
「私がそれを認めたら、どうなるんだ?」
「そりゃ、あーしがブチギレる」
後ろからドスンと私の頭の上に胸を乗っけてきたのは
「染谷、流石にそれは……」
ベルノは目を大きく見開き、マーチは顔を引きつらせている。ああ、前からやって来る残りの2人────
「小栗以外にはやんないし」
「男の頭の上にでっかいソレを乗せてる行為がダメ」
「つーか、小栗もなんで真顔なんだよ」
……こんな感じで、私の周りには女子が5人集まる。5人どころか、他の女子も私とコミュニケーションを取りたがっているし、男子からの嫉妬の視線が集中する。
いわば、学園一のモテ男。言い換えれば、私のファンはたくさんいるということになる。
「胸が大きいと、肩凝りが酷いと聞く。私の頭がちょうどいい置き場になるのなら、それでいい」
「そういう問題じゃねぇよ。あのな────」
「
「お、おう……」
ノルンが声を震わせて、ルディの発言を止める。多分、私の答えに脈が無さ過ぎてダメージを受けたのだろう。
同一人物ではないのは承知だが、先程のベルノもそうだし、前世の旧友から好意を持たれているのは、物凄く変な感じがするのだ。
変に人生経験を積んでから生まれ変わったのもあって、学生時代のような鈍感さを発揮できるわけでもない。気付いていなければ、こんなことを考えなくても良かったのに。
★☆
「転校生を紹介します」
笠松学園の教師陣を笠松トレセンと比べると、記憶がないこと以外の相違点はなかったと思う。だから、眼鏡をかけた老教師が私の担任なのは変わらずだ。
ついでにトレーナーも教師になっており、学園要素に引っ張られたのだろう。この世界には、"ウマ娘"の原典とも言えるであろうモノは別にある。
──────だからこそ、高揚感が湧き出た。
「入ってください」
先生の合図と共に教室の扉が開く。入ってきたのは────
「……えっ」
想定外の人物に思わず声が漏れる。私が知っている彼女と全く同じだが、だとしても笠松に来るのはおかしい。
「大阪の
そして、聞き馴染みしかない声に関西弁。
「同じ髪色の小栗くんの隣が空いているね。そこが君の席です」
「はい」
先生に言われ、玉藻────タマは私の隣の席まで行き、机の上にカバンを置いて座る。ああ、とても懐かしい。
彼女を見ると、トレセン学園にいた頃の記憶が鮮明に蘇る。天皇賞・秋から始まり、学園を卒業するまで。彼女が作ったお好み焼きは絶品だったな。お腹空いてきた。
「ほーん」
あまりにも私がタマを見過ぎたのか、ニヤニヤしながら見つめ返される。彼女の奥に見えるノルンの顔が怖いのは見なかったことにしよう。
「アンタが
「そうだな。大阪にまで私の名が届いていたとは」
「いやいや、全国ニュースもんやで。ウチもFWやってたけど、流石に腰抜かしたわ」
「小栗くん、玉藻さん、サッカー談義はあとにしてください」
なるほど、タマもサッカーをやっていたのか。しかも同じポジションときた。今の笠松は私の1トップだから、サッカー部に入ってくれるなら2トップになると思う。
葦毛コンビ復活────誰も盛り上がりそうにないのが悲しい。私だけウキウキしているのも不自然だ。
さっきまで悩んでいたことがどうでもよくなってきた。このままいけば、タマと一緒にサッカーができる。
向こうは"前世の記憶"がないけれど、別にいい。あとはクリークやイナリと────やっぱりクリークはちょっと嫌かもしれない。
★☆
昼休み。タマが「サッカー部を覗いてみたいわ」と言うので、部室へ連れて来た。ベルノたちを置いてきたことが後に響かなければいいな。……絶対に響くと思う。
「サッカー部ってもっと汗臭いはずなんやけど」
部室に入るや否や、タマが鼻をスンスンさせながらそう言った。現にフローラルな香りが漂っている。
「私以外の部員が女子だからだと思う。ここに芳香剤があるだろう?」
重要なオブジェクトかの如く、机の中央に鎮座している芳香剤を指差すも、タマは別の理由で驚いていた。
「アンタ以外女子?」
「入部テストをした際、私以外の男子が残らなかったんだ」
「情けなさ過ぎやろ……」
逆に言えば、ガッツのある女子が集まっているということでもある。北原はすこぶる困っていたが。
「あれ、ちゅうことはウチも入部テストを受けなあかんの?」
この口ぶりだと、サッカー部に入部することは決めていそう。なら、後押しをしよう。
「私が北原を説得して、コネで通す」
「いや、別にそこまでせんでも……」
「『無理ならサッカー部辞める』で通るから、安心してほしい」
「冗談かどうか分からへん表情で言わんといてや」
冗談ではない。私は意地でも君とサッカーをやりたいんだ。……とまでは言えないな。初日で距離を詰め過ぎだ。
……"タマモクロス"と重ねているだけかもしれない。
「大体、ウチと小栗は今日会ったばっかやん。なんか一目惚れしたみたいに入れ込んでもうてるけどさ、こんな小学生みたいなヤツに惚れるのもおかしい話やろ?」
そう、彼女は"玉藻和美"であって、"タマモクロス"ではない。そして何より、今の私は"オグリキャップ"ではなく、"小栗知一"。
であれば、重ねること自体が失礼に値する。違和感がない程度で、呼び方を前世に寄せるぐらいが無難だろう。
「……君の言う通りだな。私がどうかしていた、すまない」
と言えば、タマは何とも言えない表情になって頭を掻いた。確かに今の話を肯定すると、彼女の評価を下げてしまっている感じになるな。
────いや、否定したらしたで面倒なことになりそう。主にベルノやノルン辺りで。
「ドストレートにぶつけんのもどうかと思うけどな。アンタ、他の女子にもそんなデリカシーないこと言うてんの?」
「そもそも聞き方が悪いんじゃないか? 『私は君に惚れているんだ!』という答えが欲しかったなら別だが」
質問に質問で返すと、タマは一歩下がって顔を赤くした。だいぶ無茶なことを聞いてしまったと気付いたのだろう。
「展開が少女漫画っぽかったから、ちょっと期待しただけやん……。こんなにモテる男が、出会ったばかりの転校生に惚れ込むとかさ、あるやろ?」
「私は少女漫画を読まないからな」
前世でも、そういうのは読まなかった。逆に、彼女が読んでいることに対しては少し意外だと思った。
タマは苦笑いしながら話を続ける。
「まあ、小栗は練習がない日もずっとサッカーしてそうやし、漫画とか興味ないよな」
「オフの日は競馬場か名古屋のウィナーズに入り浸ってるぞ」
「うん?????」
彼女の頭上に疑問符が浮かぶ。もしかしたら、競馬を知らないのかもしれない。しかし、マズいな。説明しようとすると、昼休みが終わってしまう予感がする。
「競馬って、ギャンブルよな?」
「そうだな。私は未成年だから、北原────監督かお母さんに賭けてもらっている」
「その
なるほど。少なくともクラスで競馬を見たことある人はいなかったから、これはなかなか珍しい。興味がないのにそれをネタに話すのも、私から言い出すことはなかったが────
「今日の放課後、見に行かないか?」
多分、彼女なら大丈夫。
「今日……って、平日やん」
「笠松は平日でもやってるんだ。中央と比べれば地味だと思うが、地方競馬も楽しいぞ」
「でも、部活があるやろ?」
「休むに決まっている。あ、行きたくないなら遠慮せずに断ってくれても構わない」
たまに部活を無断で休んで笠松競馬場へ行き、北原に怒られているからな。それに、笠松の魅力を紹介する
「2人で行くってことやんな?」
「2人だな。……デートになるから嫌なのか?」
「ち、ちゃうわ! 」
タマは再び顔を赤くした。ちょっと楽しくなってきたかもしれない。
異性同士だからこその揶揄い方もあるのだな。私に男友達なんていないのは置いておくとして。
「ウチだけ特別扱いみたいな感じで、他の女子に嫌なことされへんかなと……」
「ん? 競馬に興味を持たないのが悪いだろう」
基本的に女子からのお誘いは断っている。例外として『競馬見に行かない?』と言われたらノータイムで首を縦に振ると決めているものの、誰も何も言わない。
また、"他の女子"がどこまでを指しているかにもよるけれども、いつもの5人はそんなことで嫌がらせはしないと思う。
「そういうことじゃないと思うねんけど……まあええわ。折角やし一緒に行ったる」
「ありがとう。じゃあ、学校が終わったらタマの家に行くから、よろしく頼む」
「ほな一緒に帰らなあかんな」
──────この先どう転ぶか見当つかないが、今までよりも楽しくなりそうなのは分かる。
ライバル同士ではなく、味方同士。こればかりは、前世の記憶を持っていることに感謝しよう。
多分、ここまで胸が昂らなかったと思うから。
年齢:14
ポジション:ミッドフィルダー
背番号:8
目白学院キャプテン。いつもは淑女だが、野球観戦になると人格が急変するそうだ。
年齢:14
ポジション:ミッドフィルダー
背番号:7
幼少期のトラウマで男性が苦手なのだが、風丸のことを女だと思い込んでいるので、センサーに引っ掛からないらしい。
年齢:14
ポジション:ミッドフィルダー
背番号:9
見た目はギャルっぽいが、お嬢様に分類される。別の中学校にいる、太陽みたいな女の子が頭から離れない。
年齢:14
ポジション:ディフェンダー
背番号:4
超がつくほどのマイペース。ドリブルが壊滅的に下手くそなので、あまりボールが回ってこない。
年齢:14
ポジション:ゴールキーパー
背番号:1
実は秋葉名戸のメイド喫茶に行きたいと思っているが、家柄的に行けそうにないのでモヤモヤしている。照奈の筋肉を見てみたいとも思っている。
年齢:14
ポジション:ミッドフィルダー
背番号:11
姉が自分よりも優れ過ぎていることにコンプレックスを感じていたが、「舐められてる方が刺さるよ」という奈瀬の助言により克服した。
年齢:15
ポジション:フォワード
背番号:10
目白の絶対的エース。よく携帯を家に置いて出かけてしまうため、何度か迷子になって試合会場に辿り着けなかったことがある。
※オグリの予想を元に北原or母親が自身のお金で馬券を買っていて、払い戻し金の一部をオグリへの小遣いとして分けています。オグリの代行をしているわけではないです。